ギャルズタウンのお好きな街にあなたのサイトの看板を出せます。 ギャルズタウンをご利用いただいているレジデントの皆様に参加していただきたいです。 21000人以上の皆様にご利用していただいている無料サービスです。 ギャルズタウンのヘルプ委員、メイヤー、レジデントの皆さんが真心を込めて作ってくれたヘルプページです。 ギャルズタウンの案内ページです。 商用サイトを運営なさっている方のための相談・提案サービスです。
ギャルズタウンの総合トップページへ!
Click here to visit our sponsor
番外編競作 その花の名前は 参加作品

.

 『希求』番外編

.

鞘の条件

銀月愁稀

. . . .

「ふうん、この剣の鞘が欲しい、ネェ……」
 ユゥーディは渡された剣を見て、感慨深げに呟いた。そして、ちらりと剣を持ち込んできた男女を見やった。
 淡い金髪に蒼い瞳の若い男の方は知っている。何度か仕事を請け負ったことがあった。今も彼の腰に佩いている剣はユゥーディが鍛えたものだ。
 だが、隣にいる女は初めて見る顔だ。
 長い銀髪に、印象的な翡翠の瞳。あどけなさを残した繊細な美貌にはどこか頼りなげな風情がある。女と言うより、少女と言った方が的確だろうか。
 もう一度、ユゥーディは剣に視線をやり、指先で軽く弾く。
 わずかに感じる振動。
 鋭く煌く銀色の輝きは一点の曇りもない。
「良い剣ね、鞘がないのが勿体ないくらい」
「だから、鞘を作ってくれと言っているんだけど?」
 穏やかに微笑みかける男に、鍛冶師であるユゥーディは笑みを返した。
「作らないとは言っていないわよ、でもね」
 そして、ユゥーディは彼の口調に驚いて軽く双眸を見開いている少女にニッコリと笑いかけた。
「お嬢さんには剣より花の方が似合うんじゃない?」
「!」
「ユゥーディ!?」
 驚く二人を、ユゥーディは不敵な表情で見据えた。
「見くびらないでちょうだい。この剣の持ち主は貴方じゃなくて、そっちのお嬢さんでしょ?」
「――だとしたら?」
 不意に返ってきた答えに、ユゥーディは意外に思った。
 可憐な容姿に相応しい美声。だが、その硬質の響きは予想外だった。
 そして、ユゥーディは少女の長い髪に隠されていた右頬に醜い傷痕が残っていることに気づいた。
「その剣より花が似合うと言うのは、貴方が本当の私を知らないからだ」
 男のような口調に、ユゥーディは思わず頬を緩めた。まるで自分の反対だ。
「アウロス」
 少女を呼び止める声に、ユゥーディはわずかに表情を変えた。
「ナルホド? お嬢さんが、かの悪名高い『魔道将軍』なワケね?」
 『魔道将軍』――世界を蹂躙する皇国の女将軍。
 皇国を裏切ったという噂は聞いていたが、どうやら真実だったらしい。
「知っているなら、愚問だろう」
「だったら、尚更聞きたいわね。この剣を鞘に収める必要があるの?」
 少女の翡翠の瞳がゆっくりと細められる。
「――常に刃を振るうしかないだろうと言いたいのか?」
「アウロス! ユゥーディ!」
 強い制止の響きに、二人は声の主を見た。
「不毛な会話を続ける暇はないと思うけどな」
 そして、男は少女の肩を軽く叩いた。
 ゆっくりと少女の顔に戸惑いが浮かび、翡翠の瞳が揺らぐ。
 その様子を眺め、やがてユゥーディは軽く肩を竦めた。
「ま、いいでしょ。あんまり、突っ込まないでおくわ」
「充分突っ込んでいるよ」
 苦笑と共に告げられた否定の声を黙殺し、ユゥーディは少女に挑むように視線を送った。
「条件付きで引き受けてあげる」
「条件?」
「そう、条件」
 そして、ユゥーディは少女に笑いかける。
「私と剣の勝負で勝ったら、作ってあげるわ」
「剣の、勝負……」
「言っておくけど、ハンデはないわよ」
「ユゥーディ……」
 くすくすと笑い、ユゥーディは呆れている男に言った。
「私が男だって関係ないわよねェ、『魔道将軍』なら」
 その言葉に、男は嘆息するしかなかった。
 そして、ユゥーディは躊躇う少女を半ば無理やり店の奥に通した。
 廊下の突き当たりにある扉の向こうは均された空き地があった。
「――ここは?」
 少女の問いに答えのは何度か来たことのある男の方だった。
「修練場だよ。彼は優れた鍛冶師であると同時に剣士でもある。私も勝負を挑まれた口だ」
 そうしているうちに、ユゥーディは何種類かの武器が並んでいる壁際まで来ると少女に告げた。
「この中から好きなのを選んでちょうだい。どれも刃は潰してあるから、命の危険はないわよ。もっとも、打ち身くらいは覚悟してもらうけどね」
 そして、ユゥーディは自分専用の歪曲した剣を手に取って、少女が選ぶのを待つ。
 少女はゆっくりと武器を眺めた。
 細剣、大剣、短剣、長剣、細槍、大槍、斧。
 その中で少女が躊躇いがちに手に取ったのは長剣だった。ユゥーディに鞘を作って欲しいと言っている剣と同系の武器だ。
 しかし、少女は決めかねているのか、何度か持ち心地を確かめていた。
「そんなに不安?」
 不思議そうに男に問われ、少女は視線を長剣から上げた。
「確かに、魔法は使えないけどアウロスの腕なら私が保証するよ?」
「……そういうことではないの」
「え?」
 少女は長剣を止めて、その代わりに細剣を選び取る。
「私、殺し合いじゃない戦いなんてしたことがないから」
 小さく呟き、少女は唇を噛み締めた。そして、悲壮な決意さえ湛えて、ユゥーディと対するように修練場の中央に向かう。
「それでいいの?」
 細剣を持って現れた少女に、ユゥーディは確認した。
 鞘を望まれた剣は長剣。当然、同じ長剣を選ぶだろうと思っていた。
「これでいい」
 長剣より軽い細剣は殺傷能力が低い。その代わり、敏捷に動くことに関しては適している。
「ふぅん? あっそ」
 軽く肩を竦め、ユゥーディは表情を改める。
「じゃあ、始めましょうか」
 そして、二人は互いを見据え、構える。
 一瞬の静寂。
 先に動いたのはユゥーディだった。一瞬にして間合いを詰め、少女に向かって斬りつける。
「!」
 少女は咄嗟に一歩退き、細剣で彼の攻撃を防いだ。
 わずかに崩れた体勢を立て直し、ユゥーディは次の攻撃を繰り出す。
 そのどれもを少女は紙一重で防御した。だが、いつまでも反撃しようとしない。
 それに気づき、ユゥーディは小さく舌打ちした。
 少女の強さは刃を打ち合わせた最初で分かっていた。よほど場慣れしているのだろう。わざと攻撃の瞬間をずらしても、すぐに応じてくる。そして、少女の体は反撃の機会を見つけると即座に反応している。しかし、直後生じる躊躇いが少女の攻撃を封じていた。
「防御だけじゃ勝てないわよ!」
 言い放ち、ユゥーディは更に少女を攻め立てる。
 刃が重なり、鬩ぎ合う音が空気を震わした。
「それとも、その程度なの? 貴方の戦う理由は」
 その瞬間だった。
 少女の表情から感情が消える。否、翡翠の瞳に凝縮されたというべきか。
「!」
 ユゥーディは反射的に飛び退っていた。
 そして、気づく。自らの頬に一筋の赤い傷が走っていた。
「……私の戦う、理由か……」
 小さな呟きに、ユゥーディは双眸を瞠った。
 少女は無言で靴を脱ぎ捨てる。そして、裸足になり、ユゥーディをまっすぐに射抜くように見据えた。
「!」
 ユゥーディはぞくりと背筋が震えるのを感じた。
 強い輝きを宿した翡翠の瞳。
 眼が逸らせない。
 不意に、少女は静かに瞳を伏せる。
 次の瞬間、ユゥーディは息を呑み、咄嗟に腕を動かしていた。
 鳴り響く、鋭い金属音。
「な!?」
 少女の動きが見えなかった。
 受け止めることができたのは奇跡に等しい。
 ユゥーディの動揺を突くように、少女はふわりと腰を沈めた。そして、その細腕がかすかに動く。
「ッ!」
 ユゥーディは咄嗟に退こうとする。だが、少女の気迫に呑まれたのか体勢が崩れた。
 少女は、『魔道将軍』と呼ばれた少女はその隙を逃さなかった。
 鋭い追撃を繰り出したかと思うと、ユゥーディの手から剣を跳ね上げる。そのまま、刃を返し、彼の喉元に切っ先を突きつけた。
 緊張を孕んだ静寂が生まれる。



「――――私の負けよ」



 長い沈黙の後、ユゥーディは溜め息と一緒に敗北を認めた。
 少女は無言で剣を下ろす。
 それを見つめ、ユゥーディは痺れた手を振り、ふと自らの顔に触れて唇を歪めた。
「……全く、冗談じゃないわ。顔に傷なんて、女の子の風上におけないわよ」
 彼の呟きに少女は困惑を面に浮かべた。
 ユゥーディは髪で隠れていた少女の右頬に残る醜い傷を睨み、嘆かわしいとばかりに肩を落とした。
「それだけの力量があれば、自分の顔一つくらい守れるでしょうが」
 少女の翡翠の瞳が静かに煌いた。
「顔一つ?」
 喉の奥で笑い、少女はまっすぐにユゥーディを見据えた。
「この顔にどれほどの価値があるとでも?」
 しばらくして、ユゥーディは双眸を細めて頷いた。
「……ナルホドね。確かに、花なんてお嬢さんには必要ないってことか」
 花は彼女自身。
 それも磨き抜かれた宝石の花。
 その輝きで見る者を惹き付け、自らが砕け散ると同時に相手にも傷を与える。
「ま、これだけ危なっかしいと剣の一つや二つ持つべきかしらね」
 そして、ユゥーディはニッコリと笑いかけた。
「約束通り、鞘は作るわ」
 その言葉に、少女はかすかに表情を和らげた。そして、持っていた細剣をユゥーディに手渡した。
「やれやれ、思ったより時間がかかったな」
 勝負が終わるまで黙って見守っていた男が安堵の息を零しながら歩み寄ってくる。途中、少女が脱ぎ捨てた靴を拾った。
「ラトル」
「はい」
「ありがとう」
 素直に礼を言って、少女が靴を受け取った瞬間だった。
 男は軽々と少女を抱き上げた。
「ッ!?」
 絶句して固まる少女と対照的に男は何事もなかったようにユゥーディに尋ねた。
「それで、鞘はどれくらいで作れそうなんだ?」
「え、えぇと、そうねぇ。三週間、いえ二週間もあればできると思うわ」
 ユゥーディの答えに、男は頷いた。
「分かった。じゃあ、頼んだよ」
 そして、男はそのまま出口に向かって歩き出す。その拍子に少女が我に返った。
「ラトル!? お、下ろして!」
「何故?」
「何故、って、当然でしょう! 私は歩ける!」
「その痛んだ足で?」
「!?」
 翡翠の瞳を瞠る少女に、男はやや呆れた表情になる。
「履き慣れない靴が痛いなら素直に言えばいいのに、我慢するからだよ」
「治す、魔法で!」
「で、また、この靴を履いて痛める気なのか?」
 やんわりと穏やかに、しかし、拒むことのできない強い声音で男は笑いながら口を噤んだ少女に言った。
「諦めるんだね」
 その微笑みが心なしか嬉しそうに見えたのはユゥーディの気のせいではなかっただろう。
 そして、茫然と二人を見送ったユゥーディの顔に笑みが浮かび上がった。くすくすと心の底から楽しそうな笑い声が零れる。
「ナルホド、ホントのホントは蕾だった訳ね」



 咲き綻ぶ時を待つ花――その花の名は、『恋』。



FIN


Copyright (C) 2003 Syuki Ginduki. All rights reserved.

その花の名前は

14kb
短編

  鞘の条件

 銀月愁稀

番外編紹介:

 鍛冶師ユゥーディが鞘を作るため、少女に出した条件は剣の勝負に勝つことだった。シリアス半分、コメディ半分、隠し味はほんのりラブ?

注意事項:

年齢制限なし

本編連載中

本編注意事項なし

◇ ◇ ◇

本編:

希求

サイト名:

泡沫の城

[ 戻る ]