子猫白書
| <26> [友子] |
<26>友子 子猫は図書委員だった。1年の頃から一人で本を読んでいることが多かったせいか、新学期に遅れて学校に来た時にはそう決められていた。男女一人ずつで、男子の図書委員は天文学クラブに所属している星野というおとなしい印象の生徒だった。それでも去年の文化祭では自分で撮影した星の写真を展示し、質問をされる度に嬉しそうに目を輝かせて説明していたのを子猫は覚えている。その時は見学に来た両親を案内している時で、子猫のパパは星野君の説明を感心して聞いていたのだった。子猫は手芸部に所属していて、その文化祭では苦心して作ったパッチワークのポーチを出品していた。もちろん制作過程を知っている父であったが感心して何枚も写真を撮り、盛大に誉めてくれたのが、恥ずかしがりながらも嬉しかった子猫だった。が、入院してしばらく部活動から離れていたので、新学期になっても行く気がおこらずにそのまま所属していることさえ忘れていた。 夏休みも近い放課後、委員会では夏休み当番が決められ、貸し出し図書や管理の方法が話し合われた。 「夢野さん。」 委員会が終わって教室に戻りかけた子猫に、同じ3年の図書委員で違うクラスの大内友子が声をかけてきた。 「3年になってからずっと部活来てないけどどうしたの?」 (そうだった。彼女も手芸部だった。) 「あ・・・うん。新学期遅れて来たから何となく行きづらくなっちゃって・・・」 「そっかぁ。今年度はさぁ、他の二人の3年が英会話クラブに所属変更して夢野さんと私だけになっちゃったからずっと待ってたんだよぉ。」 「そうだったの?・・・ごめんなさい。」 「委員会で会う度に誘おうか迷ってたんだけど・・体調悪いと悪いかなぁって思ってさぁ、なかなか話出来なかったんだ。」 「もう、全然元気なんだけどぉ・・なんかやる気喪失。。でも、ごめんね。」 「ううん。私もかったるいよぉ。」 大内友子は肩をすぼめて見せ、軽く笑った。 「手芸部は大会とかないし、1学期で活動は終了なんだって。しっかり勉強を頑張って下さい、って金子先生が言ってた。・・わざわざ。。」 子猫は思わずプッと吹き出した。顧問の金子先生は30代の独身の先生で部員からは密かに”ヒス”と呼ばれていた。だいたい1年の英語を担当することが多く、キツイ香水と英語で注意する見下したような態度で生徒からは敬遠されていた先生だった。 「頑張れ、頑張れってさぁ、親も担任もうるさいのに・・・あぁーあ・・何かみんなに言われると追いつめられる気がしてくるよねぇ。。」 「・・・そうかも。。」 「夢野さんは成績いいから気にならないかぁ?」 「全然ー!・・・ただ行きたいとこってないし・・・って感じ。。」 「私もー!行けるとこでいいー!」 友子は両腕をあげて伸びをしてそう言うと、子猫に笑いかけた。 「子猫さん、山田君とつき合ってるんでしょう?」 「え?」 急に話題が変わって子猫が戸惑っていると、 「だって私同じクラスだもん。」 と悪戯っぽい視線で子猫を見ながら友子が言った。 「あ・・そうだっけ?」 ノブの名前を聞くと、子猫の秘部がキュゥッと収縮する。昨日も神社で後ろから抱き締められながら一つになった。その時のノブの息づかいと漏れる声が耳元に蘇ってきて、子猫は耳を赤く染めた。 「可愛ー!そんなにテレなくていいぢゃん。もう公認の仲なんだから。」 「こ・・公認って・・・」 「うちのクラスでは完璧に公認だよ。」 「・・・山田君がそう言ったの?」 「言うもなにもさぁ、毎日昼休みになれば夢野さんのとこに通ってるんだからわかるぢゃん。」 「あは、そかそか。」 「初めの頃はうちのクラスでも夢野さんに憧れてた男子とかいてさぁ、やっかみでからかってたけどぉ・・今は諦めか・・山田君の態度に余裕が出てきたせいか何も言わなくなったみたい。」 「そうなんだ。。」 「時々山田君囲んで小声で内緒話してるけどぉ、男子の間に割り込むわけにもいかないからぁ何を話してるのかはぁ・・知らない。」 何かを含むような友子の言い方に子猫は言葉を返せなかった。 「いいなぁ。公然とつき合える関係って。。」 (え?!) 子猫はドキッとして友子を見た。 「山田君、この頃ますます男っぽくなったもんね。」 男っぽい、という言葉に子猫の膣がうねってヒクヒクと反応した。 「夢野さんは前から色っぽかったけどぉー!ふふ。」 「そんなぁ・・・大内さんの方が大人っぽくて綺麗で素敵ぢゃん!」 「私?・・フケ顔だよねぇ。しっかり者に見られるし、頼りにされるし、内気なだけなのに落ち着いてるとかって言われるし、思いっきり損な顔ー!」 「え・・そーゆー意味ぢゃなく・・・」 「あははは、わかってるって。でも、ずっと夢野さんが羨ましかったんだぁ。どうしたらそんなあどけない顔が出来るのか、鏡でマネして研究したことだってあるんだから。」 「・・・頼りなげなだけだよぉ。。」 「そこが男子にはたまらないんだろなぁ。・・しかもそれでいて妙に色っぽい雰囲気あるし私よりおっきな胸してるしー・・」 「い・・色っぽくなんて・・・それに胸は・・・コンプレックスですぅ。。」 「えー?そうなのぉ?」 驚いた顔の友子に子猫はため息ついて頷いた。 「でもぉ山田君は好きみたいだからいいぢゃん。」 子猫は顔中赤くなって、 「もう・・そればっか言わないでぇ。」 と拗ねたように抗議した。 「あはは、ホント可愛いなぁ。山田君が夢中になるはずだよねぇ。」 「大内さん〜・・・」 「みんなが羨ましがる恋愛してるんだからぁちょとくらいいいぢゃん。」 「困りますぅ。。この前だって先生に注意されたばっかだし・・・」 「え?何を?」 「山田君とのこと。。」 「えー?!うそぉー・・・マジ?」 「マジもマジ!しかも・・大内さんのクラスの担任から苦情がきてるって。」 「うちの担任かぁ・・・頭固いもんなぁ。」 「だから山田君にも学校では二人で話すのはやめよう、ってお願いしたとこなんだもん。」 「そうだったのかぁ・・どうりで今日の山田君が機嫌悪そうだったわけだ。」 (そう。。。) だから昨日、ノブはいつもよりも執拗に激しく子猫を突き上げて、子猫もたまらなく腰を動かし、神社であることも忘れて声を出して登り詰めたのだった。後ろにもたれてしばらくは、立って繋がったままの状態で放心していた。ノブは愛おしげに強く抱き締めて子猫の汗を舐めるようにキスをしていた。ノブの肉の塊は勢いをそのままに子猫の中でドクンドクンと脈打っていた。ノブは子猫の息が落ち着いてくると再び腰を動かし始め、奥まで突き上げる度にさっき子猫の中を満たしたノブの激情が溢れ出て股に伝わった。淫靡な音が暗闇の中、虫の声と入り交じって響いていた。 「でも、何で中学生はセックスしちゃいけないんだろね?」 友子の話をぼんやり聞いていた子猫はその言葉にハッとした。 「もう・・・してるんでしょう?」 「・・・え?」 子猫はなるべく動揺してるのを悟られないように務めた。 「って、学校ぢゃ話せないかぁ。ねぇ、帰りどこか寄らない?」 「寄るって・・制服ぢゃぁ・・・」 「そっか。私は気にしないけど・・夢野さんが困るなら一度帰ってから会おうか?」 (何を聞きたいんだろう?) 子猫は微かに警戒してためらったが、友子の表情にはくったくのない笑顔があった。塾のある日でもあったが、テストも終わっていたし休んでもいいかなと思い、 「うん。いいよ。」 と子猫は承諾した。友子は嬉しそうに笑って、 「よかったぁ。実はねぇ、前からもっと仲良くなりたいって思ってたんだ。」 と言った。部活や委員会では必要な会話を交わす程度だったが、子猫も彼女に対しては、嫌な感じは受けたことがなかった。 「猫も。」 「あはは、それそれ!自分のこと猫って言うのも可愛いなぁって思ってたの。私が言ったら変だし、周りが引くだろうけどさ。」 「そんなことないよぉ。猫のは・・・癖だし。。」 「ねぇ・・・私も夢野さんを猫って呼んでいい?」 「うん、もちろん。」 「ありがと!ぢゃぁ、私のことは友子って呼んでね。トモでもいいけどうちでは弟が友成でトモって呼ばれてるから。」 「わかった。よろしくね、友子。」 子猫と友子は笑って握手をした。女子の友達がほとんどいなかった子猫には積極的な友子の明るさが嬉しかった。二人は急いでそれぞれの教室に戻り、帰り支度をすると、一緒に校門を出た。帰る道で待ち合わせの時間と場所を決めて、別れ道ではお互い手を振って別れた。 |
| <27> [ハードロック] |
<27>ハードロック 子猫と友子の二人は帰って着替えると、待ち合わせてバスに乗り、町に出た。友子は子猫より町中に詳しいようで、自分がよく利用するという店に案内した。山田信夫と行くような明るい室内のファーストフード店と違って、狭い階段の壁にはロックコンサートの広告やグループのポスターが貼られ、薄暗い店内にはハードロックが流れていた。来ていた客もそれなりの格好で、ベビーピンクのレース使いが可愛いワンピースを来ていた子猫には場違いに思えた。友子はスリムパンツに衿の広いサマーニットを着ていて、制服の時よりも一段と大人びて見えた。 「どうしよぉ?・・ごめんね。こんな格好で来ちゃって。。」 子猫が不安そうに友子の腕につかまりながら言うと、 「大丈夫だよ。男なんて可愛い子が好きなんだから。」 と笑った。友子はカウンターにいたマスターに手を振って挨拶すると、 「学校の友達の子猫ちゃん。」 と紹介した。 「へぇー・・こんな可愛い後輩を連れて来ていいのかい?悪い遊びを教えちゃダメだぞ。」 40歳は越えてるように見えるマスターはそう言いながらも子猫に優しく笑いかけた。 「やだなぁ。同級生だよ。・・ま、そう見えても仕方ないけど。」 友子が抗議すると、マスターは、 「おっと、失礼。気を悪くしないでね、お嬢さん。」 と子猫に軽くウィンクして、 「お詫びに今夜は何でも御馳走するから、ゆっくりして行ってね。」 と言った。子猫はまだ緊張していたが、 「お邪魔させて頂きます。」 と言ってお辞儀をした。 「アッハハ、いい子だなぁ。まぁ、座って、色々お話しよう。」 と、マスターが席をすすめるのを友子は子猫の手を引くようにして、 「ダメダメ!今日はカウンターじゃなくボックスの方にするから。」 と睨みつけた。 「何だ。残念だなぁ。」 「もぉ!可愛い子だとすぐナンパしにかかるんだから。不良マスター!」 「おーそーかい。なら友子は奢らなーい。」 「いいもーん。兄貴につけといてよ。」 友子はそう言って戸惑う子猫をボックスの開いてる席に引っ張って行った。 「ごめんねぇ。驚いた?」 「・・・うん。」 「マスターっていっつもあの調子だから気にしないでね。」 「うん。・・・友子さんがあんまり慣れてるからビックリしちゃった。」 「さんはいいって。友子!」 「あ、ごめん。」 子猫が笑うと友子も笑い返して、 「兄貴がここでバイトしてるからさぁ。去年の夏くらいから来るようになったんだ。」 と説明した。若いウェイトレスが水とおしぼりを持ってきたので、友子はアイスコーヒー子猫はウーロン茶をオーダーした。愛想なく奥へ行ったウェイトレスの後ろ姿を見ながら、友子は子猫の耳元で、 「彼女もマスターに喰われた一人。」 と小声で言った。子猫はへぇ・・とマスターの方を見た。と、マスターと視線が合って慌てて目をそらした。その様子に友子はおかしそうに笑って、 「ほら、猫に目をつけてる。気を付けてね。」 とまた言った。小声でも店内に流れるハードロックの曲がうるさくて、なかなか聞き取りにくく、子猫と友子はどうしても顔を接近させて話すしかなかった。 「間近で見ると余計綺麗な肌だってわかるねぇ。いいなぁ。」 「友子だって綺麗ぢゃん。」 「これ、ファンデーションつけてるから。・・猫は素肌でしょう?・・う、スベスベェ〜。」 友子は子猫の頬を手で撫でてそう言うと、 「何か・・このままアブナイ道に走ってもいいかも。」 と子猫の頬にキスをした。子猫が困った顔をすると、 「冗談だよー!そんなことしたら山田君を怒らせちゃう。今日なんて担任睨まれてビビッてたよ。」 と思い出し笑いをした。 「それに・・・私もつき合ってる人いるしさ。」 「そうなんだぁ。学校の誰か?それとも大人の人?」 「大人・・でもないかなぁ。でもけっこう年上。もう仕事してるし。」 「あ・・そっかぁ。。それで雰囲気が大人っぽいのかなぁ。」 「どうだろぉ?それはないと思うよぉ。だって、猫ってセックスなんて全然知らないーって顔してるぢゃん。色っぽさは昔っからだけど・・・でも何かHな会話は受け付けないって雰囲気あるしさぁ・・・」 「そ・・そーかなぁ?」 「前はさぁ、何かお嬢様・・てゆーか・・作り物の人形って感じで感情もよく見えないって印象あったけど・・あ・・ごめん・・気を悪くしたらごめんね。」 「・・・ううん。・・・殻に籠もってたとこはあるかも。。」 「誉めてるんだって。」 「・・・いいの。。。」 「マジ!超可愛いーベビードールって感じなんだって!」 「嬉しくないもん。」 「アハ、拗ねないでよ。・・でも山田君とつき合うようになってから色んな表情が見えてきて、それがすっごく親しみ感じてさぁ・・」 友子は頬をふくらませてうつむく子猫の腕に自分の腕を絡めるようにして手を握って、また頬にキスをした。アイスコーヒーとウーロン茶を持ってきたウェイトレスは怪訝な顔でそれぞれの前に飲み物を置いていった。 「・・・レズと思ったかな?」 「友子ぉ〜・・・」 「ふふ、だから冗談だってぇ〜。怒らないでよ。」 「別に怒ってないけど。」 「そっか、良かった。」 友子はアイスコーヒーにストローをさすとブラックのまま飲み始めた。 「ブラックで飲めるんだぁ。。」 「彼の影響かな。ふふ。」 「スゴイねぇ〜。。やっぱ大人ぁ〜。。」 「それってコンプレックスなんだってばぁ・・」 「誉めてるのにぃ・・・」 「なら、これでおあいこだね。」 笑う友子につられて子猫も笑顔を返した。そして子猫もウーロン茶を飲み始めた。 「あ・・でね、その彼といる時に”恋人達の森”から出てくる二人を見ちゃったって訳。」 「え?!」 子猫は思わずむせて咳き込んだ。 「大丈夫だって。見かけたってことは私達も利用するとこだったってことだし。」 「あ・・・」 子猫は納得して、少し安心したものの、耳が熱くなって赤くなるのを隠せなかった。その様子を見て、 「恥ずかしがれるうちがいいよなぁ。」 とため息を吐いた。 「・・・友子はもう付き合い長いの?」 「うん・・まあ、けっこうね。1年以上にはなるな。」 「なら真剣なおつき合いなんだもん。幸せぢゃない?」 「うーん・・・」 友子はまた深いため息を吐いた。 「喧嘩したの?」 「そうじゃないけど・・・だって彼、結婚してるし・・・」 子猫は友子の言葉に胸がギュッと締め付けられるようだった。 「てゆーか・・・姉貴の旦那さん。」 「ほぇ??」 子猫は頭が混乱してきた。 「姉貴?・・・だってさっきは兄貴って・・・」 友子は呆けた顔をする子猫に苦笑してみせた。 「うち4人兄弟なの。一番上が圭子姉貴、次がここでバイトしてる圭輔兄貴、で3番目が私で友子、弟が友成。」 「うわぁ・・・兄弟いっぱいで羨ましい〜・・・」 「賑やかなのはいいけど・・たまにウザくなるよ。それに喧嘩とかすると嫌でも顔見なきゃならないからムカつくしね。」 「でもぉ・・・ひとりぢゃ喧嘩だって出来ないよぉ。。」 「それはそうだけど・・・てゆーか・・驚かないの?」 「え?・・・あ・・・」 「アハハ、だから猫って好き〜。どっかまったりしてるんだよなぁ。」 「うぅ・・・抜けてるって言いたいんでしょう。。」 「違う違う。何か優しい雰囲気がいつもあるからさぁ・・だから話してみたくなったのかも。。」 「・・・ありがと。」 「てゆーか・・・だからさぁ・・・軽蔑しない?」 「軽蔑なんて・・・」 (出来ないよ。だって猫だって・・・) 子猫は心の中でそう思ったものの、告白することは出来なかった。 「この際だから全部言っちゃうけどさぁ・・・」 「・・・うん?」 「兄貴とも関係してるんだ。」 子猫には意味がつかめなかった。真剣に聞く姿勢を保ちながらも、頭の中は意味もわからない状態でグルグル回っていた。友子はそんな子猫を察して苦笑した。 「ちょっと内容がハードだったかぁ。だからぁ・・本当の兄貴ともセックスする関係だってこと。」 これには子猫も驚いて、ポカンとした顔で友子を眺めた。 「彼、つまり姉貴の旦那さんとのことを知った兄貴に叱られてさ・・・別れろって・・・」 「・・・うん・・・」 「姉貴が気付く前に別れろってあんまりキツク言うから・・・姉貴の肩ばかり持って、って・・・」 「・・・うん・・・」 「で・・いろいろ言い争ううちに・・・兄貴・・あんな奴に取られてたまるか!って・・・」 「・・・うん・・・」 「でも・・・結局、彼とも別れられないし・・・兄貴とも・・・」 「・・・うん・・・」 「軽蔑するよね?」 「・・・しないよ。。。」 「アハ、うんって言うかと思った。」 「ちゃんと聞いてるし、ちゃんと考えてるよぉ。。ただ・・・どう言えばいいのか・・・」 「ごめんね。何か・・・猫に話したくなっちゃったんだ。困らせるだけなのに・・・」 「それは・・・猫にはわかんないことだけど・・・でも・・・きっと・・・友子が一番苦しんでるんだもん。・・・軽蔑とかって・・・出来ないよ。」 「猫ぉ・・・ありがとぉ。。」 「何も答えられないけど・・・」 「聞いて貰えるだけで嬉しい。話せるだけで・・・何か少し楽になるみたい。」 「そっか・・・」 「うん・・・」 友子は子猫の腕を取ってもたれかかってきた。 「ごめんね。・・猫の甘い雰囲気に甘えてみたかったのかも知れない・・・」 「・・・友子・・・話して気が済むならいつでも聞くから・・・」 「ありがとぉ。。」 友子は目を閉じて大きく息をついた。子猫はハードロックの騒音と聞いたばかりの話で頭が混乱し目眩を覚えていた。 |
| <28> [再びココア] |
<28>再びココア 友子の兄圭輔は大学3年で仲間とロックバンドを組んでいた。そして友子の案内した店で一晩数回のミニライブとその合間に店の仕事の手伝いをしていた。子猫のいた時間にはまだ店に来ていなかったが、頭痛がしていた子猫は、 「ごめん。今夜はもう帰らなきゃ。。」 と、圭輔には会わずに店を出た。一人で帰れるから大丈夫、と言う子猫に、友子は子猫の顔色が悪いのを気にして、心配だから、と一緒に店を出た。クーラーの効いた店内から外に出ると、まだ町中はムッとする熱気があった。が、子猫は冷たい汗をかいていて、時々淀んだ風が通る度に寒気がしていた。 子猫はバス停のある通りに向かう途中、何度か目が眩んで立ち止まった。 「ごめんね。私のせいだよね?気分悪くさせちゃった?」 友子が心配そうに子猫の顔を覗き込んで言った。 「ううん。そうぢゃないの。・・・音に弱くって・・・音酔いしちゃうみたい。」 子猫は少し青ざめた顔だったが、なるべく友子を不安にさせないように笑ってみせた。音の大きさで言えば、”恋人達の森”もかなり大きな音で曲を流していたが、人の歌声と違ってあのハードロックの耳障りな機械音が体質に合わないような気がした。 「そっかぁ。・・・だよねぇ。私も兄貴が始めた頃は喧しくてただの騒音にしか思えなかったもん。」 「猫こそごめんね。せっかく誘って貰ったのに。。それにお兄さんにも会えなかったし・・・」 「いいって。気にしないで。兄貴にはまた別の時紹介するからさ。」 「うん。」 「あ・・ねぇ、何か飲む?落ち着くかも。」 自動販売機を見ながら友子が聞いた。 「うん。そうしよっかな。」 さっきの店ではウーロン茶を半分しか飲めなかった子猫は友子に言われて販売機に向かった。暖かい飲み物が欲しかったが、すでに真夏といえるこの時期には全てが冷たい飲み物で埋まっていた。それで子猫はアイスココアを選んで買った。友子もコーラを買って、二人は近くのもう閉店している店舗の入り口の階段に座って缶を開けて飲み始めた。それほど甘い物が好きな方ではない子猫だったが、ココアの甘さは気持ちを穏やかにしてくれるようで好きだった。 まだ遅い時間ではなかったが、仕事帰りのサラリーマンと思える人達が二人を興味深げに観察しながら通り過ぎて行った。子猫は早く飲みきってバス停に行きたかったが、冷たいココアはゆっくりと含むようにしか飲めなかった。 「ねぇ、君たち。誰か待ってるの?」 「良かったら一緒に食事しないか?」 「おじさん達が奢ってあげるから。」 さっきから立ち止まってこっちを眺めてた背広姿の3人連れが声をかけてきた。 「悪いけど私達そんな気ないですから。友達が気分悪くなってちょっと休んでるだけです。」 きっぱりと言った友子に背広の男達は顔を合わせて肩をすくめて笑い、更に、 「こんなとこで休むより、もっといいとこで休ませてあげるから。」 「そうそう。おじさん達が優しく介抱してやるよ。」 と言ってきた。初めは丁寧に断っていた友子だったが、諦めようとしない男達に次第に声を荒くしていった。子猫は萎縮して言葉を失い、言い合う双方を戸惑いながら見てるしか出来なかった。 子猫が泣きそうに、ムキになって文句を言う友子の腕をつかんだ時、 「おらおらおらおらおらぁぁぁぁーーー!!」 とトーンは高めだったが、迫力のある声が男達の後ろで響いた。 「てめぇ等何してやがんだぁ?あぁぁぁ??」 男達はギョッとして後ろを振り向いた。 「おらおら!そこをどけぇぇー!!おめぇ等よぉ!!」 「な・・何なんだ?君は?」 と抗議するように言いながらも背広の男達は後ずさりしていた。 「っざけんじゃねぇぇぇーー!!おめぇ等こそ何なんだぁぁ??あぁぁ??」 「き・・君には・・か・・関係ないだろう?」 「俺の女に手ぇ出されてぇー関係なくはねぇーだろーがよぉぉ!!」 長身のその少年は綺麗な顔とは対照的な凄味のある目で睨みつけていた。 「やろうってのかぁ?いいだろう!やってやろーじゃんかよぉ!!こいつをおめぇの汚ねぇ口に突っ込んでぇー奥歯ガタガタいわしてやっからよぉー!!」 少年が拳の指をポキポキ鳴らしながら一歩前に出た時、背広の男達は一斉に走って逃げ出していた。 「あっはっはー!二度と俺の前に面出すんじゃねぇー!バーカ!!」 少年は走り去る男達の後ろ姿に唾を飛ばすと、子猫の方を向いて近付いてきた。よく見ると少年の数歩後ろには見るからにヤンキーとわかる少年達が取り巻いていた。 「よう、子猫。久しぶりだなぁ。」 「・・・翔。」 さっきから唖然としてた友子は更に目を見開いて子猫と翔を見比べた。 「こんなとこで何やってんだよ、バーカ。」 「だって・・・」 子猫は頬をふくらませて口を尖らせた。 「あっはっはー!相変わらず可愛い奴だなぁ。可愛いのは俺好みでいいけどなぁ、そんなフリフリの服着てこんなとこいたら、さぁ喰ってくれって言ってる赤ずきんみたなもんだぜ。」 翔は言葉こそ乱暴だったが、くったくのない笑顔は優しい眼差しになっていた。子猫の前に長身をかがめてしゃがむと、 「気分悪いのか?」 と声のトーンを落として子猫の髪を撫でた。 「ちょっと・・・休んでただけ。」 「送ってってやろうか?」 「冗談!もう翔の後ろには絶対乗らない。」 「あっはっはー!みんな俺の後ろに乗りたがるのになぁ。俺が乗せてやったたった一人のお前がそんなことを言ったら、女共が抗議するぜ。」 「てゆーか・・いつから猫が翔の彼女になったわけ?」 「バーカ。あれは枕詞みたいなもんだ。気にするな。」 「でも誤解されたらヤダもん。」 「誰に?」 「友子。」 「お?・・・あはっ、そうかそうか。こっちの子も可愛いと思ってたんだけどな。化粧してなきゃいいんだけどなぁ。・・友子っつーのか?・・俺はまだ彼氏ぢゃない子猫の男・・」 「翔!」 「つーか、未定だがいつかは手に入れるつもりでいる翔太郎。この辺ぢゃ俺に逆らう奴等はいねぇ。困った時には声かけてくれればいい。ただし、俺達の方が危険な狼になりかねねぇかも。ふっ・・・ま、子猫の友達には手出ししないように言っとくし、そう怖がらずによろしくな。子猫と同じに翔って呼んでくれていいぜ。」 「あ・・はい!よろしくお願いします。」 友子は目を輝かせて翔を見つめて答えた。 「あの・・何度か見かけたことあるんです。それに名前・・てゆーか噂はよく聞くし。」 「へぇー。で、俺に憧れてたとか?」 「ええ!」 友子は頬を赤くして頷いた。 「はっはー!モテる身が辛いぜ。・・抱いてやってもいいが・・俺が抱いた女はこいつ等にも回すことにしてるんだ。子猫以外はな。・・そんなことしたら子猫に泣いて抗議されそうだ。子猫を泣かす奴は俺は絶対許せねぇ。俺自身がそんな最低の男にはなりたくねぇから・・悪いな。」 「あ・・別にいいです。憧れてるだけだし・・お話出来ただけで嬉しいから。」 友子はちょっと肩をすぼめて笑ってみせた。翔はふん、と鼻で笑うと子猫の方に向き直り、 「これでいいか?」 と言った。何か納得出来なかったが、子猫は仕方なく頷いた。 「つーか・・いつまでもそこに座ってても体に悪いぞ。マジ送ってやるから。タクシーで。」 「・・・でも・・これ・・・」 子猫は一方的な翔に押され気味ですぐに言葉が見つからず、飲みかけのココアをちょっとあげて見せた。 「何だ。またココアか?」 翔は笑って子猫から缶を取り上げると、一息に飲み干した。 「ゲーーー!・・ったく甘いぜぇ。」 苦笑しながら翔は子猫の体を支えるようにして立たせた。友子も急いでコーラを飲み干すと立ち上がった。 |
| <29> [テディーベア] |
<29>テディーベア 翔は先に友子の家にタクシーを行かせたので、友子にはその後の二人が気になって仕方なかったらしく、子猫が家に帰ってすぐに電話して聞いてきた。子猫は翔から携帯電話の番号を渡されていたが、それには触れず、別に普通に送って貰っただけだと答えた。居間の電話はすでに帰宅し台所にいた母親に聞かれる恐れがあったので、2階の子猫の部屋の子機からかけ直すことにした。 友子の話では翔はかなり有名な存在らしい。高校生の不良でもかなわないらしく、翔の仲間のかずが言ってたように、時々やくざ相手にも喧嘩をふっかけては痛めつけて楽しんでると言う傍若無人な奴だった。それでも女性からの人気が高く、女子高生の間ではTVのアイドル以上でファンクラブやおっかけもいるということだった。 その翔と’ガラスケースの人形’とまで言われてるおとなしい子猫が知り合いだったことは友子を驚かせても当然だった。それで、子猫は簡単に翔との経緯を話した。心臓の欠陥のことを話してもいいものか迷ったが、それを抜きにしては翔と子猫の不思議な連帯感は説明出来ないと思いおおまかに話すことにした。それで友子も納得して、 −「そうだったんだぁ。」 と電話の向こうで息をついた。 −「でもさぁ、向こうは猫を彼女にしたがってたぢゃん?」 −「きっと冗談だよぉ。すぐからかうんだもん。」 −「冗談かなぁ?」 −「だってぇ・・いくらだって女の子達が周りにいるんだしぃ・・」 −「本気だったらどうするぅ?」 −「ヤダヤダァ・・・絶対冗談なの!」 −「まぁねぇ・・猫にはもう山田君がいるんだし・・山田君もそれなりにカッコイイけどさぁ・・全然彼の方が素敵ぢゃん。」 −「えぇー・・・友子ってそーゆー趣味?」 −「ふふふ、けっこうね。」 −「うーん・・・どぉなんだろなぁ・・・だって彼女もういる感じだしぃ・・・」 子猫はあの病院を抜け出した夜に見た銀髪の少女のことが頭をよぎった。 −「そっかぁ。やっぱそうだよねぇ。」 −「しかもレディースの取り巻きもいるし・・・全然つき合うとかって発想の浮かぶ相手ぢゃないもん。」 −「でも友達にはなってみたいかなぁ・・って。ふふ。」 −「友達かぁ・・・」 子猫も本心を言えば決して翔を嫌いではなかった。翔の奔放な明るさは暗い殻に籠もっていた子猫を明るい光の中に引き込むような感覚だったし、強さに裏付けされた大胆不敵さは子猫とはあまりにも対照的で憧れさえ抱いた。が、子猫には真夏の太陽のように眩しすぎる存在だった。それに子猫は翔の取り巻きの女性達を敵にする勇気などとてもなかった。だから、例え本気で好きだと思われていたとしても、冗談で受け流すしか出来なかった。 −「ねぇー、今度その店に案内してぇ。」 −「え?」 −「だからぁーその翔のよく行くらしい店。」 −「うっそぉー・・・」 子猫は思わず首をぷるぷるぷると振った。 −「ヤバイって。とても近付ける場所ぢゃないよぉ。」 −「そう?」 −「それに・・・全然場所覚えてないもん。」 −「あは、ぢゃぁダメぢゃーん。」 −「うん。ごめん・・」 −「仕方ないかぁ。じゃぁまた偶然会える時を期待するかぁ。」 −「会わなくていいってぇ。。」 −「あ、ねぇ猫ぉ。」 −「なぁに?」 −「今度の週末遊ばない?土曜か日曜どっちか・・てゆーか日曜は山田君の試合あるんだっけ?猫は応援?」 −「まだわかんないけどぉ・・・多分。」 −「そっか。じゃぁ土曜日はいい?」 −「昼間ならいいけど・・・」 −「夜までは無理?」 −「うん。ちょっと用事が・・・」 −「そっか。いいよぉ、昼間だけで。洋服買いたいなぁって思って。猫が行く店とか行ってみたいし。」 −「うん。わかったぁ。ぢゃぁ猫も何か買うかなぁ。」 子猫と友子はそれからしばらく話して、お互いお休みを言うと電話を切った。 電話の後で子猫はベッドにぐったり横になった。色々あった長い一日に疲れきっていて、帰ってすぐ薬を飲んだものの頭痛は今も治まらず頭を重くしていた。それでも、あまりにも多くのことがあった一日に興奮していてすぐには眠れそうになかった。 子猫は怠い体を起こしてなるべく可愛いネグリジェを選んで着替えた。ギャザーがいっぱい入ったレースの薄いベビードールはお気に入りのひとつで寂しい夜にも着ることがあった。子猫は可愛いものに囲まれていると父親の優しい温もりを思い出し気持ちが安らぐのだった。そして、いつも抱っこしているテディーベアにはパパの匂いが残っているように思えた。 テディーベアを抱き締めてベッドに横になり目を閉じると、パパがいつものようにすぐそばで子猫を優しく見守り、微笑んでいるような気がした。が、目を開けてしまえばパパの笑顔がかき消されてしまうことも承知していた。 子猫は薄いレースの上から胸をそっと撫でてみた。胸は指先の動きに反応してすぐに乳首がたってきた。片方の手で乳首をクリクリと回すように摘みながら、もう一方で抱いているテディーベアに顔をこすりつけて匂いを嗅いだ。 「パパ・・・パパ・・・・」 子猫は小さく呟きながら胸を愛撫し続けた。本当の兄貴とも・・・と、友子の言った言葉が脳裏をよぎった。子猫の秘部がビクビクと反応し、花弁からとろっと熱い蜜が溢れ出るのを感じた。 (パパに抱かれてみたかったな。。。) 子猫は感じながら声を殺して息を吐いた。 (パパとひとつになってみたかった。。。) 胸がキュンと切なくなって、体が芯から疼いた。 (もしも・・猫がおねだりしたら・・・パパは抱いてくれたかなぁ・・?) でも、それはありえないことだった。父親が生きていた頃は、子猫にとって肉体関係というものは遠い大人の世界の出来事であって、自分とはまったく縁のないものだった。 子猫にとって父親はガラスケースだったのかもしれない。外界から遮断された空間はお伽話や夢物語がいっぱいに詰まっていて不幸の存在しない世界だった。仮に悪者が登場しても必ず正義のヒーローが退治してくれた。ガラスケースの中にいればイジメも怖くはなかった。ガラスを通して見る世界はどこかぼやけていて、現実味がなかったように思える。子猫が孤立していたのはある部分では、子猫自身が温室のようなケースから出ようとしなかったことにも原因があったのだろう。今ならそれがわかる気がした。 ガラスケースが砕け散った時、無数の破片が子猫に突き刺さり、傷ついて剥き出しになった子猫にいっきに現実という荒々しい風が吹き付けてきたのである。熱くもあり、冷たくもあり、くすぐったくもあって、痛くもある、世間という風は、子猫には受け止めきれないほどに圧倒的で、翻弄されるままに身を任せるしかないようだった。父親の腕の中に逃げ込みたくても、もう決して叶わないのである。夢でなら父に抱かれることも出来るかもしれない。が、それはあまりにも虚しい思いだった。 「・・・ヒロ・・・・・」 パパに似てるわけではなかった。でも温かな温もりと安心感があった。少なくとも子猫にとっては、今、誰よりもそばにいて欲しい存在だった。 「ヒロ・・・ヒロ・・・」 子猫は萩原の太くて逞しいモノを思い出して、激しい疼きと飢えを感じた。太股をキツク合わせて、萩原に抱かれた時のあの感覚を思い出す。 「ぁ・・・ぁぁぁ・・・」 テディーベアに顔を押しつけて声を殺し、絶頂を感じた。静かな心地よい疲労感がゆっくり体を覆っていき、子猫は胸に抱いたテディーベアと夢の中へと誘われていった。 |
| <30> [ミルク] |
<30>ミルク 萩原が煙草をゆっくりと吸いながら、子猫の額から頬、耳、顎へと指でなぞるように愛撫する。子猫は枕に半分顔を埋めて、ぐったりとベッドに裸体を横たえていた。 何度登り詰めただろう。萩原に馬乗りになった子猫は自らも激しく腰を動かし、髪を振り乱してのけ反り、貪るように快楽に溺れた。喘ぎ声は情けないほどに幼さを残し、甘えて鼻にかかった声がいっそう子供っぽく感じられた。すすり泣く駄々っ子をあやすように、萩原は優しく宥める一方で、一層強く深く子猫を突きあげた。絶頂の中で子猫は自分と萩原の雄叫びを聞きながら、意識をまばゆい光の中に開放した。 子猫の顔から一端離れかけた萩原の左手を捕まえた子猫は、両手で包むようにして頬ずりをした。ベッドに起きあがって背中をもたれかけて座っていた萩原が子猫を見て笑いかけた。 「お帰り。」 子猫は枕に大きく息をつくと、顔を上に向きかえて、捕まえたままの左手を胸に抱きかかえて、 「・・・ただいまぁ・・・」 と拗ねたように返事を返した。しばらく会話もなく子猫は萩原の左手にじゃれて遊んでいた。 「ぁ・・・・ぁぁ・・・・・」 子猫の様子が変わったことに気付いた萩原は煙草を灰皿に捨て、ベッドに横になり子猫を胸に抱き寄せた。子猫はわけがわからずに、萩原の腕の中で喘いで震えていた。 「大丈夫・・・いいんだ。・・・そのまま感じて。・・・大丈夫だから。」 子猫は自分に何が起こったのかわからないまま、押し寄せる快感の波によがり声を洩らした。 「ぁぁぁ・・・ぁあああぁぁ・・・」 快感の波は津波のように押し寄せて子猫を飲み込んだ。子猫は萩原にしがみついて絶頂に達し、それからしばらく呆然としていたが、息が落ち着いてくると同時にすすり泣き始めた。 「いい子だ。泣かなくていいんだよ。・・・よしよし。」 「・・・だって・・・だって・・・」 「後産だったんだろう?」 「・・・え?」 「ハハ、知らないか。・・・いっぱい感じると後からその感覚がぶり返してくるのさ。」 子猫はまだしゃくりあげながら戸惑っているようだった。萩原はキスをくり返して子猫が落ち着くのを待ってから、 「そこまで感じて貰えて嬉しいよ。」 と真剣な眼差しで言った。 「若い子でそこまで感じる子は滅多にいない。否、むしろ一生後産を知らないままの女の方が多いんじゃないかな?」 「クスン・・・恥ずかしい・・・」 「恥ずかしがることないさ。感度がいいってことは最高だよ。僕としても教え甲斐があるしね。」 「・・・嬉しくない・・・」 子猫は時々萩原が他の女性と比べる言い方をするのが切なかった。これまでの萩原の女性遍歴の豊富さを裏付けているようで、自分も遊ばれている一人なのかと不安になるからだった。今は優しい萩原が、いつか冷たく背を向けて去っていってしまうのではないかと思うだけで悲しくなった。 「・・・猫のこと・・・嫌いにならない?」 「なるもんか!ほら・・・」 萩原は子猫の手に自分の熱く勃起しているモノを握らせた。 「あんまり可愛く感じているから・・また抱きたくなって・・ビンビンだろ?」 子猫は手を動かしながらコクンと頷いた。 「君の熱く蠢く肉襞に吸い付かれて痺れるほど締め付けられたいって言ってる。」 「・・・言ってないよぉ・・・」 「ん?・・おかしいなぁ・・僕にはちゃんと聞こえるぞ。」 「・・・もぉ・・・」 「顔を近付けて・・・聞いてごらん。」 子猫は萩原に促されるままに、そそり立つ赤黒い肉の棒に顔を近付けた。 「ほら、キスをして欲しがってるよ。」 子猫は左手で握りながら、恐る恐るキスをした。どくんっと脈打ち手の中で一段と膨れたように感じた。 「そう、その盛り上がってる筋にそって唇を動かしてごらん。ハーモニカを吹くようにね。」 子猫が口を上下に動かしながら息を吹くと、 「アハハ、実際に吹かなくていいんだよ。」 と萩原が笑って、子猫の髪を軽くつかんだ。 「そうだなぁ・・・ソフトクリームを食べる時のように舐めてみようか。」 子猫には思い切り躊躇いがあった。 「どうした?」 「だって・・・さっき・・・猫の中に・・・」 「そうだよ。子猫ちゃんの蜜の匂いがまだするだろう?・・・それとも僕のミルクの匂いかな?」 萩原は子猫の髪を撫でて待っていたが、子猫がなかなか言われた通りにしないので、 「嫌ならいい。」 と、大きくため息をついた。 「・・・嫌じゃない・・・」 子猫は萩原を怒らせてしまうのが怖かった。言われた通りに筋に舌を這わせ、唇も上下に動かした。よだれで萩原のモノも子猫の手も口もベトベトになった。 「そうそう、いい子だ。・・・ほら、先がヌルヌルしてるだろう?・・・舌ですくって舐めてごらん。」 萩原は熱い息を吐きながら囁くように子猫に指示を出していた。子猫が舌の先を先端のくぼみに差し込むように滑らせると、 「うぅぅぅ・・・」 と、声を漏らしてのけ反った。子猫の口には青臭い香りと共に苦みが広がっていった。 「・・美味しい?」 「・・・苦いー・・・」 「すぐに好物になるさ。ハハハ。」 萩原は子猫に次々と指示し、子猫は言われるままに従って舐め続けた。カリの周りをグルグルと舌を回転させたり、くびれてる部分を舌を差し込みつついたりした。そして、すっぽりと口にくわえて、頭を上下させて吸い上げるように扱くことも教えられた。 「もっと深く・・・もっと奥まで・・・」 萩原は時々たまらなそうに子猫の髪をキツクつかむと、腰を浮かせて小刻みに動かし子猫の喉の奥まで突いてきた。子猫は何度か吐きそうになりながらも必死で堪えた。 「あぁ・・・うぅ・・・はぁぁ・・・」 萩原は指示するより喘いで悶えるように体を捻ることが多くなった。子猫はいきり立ったモノを両手でつかんで扱くのと同時に、なるべく奥までくわえ込んで上下に擦りあげた。頭がぼぉーっとしてくる中で子猫は口が犯されているような気がしてきた。そして、それは支配されることの快感をともなっていた。泣きたいほどの苦しさの中、子猫は悦楽の世界に浸っていった。 「はぁ・・はぁ・・あぁぁ・・ぐぅぅぁぁぁああああーー!」 萩原の熱いミルクが口の中いっぱいに迸った。子猫はそれを喉を鳴らして飲み込んだ。すでに子猫にはこの青臭いミルクがかけがえのない栄養分に思えていた。 萩原の腕の中でじっと息を整えながらも、子猫は何度か強い吐き気に襲われ、ギリギリのとこで我慢した。この日、夕食を抜いてなかったら、おそらく胃の中の全てを戻してしまっていただろう。友子との買い物が思った以上に時間がかかり、一緒に食事する間もないまま別れた。萩原には食事を友達とすませてから会うと言ってあったのだ。 「辛かったかい?」 萩原は子猫の髪を優しく撫でながら聞いてきた。 「・・・少し・・・でも、平気。」 「大人のミルクは好きになりそうかな?」 「・・・うん。。」 「ハハハ、それは良かった。・・・しかし・・君はスゴイ子だな。」 「・・・何?」 「初めてであそこまで出来るなんてさ。」 「・・・ヒロがさせたくせにぃ・・・」 「いや・・教えても教えきれない部分があるんだが・・・タイミングや感じるポイントをしっかりつかんでいる。・・・どうやら君のお口も名器と言えそうだな。」 「・・・他にもいるの?」 「ん?」 「・・・つき合ってる人。」 「そうだなぁ・・・」 萩原は天井を眺めながら、子猫を抱いているのとは反対の手で髪を掻き上げた。表情から笑いが消えてため息をつく萩原の様子に子猫は胸が締め付けられた。萩原は不安げに見つめる子猫の視線に気が付き、ふっと笑みをこぼすと額と瞼に軽くキスをした。 「今はいない。君だけだよ。」 「・・・今?」 「君と付き合い始めた頃にはいたけどね。」 「・・・別れたの?」 「まぁ、向こうも遊びだったから潮時だったんだろうな。」 「・・・猫も・・・遊び?」 「本気で惚れたって言っただろう?・・・だから別れたのに、信じないのか?」 萩原の真剣な眼差しに怒りがよぎった。 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」 子猫は涙ぐんで萩原にしがみついた。 (裏切ってるのは猫の方かも。。。) 子猫は自分の後ろめたさを隠すように、瞳を揺らめかせて甘えるように萩原を見つめ、 「だって・・・すぐ他の人と比べるように言うんだもん。。。それが・・・悲しかったのぉ。。。」 と鼻にかかる声で小さく言った。 「あ・・・そうか。ハハ、そうだな。それは僕が悪かったようだ。ごめん、子猫。」 萩原はぎゅぅーっと子猫を抱き、 「君があんまり素晴らしいからね・・つい感動して言ってしまったんだ。」 と、子猫の顔中にいっぱいのキスをした。 「これからは気をつけよう。本当に・・・君を大切に感じている。大事につき合っていきたいんだ。・・・信じてくれるね?」 子猫は頷いて、萩原の顎のラインに沿ってキスを繰り返した。萩原は目を閉じて感じながら、 「あぁ・・・本当に君は可愛いよ。」 と、かすれた声でつぶやいた。 |
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