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| <21> [お留守番] |
<21>お留守番 昭彦の肉塊が子宮を突き破らんばかりに激しく強く突き上げてくる。子猫はたまらず何度も仰け反って喘いだ。 「どや?ええかぁ?」 上下する昭彦の汗が飛び散る。 「あぅぅん・・・すごくぅ・・・いい・・・あぁぁぁ・・・」 昭彦の大きな男根は今でも奥まで突かれると鈍い痛みを伴って、意識を狂わせる。絶え間ない快感と熱さに身悶えて、むず痒いような感覚が指先まで痺れさせる。 「もう二度とあんな目には合わさんでぇ。」 昭彦は子猫が返事も返せないほどに感じて、すすり泣くように喘いでいるのを見て、繋がったまま体を起こすと、子猫の足をそれぞれ両脇に抱えこみ、腰を震わせるように小刻みに打ち付け始めた。肌と肌のぶつかる音にグチュグチュと湿った音が入り交じり、子猫のかすれて裏返った喘ぎ声と昭彦の時々うめき声の洩れる荒い息遣いが重なる。 「あ、あ、あ、あ・・あ・・ぁぁ、ぁぁあ、あ・・・」 体が揺れて声も揺れる。拉致された時に嗅がされた物と強烈な異臭とその後の咳とで頭痛と目眩をおこしていた子猫に、昭彦がまた何かの薬を飲ませてくれたが、そのせいか体の力がいつもより入らない。足も支えられなければゴムのようにブランブランと大きく揺れる。それでいて体の一点だけは感覚が鮮明なのだ。腹筋の力が入らないせいか締め付けがいつもよりないらしく、昭彦のモノが大きく抉るようにピストン運動を繰り返している。昭彦が腰を引くと内臓まで裏返るような感覚があって、それをまた一気に押し戻されているようだった。今夜の子猫はひたすらされるまま状態だった。しかも一点だけを集中して責められ続けている。子宮がとろけて昭彦の肉塊に張り付き、ひとつの完全体になってしまいそうに感じた。 「あ、あ、あ、・・・あき、ぃぃ、・・・あ、あ、ぁぁ、あ、・・・」 「こーゆーんもええやろ?」 「ぁぁ、あ、・・う、ん、・・・あ、あ、あ、・・・」 「いつもの締め付けキツゥーイのが最高やけどな。・・ククク・・・けど、これをすると女は自分が女やっちゅうことを思い知るねや。・・・どや?おまんこだけが熱いやろ?」 「・・・ぁ・・うん・・・」 「おしっこ、洩らしたなるやろ?」 「ぅぅ・・・あぅぅ・・・あ、あ、・・・ん・・・」 「我慢せんでええで。わしが飲んだるさかいな。」 子猫は眉を寄せ首を振った。 「ククク・・・我慢したかて無駄なこっちゃがな。・・チョロチョロしてきたら口つけて吸ったるで、心配せんでええ。」 子猫は掻き回され突き上げられ続けて、いきそうでいかないギリギリのところで感じ悶え続けた。子宮に直結した脳も一緒に掻き回されているように、何度も快感の渦に目眩を感じていた。と、突然クリトリスに熱い痛みが走る。 「よっしゃ。」 昭彦は急いで子猫から一端離れると、クリトリスを口に含んだ。初め出る感覚が分からなかったが、出始めると排尿感が駆け上がってきて、もう止まらなかった。昭彦は喉を鳴らして最後の一滴まで吸い上げるように飲み干した。 「いい味しとるで。」 昭彦は、両腕を顔の前で交差させて恥ずかしがる子猫の腕を優しく開いて、宥めるようにキスをした。 「なんも恥ずかしがることないて。」 それからまた子猫と繋がると、腰を高く上げるように羽交い締めにして、一気に最後の絶頂まで行き詰めた。グングン、ズンズンと頭に響くほど強く突かれ、子猫も一緒に登り詰め、叫んだ声が途切れると共に意識を失っていた。 カーテンの隙間から差し込む眩しい光で目を覚ました子猫は、昭彦の姿がないことに不安を感じた。布団にも温もりが残っていなかった。壁の時計を見ると、もう10時を回っていた。12時間近くも熟睡してしまってたようだ。目覚まし時計に目をやりながら、今日が日曜であることを思い出した。寝過ぎたせいか頭が重い。子猫は起きてリビングに行ってみた。カウンターにメモが置いてある。 『用足しに出掛ける。子猫の作った料理、うまかったで。残りは冷蔵庫にしまってあるから、起きたら温めて食べるように。帰りは遅くなるかも知れんが、今日は出掛けんと留守をしてなさい。誰が来ても部屋に入れるんやないで。愛してるよ。昭彦』 子猫はちょっとつまらなくて、ちょっと嬉しかった。料理を作ってたことも忘れてしまっていたのだ。でもそれを食べて貰えたことが嬉しかった。ただ、せっかくの日曜なのに昭彦と過ごせないのが寂しかった。とは言え仕方ないので、シャワーを浴びることにして、大きく伸びをした子猫は浴室へと向かった。 あまり食欲がなかった子猫は洗濯と掃除を先にすませてから、ゆっくりと食事をしていた。午後の時間をどう過ごそうかと思いを巡らせていた子猫は、昨日取材してきたものをレポートにまとめようと考えた時、メモ帳を組長のところに置いてきてしまったことを思い出した。組長にとってはざっと目を通せばすむはずである。あれを見れば子猫が警察署に行っていた理由は明らかだったし、特別困るような内容も話してないことはわかるだろう。でも、困る事って何?組長は「時が時だけに、」と言っていた。やめやめ、と子猫は首を振った。考えてもわかるはずがないし、昭彦は子猫の知るべきことではない、といつも言っていたのだ。そうは言ってもあのメモ帳は早く帰して貰わないと困ることではあった。 文集に載せる詩も考えなくちゃ、と子猫はベランダの白い木の椅子に座った。少し高台にあるこのマンションからは町並みがよく見えて、夜にはまたたく夜景が綺麗だった。子猫はいつも夜景を見ると、その灯る一つ一つに人それぞれの人生が映し出されているような不思議な感覚に包まれて、悲しいような切ない思いに寂寥感を感じていた。昼間見える街は薄雲が掛かってるように淀んだ空気に取り巻かれているようだった。いずれにしても子猫は街があまり好きではないと感じていた。昭彦も小さい頃少しだけ住んでいたという和歌浦の海の色が忘れられないと言う。いつかは海辺でのんびり暮らしたいと言っていた。子猫には海辺での暮らしは想像もつかなくて、昭彦が話してくれる思い出話がとても楽しかった。子猫もいつの日か昭彦と海辺で暮らせたらと思うのだった。 詩のイメージをつかみきれないまま、色々と想いを巡らせているところに電話がかかってきた。いそいでリビングに戻り電話に出ると昭彦だった。 「にゃぁーん。」 −「クックック。どないしたん?寂しかったんか?」 「寂しいよぉー。」 −「そうか、そうか。すまんかったな。どや?昼飯はもう喰ろうたんか?」 「起きたのが遅かったから、ブランチに昨日のを食べたの。」 −「ああ、あれは上手かったな。最近腕が上達してきたんやないか?」 「・・でも、昭彦、あれの味ちょっと手を加えたでしょう?」 −「ハハハ。バレちょったか。まぁ、ええやないか。」 「だってぇ、味見した時より美味しくなってたんだもん。」 −「子猫もぼちぼち上手くなるよって気にせんでええ。」 「うん。あ、昭彦、今夜帰れないの?メモに遅くなるってあったけどぉ・・」 −「そやなぁ・・・帰って抱いてやりたいとこやけど・・・まぁ、朝早う帰るよって、それまで辛抱しとるんやで?」 「そっかぁ・・わかったぁ・・・」 −「夕飯はどないする?出前取るんやないで。もう、知らん奴は信用したらあかん。」 「まだ残ってるからそれでいいよ。そんなに食欲ないし・・」 −「食事はちゃんとせなあかんで。ただでさえ貧血症なんやからな。」 「うん。昭彦もちゃんと食べてね。」 −「わしは大丈夫や。そしたら悪いがちょっとまだ忙しいで・・」 「あ、ねぇ!」 −「ん?」 「昨日のメモ帳ないと困るんだけど・・・」 −「ああ、そやったな。帰る時持ってくから心配ないで。」 「組長さん、納得してくれたでしょう?」 −「子猫の目を見た時から信用してたっちゅうてたわ。けど、わしが納得出来ん。・・まぁ、それもカタぁつけたから、もうええことや。」 「カタ?」 −「もう、済んだことや。ええな。」 「あ、うん。ごめんなさい。」 −「ほな、ええ子でおるんやで。外に出るんやないで?ええな?」 「はぁーい。」 子猫は昭彦が通話を切るのを確認してから受話器を置いた。いつもいっぱい愛されているのに、少し離れてるだけで寂しくなってしまう。小さな吐息とともに肩を落とすと、またベランダに戻っていった。 夜中の3時を過ぎた時、玄関の開く音がした。子猫は朝あれだけ寝坊しながら、退屈さでまた昼寝をしてしまい、夜になっても全然眠くならず、居間のソファーでまた詩作に挑戦していたのだった。玄関から居間への扉が開くのを待ちかまえて、昭彦が部屋に入ってくるなり、子猫は抱きついた。 「起きとったんか?」 昭彦は驚いた様子だったが、すぐに抱き締めてキスをしてくれた。でも、いつもより短めのキスで、子猫は拗ねたように唇を尖らせた。と、昭彦の後ろで影が動いた。子猫はビックリして昭彦にしがみついた。 「お邪魔します。子猫はん。」 マサが気まずそうに頭を下げた。 「あー、マサさん。ごめぇーん。気が付かなかったのぉ。」 「わてこそ、無粋ですまんこって。」 マサは口元に笑みを浮かべたが、とても笑顔には見えなかった。暗く沈んだ目と引きつったような頬が表情を固くしていた。 「正次さんもいるの?」 子猫がマサの後ろを見ながら言うと、 「アホなことを。二度とその名前は口に出すんやないで。」 と、昭彦が怒ったように言った。 「え・・・」 「信頼を裏切るのはいっちゃん最低の行為や。」 「それは・・・だって・・・きっと仕方なかったんだろうし・・・」 「仕方ないでは済まんこともあるんや。もう、あいつはここへは来ん。名前を聞くだけでも虫ずが走るわい。ええか?何べんも言わすんやない。もう、二度とあいつのことは口に出すんやないで。ええな?わかったか?」 昭彦はいつもよりキツイ言い方をしていた。子猫は、 「うん。・・ごめんなさい。」 と言って、昭彦の胸に頭を押しつけた。 「わかればええんや。」 昭彦は優しい笑顔に戻って子猫を抱き締め、背中をさすりながら髪や頬にキスをしてくれた。 「けど、何で起きとったんや?遅い時は先に寝ぇ言うといたやろ?」 「うん。お昼寝しちゃったから寝れなかったんだもん。」 「ほいでも寝とかんと時差が出来るで。」 昭彦は苦笑して言ってから、 「ちょっと寝室で待っといてや。まだ少し用事が残っちょるで。直、済むこっちゃで、そしたら思いっきり抱いちゃるよってな。」 と、キスをしながら子猫を抱き上げて、寝室へと連れていった。 「あ・・マサさん、お休みなさい。」 子猫は昭彦の肩越しに挨拶をした。マサは手をちょっとあげて応えてくれたが、表情はやはり重く沈んだままだった。 この日以来(というか、正確には前日だったが)、子猫は正次の姿を見ることはなかった。かなり後になってから、だいたいの事情を知ることになった。そして、すでにこの夜には正次は生きてなかったという事実に愕然とした。昭彦が殺ったのではなく、昭彦の怒りを収める為にそうした落とし前がつけられたらしい。正次の遺体は見つかることのないように処理されたそうで、殺人として立証することは難しいらしい。更にそうした落とし前をつけてでも、昭彦の怒りを静めなければならないほど、昭彦が辞めたはずの組にとって、欠かせない存在であることも子猫には脅威だった。多分、昭彦の中国との繋がりと、それによって取引される未認可の薬が、組の収益にはかかせないものだったのだろう、と後々になってから理解した子猫だったが、この頃の子猫には想像も及ばないことだった。 そして、昭彦があれほど嫌っていた世界に戻る結果になったのが、子猫との生活をより豊かに、より強固にする為だったというのも、辛い事実だった。だが、そのことも後になって知ったことで、当時の子猫にはどうすることも出来なかったことではあるが。 無知であることも、時には犯罪なのかも知れない。と思い知った一件だった。 |
| <22> [レポート] |
<22>レポート 奇妙な光景だった。短いスェットパンツを履いて、ほとんど肌を露わにした総入れ墨の男が、短銃を分解して念入りな手入れをしている。その同じテーブルではクッションを座布団代わりにして座り込んでいる16歳の少女が、両手足と首に鈴のついた赤いベルトをつけただけの全裸状態でレポートを真剣に書いている。さっきまで愛し合っていたばかりの二人で、少女の白い体の所々には赤い痣のような充血痕がある。注入され満たされた愛のエキスはシャワーでは流しきれずにじわじわと蜜と混ざっておりてくるので、クッションに直接座るのが抵抗があり、間にタオルを敷いている。少女は、白銀色のシッポが気になるらしく、モジモジと微妙に腰を動かしている。このシッポはアナルに固定されていて、毛皮に繋がった先にあるゴム状のものが中で膨張させられるのでかなりの圧迫感があった。少女がレポートにシャーペンで書き込んだり、特に消しゴムで消す時には、鈴が可愛い音をせわしくたてていた。そして、その書いているレポートが『青少年犯罪への警鐘』という犯罪を防ごう的内容なのだから、この光景はまさに異様なものだったろう。それでも、本人はいたって真剣に、取材したメモ帳を見ながらまとめ上げていた。 一度分解したものを組み立て直し、しばらく手に持って感触を確かめていた昭彦は、書斎になっている部屋に短銃をしまってくると、ため息をつきながらドサッとソファーに座った。子猫が、ん?と顔を上げると、昭彦の胡乱の眼差しが向けられていた。 「なぁにぃ?まだ、怒ってるのぉ?」 子猫は眉を寄せて睨んだ。昭彦は、子猫が5月の連休中に部活動の為に高校へ行かなければならないと聞いてから、ずっと機嫌が悪いのだ。 「何やねん。せっかく別荘借りてやったっちゅうに。目の前に海が見えてる別荘やで。潮騒を聞きながら抱かれたいっちゅうたんは誰やねん?海鳴りを子守歌に眠りたいっちゅうとったやないかい。何で行けへんのや?」 「行けないって言ってないじゃん。」 「アホくさ。二日も潰れたら、行って帰るようやがな。」 「だってぇ・・・自分だけのことなら、もちろんそっちを最優先にしたけどぉ・・・相手のあることだとぉ、やっぱ任された責任は果たさないといけないでしょう?」 「それはそうや。どんな世界にも果たさなならん責任はある。けど、無茶苦茶な言い分を聞いてやる義務はないで。何やねん、あの圭子っちゅうおなごは?連休にまでそんな責任持ち込みよってからに。自分がモテへんからデートさせへんようにしとんやないか?」 「そんなことないよぉ・・・圭子だってモテるよぉ。だって美人じゃん。」 「わしの好みやない。」 「クスッ。良かったぁー。好みだったら泣いちゃう。」 「アホ。わしは子猫がええちゅうとるやろ。言葉のあやくらいで一々妬くもんやないで。」 「うん。」 子猫は立ち上がって、ソファーに座っている昭彦の前に行った。両肩を少し後ろに反らし、弾んで揺れる豊かな二つの膨らみの先を誇示するように突き出した。昭彦の厭世的な冷めた目が熱っぽく潤んでくる。自然に手が胸の膨らみを包み込む。掌にあまる膨らみの重さを楽しむようにゆっくりと撫で、親指で乳首を軽く擦る。子猫は軽く瞼を閉じると上を向いて熱い吐息をついた。それから、膝を滑らせるようにして昭彦の両股にまたがると、腰を浮かせたまま左右に揺らし、垂れ下がるシッポで昭彦の足をくすぐった。今でもアナルの圧迫感は鈍い痛みを伴って苦しかったので、シッポそのものは好きにはなれなかったが、時々シッポの毛のヒンヤリとした滑らかな感触で肌をくすぐるようにして遊ぶくらいには慣れてきていた。 「また誘っちょんのか?」 昭彦は苦笑して、子猫を抱き締めると唇を重ね熱い舌を絡めてきた。子猫も昭彦の膝と膝の間にシッポを垂らしてお腹を密着するように座ってキスに応えた。子猫の腹部に、スェットを押し上げて固く反り返る昭彦の一物があたっている。舌を絡め合わせながら、腹部を押しつけたまま腰を艶めかしく動かし、一層押し返すようにそそり立つモノを擦っていく。 「っぁぁ・・・たまらん・・・ホンマにエライ子やで・・・」 キスの合間合間に吐息と共に熱く呟く。 「なぁんも知らんような可愛い顔してぇ・・・甘え方もよぉ心得ちょるで・・・」 「・・・いけない?」 子猫は小首を傾げて拗ねた眼差しで上目遣いに昭彦を見る。 「わしだけになら何ぼでも甘えたらええ。・・・あぁ・・・けど、心配でたまらんわ。・・・子猫がその気になったら落とせん男はおらんやろな。」 「だってぇ・・・その気にならないもん。関係ないじゃん?」 子猫はクスクスと笑って、昭彦の肩の赤い牡丹に唇を這わせる。 「猫はぁ・・・この赤いお花が大好きなのぉ。ふふ。」 「そないなこと言うと獅子が妬きよるでぇ。」 「妬くぅ?」 「時々なぁ、背中の獅子がわしにコソッと言いよんねん。」 「えぇ?・・何てぇ?」 子猫は昭彦の首筋に舌を這わせしゃぶるようにキスを繰り返しながら、挑発的な笑い声を小さく洩らしている。腰は微妙な動きで昭彦を刺激し続けている。 「わしも赤うなったら、あの牡丹の蜜を舐めにくる白猫を抱けるやろか?てな。」 子猫は喉を震わせて笑った。昭彦の喉仏から顎へと更にしゃぶっていき、再び唇を重ねて舌を絡める。チリリチリリと鈴を鳴らして、しなるように動く子猫は白猫か白蛇のような妖しさで、昭彦の言葉を時々途切れさせる。 「・・・それでぇ?」 昭彦の脇腹から腹部、胸、肩へとあがっていき、また下腹部まで、くすぐるように指先を滑らせ撫でる。 「あぁぁぁ・・・さっき絞り出すだけ出したと思うたのに・・・また先っぽが濡れてきよるで。」 昭彦は片腕で子猫の腰を抱くと、少し腰を浮かせて履いていたスェットをづり下げた。子猫も腰を上げて、昭彦が肉棒の先を花園の入り口に押し込むのを助けた。アナルに挿入されているゴムの異物による後ろからの圧迫で、入り口が狭くなっているので無理矢理メリ込ませられた。子猫は泣きそうな呻きをあげながら、腰を下げていく。やっと昭彦の根元までをスッポリと膣に納めると、しばらく痛みを我慢するのに動かずしがみついていた。昭彦は苦しげな表情で顔を肩に擦りつけてる子猫を愛しそうに抱き締め、背中をさすってやっていた。 「ええ子や。ちゃぁーんと泣かずに出来るようになったやろ?」 「・・・ん・・・でも・・・痛いぃ・・・」 子猫の声は小さく弱々しかった。ビクビクと膣とアナルが痙攣する。両方の圧迫に泣きたくなるのは今も変わらない。でも、昭彦が子猫のそうした姿を気に入ってることも知っていた。 「どや?わしと獅子の両方にハメられちょる気分にならんか?」 「・・・ぅぅ・・わかんない・・・」 「アナルかて子猫の体の一部やがな。わしはお前の何もかも全部を愛したいんや。勘違いしたらあかんで。わしはサディストやない。惚れた女を苦しめて楽しむ趣味はないんや。ましてお前の綺麗な肌を傷つけようやなんて思うてへん。・・けどな、わしの為に辛いのも懸命に我慢してくれる姿が可愛いてならんのや。・・それに慣れさえすれば今以上に感じてたまらんようになる。ほれ。ちょっとっつ動いてみ。」 「・・・ぅん・・・」 子猫は昭彦の肩に腕を回し、ゆっくりと自分で腰を上下させ始めた。 「・・・ぅぅぅぅ・・ぅぅ・・・」 密着する肉襞の中を強引に動かす。アナルの異物が存在感を誇張するように感じられて、痛さが増してくる。喘ぎながら痛みを堪えて動き続ける子猫を、昭彦は女神像を礼拝する神父のような恭しさで見つめ続ける。そして時折、悦にいったように目を閉じ、天を仰いで熱い息を吐く。 「あぁぁ・・・最高やなぁ・・・ホンマええおまんこやでぇ・・・」 子猫は昭彦の甘い囁きに励まされ、更に大きく体を上下させていく。すでに痛みも何もかもを受け入れて、その先にある至上の快楽へと向かっていた。 「あん、あん、・・・ぁあん、あん・・・」 胸も大きく揺れて跳ね、5つの鈴が鳴り続けている。 「あ、ああぁぁ、あぁぁぁぁ、・・・んん、ぁぁ・・・ああああああーーっ・・・イクゥーーッッ」 ひとしきり大きく叫んで仰け反った子猫が、ぐったりと昭彦の腕の中に崩れ落ちた。目を閉じて荒い息遣いの子猫を、昭彦は優しく抱き締めてキスをする。 「よしよし。よう出来たで。」 「・・・うん。」 「そしたら、さっきの続きを教えたるわ。」 「・・・ん?」 「アホさらせ!わしの女や!手ぇ出すんやない!・・っちゅうたったわ。クックック。」 「・・・んー・・・?」 「それで今も背中で羨ましそうに様子を伺っちょるんや。」 「・・・獅子さん・・可哀想・・・」 「何言うちょるん。子猫はわしの彫り物に惚れちょるんか、わしに惚れちょるんか、どっちやねん?」 「それはぁ・・・昭彦だけどぉ・・・」 「そやろ?そしたら子猫も高校のことより、わしとの時間を大切にせい。ええな?」 「・・・うん。」 子猫は昭彦とつながったまま、肩にもたれかかって、混乱する頭の中を整理していた。昭彦は時々こうした謎かけをして、子猫を試すようにからかうのである。昭彦の背中に彫られた獅子の話は冗談だと思っていた。が、そう言われて考えると、それはつまり・・ 『わしがやくざなのは背負ってる以上仕方ないことやが、子猫を愛してる気持ちの方が大事なんや。子猫も高校生であるのはわかっているが、それに囚われて大事なものを見失うようではあかんで。』 と言いたかったのかな、と漠然と納得した。 子猫がまだぼんやりと思いを巡らせている時、電話がかかってきた。昭彦は子猫から離れると大股に歩いて電話に出た。まだ固いままのモノを一気に抜かれて、子猫の蜜壺は襞を震わせて痙攣した。子猫はお腹を抱えるようにしてソファーからずり降りると、さっき座っていたクッションまで這っていき、クッションに抱きつくようにして横になった。昭彦が電話の相手に話す声が次第に遠退いていく。 「またこんな格好でうたた寝しちょる。・・体温が低めなんやから注意せなあかんやろ?ホンマに赤ん坊並みに手ぇかかる子やわ。」 文句を言いながら子猫を抱き起こした昭彦だったが、見つめる眼差しは優しく笑いを浮かべていた。 「ん・・だってぇ・・・」 「わしのおらん時はちゃんと服着ちょらなあかんで。買うたったのがいっぱいあるやろ?」 「うん。・・・出掛けるの?」 「ちょっと行かなならんのや。一度戻るで、そしたら食事に出よう。戻る前に電話する。」 「うん。」 「それまで何が食べたいか考えとき。」 「はーい。」 「寝るんやったら、ちゃんとベッドで布団掛けて寝るんやで。」 「うん、わかった。」 昭彦は子猫に服を着せながら、あれこれと指示を残して、出掛けていった。子猫は怠さを感じていたが、レポートを仕上げなければならないことを思い出して、続きをすることにした。けれど、愛された余韻の残る火照った瞳にはメモ帳の字が色褪せて映った。自分のしている生活は犯罪なのだろうか、と思いがよぎる。けれど、昭彦ほど真剣に愛してくれる人はいない。生き方のヘタな人が犯罪者になるのかも知れない、という考えが浮かんできて、胸が切なく痛くなった。そして、誰が昭彦を非難しても、自分だけは昭彦の理解者でいたい、と祈るような気持ちになっていた。罪を憎んで人を憎まず。どこかにそんな言葉があったな、と思いながら子猫はまた眠さに襲われてきた。昭彦に言われた言葉を思い出し、目眩を感じながら立ち上がると、やっとの思いでベッドに行って倒れ込んだ。 |
| <23> [化粧] |
<23>化粧 昭彦からの電話で目を覚ました子猫は、怠い体をやっと起こして出掛ける支度を始めた。子猫が食欲がない、と言うので、昭彦は中国の薬膳料理にしよう、と言った。せっかくだから、マサのお土産で、最近仕立て上がったばかりのチャイナドレスを着るように、と言われ、子猫は鏡が扉になっているクローゼットから取りだした。 チャイナドレスに着替えた子猫は、鏡に映る姿を色々な向きで眺めてみた。体のラインが出る服だけに綺麗に見える姿勢を意識しながらチェックした。その結果、体型的にはまんざらでもないと自分でも思ったが、肩に少しかかるストレートの髪と化粧しない顔が子供すぎてバランスが悪いように思えた。ハイネックのチャイナドレスにはやはりアップにした髪型が合う気がして、ドレッサーの前で四苦八苦の末、何とかまとめあげてみた。髪型を大人っぽくすると益々顔の幼さが浮き上がるようで、鏡の前であれこれ表情を作ってみたが、お気に入りの位置が決まらなかった。それで、子猫はまだほとんど使ってない化粧品を出して、友達から聞いていたうろ覚えの順番で化粧を始めた。 前髪をピンでよけておいて、化粧水で肌を整え、下地を塗り、次にクリームファンデーション、その上に粉のファンデーション。肌に合わせて買ったつもりだったが、少し肌より濃い色をしていた。が、体調が良くなかったのでいつもより青白かったせいかも知れない。眉の上をアイブローペンシルでなぞり、赤みがかった紫のシャドウを瞼の上にのせる。アイラインとマスカラは普通に黒で目元をはっきりさせた。ハイライトで陰影をつけ、頬をほんのり上気したように赤くする。服に負けないように赤みの強い口紅をリップブラシで丁寧に書き上げて完成。 前髪を戻して整えた顔を見て、子猫は思わずニッコリと笑った。前に一度化粧して昭彦に見せた時は冗談と思ったのか、盛大に笑われてしまい、その後で、わざわざブスになる為に化粧しているようなものだ、と叱られた。子猫が欲しがれば何でも買ってくれる昭彦だったし、化粧品もあの色がいい、この色は似合わない、と意見して買ってくれているのに、子猫が実際に化粧するのはむしろ嫌がっていた。それでずっと使う機会がないまましまってあった。が、今回の化粧にはかなり自信があった。特に目元の化粧がバッチリきまっていることで、子猫はかなり有頂天になっていた。これなら二十歳くらいに見えるかも知れない。何かいつもより色っぽい。本を見て研究した甲斐があったじゃん。としばらく自分で見とれてしまっていた。 お化粧が満足いくように出来ると気分も良くなった気がしてきた。それで昭彦が戻ってきた時には白檀の扇子でポーズを決めて迎えた。が、それを見て昭彦はまたいきなり笑い出した。 「昭彦ぉ・・何で笑うのぉ?・・・これでも一生懸命に頑張ったんだからぁ・・」 「クックック。そうかぁ。やぁ、可愛いでぇ。」 「・・何か嘘くさい・・・また、おかしな化粧してるって思ってる?」 「いや。前よりはましになったで。なかなか綺麗やないか。」 「うぅ・・・じゃぁ何で笑うのぉ?」 「あんまり可愛すぎるから人形かと思うたんや。」 「ホントにぃ?」 「ハンマやって。ほな、遅くなるで、出掛けよか?」 「うん・・・」 「ちょっとは調子良くなったようやないか?・・けど、無理はせんとき。ええな?」 「うん。大丈夫。」 子猫はやっと満足そうに笑った。そしてちょっとおねだりするように唇を尖らせた。昭彦は苦笑して、 「キスは化粧落とすまでお預けや。」 と言った。 「えぇ・・・何でぇ?・・・やっぱ変なんだぁ・・・」 「ちゃうちゃう。わしは口紅の味が嫌いなんや。」 「あ・・・そっかぁ・・・」 「よく口紅付けたまま食事する女がおるけど、信じられんわ。あれやったら、どない腕のええ板前の料理かて、みんなマズゥなりそうやで。そんな味もわからんような女が料理の講釈をタレるのを見るとムカついてくるんねや。」 「・・・ごめんなさい・・・」 「けど、子猫はわしの為に化粧してくれたんやからええて。食事する時、拭き取ってから食べればええこっちゃでな。・・頑張って背伸びしちょるのが可愛くて笑うたんや。」 「そっか・・うん、わかった。」 子猫は昭彦の腕にしがみついた。 「あ、それとな・・」 昭彦は子猫の額を押し上げて顔を見ながら苦笑して言った。 「お前の癖、すぐ顔を擦りつけてくるやろ?あれもお預けやで。」 「う・・・」 「いつもの調子でスリスリされたら、スーツが台無しになってまうがな。」 「・・・ぁーぃ・・・」 結局叱られたような気分になって、子猫は気落ちしてため息をついた。と、昭彦が軽くだったが、お預けと言っていたキスをしてくれた。そして、 「化粧っちゅうんはな、それ自体の出来不出来もあるし、似合う似合わんもあるけどな、化粧してる自分を忘れへん心の持ち方が必要なんやで。むやみに男に寄りかかれば服を汚すし、口に付いたものを手の甲で無神経に拭こうとすれば化粧は崩れて手も汚れる。常に身だしなみを意識する女が初めて化粧が似合う女っちゅうんや。せやから、化粧した女をええ女て感じるんや。いくら上手い化粧したかて、それだけの神経払えんようではあかんのやで。・・・子猫はまだ気持ちがついていかへんやろ?甘えん坊のうちは化粧しない方が可愛いで。そしたらいつでも抱っこしてキスしてやれるしな。ん?」 と言って、拗ねた顔の子猫の頬に軽いキスをした。 マンションの玄関に行くと、ボディーも窓も黒で覆われた大きな車が停まっていた。車に近付くと助手席からスーツに黒いサングラスの男が降りて、後ろのドアを開けた。昭彦は戸惑う子猫の肩を押すようにして車に乗り込んだ。ドアを閉めて、また助手席に乗り込んだ男は一度サングラスをはずして後ろを振り返ると、 「子猫さん、先日は失礼しました。今度、ドクターの補佐をすることになりました、石橋です。運転してるのは橋本という駆け出しですが、車の運転はライセンスを持ってますんで信頼出来る奴です。以後、よろしくお願いします。」 とニコリともしない顔で言った。 「え・・あ、はい。よろしくお願いします。」 子猫は突然のことに焦りながら挨拶を返した。男はすぐにサングラスをかけ直して前を向いてしまったが、そう言えば組長のとこで見たような気がした。 「今度からこの車が足代わりや。迎えに行く時もあるやろから顔くらいは覚えとき。」 「え?・・学校に?」 「そうや。」 昭彦の言葉に子猫は目を丸くした。それから、首を振って、 「ダメだよぉ・・・学校に見咎められたらヤバイもん。もう迎えとかには来ないでぇ。」 と哀願した。 「そやかて最近帰りが遅いがな。夜道を一人で歩かしたないんや。」 「ちゃんと明るい内に帰るようにするからぁ・・・」 「体調も崩しやすいから心配なんや。出来れば毎日送り迎えさせたいとこやがなぁ、さすがにそれでは伝統校だけに問題にされかねんし・・余程の時っちゅうこっちゃがな。そう、気にせんでええ。」 「・・・うん。」 子猫は不承不承頷いた。これだったら正次さんのスポーツカーの方がましだった、と内心思ったものの、それは口に出さない約束だったので、言いそうになった言葉を飲み込んだ。 大きなビルの前で車が停まった。昭彦と子猫の他に石橋も一緒に降りてきて後に従った。建物の一階は広いホールとラウンジのようになっていて、ゆったりとしたソファーがいくつも並んでいた。その一つからマサが立ち上がって近付いてきた。マサの後ろにも二人の男が従っていた。マンションで見るマサと違って、外で見るマサからは貫禄と威圧感が立ち上っているようだった。が、それでも子猫がチャイナドレスを着て来たのを嬉しそうに見ていた。 「これはまた、よぉ似合いなはりまんなぁ。」 「ホント?ありがとぉー!」 子猫はクルクルッと回って見せ、手に持っていた白檀の扇子を広げてポーズを作って見せた。マサは更に嬉しそうな笑顔になって、うんうんと頷いた。 「そないな人形も売ってましたなぁ。子猫はん、そっくりでんがな。いや、子猫はんの方がもっと綺麗やな。それに今夜はいつもより大人っぽいんとちゃいまっか?」 「ホント、ホント?・・わぁーい。お化粧頑張った甲斐があるぅ。」 「けど、話し方はいつものまんま、お子ちゃまでんな。ヘッヘッヘ。」 「あぅ・・・」 子猫がプッと頬を膨らませてマサを睨むのを昭彦はクスクス笑って眺めていた。今夜、昭彦がチャイナドレスを着るように言った訳がわかった。マサが食事に同席するから、見せたかったのだろう。冷酷と言われる昭彦だが、子猫にはそんなさり気ない優しさを持っている昭彦が大好きだった。 「頭、そろそろ行きませんと・・」 マサについていた男が小声で言った。 「そやな。・・ドクター、おやっさんは先に部屋で待っとりますで。」 「そうか。ほな、あまり待たせる訳にはいかんな。」 おやっさん、と聞いて子猫は息を飲んだ。足がすくむ。 「大丈夫や。この前のことをちゃんと謝りたいっちゅうてたから、ほな一度食事でも一緒にしましょう、っちゅうことになったんや。」 「・・・そうなの・・・」 子猫は肩を抱かれて促されたので、仕方なく男達に囲まれてエレベーターへと歩き始めた。 中華料理と言っても料亭のような趣きがある豪華な店構えで、個別の部屋も用意されていた。その中の一つに案内されて行くと、組長がすでに丸い席についていた。子猫が頭を下げて挨拶をすると、笑顔で立ち上がって子猫のそばに歩み寄った。 「やぁやぁ、よく来てくれたね。この前は怖い思いをさせてしまったからねぇ、ずっと気になっていたんだよ。」 「いえ、誤解を招くことをした猫もいけなかったです。いくら部活動でも断ればよかったのに。すみませんでした。」 子猫はそう言って、もう一度頭を下げた。 「いやいや。確認しなかったこちら側の不注意や。」 組長は子猫の腕にそっと触れて撫でた。が、昭彦が咳払いをすると、苦笑してすぐに手を引いた。そして皆に席に着くよう言った。 「お嬢さんの調子が良くないと聞いたから、料理はさっぱりと消化のいいものを頼んでおいたんだ。口に合うといいがな。」 「あ・・すみません。お気を使わせちゃって。」 子猫は座っても緊張したままで、また頭を下げた。 「そう緊張せんで・・くつろいで話して貰えないかな?ハハハ。」 「・・・すみません・・・」 「こらこら。もう、その言葉はなしにしよう。ハハ。それにしても今夜は一段と綺麗やなぁ。」 「そうですか?ありがとうございます。」 子猫はちょっと上目遣いに組長を見て、口元に笑みをこぼした。 「その服もよぉ似合うとるし、また化粧した顔も綺麗やで。」 「この服はマサさんから頂いたんです。うふっ。」 「そない誉めんといて貰えますか?服のことはともかく、化粧はまだ早いて言うたったとこなもんで。」 「ほぅ・・・なかなか似合うとるがな。」 「中身がまるっきしの子供やからあきまへん。赤ん坊がよだれだらけの手と顔で抱きついてくるようなもんですわ。」 「そこがまた可愛いてたまらんのやろ?そないな顔しとるで?」 昭彦と話す組長は大阪弁が強くなる。普段はむしろ関東の言葉を使っているように感じたが、感情が高ぶってる時にも大阪弁になるようだった。昭彦やマサと同じように元は関西圏の出身なのだろうと推察出来た。 料理が運ばれ始めると子猫は食べることに集中することにした。食欲自体はなく、運ぶ箸もゆっくりだったが、食べていればそう会話に入らないですむと思ったからだ。組長は時々子猫に話しかけてきたが、もともと住む世界が違っているのだから、発展するような話題は見つからなかった。 「そう言えば、あのメモ帳は面白かったなぁ。」 「面白い・・ですか?」 「まぁ、ほとんどは綺麗事やが、少年院経験者の手記なんて本もあるんやな。どこまで本音かわからんし、ええ事書いてるのを抜粋したんやろが、それやったら直接ドクターに聞けば早かったかも知れんな。」 「そんなぁ・・・昭彦さんの話は出せないですぅ。」 「いずれはわしの跡継ぎの嫁になるんやから、表面だけの綺麗事に騙されんと、事実を見極める目も必要になるやろ。」 「え・・・」 「おやっさん。それはまだ決まった訳やないし、子猫には言うてませんのや。」 「何もったいつけとんのや?組に復帰した目出度い席やがな。」 復帰?子猫は耳を疑った。昭彦はあれだけやくざが嫌いだと言っていたのだ。子猫は昭彦の横顔を青ざめた顔で見た。 「組っちゅう言い方はもうやめましょうや。東竜会総合商事っちゅう会社組織になったことやし、おやっさんは会長、ドクターは常務、わてが子会社の社長っちゅうことでんな。」 マサが気まずさを払拭するように笑って言った。 「おお、そっやったな。言い慣れんと戸惑うでな。ハハハ。ようやっと家も会社組織になれたんやった。これもドクター、いや、常務のお陰やな。」 「これまでの事業を整理してまとめただけですよって、大したことやありません。けど、社団法人になれば法律が守ってくれまっさかい、警察もおいそれとは手が出せんようになります。」 「ホンマに頼りになるわ。戻って貰うて助かったで。」 子猫は組長、ではなく会長とマサと昭彦を交互に見ていた。同席している他の組員、ではなく社員は寡黙に食べることに専念していた。子猫はもう最後の食欲も消え去っていて箸を動かすことが出来なくなり、うつむいて小さくため息をついた。 「やっぱり調子悪いみたいやなぁ。」 昭彦の優しい声が子猫に向けられ、手がそっと腕に触れた。子猫は力なく昭彦をちょっと見たがまたすぐにうつむいた。 「会社やなんのと言うたわてがあきまへんでしたな。子猫はんには訳わからんこっちゃで、つまらなくなってもうたんでっしゃろ?」 マサの言葉に子猫が顔をあげると、マサは凄味のある顔に暖かい笑顔を浮かべていた。 「そうかそうか。いや、そうやったな。どうも子供がおらんと接し方がわからんでな。これが彼女やったらまた違う話も出来るんやけどなぁ。」 会長は冗談ぽく言って笑った。それから、 「女房は三度替えたし囲った女も十人は下らんが、子供だけは出来へんかった。ちゅうことはわしがあかんのやろな。それで、つい、わしの後を決めとかんと、て思ってまうのや。・・まぁ、小さい組・・会社やが社員数百人を放っとけんやろ。ドクターが力になってくれるて言うてくれたんで、ホンマにホッとしとるとこや。」 「けど、跡目の話はまだにしとくれやっさ。それに子猫にはホンマに何も話してないんですわ。高校生のうちから大人の話に首突っ込んでも困りますさかい。」 「そうかぁ、本気で大事にしとるんやなぁ。これが仕事がらみなら相手が未成年だろうが高校生だろうが容赦ないのになぁ。」 「おやっさん・・」 昭彦の声が一段低くなった。 「おお、そやった。仕事の話はもぉなしやな。ハハハ・・」 何となく気まずい空気が流れていた。子猫にも昭彦が組織に戻ったという事実がショックだったし、子猫がショックを受けていることで昭彦が動揺しているのを周囲も感じ取っていた。 「・・・昭彦さんがどんなお仕事をしているのか・・知らなくていいです。ホントは知るべきかも知れないけど・・昭彦さんがいいって言ってくれるなら、猫はこのまま昭彦さんだけが見えるとこにいます。お仕事のお仲間の方には不義理をしてしまうと思いますが、どうかこのままでいさせて下さい。お願いします。」 子猫は声を震わせながら精一杯に言って、頭を下げた。少しの沈黙の後、昭彦がフッと笑いを漏らした。途端に気まずくなっていた空気の緊張が解けたようだった。 それから子猫はほとんど話すことなく、デザートのオーギョーチや杏仁豆腐等の喉越しのいい物をゆっくり食べていた。会長や昭彦、マサや同席の男達は、そんな子猫を存在として認めつつも敢えて関心を示さないといった態度で雑談の華を咲かせていた。子猫も聞いてるようで聞いてなく、聞いてないようでいて、時々昭彦が取り分けてやったり飲み物がいらないかと聞いてくるのにだけはしっかりと答えていた。 帰り際、会長は昭彦に、 「ええ子やないか。大事にしたれや。」 と言ってくれた。昭彦も、 「わしの命やと思うちょります。」 と答えた。子猫は受け止めきれない現実の重さを感じていたが、それでも昭彦を信じてついていけばいい、と思うのだった。 帰りの車の中で昭彦が子猫に言った。 「今夜の子猫はホンマにええ女やったで。・・化粧もよぉ似合うてた。」 もっとも、それを聞いた子猫が嬉しさのあまり、いつもの癖で顔を擦りつけて甘えて、昭彦のスーツを台無しにしなかったら、本物のいい女に近付けたはずだったが、アホォ!と苦笑まじりに叱る昭彦に、当分は化粧禁止を言い渡されてしまった。 |
| <24> [海辺の別荘へ] |
<24>海辺の別荘へ 軽快なリズムのCDをかけてご機嫌の子猫は、高速の防音壁が途切れて見えた景色に窓を全開にして叫んだ。 「海ぃーーー!!」 後ろを振り返って昭彦に、 「海だよぉー!綺麗ー!」 と満面の笑みで言う。昭彦はわかってる、と言いたげに苦笑を漏らして頷いた。 「そない顔出したら危ないやろ。海は逃げたりせぇへん。ちゃんとおとなしく座っとらんかい。」 「はーい。」 子猫は全開の窓の外を眺めたまま、体を引いて昭彦にもたれかかった。昭彦の腕が背中から脇へと移動して子猫を抱くようにした。髪にキスをした唇がこめかみから頬へとなぞるように滑る。子猫は少し顔を後ろにそらせて目を閉じた。昭彦の唇が子猫の唇を捕らえる。しばらく熱い舌を絡め合わせ、子猫が鼻にかかった声を漏らすと、顎から耳たぶをしゃぶり首筋へとキスをしていった。首筋に熱さを感じた瞬間、子猫はハッとして目を開けた。 「あきぃー・・・もぉぉぉー・・・そこにキスマークつけたら丸見えじゃん。」 「連休なんやし、たまにはええやないか。」 「だってぇ・・お店とか覗く時恥ずかしいじゃん。」 「そんなもん気にせんでええがな。」 「猫はこれでも純情なのぉ。」 「クックック。わかった、わかったて。そうムキになんなや。」 昭彦が頬を膨らませている子猫を背中からきつく抱き締め、からかい気味に頬ずりをしていると、 「そろそろ高速降りますが、最後のサービスエリアどうします?寄ってきますか?」 と、前の助手席に座っていた石橋が声をかけた。 「そやなぁ。別荘での食料は一度荷物降ろしてから買いだしに行くようやしなぁ・・」 昭彦は子猫に伺うように目配せした。 「見てくぅー!」 子猫は笑顔で即答した。 「ちゅうことや。」 「はい。わかりました。」 石橋は思わず笑いをこぼして頭を小さく下げた後、運転している橋本に指示を出した。 朝早くマンションを出た時は肌寒く感じていたが、車から降りた空は真っ青に輝き、暑いほどの光を注いでいた。子猫は思い切り伸びをして深呼吸をした。連休とあってサービスエリアにはかなりの人がいた。子猫が軽い足取りで階段を駆け上がると、周囲の視線が集まってくる。いつもは視線を投げられ舐めるように見られることが煩わしく感じていたが、気分が高揚して開放的になってる時にはまんざらでもない気持ちにさせてくれる。階段の上まで行って、白いフレアスカートが広がるようにクルッと勢いをつけて振り返り、スーツにサングラスをして片手をポケットに入れてゆっくり上がってくる昭彦達を待った。スーツと言ってもサラリーマンが通勤で着るような物とはあきらかに違い、さらに重圧的な雰囲気を漂わせている男達は、レジャー目的の集団の中にあって異様に映るらしい。人の流れが昭彦達をよけるように距離をおいて足早に遠ざかる。 「遅いよぉ。」 上に着いた昭彦の腕に抱きついて子猫が顔をすりすりすると、 「今からそんなにはしゃいでいたら、後が続かないだろう?」 と、大阪弁を隠して話す昭彦がため息をついた。 「大丈夫だもん。それよりずっと座ってたから、そっちが疲れちゃったぁ。」 子猫は昭彦の腕を引っ張るようにして中へ入っていった。 ここで三度目のサービスエリアだったが、その度に子猫はお土産コーナーを覗いては、小さな小物を買っていた。特別変わった物がある訳ではなかったが、その場所で買った物があれば見る度に楽しい旅行の行程を思い出せる。それは旅行に限らず、どんな場所に行ってもそうした小物を物色して可愛い物を見つけては喜び、帰ってからも何度も嬉しそうに見ているのを知っている昭彦は、子猫の好きなようにさせてくれていた。昭彦も時にはどっちがいいかを悩む子猫に意見したりして買い物の間中付き合って側にいた。昭彦は安い小物くらいいくらでも買ってやりたいと思っているようだったが、子猫にとっては選ぶことも大切な儀式のようで、真剣に悩む姿を笑みを浮かべて見守り、辛抱強く待っていてくれた。 子猫が買い物を済ませる間、石橋と橋本は席のある場所でコーヒーを飲みながら煙草を吸っていた。車の中では吸えないのが辛いらしく、こうして停まる度に時間を惜しんで吸っていた。昭彦も昔は吸っていた時期があったらしいが、薬品を吟味し見分ける上で嗜好品はあまり適切ではなかった為にそれほど嗜むことがなくなったらしい。更に、長い刑務所生活の間にお酒も煙草も嗜好が合わなくなったようだった。 子猫の買い物に付き合った昭彦が戻ると、石橋と橋本は急いで煙草を消して席を立って迎えた。 「行きますか?・・っと、子猫さんは?」 「あれが欲しいらしい。」 昭彦が顎で指す方に子猫がいた。それはソフトクリーム売り場で、並んでいるのは女性や子供がほとんどだったので、さすがに過保護の昭彦も一緒に並ぶことは避けたようだ。 「お待たせぇー。」 と、うずたかく盛られたソフトクリームを倒さないように注意しながら子猫が三人の男達のところに戻ってきた。 「あはは、てんこ盛りですねぇ。」 若い橋本が思わず声を出して笑った。子猫は笑顔を返して、 「可愛いからサービスだって。うふっ。」 と言った。昭彦の眉がピクッと反応する。 「あぅ・・冗談だって。バイトだから慣れてないみたいだよ。それだけだからぁ・・」 「まったく、油断も隙もあらへん。」 舌打ちして低く呟く昭彦に、子猫がソフトクリームを差し出す。 「多すぎるからぁ手伝ってぇ。」 「甘いクリームは嫌いなんだ。残ったら捨てればいい。」 「えぇー・・・もったいなぁーい。いいや、頑張って食べちゃお。」 子猫はパクッと食べる一口ずつに、満足そうな顔で、 「甘ぁーい・・・冷たぁーい・・・美味しーい・・・」 と感想を言った。 「でもお腹冷えるから外で食べよぉーっと。」 「歩きながら食べるのはみっともないだろ。」 「いいのぉー。」 子猫は座って食べるように言う昭彦を無視して外へと出てきた。が、太陽の光が一気にソフトクリームを溶かし始めた。垂れてくるのを舐めながら必死で食べるものの、溶ける速度に間に合わず、手も口のまわりもベトベトにして、とうとう諦めて残りをゴミ箱に捨ててしまった。 「あーん・・・」 半べそになって指をしゃぶる子猫を、昭彦はハンカチを水で濡らしてきて、 「ホンマにぃ・・・」 とため息まじりに笑って拭き取ってくれた。 サービスエリアを出た車の中で、子猫は昭彦に甘えて寄りかかりながら、肩に頬ずりしていた。昭彦が髪を撫でてくれると、腰に腕を回してぎゅぅっと抱きついた。 「どないした?眠ぅなったんか?・・じき着くやろけど、それまで寝てくか?」 「ううん・・眠くない。・・・ねぇ・・昭彦ぉ・・・」 「ん?・・なんや?」 「猫ぉ・・・子供すぎてごめんね。・・・嫌いにならないでね。」 「クスッ。さっきのこと気にしとったんか?」 「だって・・・」 「なにしたって可愛いねや。嫌う訳ないがな。わしの命やっちゅうとるやろ?もっと自信持ったらええねや。」 子猫は胸がキュンとなって目を閉じた顔をスリスリスリスリと擦り付けた。 「・・・泣いとんのか?・・どうしたんや?」 「だって・・・あき・・・優しすぎるんだもん。」 そう言うと子猫は一層涙が溢れてきてしまった。愛されることの幸せに浸りつつ、幸せ過ぎる今が悲しくなってしまったのだ。永遠に時を止められたらいいのに。信じ切っていた幸せを何度失ってきたか。今の幸せの記憶を刻みつけておかなければ、と、ふと脳裏を過ぎった時、苦しいほどの切なさに涙が止まらなくなってしまったのだ。 「・・子猫?」 「ねぇ・・・もし嫌うような時があったら・・嫌う前に猫を殺して。」 「・・・アホ・・・」 「邪魔になったら・・邪魔と思う前に命を奪って。」 「ええ加減にせい。それこそ怒るで。」 「愛されて殺されるなら本望だもん。・・・愛したまま、愛されたまま、・・・それだけを記憶に留めたまま死ねたら・・・きっと幸せ。」 「アホォ!・・死ぬ時は一緒やて何便もゆーちょるやろ?お前が死にたいなら、いつでも一緒に逝ったるわい。・・・なんなら今夜逝くか?」 「・・・いつでもいいよ。」 「せやったらもう泣くなや。泣いてるお前を逝かしたないわ。」 「・・うん。」 昭彦は脇に置いておいたさっきのハンカチでまた子猫の顔を拭いてやった。うるんだ目と赤っぽくなった鼻を愛おしく見つめて、ゆっくりと口づけをした。 「けど、これが最高やなんて思わせとうない。もっともっと幸せにしてやりたいねん。子猫が嬉しそうに笑う顔をもっと見ていたいねん。・・・ホンマに・・こんくらいで幸せやて泣くお前が可愛いてならん。せやから余計、今以上に幸せにしてやりたいねん。」 「・・・あきぃ・・・」 「子猫の命は確かにわしが貰うたで。けど、それは先のこっちゃ。ええな?」 「・・・うん。」 「ほれ、また泣きよる。しゃぁーないやっちゃなぁ。」 昭彦の言葉には甘い響きがあった。胸にピトッと張り付いてじっと目を閉じている子猫の背中を優しく撫でながら髪にキスを繰り返した。 助手席の石橋が煙草を胸ポケットから取りだし、おもむろに火を付けた。 「・・おい!」 「はい?・・あっ!・・・すみません!つい、ホッとして・・忘れてました。」 石橋は慌てて灰皿に煙草を消し捨てた。 「長い道中やし、わしだけなら文句は言わん。が、この子は喉が弱いねん。気ぃつけたってや。」 「すみません。ちょっと会話が深刻なんで緊張してたものですから。」 「そら、すまんかったな。・・クックッ・・こーゆー子やで周りが見えんようになってまう。まぁ、気にせんとき。っちゅうても無理やったか。」 「ドクターになにかあったら自分の責任です。今、組には・・いえ、会社にはドクターがなくてはならない方ですし、ハラハラしてました。」 「わしの代わりなぞ、いくらでもおる。せやけど、この子にはわししかおらんのや。この子の為にも簡単に死ねるかい。」 「そうですね。そうしてください。それが、巡り巡って会社の為にもなりますし。」 石橋がそう言って笑うと、運転している橋本が、 「けど、いいっすねぇ。自分もそれだけ惚れ込める女と巡り会いたいっすよ。」 と言った。話し方が正次に似ていたので、子猫は、ん?と顔を上げて見た。 「巡り会いたいっちゅうたかて、もう結婚しとんやなかったか?」 「あはは、そうっす。けど、これがめちゃめちゃ気の強い女なんすよ。」 「やくざの女房は気ぃ強いくらいが調度ええで。」 「あれで調度いいかはわかりませんが・・・っつーことは子猫さんも?」 「おい、橋本、ドクターにタメ口はやめろ。すみません。まだ、わかってない奴で。」 「ええやないか。われもそう固くならんで話てや。これはプライベートやし、あまり固いと子猫が緊張するでな。」 「あ、す・・すいません。」 「でなぁ、さっきの続きやけど、子猫も気ぃ強いとこあるで。」 「へぇー、意外っすね。」 橋本はバックミラーを通して子猫に視線を向けた。子猫も鏡に映る橋本を見ていたとこだったので、視線が合って慌てて昭彦にしがみついた。石橋は橋本の頭を軽くこづいて、 「そう言えばおやっさんも言ってました。」 と前を向いたまま言った。 「ほぉ、なんやて?」 「子猫さんは蓮の華のようだと。足元は泥まみれになって必死にあがいても、水に浮かぶ白い華はけっして汚れない。浮かんでるだけのようで、決して流されない純白の華だと。あーゆー子は儚げに見えて、芯に誇り高さがある。怖い華かも知れない、と。」 「・・・なるほど。」 「今、嫌われるくらいなら殺してくれ、と言われた子猫さんを見て思い出しました。」 「怖い華か・・そうかも知れんな。」 子猫は声には出さずに、えぇーっと昭彦を拗ねたように見上げた。昭彦は子猫の膨らんだ頬を撫でてキスをすると、 「誉めとるんや。わしにピッタリやてな。」 と言って笑った。 海辺の別荘は小高い崖の上にあり、崖の先の階段を降りていくと岩礁に囲まれた小さな浜辺があった。プライベートビーチということで、別荘を使う者以外が侵入することはないらしい。これなら体に彫り物があるやくざ者でも、誰に憚ることなく家族と海を楽しめるだろう。以前は個人の所有だったらしいが、今は貸別荘になっていた。ただし、特定の人達の間で人気があって一般には貸し出されていないらしかった。 二階の寝室は窓が一枚ガラスで、しかも高さがベッドの位置より少し低くなっているので、寝てながらにして海の全貌を眺めることが出来た。 「どうや?ええやろ?」 窓から海を眺める子猫を背中から抱き包むと、昭彦が耳元に囁いた。昭彦が手間をかけて探してくれた別荘だということが、これを見ればわかる。多少強引に部活を諦めさせてでも連れて来たかったのも無理ないと思えた。 「めちゃめちゃ最高ぉー!」 子猫は昭彦に寄りかかって両手を伸ばすと笑って答えた。連休中の部活動には参加出来ないと子猫が言うのを、やれやれ、とばかりに首を振って、お土産を忘れないように、と許可してくれた圭子に感謝した。もちろん、当の昭彦には言葉にならないくらいの感謝の気持ちでいっぱいだった。 「・・・ありがとぉ・・・昭彦ぉ・・・」 「感激しすぎて、また死にたいなんて言いなや。楽しみはまだまだこれからやで。」 「うん。・・さっきはごめんなさい。」 「ええて。・・・ほな、買いだしに行こう。今夜は浜辺でバーベキューやで。」 「浜辺で?・・すごーい!素敵ぃー!」 「せやろ?クックッ。けど、早う用意せな、日が暮れてまう。」 「うん!」 子猫は昭彦の喉元にキスをすると、クルクルッと回転して見せた。そして、 「昭彦ぉ、早くぅ。」 と言って、階段を踊るような足取りで降りていった。 |
| <25> [海辺の別荘で] |
<25>海辺の別荘で 眩しい光の中、寝返りをうって薄目を開ける。白の世界の向こうに青の世界が広がっていた。シーツも毛布も壁も窓の所の少し張り出した出窓部分も家具も、ほとんど部屋の中は白で統一されている。それが、目の前に広がる空と海を一層引き立てていた。青空の下、海は無数に砕けた破片のように、細かい光を反射させていた。 子猫はベッドから起きだして、イスにかかっていたピンクのスェットの上下を着ると、一階に降りて行った。まだ部屋の場所がはっきりつかめてなかったので、あちこち覗いて、やっと台所にいる昭彦を見つけた。別荘の為来客が多いことを見越した作りなのか、台所は独立した一部屋になっていた。 「おはよぉ、あきぃ。」 入り口で子猫が声をかけると、料理を盛りつけていた昭彦が振り返った。 「起きたんか。今、食事を運んでやろうて思うちょったとこや。」 「あ・・・手伝わなくてごめぇーん。」 「疲れたやろ?ゆっくりしとったらええねん。」 昨日は別荘に着いてから、掃除されてはいたが簡単に掃除し直したり、買いだしに行って大量の食料を調達し、バーベキューをしたり、花火をしたりと、寝るまではしゃぎっぱなしの子猫だった。そしてベッドに入ってからは、初めこそ一階で寝ている石橋と橋本を気にしてたものの、昭彦に翻弄されるまま、夜が明けるまで何度も激しく愛し合い求め合ったのだった。 「石橋さん達は?」 「今日は一日釣り三昧やてゆーちょったやろ?」 「あ、そっかぁ。」 「今夜は浜焼きにするから楽しみに待ってて下さい、て出掛けちょったわ。」 「捕った魚を食べるのぉ?・・うぅ・・何か怖いかもぉ・・・」 「この辺はかなりいい漁場らしいで。魚の種類も量も豊富やっちゅうことやわ。それで、この別荘は夏場だけやのうて一年中人気があるんやそうや。わけわからん物を釣ってくることもないやろ。」 「そうなんだぁ・・・でもぉ、生きてたのを食べるのはぁ・・・」 「捕る前から死んでる魚なんぞおらんやろが。」 「だけどぉ、目の前で跳ねたら嫌だもん。」 「クックック。そやったら、わしがさばいて切り身にしたるで、せっかく釣ってきた者の前で気味悪がるもんやないで。」 「うん。」 「さて、用意出来たで。起きてきたことやし、テラスの方で食べよか?」 「うん!」 リビングに続く先が、広いテラスになっていて、テーブルが置かれていた。潮風が気持ちよく吹き付け、海の香りを運んでいる。子猫も手伝って、昭彦が作った料理を並べ、海が見えるように座った。太陽はもうかなり上まで昇っていて暑いくらいだったので、海からの風が少し強めなのも調度いいくらいだった。昭彦の作ったほうれん草のポタージュとシーザーサラダ、それにフレンチトーストがこのテラスの雰囲気にとても似合ってるようで、子猫はさりげない昭彦の美学を感じて嬉しくなった。 先に食べ終わった昭彦はカフェオレを飲みながら海を眺めていた。子猫はその横顔をうっとりと見つめていた。昭彦の目は濃い黒でいつも強い光を放っているように見える。それが、時には一途な少年のようでもあり、また妖しい狂気のように感じられた。 「見とれてばかりで食事が進んでないやないか。ちゃんと食べなあかんやろ。」 チラリと横目でからかうように言う時もどこか妖しい光が潜んでいた。 「食べてるよぉ。」 子猫はきれいにさらったスープ皿を見せた。 「これ、すっごく美味しかったぁ。ふふ。」 「まだあるで。おかわりするか?」 「他の残していいなら・・」 「バランス考えて作っちょるんやから、全部食べや。」 「・・・はーい。」 子猫はフレンチトーストを小さくナイフで切り分けては口に運ぶ。昭彦は一度台所に行くと、温め直したポタージュと熱いカフェオレを持ってきてくれた。 「ブランチになるやろから、ゆっくり時間かけても、ちゃんと残さんようにな。」 「うん。」 のんびりとした時間が流れていた。時折、カモメが近くまで飛んできてはクルッと弧を描くように戻って行った。 「ねぇ・・・昭彦も釣りに行きたかった?」 「釣りかぁ・・じい様が漁師やったで、小さい頃はよく連れていって貰うたが・・好きでも嫌いでもないわ。けど、日焼けするんが嫌いやから、わざわざ自分からはしとうないな。」 日焼けが嫌い?と子猫は昭彦をあらためて眺めた。子猫と同じ、半袖短パンのスェット上下を着ている昭彦の地肌はどちらかといえば確かに白い方だった。普段から気を付けているのか、夜の仕事が多いせいか、顔や手もそれほど焼けてなかった。 「そう言えば、昭彦ってゴルフもしないね。」 「ゴルフ行くくらいなら、サウナで贅肉絞るかジムで体鍛えた方がええわ。ともかくわしには遊びちゅう感覚がよぉわからん。」 「麻雀は?たまにするんでしょう?」 「あれも付き合いの内やな。そない楽しいとも思わん。」 「じゃぁ何が楽しいって思うもの?」 「そりゃぁ女やろが。」 「あーー!」 「クックック。今は子猫だけに夢中や。これでええか?」 「・・んんんん・・・怪しい・・・」 「なんも怪しいことあらへんがな。それよりいつになったら食べ終わるんや?いくら、ゆっくりでええっちゅうたかて、このまま夕飯になりそうやがな。次の予定が狂うてまうで。」 「え、次の予定?なになに?」 「食事済んだら教えちゃる。」 「わかったぁ。」 子猫は次の予定という言葉にわくわくしてきて、急いで残りを食べ始めた。 食事の後、昭彦が片付けをしている間にシャワーを浴びてきた子猫は、バスタオルを巻いた姿でリビングのソファーに座っている昭彦の前に立った。 「まだシャワーしなくても良かったんやけどなぁ・・」 昭彦は子猫を膝に抱きかかえて、雫の残る肩にキスをした。 「えぇ?だって出掛けるんでしょう?」 「今日は何処も出掛けへん。」 「だってぇ・・・次の予定はぁ?」 「それは今から始まる。」 「始まる?」 「ちゅうか、もう始まっとるかも知れんな。」 子猫は昭彦の含んだような言い方に首を傾げた。 「あーん・・・わかんないよぉ。ナゾナゾは苦手なのぉ。」 昭彦はクスクス笑って、困った顔つきの子猫にキスをした。キスは思いの外、情熱的で熱い舌を深く絡めてきた。そして、子猫のバスタオルをはだけて乳房を強く揉み始めた。 「ん・・ん・・・あきぃ・・・次の予定ってぇ・・・これぇ?」 「嫌なんか?」 「・・・そんなことないけどぉ・・・せっかく海にきたのにぃ・・・」 「そうや。二人の好きな海におるんや。せやから・・・最高の思い出にしよう思うてな。」 「・・・うん・・・」 昭彦がまた熱いキスをするので、子猫はまだ納得いかないものがあったが、絡みつく舌に自分も舌を絡ませていった。 胸を愛撫されながら昭彦の首筋から肩へとしゃぶるようにキスをしていた子猫に昭彦が優しく言った。 「今日は初めてのアナルセックスをしような。」 一瞬子猫の動きが止まった。それから目を丸くして昭彦の顔を見た。 「・・・マジ?」 昭彦はにっこりと微笑んで頷いた。 「・・・嘘・・・」 「嘘は言わん。」 「・・・無理だよぉ・・・」 「大丈夫や。その為にこれまでシッポつけたり、マッサージして、ちゃんと広がるように慣らしてきたんやないか。子猫かて、わしが求める先にあるものが何かわかっとったやろ?」 「・・・わかんない・・・」 「この前、ビデオかて見せたやないか。」 そうなのだ。いつかは受け止めなければいけないだろうという不安はあった。アナルセックスはずっと男性同士の特殊な関係だけのものと思っていたが、女性に対してもされる行為だということもビデオで説明されていた。 「・・・何で?」 子猫の声はすでに涙ぐんでいた。 「子猫の全部を愛したいからや。」 「でも・・・そこは・・・違うもん・・・」 「そこもここもみぃーんな愛したいんや。そんなに怖がるようなことやないて。一度知れば病みつきになるほどええもんらしいで。」 「・・・何か・・・屈辱・・・」 「何で屈辱になるんや?・・確かにSMの世界でもアナル調教は欠かせないひとつらしいが、わしは何も子猫を責める為にしようっちゅうとるんやないで。けど、子猫にまだ感じられるのに知らずにおる部分があるから教えてやりたいだけやがな。」 「知らなくていいし、知りたくないんだもん。」 「もう充分アナルは感じてきちょるやないか。」 「・・・猫が・・・バージンじゃなかったから?」 「あ?」 「猫のおまんこじゃ物足りないから?」 「アホ!」 「だってそうじゃない!普通のセックスじゃつまんないから・・」 「くだらんご託ぬかしとんやないで。ほんなら口でするんもあかんのか?物を食べるとこやからて関係ないんかい?ちゃうやろ?・・・怖いのはわかるが、話の筋をすり替えんなや。惚れてもおらん奴の尻なぞ触る気にもならんで。」 子猫は昭彦の荒い語気に首をすくめた。 「あき・・・怒ると怖い・・・」 「怒ってなぞおらん。こんなに愛しちょるやないかぁ?」 昭彦は子猫を抱き締めてキスの雨を降らせた。そして半分納得したものの、半分は泣きそうな子猫を抱き上げると、二階の寝室へと向かっていった。 |
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