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子猫白書

<21>〜<25>

<21>
[雨の日曜日]
<21>雨の日曜日

 朝から強い雨が降り続く日曜日だった。試合が中止になったからと山田信夫から電話があって、二人は会うことになった。子猫の家の近くの書店で待ち合わせて、バスで町へ出た。取り敢えず店に入ろう、とロッテリアの2階に席をとって向き合いに座った。
「スゴイ雨ぇー!」
子猫は背負っていた小さな赤いリュック型のバッグから大きめのハンカチを出して手や足を拭いていた。ハンカチを動かす度に手首の金のブレスレットが揺れた。
「でもお陰でやっとゆっくり会えた。」
とノブは言って、
「それ・・・つけてくれてるんだね。」
と嬉しそうに笑った。小さなハートの揺れる金のブレスレットはノブからの誕生日プレゼントだった。子猫も嬉しそうに笑い返して、
「うん。これ、お気に入りなの。ありがとぉ〜♪」
と手をノブの前に差し出した。ノブはその手をちょっと握ったが、周囲の視線を気にしてすぐに手を離すと、照れくさそうに笑いコーラを飲んだ。
「中間、どうだった?」
「うぅ・・・もう最悪ぅ。。。聞かないでぇ。。。」
「塾行ってるのにさぁ。」
「だって・・・体調が・・・あまり・・・ノブは?」
「あ!・・そっか、ごめん。・・俺は平均より上くらいかな。」
「スゴーイ!」
「何がぁ?だから平均だって。」
「だってぇ・・あれだけ厳しい練習してるのに・・・」
「プロになれるだけの才能はないからさ、成績が落ちるようなら辞めろって親に言われてるんだ。でも野球好きだから出来る限りは続けたいしな。」
「プロは無理なの?あんなに上手なのに。」
「甲子園で優勝したチームにいたってプロになれるのはスター選手ぐらい狭き門なんだ。しかもうちの県はレベル低いし、それで優勝出来ないようじゃ絶対無理だって。」
「ノブが高校行ったらきっと甲子園出れるかもぉ・・・ふふ。」
「俺さ・・高校は県立を目指す。だから、部活も夏の大会終わったら辞めるつもりなんだ。」
「県立・・・なんだぁ・・・」
「猫もだろ?」
「え?・・・どうしよぉ・・・」
「それとも私立?」
「まさかぁ・・そんなに裕福じゃないもん。」
「なら県立だろ?成績いいじゃん。」
子猫は困ったようにため息をついた。中学3年ともなれば高校の話題は当然だし、まして中間テストが終わったばかりでは尚更話題として出るのは仕方ないことだった。が、勉強がつまらなくなってずっと塾もさぼっていた子猫には気の重い話題だった。ノブの話に適当に相づちをうってはいたが、子猫は時々窓の外の雨をぼんやり眺めながら、萩原のことを考えていた。
 萩原とは誕生日の夜以来会っていなかった。と言ってもまだホンノ数日前のことだったが。さすがにテスト前には会えなくて、日曜日に会えるのを楽しみにしていたのだ。が、昨夜の萩原からの電話で都合が悪いことを告げられた。
「それで先輩がさ・・・・猫?」
「あ・・・うん?」
「何か怠そうだけど具合悪いのか?」
「ううん。大丈夫だよ。ただ雨の日ってボーッとしちゃう。」
「まぁ、今日は特に蒸し暑くて嫌んなるよなぁ。・・・あ・・でさ・・」
ノブが上半身をテーブルにかぶせるようにして顔を近づけた。子猫も身を乗り出し、ノブの口元に耳を傾げた。
「先輩が部屋を貸してくれるとこを教えてくれたんだ。」
ノブが小声で囁いた。
「部屋?」
子猫も小声で返した。
「ラブホテルほど設備はないけどその分安いから、先輩もけっこう利用してるって。」
子猫はノブの言ってることがわかって、少し驚いたような怒ったような表情でため息をついてイスの背もたれに寄りかかった。ノブはまだ前屈みの姿勢のままで哀願するように子猫を見つめた。
「ちょっとだけ覗きに行ってみようよ。な?」
子猫は黙ったまま首を横に振った。
「なかなかゆっくり会えないしさ・・会える時くらい二人だけの時間が欲しいんだ。」
「でも・・・お互いまだ中学生だし・・・」
「私服ならわからないさ。それに先輩の話だとけっこう中学生もいるらしいんだ。」
「・・・うっそぉー・・・」
「だから様子を見にいくだけだっていいだろ?・・・もし入れても・・・猫の嫌がることはしないから・・・」
ノブが切実な眼差しで何度も頼むので、外からみるだけ、という条件で子猫は渋々一緒に行くことを承知した。
<22>
[恋人達の森]
<22>恋人達の森

 裏通りをいくつか曲がった先でノブは立ち止まり上を見上げた。
「ここでいいみたいだ。・・・おいで。」
そう言ってノブはずっと繋いでいた手を一層強く引いた。雨の中、傘をさして手を繋ぐのは無茶な行為である。子猫は腕まで濡れ服にも雫が垂れていた。ノブはもっと濡れていたが子猫の手を離したくなかったようだった。
 目的のレンタルルームは”恋人達の森”という名前で、1階部分が喫茶店になっている脇にエレベーターホールがあるようだった。喫茶店の中からもホールに出られるようになっていて、待ち合わせとかにも使うのかな?と子猫はふと思った。
 2階ホールから中に入ると薄暗く色の変わる照明と大きな音で音楽が流れていた。小さな待合い場所のようなソファーの置いてあるスペースがあって、その反対側に受け付けがあった。ノブはほとんど無言のまま鍵を受け取っていた。狭い廊下を部屋番号を確認しながら奥へと進むノブに手を引かれるまま子猫は仕方なく従っていた。ドアの前を通る時に女性の喘ぎ声が否応なく聞こえてきてしまう。小さな声が聞き取れないほどの音楽の中でもその声は隠しようもなかった。ノブが鍵を開けて入ろうとした時には部屋の中の暗さに子猫は足がすくんで動けなくなったが、ノブがドアわきの灯りのスイッチをつけて子猫の肩を抱くように中へと引き入れた。
「見るだけって言ったのに。。。」
子猫はベッドに座るとうつむいたまま言った。ノブは部屋の中をチェックしていたが、
「え?何?・・ここお風呂はないけどシャワーはついてるんだな。」
と言って隣りに座った。
「だから・・見るだけって・・・」
子猫がもう一度言おうとする言葉を飲み込むようにノブは子猫の口を唇で塞いだ。ノブとは雨とテストで会う時間が作れなかったので、久しぶりのキスだった。激しく舌を動かし力強くからめてくるノブのキスは胸がキュンとなるような甘酸っぱさがあった。ノブに押し倒されてベッドに横になると子猫もノブの首に腕を回してキスに応え始めた。
「暗くして。。。」
ノブが子猫の服を脱がせようとした時、子猫はそう言うのがやっとだった。萩原との約束が頭に響いていたがこの場でノブを拒絶することは子猫には出来なかったのだ。照明を落とした薄暗い中でノブは自分の服を脱ぎ捨てると、子猫に再びキスをしながら服を脱がせていった。

 ノブは初めぎこちなく体を押しつけてきた為なかなか中まで入れられなかったようだったが、亀頭の部分が子猫の花弁に飲み込まれるといっきに奥まで挿入してきた。子猫は目を閉じてのけぞりながら、軽く曲げた足を少し上にして、ノブの動きをさり気なく助ける姿勢をとった。
 それでもなるべく感じるのを押さえようと努力し、声を出さないように注意した。余程壁の作りが薄いのか、両方の部屋から競うように女性のよがる声が聞こえてきていた。ノブはその声に刺激されるかのように、
「ぅぅぐぅーあぁぁぁぁぁぁー!」
と叫んで、子猫の中で何度も頂点を迎え、放出をくり返した。
 萩原に抱かれた時に知った”いく”感覚はなかったが、子猫も感じていた。それでどうしても声が漏れて、切なくてノブの肩に歯を立てた。
「辛かったら思いっきり噛んでいいからな。怖くなったら俺にしがみついてろよ。」
ノブは初めてだと信じている子猫を労って優しくそう言った。子猫はノブの優しさが胸に染みてきて涙が溢れてきた。ノブの背中に腕を回してしがみつき、足を腰にからめて強く締め付けるようにして、すすり泣く子猫をノブは愛おしげにキスをくり返して、
「愛してる。愛してる。」
と何度も言った。そして一番長く続いた勃起も子猫の締め付けてくる肉襞の中で、閉じた瞼に星の渦を感じるほどの快感とともに迸らせた。

 恋人達の森を出たノブと子猫は表通りに戻ると適当な喫茶店を見つけ、奥の方のボックス席に並んで座った。テーブルの下で子猫の手を握ったノブが、
「ごめん。もっとゆっくり出来るとよかったんだけど。」
と謝った。子猫は小さく首を振った。いくら安めの料金とはいっても中学生ではあれ以上の延長を続けるのは無理だということくらいわかっていた。
「何かさ・・・あのままいるとまた抱きたくなりそうでさ。」
ノブは囁くように言ってから笑って、子猫を気遣わしげに見つめた。
「その・・・大丈夫か?・・・辛くない?」
「ううん。・・・平気。」
子猫はちょっと笑って返したが、すぐに視線をそらしてうつむいた。
「ごめん。・・・初めてなのに無理させちゃって。」
(初めてぢゃない・・・)
子猫はすっかり信じきっているノブにどうしても本当のことを打ち明けれなかった。と、同時に萩原も裏切ってしまったことへの罪悪感がいっそう気持ちを暗くしていた。不安と焦燥感に襲われて子猫はまた涙が込み上げてきた。
「ごめん。ごめん。泣くなよ、な?」
ノブは子猫の手を両手で包みギュッと強く握りしめた。
「大事にする。猫のこと、一生大事にする。」
子猫はハンカチで目を押さえながら小さく頷いた。
<23>
[デパート]
<23>デパート

 次の1週間、子猫は萩原ともノブとも二人だけで会う時間を作らなかった。中間テストの点数を見た母親から、夜遅くまでの外出を禁止されたこともあったが、子猫自身どちらとも会いたくない気持ちがあったし、塾をさぼっていた後悔もあったからだった。
 普通の日常が戻ってきたようであったが、もう普通の何も知らなかった頃に戻れないのは、疼く体が否応もなく子猫に教えていた。それに学校で顔を合わせる山田信夫の表情に、子猫をあからさまに自分のものだと主張する自信が溢れていた。その一方で子猫に対しての独占欲が強烈に芽生えてしまったようで、昼休みに子猫の教室まできたノブが、子猫が委員会のことで同じ委員の男子と話してるのを見るだけで、嫌そうに眉をひそめて男子を睨み付けた。

 日曜日、子猫は母親と夏物の売り出しをしているデパートへ出かけた。数日前から新聞の折り込み広告で大規模に宣伝していたのである。もう10日以上会っていない萩原と会いたい気持ちもあったが、萩原も明日は都合が悪いと昨日の電話で言っていたのだ。それがまさかこんな場所でこんな形で出会うことになるなんて想像も出来なかった。
 子猫の母親は子猫の服を何点か先に買ってから、婦人服売り場で自分の服を選び始めた。子猫は荷物を持って少し離れて母親の様子を見ていたが、母親の姿の前を横切った家族連れに、一瞬息が止まった。30歳前後の綺麗な女性が服を見ながら確認するように後ろを振り向く。すぐ後ろには3歳位の女の子を抱っこした30代半ばに見える男性がいて、綺麗な女性が伺うように振り返る度に笑って言葉少なくではあったが意見しているようだった。
(ヒロ?!)
子猫は衝撃で胸が痛くなった。それと同時に見てはいけないものを見てしまったような焦りでいたたまれない気持ちになっていた。それでも、その明らかに親子連れとわかる彼等から目を離すことが出来なかった。小さな女の子はパパに抱っこされてるのが嬉しそうで、首に細い腕を回して時々肩に顔をこすりつけていた。父親も子供が可愛いようであやすように背中を叩いたり髪を撫でてやっていた。子供がママっと呼びかけるとその子の母親もそばに寄って何事かを囁いて微笑んでいた。
 どう見ても仲の良い幸せな家族の姿に、子猫は小さい頃パパに抱っこされていた自分を思いだしていた。子猫に心臓の欠陥というハンデがあったせいもあって、父親は子猫を溺愛した。ちょっとしたことでも子猫を誉めて喜び、欲しいものは何でも与えてくれた。入院中は完全看護で付添いがいらなかったが、毎晩病院に泊まり、病院から仕事へと出かける日々だった。その習慣でか父親が事故で亡くなる前日まで子猫は父親の腕の中で眠っていたのである。
 子猫は寂寥感に泣きそうになっていた。と、その時、
「子猫!」
と母親が萩原のそばで子猫を呼んだ。萩原は子猫の母親を一瞬見てからその視線の先にいる子猫を見た。萩原は子猫と視線を合わせると驚いたように目を見開いたが、すぐに視線をそらし背中を向けた。
 母親はもう一度子猫を呼んだが、返事もせず来ようともしない子猫に苛立ったような早足で近付いてきた。が、よほど子猫の顔色が悪かったらしく、焦ったように周りを見回しエスカレーター脇のベンチを見つけると、そこへ子猫を連れていき座らせた。そして、そばにあった飲み物の自動販売機でジュースを買って子猫に渡すと、
「もう!具合が悪かったのなら出かける前に言って頂戴!」
と、大きくため息をつきながら言った。
「サイズが合わないといけないと思って連れてきたのが間違いだったわ。」
「・・・ごめんなさい。」
「まだ他にも買い物があったんだけど・・・困ったわぁ。」
「大丈夫だから・・・買い物してきて。」
「そうもいかないじゃない!」
母親は子猫の隣りに座ると足を組んだ上で頬杖をついて、またため息をついた。
「ホントにもう大丈夫だよ。ちょっと慣れない人混みで気持ち悪くなっただけだから、こうしてればすぐ治るし。・・ここで待ってるから買い物してきて。荷物もちゃんと預かっておくから。」
「・・・大丈夫なの?」
「うん!」
子猫は務めて笑ってみせた。母親は少し考えていたようだったが、立ち上がると、
「じゃぁ、お願いね。」
と言って売り場に戻って行った。それから、自分の洋服を買うと子猫の横にその買い物袋を置き、
「雑貨と食料品売り場見てくるから、ここにいなさいね。」
と言ってエスカレーターで下に降りて行った。
 子猫がジュースを一口ずつゆっくり飲んでいると、子猫の斜め脇に男性が立ちふさがった。見上げると萩原が胸から煙草を取り出して火をつけるとこだった。子猫のベンチの横には灰皿が設置されていたのである。子猫は視線を落として黙っていた。
「話がしたい。」
萩原は売り場に背を向けたまま灰皿に灰を落とす仕草でかがみ込むとそう言った。子猫は黙ったまま売り場に視線を泳がせた。それに気付いた萩原は、
「今、子供をトイレに連れて行ってる。」
と言って苦笑した。
「買い物をすませたら先に帰すから、ちょっと話をしよう。」
子猫は膝の上で手を固く握って泣きそうになるのを堪えた。
「猫、ママと一緒だもん。無理だよ。」
「友達と会ったから別行動で帰る、って言えばいいだろ?」
「・・・そんな・・・」
「今は言い争ってる時間がない。30分後に携帯に電話して欲しい。仕事の電話だと言って、ここを出るから・・向かいのデパートのレストラン街で待ち合わせよう。」
「向かい・・・?」
「6階が飲食店が並ぶレストラン街になってるんだ。知らない?」
「行ったことはあるけど・・でも・・・」
「電話の後10分くらいで行けると思うから6階の入り口あたりで待ってて欲しい。いいね?」
子猫は黙って返事をしなかった。
「パパァー!」
小さな足音を弾ませて女の子が駆けてくる。
「30分後に電話待ってる。いいね。」
低い声で念を押した萩原は短くなった煙草を灰皿に捨てると、クルッと振り返り女の子に歩み寄ると抱き上げた。後から追いついたその子の母親がチラッと子猫の方を見たようだった。子猫はなるべく無関心を装って、母親の姿を捜すようにエスカレーターを眺めた。目の端に遠ざかる萩原の背中とその肩越しから覗く可愛い女の子のあどけない顔が映っていた。
<24>
[抱っこ]
<24>抱っこ

「ここはホントは和食が評判なんだが、料亭みたいに静かなところだと話がしにくいだろ?」
と、イタリアレストランに座った萩原が小声で言って、
「遅い朝食をとって出かけてきたんだが、さすがに夕食まではもたないな。」
と、明るく笑ってみせた。ウェイターがメニューを持ってくると、子猫が聞いたことのないような料理をいくつか注文した。
「ピッツァとパスタだけがイタリア料理じゃないんだよ。色んな料理をまず食べてみることだな。味を知らないうちは料理も出来ないだろ?」
ウェイターが下がってから萩原は子猫に笑いかけてそう言った。子猫はテーブルに頬杖をついて眇めた目で萩原を見ていた。
「おいおい。レディーがレストランで頬杖なんてしてるんじゃない。」
萩原に注意されて不承不承、手を膝に置いた子猫は、
「猫は何も食べたくないもん。」
と、やっと重い口を開いた。
「少しずつでいいから、気の向いた物を食べておかないと、元気が出ないぞ。」
「・・・猫のことなんて・・・どうでもいいぢゃん。」
「どうでもいいと思って誘うバカはいないだろ。」
萩原は声を低めて、宥めるように言う。
「・・・あんなに素敵な家族いるくせに。。。」
「そのことは食事がすんでからにしよう。」
「こんな気分ぢゃなにも食べられないの。」
「美味しい物を美味しいと思って食べる。これだけでほんの少し幸せになれるものだよ。・・・だから、今は美味しく味わって食事しようじゃないか。ん?」
「・・・美味しくないかも。。。」
「ハハ、今注文したのはきっと君の気に入る料理だよ。」
萩原は優しい眼差しで軽くウィンクした。

 萩原に料理の説明をされながら勧められるまま、子猫もいつの間にかお腹がいっぱいになるまで食べてしまっていた。とても食べられる気分ではないと思っていたが、食事が終わる頃には子猫のいつ泣き出してもおかしくないほどに思い詰めた気持ちがかなり落ち着きを取り戻していた。
 食事の後、萩原は子猫と車を預けてあった駐車場に行き、子猫を乗せると車を郊外へと走らせた。そして子猫にとっては2度目になる、車を部屋に横付け出来るタイプのホテルの門をくぐった。
 話す間もなく萩原は子猫を抱き上げるとベッドに連れていき、激しくキスをしながら前戯を飛ばして挿入してきた。子猫は萩原の激しい動きに思わず声をあげてしがみついた。しがみつきながら、子猫は自分と昼間デパートで見た女の子と姿がダブっていくようで、一時収まっていた感情が込み上げてきて、涙が溢れてきた。そして、いっそう強く萩原に抱きつきながら、声を出して泣き出してしまった。
「可哀想な思いをさせてしまったな。よしよし。」
萩原は何度も子猫を突き上げてのけ反らせる一方で、優しい慰めの言葉とキスを降り注いだ。 「感じるんだ。今君の中にいる僕を。」
「あぅ・・んん・・・ヒロォ。。。」
「そう・・・もっと感じて・・・君を満たしている僕を・・・僕と繋がっている君を・・・さぁ、感じて。」
「あぁぁぁ。。。あぁぁんん。。。」
子猫は萩原の塊をギュゥ〜っと締め付けた。意識する部分と無意識にそうなる部分とが子猫にはあって、意識する部分が萩原の根元から全体を締め付けると、それに応えるように、意識しない部分が波打って絡みつき吸い付いて一層締め付けていた。
「あああぁぁぁうぅぅぅあぁぁぁぁ・・・何てスゴイ子なんだ。。ああぁぁ・・・」
萩原は子猫を繋がったまま抱き上げて、あぐらをかくような姿勢になった。子猫は萩原をまたいで座った形になり、繋がってる部分が見えるようでドキドキした。萩原は子猫の腰を抱え込むようにしてグッと奥に押し込んだ。
「あぁぁ。。。あん。。。」
子猫が感じてのけ反った時、萩原が膝を立てたので子猫の背中が足に寄りかかった。
「少しゆっくり感じるようにしないともたないよ。」
両手で子猫の左右の乳房を揉みながら苦笑した萩原は、
「君ほどアソコの感度のいい子は初めてだよ。」
と言った後、
「これで、まだ男を知って半月とはな。・・・生まれついての名器ってのはホントにいるんだな。」
と、感心したようにつぶやいた。
「いかせる前に油断してるといかされそうになるなんて・・・ハハ・・・まったくまいるよ。」
「・・・わかんないー。。。」
「わからなくていい。僕が少しずつ教えてやる。まぁ、教えるまでもないが・・もっともっと感じる喜びをね。」
子猫はクスンと鼻をならした。
「抱っこしてぇ〜。。。」
「よしよし。いい子だ。可愛い子猫ちゃん。」
萩原は昼間自分の娘にしてたように子猫を抱っこして、髪を撫でた。が、昼間と違うのは髪を撫でた後に熱い口づけをし、繋がってる部分を次第に激しく動かし始めたことだった。子猫は抱かれた格好のまま、体中を走り抜ける電流のような快感に全ての思考が消えていった。

「僕が結婚してるとわかって・・・別れたくなった?」
子猫を胸に抱き締めキスをくり返しながら萩原が聞いてきた。子猫はさっき立て続けに登り詰め意識をなくしていた。首筋や肩にまで降り注がれるキスに次第に意識を取り戻し、気がつくと萩原の腕の中だった。
「・・・別れたくない。。。別れられない。。。」
「僕もだよ。もう、君を手放せない。」
「・・・・・嬉しい。。。」
「僕達が出会った奇跡を大事にしよう。」
「うん。。。」
「愛してるよ。・・・君だけを。」
だけ・・を萩原は強調した。その意味がわかって子猫は何も言葉を返せなかった。
<25>
[生徒指導]
<25>生徒指導

 何も考えられなかった。萩原に家庭があるとわかっても、それで別れる気持ちにはなれなかった。もし、パパが生きてた時、他の知らない女性とつき合ってることを知ったら、きっと許せなかったと思うし、裏切られたような気がして苦しんだと思う。そう思っても居心地のいい温もりを失いたくなかった。
 ノブのことも好きだったし、思ってくれる気持ちが嬉しかったのは確かなのに、萩原と会う時のようなときめきをどうしても感じることが出来なかった。それでも、その思ってくれる気持ちを失うのも怖かった。
 萩原とノブそれぞれとの付き合いは、どちらとも迷いがあるとともに、どちらとも別れられないものになっていた。萩原とは土曜日か日曜日のどちらかに逢い、ノブとは塾がなく雨の降らない夕方にいつもの神社で会っていた。そして萩原と逢えない日曜日にはノブの試合の応援に行き、帰りに”恋人達の森”に寄って抱かれた。ノブは神社でもひとつになりたがったが、子猫がそこまで許すことはあまりなかったし、どうしてもノブの情熱を抑えられない時には、短い時間でお互いの存在を確認するような簡単な行為だった。

 7月に入り、1学期の期末テストが終わった。今回はそれなりに真面目に勉強を重ねていたので、中間テストで下げた分を取り返せた子猫だった。テストの結果が出た後、夏休みの過ごし方も含めて、生徒の個別指導が放課後相談室でおこなわれた。
「今回はかなりいい結果だったね。」
担任の森脇先生は向き合って座った子猫に笑顔で言った。
「そう・・ですか?・・なら良かったぁ。。」
「中間は体調がまだよくなかったのかな?」
「・・・よく・・わかんないです。。」
子猫がはにかむように笑って森脇先生を見つめると、先生はあわてて視線をそらし、横の机から煙草を取り出した。子猫はなにげなく灰皿のわきにあったライターを取って、煙草をくわえてる先生の前に差し出した。
「おいおい・・・」
「どうぞ。・・うふっ。」
森脇先生はぎこちなく火をつけて煙を吸い込んだ。子猫がライターを灰皿のわきに戻す様子を眺めてた先生は少し眉をしかめて見せ、
「慣れた手つきじゃないか?・・まさか吸ってる?」
と冗談っぽく言った。笑っていたし、どことなく嬉しそうな表情だったので、本気で詮索しているのではないことはわかった。
「どうかなぁ・・・」
とわざと言ってみる子猫の視線に森脇先生は耳を赤らめた。40歳を過ぎていた森脇先生だったが、テニス部の顧問をしていて、年齢よりも若く見えたし、生徒達に人気のある先生だった。
「まぁ夢野が吸うはずはないだろうけどな。」
「ですね。」
子猫が明るく笑うと、先生もやれやれとばかりに苦笑した。
「でだ・・・成績は大丈夫なんだが・・・」
「はい。。」
「最近A組の男子とつき合ってるようだな。。」
「えぇー・・・友達ですぅ。。」
「友達と言っても今は3年という大事な時期だってことは忘れちゃダメだろ?」
「・・・ですけどぉ・・・」
「友達関係が勉強の励みになるなら・・俺としてもあまりうるさいことは言いたくないんだが・・向こうの担任はけっこう頭が固いからな。それとなく釘をさしておくように言われてるし・・」
「そんなぁ・・・」
「俺はもちろん夢野を信じてる。」
(信じられても困るけど・・)
子猫は先生の間でもノブとの交際を知られて話題になってる事実が嫌だったが、全面的に信頼されるのも気が重かった。うつむいてふさぎ込む子猫を森脇先生は、
「夢野は信じていても向こうの男子は7月で部活も終わるし・・・男ってゆーのは時々何をするかわからないとこがある。多少警戒してつき合うことも必要だってことかな。」
と言って煙草を灰皿に捨てると肩に手を置いた。
「・・・はい。。」
子猫がうつむいたまま小さく返事をすると、
「男は狼って言って危険なんだぞ。」
と顔を覗き込むようにして明るく言った。子猫は上目遣いに少し潤んだ目で見つめかえして、
「・・・先生も?」
と囁いた。近付いていた視線がしばらくお互いを見つめたまま止まっていた。
「教師だって男であることに変わりはない。」
そう言った森脇先生の声は低くこもっていた。
「・・・家庭・・あっても?」
「どうかな。。そーゆーことはまだ考えることじゃないだろ?」
先生の息が子猫の顔にかかっていた。子猫は先生の瞳の奥を覗き込むようにじっと見つめていたが、目を伏せるとため息をついた。と、次の瞬間、森脇先生の唇が子猫の息を吸うように唇に重なった。煙草の香りのするキスは萩原で慣れていた。差し込まれた先生の煙草臭い舌を子猫は躊躇することなく吸って舌をからめた。先生の唾液が流れ込み、子猫の唾液が吸われた。キスは時間を忘れるほど長く続いた。先生の片方の手が子猫の胸に触れ、ブラウスの上から揉み始めた。すでに固く突起していた乳首を摘んで愛撫され、子猫は小さく鼻声を漏らした。先生はしーっと声にならない声で言うと、ゆっくり子猫から離れた。
「・・・理性がきかなくなる時がある・・・実例かな。」
森脇先生は困ったように苦笑した。
「先生・・・」
子猫が小さい声で言うと、
「ん?」
とまた顔を近づけてきた。子猫はその耳元で、
「乳首が感じて痛いの。。。」
と囁いた。森脇先生の喉が何度か大きく動いた。
「・・なぁ〜んてぇ〜・・ふふ。。」
子猫は悪戯っぽく笑ってイスから立ち上がった。もう次の生徒の時間にかなり食い込んでいたことは子猫もわかっていたのである。いつ待ちきれなくなった次の生徒がドアを開けて覗くかわからない状況だった。先生は疲れたようなため息をつき、
「君って子がわからなくなったよ。」
と訴えかけるような視線で子猫を見た。
「だってぇ・・・先生・・・大人で素敵なんだもん。。。」
「そうかそうか。・・やれやれ・・弄ばれてる気になってきたぞ。」
「うぅ・・・ヒドイ。。」
子猫の拗ねた視線に先生は笑顔で返し、
「まぁ・・いつでも相談に乗るから・・・電話してきてもいいし・・・」
とメモ用紙にペンを走らせ、
「これは連絡網には載せてない携帯の番号だから・・・」
と子猫に渡した。子猫は、
「はい。ありがとうございます。」
と生徒らしい言い方で答え、それから軽くウィンクして見せた。先生は小さくうんうんと頷いて、
「待ってる。・・・あぁ・・こんな時間かぁ、まいったな。会議が始まるぞ。・・・次の生徒は明日にしよう。出たらそう言ってくれないか?」
と腕時計を見ながらあわてて言った。
「はい。わかりました。」
子猫はドアまで行き、丁寧にお辞儀をして部屋を出て行った。

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