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愛里の詩









◇◆◇「ビー玉」◇◆◇
 

透明で大きなガラスの瓶に

割れないよう そっとビー玉を入れましょう


ビー玉は 透明なガラスの玉の中心に

色とりどりの小さな炎を揺らめかせ

ひっそりと息をひそめているようです

それはまるで 遠い日の 儚い思い出のように

涙に想いを閉じ込めて 結晶化された記憶のようです


青い炎は海への憧れ

黄色い炎は日溜まりの優しさ

緑の炎は萌える希望

赤い炎は焦がれる想い

水色の炎は空に流した涙


ひとつひとつに感謝を込めて

壊さないよう そっとビー玉を入れましょう


ビー玉でいっぱいになったガラスの瓶を

窓際の日当たりのいい場所に飾ったら

反射する細かい光が部屋中に広がるでしょう

夢のようにきらめいて 虹色の光の渦で包んでくれるでしょう

きらきらきらと輝いて 虚ろな心を明るく満たしてくれるでしょう


・・・だから

ひとつひとつに祈りを込めて

慈しむよう そっとビー玉を入れましょう





◇◆◇「パパへ」◇◆◇
 

ねぇ、パパ。 覚えていますか?

それはいつだったか 片腕で抱ける程幼い私を

病院の屋上に連れていってくれましたね。

息苦しさや自由に動けないもどかしさに

きっと泣いて愚図っていたのでしょうね。

「すぐに元気になれる魔法をかけてあげるよ。」

そう言って、パパが星空に手を掲げ

星をつかむように握ってから

私の目の前で握った手を開いてみせて

「ほぉら、お星様のかけらだよ。食べてごらん。」

と仰いましたね。

掌には小さな星がいっぱいあって

驚きながらも ひとつつまんで口に含んだ時

ひんやりとした甘さが広がりました。

ねぇ、パパ。 あれはきっと『こんぺいとう』。

だけど、ずっと信じて パパが小瓶に入れてくれたのを

お薬の後で一粒なめるのが 楽しみだったのです。

いつでも小さな夢を信じさせてくれたパパ。

「神様に召された魂は星になるんだよ。」

そう、仰ってましたね。

ねぇ、パパ。 パパの星はどれですか?

満天の星を仰ぐ時 いつもパパの星を探します。

そこから、きっと見守ってくれているのでしょう?

幼い心を抱えたまま 姿は大人へと成長し

人並みに暮らせる体と 人に合わせる術は手に入れたけれど

パパの優しさそのものの 『こんぺいとう』が今も好きです。

ねぇ、パパ。 今でも愛してくださいますか?

手を掲げてつかんだら パパの愛を掌いっぱいに

握りしめることができるでしょうか?

『こんぺいとう』、一粒口に含んでは

満天の星を眺めています。

ひんやりした甘さと共に パパの温もりを思い出します。
 
ねぇ、パパ。 ・・・ねぇ、パパ。





◇◆◇「柔らかく優しく」◇◆◇
 

柔らかく優しく 抱いてください

包むようにそっと 愛撫するように静かに

あなたの腕の中で ひとときの夢が見たいの

何も考えず 眠りたい


柔らかく優しく お話してください

染み込むように密やかに 歌うように甘く

あなたの鼓動を聞きながら あなたの海に漂うの

つかの間の命を 感じたい


柔らかく優しい あなたとの時間





◇◆◇「男は海」◇◆◇
 

飾らない力強さで 存在し

寡黙な心に 深い知識を蓄えて

穏やかに 包み込んでくれる

ひとたび怒れば 岩をも砕く荒々しさと

怒濤の激しさを 秘めながら

囁くような優しさで 触れてくる


あなたの海に 漕ぎ出せば

揺れて揺れて 夢の国

太陽に照らされ まばゆい波が

灼熱の激情となり 心と体を昇華する

荒れ狂う大波に 翻弄されて

あなたの海に沈んでいくの


あなたの海に 抱かれたい

あなたの波に たゆたって

あなたの鼓動を 潮騒と聞く

繰り返し打ち寄せる 大波小波

一本の梶だけを頼りに

羅針盤のない海に 漕ぎ出すの





◇◆◇「想いは千里を越え」◇◆◇
 

翼があったら 大空を舞い 遙か北の 広大な草原を目指すの

黄色く染まる大地は トウキビ畑か ヒマワリ畑か

麦わら帽子をかぶって 手を振るあなたを きっと見つけるの


ヒレがあったら 大海を泳ぎ 遙か北の 大漁旗の揺れる港を目指すの

煙たなびく磯辺には 浜焼きの香ばしい匂いが立ちこめる

捻り鉢巻きに長靴履いて 豪快に笑うあなたを きっと見つけるの


蹄があったら 大地を駆けて 遙か北の 豊穣の牧場を目指すの

遠く聞こえる怒濤は 荒海の呼び声か 群をなして走る駿馬か

湯気の立つかぼちゃを 自慢そうにくばるあなたを きっと見つけるの


翼折れても ヒレがボロボロになっても 蹄が割れても

きっと きっと あなたのもとに たどり着く


だから 愛里を 抱き締めて





◇◆◇「浸透する愛」◇◆◇
 

染み込んでくるの

心の襞の一枚一枚を覆うように

荒れた乾きも がさつく悲しみも

熱い痛みも むせぶ苦しみも

ひたひたと染み込んで

遠い意識の彼方へ


それは静かな旋律

大海原

あなたの愛





◇◆◇「猫の目」◇◆◇


綺麗な綺麗なガラスの目

ビー玉みたいにまあるい目

きらきら光って謎めいて

見ているようで見ていない

見てないようで見ている目

窓のお外が大好きで

じっと飽きずに眺めてる

時々虚空を見ている目

その目に何が映ってるの?

可愛い可愛いガラスの目





◇◆◇「寂しさが募る夜」◇◆◇


いつもより 人肌が恋しくて

あなたの寝顔を 思い出す

起こさないように そっと鼻にキスをした あの日

間近で ずっと あなたの寝顔を見つめてた

いつか 会えなくなる日が来ることを 感じていたから


あなたが重ねた掌に 自分の手を重ねてみても

温もりが違う 強さが違う 重さが違う


あなたが 優しく 触れて辿ったように

自分の顔を そっと 指でなぞってみても

震える唇で 動けなくなる

溢れる涙が 嗚咽に変わるから


サンタクロースはもう来ない

愛を捨てたあの日から

億万の星の 輝くひとつを

サンタクロースのソリと信じていた頃は もう戻らない


今夜も星は 愛し合う恋人達に 降りそそぐのに





◇◆◇「すれ違い」◇◆◇
 

信じていてもすれ違う時がある

思いが 言葉が 心が いつの間にかすれ違う

努力していてもすれ違う時がある

時間が 場所が 約束が どうしてもすれ違う

祈り続けていてもすれ違う時がある

願いが 希望が 未来が 少しずつすれ違う

・・・そうして恋は終わりの時を合わせ始めるのだろうか





◇◆◇「好きだから」◇◆◇
 

好きだから辛いのに

辛いから離れてしまうの?

好きだから苦しいのに

苦しいから諦めてしまうの?

好きだから悲しいのに

悲しいから嫌いになるの?

好きだから寂しいのに

寂しいから別れてしまうの?

好きだから涙がこぼれるのに

泣くことに疲れてまた泣くの?

こぼれる涙は何のため?

・・・好きだから・・・





◇◆◇「ジグソーパズル」◇◆◇
 

バラバラにちぎれた記憶のかけらを

つなぎ合わせて一枚の絵にしてみよう


ジグソーパズルのように小さなかけらを

確かめながら丹念に並べていく


途切れた記憶 見つからないかけら

入り込まないパーツを握りしめる


一枚の絵に完成させることが出来るのかな?

出来上がった絵は何を語りかけるんだろう


ジグソーパズルのような 思い出遊び





◇◆◇「砂山」◇◆◇
 

波打ち際に 砂で小さな山を作るの

大きな波が うち寄せる度に

砂はさらわれ 山は崩れる

でも また 小さな山を作り始める

何度も 何度も 繰り返し 繰り返し

心の住処を求めて 小さな山を作るの