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子猫白書

<31>〜<35>

<31>
[外泊]
<31>外泊

 すでに時計は夜の11時になろうとしていた。子猫は躊躇いながら携帯の電話の数字を押していく。呼び出し音が聞こえ、子猫は息を整えるように深呼吸した。3回目の呼び出しの途中で先方が出てくれた。
−「はい。大内です。」
声で友子だとわかったが、念のため子猫は丁寧に挨拶をした。
−「夜遅くに申し訳ありません。友子さんと同じ中学の夢野子猫といいますが・・」
−「あぁー!あはは、猫ぉー?どうしたのぉ?」
子猫が全部言い終える前に友子の明るい声が返ってきた。
−「あ・・友子・・・ごめんね。こんな遅い時間に・・・」
−「平気、平気。うちはほら、兄貴が遅いし、夜に友達からの電話も多いから。」
−「そうなんだぁ。。良かったぁ。。。」
−「それより・・どうしたのぉ?」
−「うん・・あのね・・・」
子猫は言い出しにくく言葉に詰まった。が、友子の明るい声に意を決した。
−「詳しいことは後でちゃんと説明するけどぉ・・・」
−「うん。何?」
−「あのね・・今夜、友子の家に泊まったことにして欲しいの。」
−「え?・・あ・・それって・・・あれ?」
−「うん。」
−「そっかぁー!あははははは」
友子は電話の向こうで盛大に笑った。
−「OK!OK!・・あ!そしたら猫の家に電話しといてあげよっか?連絡ないままだと帰った時に怒られるかも・・でしょう?」
−「う・・ん・・いいのぉ?」
−「大丈夫。期末も終わったし〜ゆっくり夏休みの相談をしたいから、って言っておくね。」
−「うん。ありがとぉ。」
−「ただぁーし、後でちゃんと報告すべーし!」
−「うん、わかったぁ。」
−「なんてね。あはは。・・頑張ってねー!」
−「うん。」
友子は手短に話を切り上げて電話をきってくれた。子猫は携帯を胸に抱くようにしてフゥーッと深い息をついた。

 萩原の携帯をサイドテーブルに置いた子猫は、ベッドに潜り込み、萩原の腕の中に収まった。まだ、電話の緊張と興奮でドキドキしている子猫に、萩原は頬ずりして背中をさすった。
「よかったぁ・・・今夜は・・・どうしても・・・一緒にいたかったのぉ・・・」
子猫がつぶやくように言うと、萩原は、
「僕も帰したくなかったよ。」
と、子猫の額に唇を押し当てて言った。
「君はもっと僕に甘えていいんだ。・・君がどうしても週末しか会えない、って言うから我慢してきたけど・・本当は毎日でも会いたいし、毎日抱きたい。」
「・・・だってぇ・・・」
「中間テストが悪くてママに外出禁止令を出されたんだろ?・・わかってる。僕の我が侭が君を困らせたんだ。反省したよ。」
「ううん、違うってばぁ・・新学期に遅れたせいだもぉん。」
「どっちにしてもだ、君がまだ中学生なんだって事実を突きつけられて・・痛かったよ。」
「・・・ごめんなさい・・・」
「ハハ、君が謝ることじゃないだろ?・・ただ、いっそう責任を感じてるってことだよ。ん?わかるかな?」
「・・・うん。」
子猫は鼻が擦れ合うほど間近で萩原を見つめた。かつてそこにはパパの顔があった。萩原を父親の代わりには出来ないことぐらい承知している。でも、お互いの息を感じながら、一緒に朝まで眠れるのが嬉しかった。朝、目覚めた時の独りぽっちの寂しさを感じないでいれるのだ。
「夏休みに入れば、もっと会えるようになるだろう?」
「うん。・・・多分。」
「こらこら。多分はないだろう。」
萩原はずっと触って揉んでいた子猫の胸の突起を摘んで、キツクひねった。子猫の体に痛みと共に電流のような快感が走った。
「・・・ぁ・・・ぁ・・・ん・・・」
「2泊・・・は無理でも、泊まりで何処かに連れて行ってやりたいと思っているんだ。」
「え・・・ホント?」
「ああ。泊まりでなら行動範囲も広がるしね。」
「わぁーい!マジ超ー嬉しいー!」
「アッハハハ、そーゆー顔はまだまだ子供だなぁ。」
「子供でいいもぉーん。」
「君がイク時の表情はエロスの巫女のようなんだけどなぁ。」
「エロス・・?の・・巫女??」
「フフフ、まぁ、いい。・・それで?行けるようかな?」
「行くぅー、行くぅー、行くぅー。」
「んー・・・そのセリフは甘い絶叫で言うもんだぞ。ハハハ。」
「イクゥ〜イクゥ〜イクゥ〜!」
「アッハハ、よしよし。いい子だ。・・それじゃぁ、可能な日とかをピックアップさせておきなさい。いいね?」
「うん!」
「あぁ・・・ホントに可愛くてたまらないよ。ホルスタインのようにミルクタンクが破裂しそうだ。」
萩原は子猫の上に覆い被さるようにして熱いキスをしながら、再び子猫の中へと突入した。
「今夜を4つ目の記念日にしようね。」
子猫の両足を肩にかけて腰をゆっくり動かしながら萩原は熱い吐息と共に言った。
「ぁン・・・ぁぁ・・・ぁン・・・よ・・・っつ・・?」
子猫は切なくよがりながら、やっと聞き返した。
「そぅ・・・はぁぁ・・・ひとつ!」
「あぁぁん。。。」
萩原はグッと深く突き上げて言う。
「初めて君と出会った日。・・・ふたつ!」
「あぁぁ・・」
「君の処女を奪った日。・・・みっつ!」
「あぁぁぁー・・・」
「君のバースディー。・・・よっつ!」
「あああぁぁぁぁぁ・・・」
「君の初めてのフェラと・・・外泊の記念だよ。」
「・・・ぅ・・・ぅン・・・わか・・・ったぁ・・ぁ・・・あぁぁぁあああ・・・」
萩原の腰の動きが早くなって子猫は背中が浮くほどのけぞった。萩原は子猫の足を肩に上げさせたまま、腕を背中に回して子猫に乗りかかるように抱き締めた。
「これからも・・君と僕だけの記念日を・・いっぱい・・作っていこうね。」
「・・・・・ぅ・・・ン・・・・」
苦しい体勢に子猫がやっと返事を返すと、萩原は子猫の両足を束ねるように持って回転させ、今度は横になった後ろから子猫を抱き締めた。子猫の耳に熱い息がかかる。
「今夜の記念日を忘れないように・・・」
「・・・うん・・・」
「繋がったまま眠ろうね。」
「・・・う・・・?」
「この体勢で君の中に出すから・・・そのまま抜かないで寝よう・・・いいね?・・・」
「あ・・・うん・・・ぅぅ・・ぁぁぁ・・・ぁぁんん・・・」
「いくよ。」
「・・ぅン・・・」
萩原は呻き声を洩らしながら一段と動きを早め、子猫をきつく抱き締めて放出した。背中にピッタリ重なった萩原の胸がしばらく大きく息継ぎをしていた。それから、片足で子猫の足を固定するようにかぶせ、なるべく体を動かさないように布団を引き寄せて二人の繋がった体にかけた。
「お休み。・・子猫。」
「うん・・・お休みなさい、ヒロ。」
子猫は重なった背中の熱さと萩原の腕と足の重みを心地よく感じながら、次第に眠りに落ちていった。

 朝方、子猫は寝返りをうとうとして体の自由がきかないことに気付いて目を覚ました。初めのうち、ぼんやりした意識で部屋を眺めていた。それから、次第に体の感覚が戻ってきた。萩原の腰はぴったりと密着していた。
(そっか・・・繋がったままなんだ・・・)
子猫の膣がピクピクと反応する。子猫は存在を確かめるように軽く締めてみた。萩原の胸が動いて大きく息を吸った。萩原は顔を擦りつけるように子猫の髪に頬ずりをして、首筋から肩へとキスをしていった。子猫の中のモノが存在を主張し始めた。乾いていた花弁が吸い付くように張り付いていた存在の変化に攣れるような痛みを感じた。
「・・・ンン・・・」
「大丈夫・・すぐ濡れてくるよ・・」
萩原はすっかり固さを取り戻したモノを微妙に動かして、子猫の中で動きやすいように蜜を誘った。しばらくするとなめらかに滑らせることが出来るようになり、子猫はようやく痛みが薄れてホッとした。が、固く反り返った存在が、まだ目覚めきっていない子猫の体内を容赦なく押し広げながら肉襞を擦り上げた。体の反応に意識が付いていかないのぼせた状態で子猫は萩原に身を任せていた。

 夏の太陽が天頂近くまで登り、ギラギラと照りつけるまで、萩原は子猫を放さなかった。
 途中、子猫がトイレに行きたいと言った時も、浴室で用をたすように指示した。が、それは無理なかったかもしれない。子猫がおしっこを出そうとした瞬間、あまりの痛みに小さい悲鳴すら上げてしまった。クリトリスが腫れて尿道が狭くなっていただけでなく、繰り返し愛し合った部分におしっこがしみるのだ。萩原は洗面器にお湯をはって、そこに股を浸しながらすることを教えた。
 ようやくトイレをすませることが出来、備え付けの冷蔵庫からポカリスェットを出して飲んでいた子猫の横で、栄養ドリンクを一気に飲み干した萩原は、
「よぉし!ファイトー!イッパーツ!でいくぞー!」
と言って笑い、そのまま子猫を抱きかかえてベッドに戻った。
 昼近くなって萩原の携帯の呼び出しで子猫は自分が再び眠っていたことに気が付いた。萩原は事務的に受け答えをして、
「いや、昼は出先で食べるからいい。・・・・・ああ・・・それじゃ。」
と、手早く電話を切った。そして、子猫が目を覚ましたことに気付いて、
「お姫様のお目覚めかな?」
と額にキスをし、
「お腹が空いただろう?・・風呂に入ってサッパリしたら、美味いもんを喰いに行こう。」
と笑いかけた。子猫はチリリと痛みが胸をかすめたが、うん、と何事もないように頷いた。
<32>
[報告]
<32>報告

 子猫が萩原に送られて帰宅したのは2時を回っていた。母親は出かけているようで姿が見えなかった。子猫は服を着替えると、友子に電話してみた。すぐに電話口に出た友子はじっくり理由を聞きたいから、と子猫の家に行きたい、と言ってきた。子猫も電話で話すよりは会った方が話しやすいと思い、家の場所を説明した。そして、15分かからないで友子は子猫の家に到着した。
 真夏の太陽の照りつける中を走ってきたと言う友子に、子猫はかき氷を作って出した。子猫も体の火照りがまだ冷めずにいたので、冷たい氷の食感が気持ちよかった。二人はシャクシャクシャクと音を立ててシロップになじませながら、プラスチックのスプーンですくって食べた。
「それでぇ・・・話してくれるんでしょう?」
さっきから子猫の様子を観察するようにじっくり見ていた友子が焦れたように聞いてきた。
「・・・うん。」
「相手は・・・山田君じゃないよね?」
「・・・うん。」
「遊び?」
子猫は首を振って、訴えるように友子を見た。
「だよね。遊びなら外泊することないし・・・ぢゃぁよっぽど好きな人ってことかぁ。」
「・・・うん。」
子猫は頷いてから小さくため息を吐いた。そして、萩原の名前は伏せていたが、友子の彼と同じ家庭のある人だと告白した。
「そっかぁ・・・小さい子がいるんだぁ。。辛いよねぇ。。」
友子は大きく息をついてテーブルにぐったりともたれかかった。
「姉貴もさぁ・・・出来ちゃった婚なんだ。。堕ろせなくなるまで拓に・・あ・・拓が彼ね・・で、そうなるまで秘密にしててさぁ・・おっきなお腹で結婚したんだよぉ。。最っ低!」
「・・・そうなんだ・・・」
「その頃、拓の本命だった子は自殺未遂した後、精神病院に入院しちゃったんだって。」
「う・・・マジ?」
友子は怠そうに頬杖をついたまま何度も頷いてみせた。
「・・・拓が私に手を出したのは・・・姉貴への復讐だったのかもね。」
「まさかぁ?!」
「・・・って兄貴は言う訳よ。」
「そんなぁ・・・復讐なんて絶対ないよぉ・・・」
「んー・・・何かもう、どっちでもいいーって感じ。」
「友子ぉ・・・」
「兄貴も彼女いるくせにさぁ・・・彼女に会わない日は必ず私のベッドに入ってくるし・・・」
子猫はどう言っていいかわからず、言葉をなくした。
「親は親でどっちも浮気してるし・・・うちって淫乱の血が濃いのかもね。・・呆れるよね?」
「・・・よく・・・わかんない・・・」
子猫の頭にハードロックの騒音が蘇ってきて響いてるようだった。
「私も含めて・・・うちの家族はみんな壊れてるのかも・・・」
「そんなこと・・ないよぉ・・・」
子猫の両目から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「あぁ・・ごめぇーん!・・・泣かないでよぉ・・・猫が泣くことぢゃないってぇ・・・」
「だって・・・だって・・・」
「私だって拓や兄貴を利用してるとこあるしさ・・・猫が心配するほどのことぢゃないから・・・泣かないでよぉ・・・ね?」
「・・・だって・・・」
「猫を泣かせると翔に叱られちゃうよぉ。」
「・・・翔は・・・関係ないぢゃん・・・」
「あはは、てゆーか・・・ほんっとごめん。・・・猫のことを聞くつもりだったのに・・・」
「・・・猫は・・・いいの・・・」
「よくないー!ちゃんと報告する約束だぞ?」
「・・・だって・・・」
「考えたら猫も二股なんだよねぇ・・・」
「・・・猫も・・・淫乱・・・」
「あは!・・あははははは!・・猫が・・猫・・・可愛い〜!」
友子は笑い出すとしばらく笑いがおさまらない様子でお腹を抱えるようにして笑っていた。子猫は涙を拭って、友子の反応に戸惑いながら眺めるしかなかった。

 友子が笑いをおさめて、子猫のことを聞こうとした時、子猫の母親が帰宅した。子猫が友子を紹介すると、
「あぁ・・昨日はお世話になってありがとう。ご迷惑かけなかったかしら?」
と、儀礼的な笑顔で言った。
「いいえ。猫・・子猫ちゃんはもぉ家族の人気者です。」
「そう?ならいいけど。そのうち友子さんも・・」
「はい!今度は私がこちらに泊まりに来ます!」
「そうね。・・仕事で遅くなったりして、あまりおかまい出来ないけど・・」
「気にしないで下さい。うちも共働きで全然かまえないですから!」
友子がにっこり笑ってそう答えると、子猫の母親は頷いて、
「暑さにあたったみたい。少し休むから。御夕飯は出前でも取って頂戴。」
と子猫に言って、寝室へと引き上げていった。子猫は友子を促して、そーっと2階へ上がって行った。

 子猫の部屋では二人とも小声で囁くように話しをした。子猫は萩原への思いと山田信夫への思いを時々自分でもわからなくなりながら何とか説明した。子猫の言葉が途切れる度にシンとした空間に時計の秒針の音が響いた。友子はその静けさに戸惑って、どことなく居心地が悪そうに聞いていた。
「ノブと別れるべきなのはわかってるんだけど・・・」
「うーん・・・でもさぁ・・・今は無理なんじゃない?」
「・・・そうかなぁ・・・?」
「だって今の山田君は盲目状態だよぉ・・・別れるなんて・・・自殺するかも・・・」
「そ・・・そんなぁ・・・」
「受験だってあるしさぁ・・・思いっきりヤバクない?」
「・・・うん・・・だよねぇ・・・」
「せめて受験終わるまでは何とかつき合ってた方がいいと思うけどなぁ・・・」
「・・・まだ半年以上あるぢゃん・・・」
「けどさぁ・・・その大人の彼だって結婚してるんだし・・・」
「・・・うん・・・」
「子供までいたら・・・なかなか離婚なんて出来ないよ・・・」
「・・・・・離婚?」
「真剣だって言うなら・・・いずれは考えなきゃならないことぢゃない?」
子猫はそこまで考えてなかったので、言葉に詰まった。
「それを全然考えないようなら・・・それって結局はただの浮気ぢゃん。」
友子の言葉が胸に刺さった。
「・・・ま・・・恋愛と子供への愛情は別らしいけどさ・・・」
友子は自分自身に言うように言った。
「・・・そっか・・・」
二人の間に沈黙が流れた。静寂に耐えかねたように友子が区切りをつけるように言った。
「だからさぁ・・・答えを急ぐことはないぢゃん。」
「・・・うん・・・」
子猫もこれ以上は考えられなくなっていたので、話を切り上げることにした。
「・・にしてもさぁ・・・いつもこんななの?」
「え?」
「お通夜だってここよりは賑やかだよ。」
友子の例えに子猫は顔をしかめてみせた。が、すぐ苦笑して、
「ママが遅い時はけっこう音楽かけたりしてるけど・・ママは音楽が流れると神経に障るみたい。」
と、肩をすくめた。
「へぇ・・・珍しい・・・で、猫はどんな曲が好きなの?」
「今はかけれないけど、CD見る?」
「見る見る。」
子猫はCDの入った箱を友子に渡した。友子は一通り目を通してから、
「これじゃぁハードロックは体質に合わないはずだねぇ。」
と声を殺して笑った。子猫のCDはクラシック、聖歌隊、童謡等がほとんどで、最近山田信夫の影響で聴くようになったポップス系のものが数枚ある程度だった。
 友子は夕方までなんとか静けさに耐えていたが、子猫が夕食のことを言うと、
「ごめん。あんまり静かだと緊張して喉通らないよ。・・猫とは外で食事しよ?」
と、残念がる子猫の頬にキスをして、
「今度、マジにうちに泊まりに来て。すっごい賑やかでビックリするだろうけど。」
とウィンクして笑い、帰っていった。
<33>
[公園]
<33>公園

 山田信夫が子猫の家の近くにある公園に来ている、と電話してきたので、子猫は寝室で休んでいる母親が起きてきた時の為に、
−友子の家に忘れ物をしたので取ってきます。−
とテーブルにメモを置いて、そっと家を抜け出した。例えそのメモを見ても、母親が友子の家に確認の電話などしないことが子猫にはわかっていた。

 子猫に母親の気持ちが理解出来ないのは、他の誰の気持ちだってわからないように、当然のことだったが、それでも、母親が子猫の存在を忘れたがっているように思えてならなかった。パパが生きていた頃はいつも家の中には音楽が流れていたのだ。ママだってその時は嫌がらなかった。パパはTVはみんなで一緒に見ようとリビングに1台だけ置いていたのを、ママはパパが亡くなってからわざわざ子猫の部屋に買ってやって、しかもその音が1階に聞こえると頭痛がすると言って叱った。食事の片づけをした後やお風呂上がりに子猫がいつまでもリビングでママに話しかけていると、たまりかねたように、早く寝なさい、とか、勉強しなさい、と追い払うように言った。学校からの連絡事項があるだけで眉をひそめて、疲れたようにため息を吐いた。まるで母親でなければならないことが苦痛でもあるかのように。
 まだ中学生でありながら男性を貪るように求めた言い訳にはしたくないが、それでも子猫が母親から温もりを感じることが出来なかったことが、一層溺れた一因になっていたのは確かだと思う。ただ、生まれ持った淫乱の体と、環境から学んだ媚びる体質と、道徳心が欠如した思考回路に大きな原因はあったと思うが。

 公園は子猫の家からは歩いて5分くらいの所にあった。さほど広くないスペースにブランコと滑り台と砂場があるだけのものだったが、小学生の頃は夏休みに朝のラジオ体操で利用した場所で、昼間は近所の小さい子でけっこう混んでいた。夜でも、公園内には外灯がそこここにあって、利用する人の姿がよく見られた。
 子猫が公園についた時は日は沈んでいたが、あたりはまだ明るかった。ノブは入り口に設置されてる公衆電話の横に立って待っていた。子猫の姿が見えるとノブは日焼けした顔から白い歯をこぼして笑って手を振った。子猫も笑顔で小さく手を振り、足を速めた。子猫が今日の試合の結果を聞くと、
「やっぱ猫の応援がないと気合いがはいらないよー。」
とため息まじりにぼやいた。
「まぁ、遠征先がかなり遠かったし仕方ないけどさ。」
「うん・・ごめんね。」
「それより・・森に行けるだろ?」
「・・・えっと・・・」
ノブの言う森とは”恋人達の森”のことである。その場所を知ってから時々試合の応援帰りに二人で利用していた。
「今日は行けないの。」
「えー?!・・嘘だろー?」
「ホント。」
「何でだよ?今こうして来てるじゃん。このまま行こうぜ!」
「だって・・・すぐ帰らなきゃ。」
「猫ぉー・・・」
ノブは苦しげに顔をしかめ、子猫の腕を力強くつかんだ。
「お願い・・やめて。・・家の近くなんだからぁ。。人に見られるぅ。。」
「だから行こうって言ってるんだろ!」
「今日はどうしても無理なのぉ。」
「何でだよ!」
ノブの表情が険しくなり声が大きくなった。子猫は周囲を見回し、ノブの手を引いて公園の中へと促した。砂場の近くのベンチに渋々座ったノブは、今にも子猫を抱き締めそうに、肩に腕を回し体をぴったりとつけてきた。熱を持った目が子猫の唇やうなじを追っている。
「行こう?・・我慢出来ないよ。」
ノブの顔がキスしそうに近付いてくる。
「今日は無理なのぉ。・・・今日は・・今日は・・マ・・ママが具合悪くて・・・」
100%完全な嘘ではなかったが、それでも騙そうとしてる自分が悲しくて語尾が小さく消えた。
「少しだけでも無理なのか?」
「・・・ごめんなさい・・・」
子猫は頭をちょっと下げ、そのままうつむいていた。ノブは何度か何か言いかけて、その度息をため込んで吐き出した。それから額を押さえてうなだれ、しばらくじっとしていた。子猫がノブの様子を伺うように見た次の瞬間、大きなため息とともに天を仰ぎ、
「わかった・・・」
と、力なく言うと、子猫に軽く笑って見せた。
「いいさ、都合悪いなら仕方ないもんな。・・猫が好きだから・・抱きたいんだし・・それが目的じゃないんだし・・・お母さんが具合悪かったら猫が心配なのは当たり前なんだから。」
子猫は後ろめたい思いに言葉が出なかった。
「無理言ってごめんな?・・・俺さ・・・1年の頃からずっとずっと猫が好きでさ・・・猫は・・俺にとってのアイドルみたいなもんで・・・つき合えるなんて思ってなくてさ・・・付き合い出しても信じられなくて・・・触れて確かめないといれなかったんだ。」
「・・・ノブゥ・・・」
「猫とひとつになれた時・・・やっと俺のもんだって確信が持てて・・・嬉しかった。」
子猫はノブの真っ直ぐな視線が痛くて再びうつむいた。ノブはそれを子猫が恥ずかしがってると思ったようだった。子猫の膝の手を包み込むように握って、
「俺達の関係・・間違った行為だとは思ってないよ。自信を持って胸を張ってようぜ?」
と言い聞かせるような口調で言った。が、すぐに、
「けどなぁ・・・猫ってさぁ・・・めちゃめちゃ可愛いからさぁ・・・気持ちいいしさぁ・・・」
ノブの口調が変わり、ノブ自身が照れたように笑いをこぼした。
「一日中、猫のことばっか考えてるし・・・猫のことを考えると・・・わかるだろ?」
「・・・なぁに?」
わかってはいたが、子猫は罪の意識から開放されたくて、わざとあどけなく聞き返した。
「わかるだろぉ?」
ノブは声を落としてもう一度言った。
「なぁに?」
「うー・・・だからさぁ・・・一日中立ちっぱなしなんだって。」
「なにがぁ?」
「だから・・・男の・・・こいつ。」
ノブは握っていた子猫の手をズボンの股間に押し当てた。固いモノが手に当たった瞬間、子猫は手を引いて、
「やだぁ・・・」
と困った顔になった。実際、すでに辺りはすっかり暮れて闇が覆い始めていたとはいえ、明るい公園のベンチでは誰に見られてるかわからなかった。
「ごめん・・だってさぁ・・猫がわかってくれないから・・」
「だってぇ・・猫は男じゃないもん。」
「ん・・まぁ・・そうなんだけどさ・・・だから・・・男ってのは・・・こうなっちまうとしたくてたまんなくなるんだ。」
「ふぅ〜ん。」
「・・・猫は・・・オナニーってしたことある?」
「え・・・」
「男ってさぁ・・こうなるともう出さないといれないんだ。」
「・・・そぅ・・・」
「俺なんて寝る前に必ず2回はしないと寝ている間に夢精しちゃうんだ。」
「・・・ほぇぇ・・・」
今度は本当に子猫の知らない話だった。
「それでも朝立ちって言ってさぁ・・・目が覚めた時にはもう立ってるから・・・また猫のことを思い浮かべて2回出してるんだ。」
「ぅぅ・・・スゴイ・・・」
「それだけじゃないよ。・・・学校で生で猫を見ればまたしたくなるし・・・」
「・・・ぁ・・ぅ・・・」
「一日中立ちっぱなしでさ・・・猫のアノ声とか・・・締め付けてくるあの感覚とか・・・そんなのばっかり頭ん中をグルグル・・グルグル・・・」
「・・・ノブゥ・・ちゃんと勉強してよぉ。・・受験生なんだからぁ・・・」
「そうなんだけどさぁ・・・けど・・・抱けないと妄想がひどくなるみたいだ。」
「そんなぁ・・・」
「家に帰ってシャワー浴びながらまた出して・・・それでも抱きたくてたまらない。」
「・・・猫は・・・中学生らしいおつき合いがしたい・・・」
「中学生らしいってどんなんだよ?・・・俺はやりたいから猫が好きなんじゃない。猫が好きだから我慢出来ないんだって言ってるだろ?」
「・・・でも・・・」
「俺、猫の為にも勉強頑張る。そして目指す高校に必ず入る。高校入ったら資格を出来るだけ取得しようと思ってる。・・・高校卒業したら・・・結婚しよう?」
「え・・・ノブ・・・」
「3年半・・・3年半で俺は猫と結婚出来る一人前の男になってみせるよ。」
ノブは子猫を真っ直ぐに見つめていた。怖いほど真剣な眼差しに、子猫はこれまでノブの何を見てきたのかと自分が恥ずかしくなった。
「だから・・・中学生はこうじゃなきゃいけない、とか・・大学行かなきゃいけない、とか・・そんな大人の勝手な言い分に振り回されることはないんだ。」
(男って・・・スゴイ。)
子猫は素直にそう思った。子猫には明日の自分さえ見えてないし、わからなかったのに、ここまで将来を語れる山田信夫という存在が急に大きく見えてきて、素直に感動していた。子猫の目から意識しないまま涙がこぼれた。
「猫・・・泣くなよ。・・・ごめん。・・・困らせるつもりは・・・ないんだ。」
「・・・え・・・ぁ・・・」
子猫が手で涙を拭おうとした時、ノブが涙に唇を滑らせた。そしてそのままゆっくりと優しいキスをした。貪るようなキスではなく、包むように優しいキスだった。
「約束だから・・・今日はこれ以上はしないよ。・・あは、猫の評判落としたら、俺・・猫のおかあさんに嫌われちまうもんな。」
ノブは立ち上がって、星の輝く空を見ながら深呼吸すると、子猫に向かって手を差し出した。
「家の前まで送ってくよ。・・いいだろ?」
「・・うん。」
子猫はノブの手をそっとつかんでベンチから立ち上がった。

 子猫の家まで二人は少しだけ間をあけて並び、5分のところをゆっくり10分かけて歩いた。それでも、夏休みの宿題や塾の夏期講習の話が終わるか終わらないうちに、子猫の家の前まできてしまった。
「それじゃ・・また明日、学校で。」
「うん。」
「おかあさんの看病しっかりな。」
「あ・・・うん。」
「お休み・・」
「お休みなさい。」
子猫はノブに手を振って門から入ると、玄関の所で振り返り、また手を振って家の中に入った。ノブは子猫がドアを閉めて姿が消えた後もしばらく家を眺めていたが、気合いを入れるように腕を振ると駆けだして行った。
<34>
[カッパの冒険]
<34>カッパの冒険

 夏休みが始まっても忙しさは変わらないようだった。7月いっぱいは強制ではないにしても中学校の方で午前中に補習授業が入っていたし、午後は塾の夏期講習があり、夜は普通にいつも通りの塾があった。しかも夏休みの宿題として高校入試対策的な1年からの学習も含めた課題が各教科ごとに山のように出されていた。ただ、部活動のない子猫は夏休みが始まる前にすでに宿題の大半をやってしまっていた。別に勉強が好きだった訳ではないが、やれ、と言われたものをずっと抱え込んでいるのが嫌だっただけだった。だから、宿題を全て終えて夏休み明けに持っていく物のところに置いた後はそれ以上の勉強をしようという気は起きなかった。

 夏期講習は塾生以外も公募してあったので、広い教室がぎっちりいっぱいになっていて、横に長い机にはいつもより多いイスが並んでいた為、うっかりすると隣りと肘がつき合ってしまった。だから出入りの楽な机の端の方の席を取るのは容易ではなく、子猫は諦めて中央に座って、次の授業までの休憩時間も席についたまま持ってきていた本を出して読んでいた。どうしても読みたい本があった訳ではなかったが、人と顔を合わせるのが苦手だった為、本に集中する振りをして文字を拾っていた。
 それでも周囲の雑談が嫌でも耳に入ってきた。が、面白味のある話題もなく興味を引くこともなかった。皆、何故か全然勉強しないということを自慢気に話し、困っている、焦っている、と愚痴をこぼしながら、いかに遊びに行くかの苦心作を披露するのだった。

「何読んでるの?」
ごく間近で声がしたので子猫が本から顔を上げると、前の席の見知らぬ男子が振り返って子猫を見ていた。
「キュリー夫人」
「あぁ!俺も小学校ん時読んだよ。・・でも、ま・・児童文学のでそーゆー文庫本じゃなかったけどさ。・・化学に興味があるの?」
「そうじゃないけど・・・なんとなく・・・」
「へぇ〜・・・君っていつも本読んでるよなぁ。そんなに本って面白い?」
「・・・多分・・・」
「へぇ〜・・・俺なんて課題図書も読む気がしないよ。中3になってもほとんど机にも座ることしなかったらこんなとこ来させられちゃってさぁ・・・まいっちゃうよなぁ。」
子猫にはこうした雑談がうっとうしかったので、困ったように黙っていた。その様子に気付いたようで、
「あ・・邪魔してごめん。」
とその男子は苦笑して、
「いや、実はさ、・・チケットの販売頼まれてて・・色々声かけてるんだけどなかなか売れなくて・・」
と言って、子猫の前にチケットを出して見せた。”ミュージカル『カッパの冒険』−劇団トマト−”と印刷されたチケットは何の飾りもない薄いただの紙だった。
「小劇団だから予算がなくって・・けど本物だから信用してくれよ。」
「あ・・うん・・・」
「頼む!もう公演まで日がないんだ。買ってくれー。」
「・・・うん。いいよ。」
「え?・・マジ?・・うわっ・・サンキュー!」
彼は自分で持ちかけてきながら意外そうな顔をして喜んでいた。子猫は2枚を買うことにして財布をバッグから出してお金を渡した。
「2枚かぁ・・・彼氏いるの?」
「・・・さぁ・・・」
「ま・・いいや。マジに感謝するよ。会場に来たら声かけてくれよな。」
「出演するの?」
「ちょっとだけね。」
「へぇ・・スゴイぢゃん。」
「端役だって。」
「それでもスゴイよぉ。・・頑張ってね。」
「OK!マジありがとな。」
ベルが鳴り、次の授業の講師が入ってきたので話しはそこまでになった。

 夜、子猫は友子に電話して誘ってみた。友子はすぐにOKしてくれた。
−「ぢゃぁさぁ・・その日うちに泊まらない?」
−「え?・・でも公演終了するのって6時だよ?」
−「だからぁ終わってから町で夕飯食べてぇ遊んで帰ろうよぉ。・・うちに泊まることにしとけば帰りの時間心配することないしさ。ね?」
−「いいけどぉ・・・いいのぉ?」
−「うちは全然大丈夫だから気を使わなくていいって。」
−「そっか・・・ぢゃぁそうするぅ。」
−「別に何もいらないんだけどぉ・・着替えとか持ってくるなら先にうちに寄って置いていけばいいしね。」
−「うん。」
−「わぁ・・・何か楽しみだなぁ。ふふ、だって夏休みなのに猫って全然遊ばないんだもん。」
−「遊ぶって・・・そんな暇ないぢゃん。」
−「暇は作るものなのぉ!」
−「友子は遊んでるの?」
−「もう、海行ったよぉ。それに夜もけっこう出歩いてまぁーす。」
−「海かぁ・・・海はいいよねぇ・・・」
−「猫は・・あ・・そっか・・おかあさんは仕事あるんだもんね。でもさぁ・・彼に連れて行って貰えばぁ?」
−「うん・・泊まりで何処か行こうって言ってくれてるけどぉ・・・」
−「そかそか。その時はアリバイはOKだよ。」
−「うん。ありがとぉー。」
−「あ・・そしたら・・その時は私も出かけるかなぁ・・・お互いのアリバイになるしぃ・・・」
−「・・彼と?」
−「ふふふ、まぁね。そんなこともいっぱい相談しよ。」
−「うん。」
子猫は友子と友達になれて本当に嬉しかった。友子には何でも話せたし、明るく引っ張っていってくれる性格に感謝していた。
 子猫と友子は子猫の母親が帰るまでずっと話していた。玄関の開く音がして電話を切った子猫は2階の部屋から顔を出して、お帰りなさい、と声をかけ、また部屋に戻った。

 公演当日、子猫はたっぷり贅沢なレースを使った真っ白なフレアワンピースを着て出かけた。夜涼しくなった時や冷房の効いた場所で羽織るようにとレース編みの真っ赤なショールも用意していた。肩にかかるくらいに伸びた髪を毛先だけ癖をつけ、両サイドを赤いレースのリボン型髪留めでとめて、エナメルの赤いバッグと靴と合わせていた。友子の家に行くのに待ち合わせした場所で、子猫を見た友子は感嘆の声と共に抱きついてきた。
「超ー可愛いーー!もぉお人形さんのまんまだぁー!」
「去年1回しか着れなかったから・・公演だし・・着てみたんだけどぉ・・変ぢゃない?」
「ぜぇーんぜん!すっごく似合ってるしーめっちゃ可愛いーよ!」
友子はいつものように子猫の頬にキスをした。
「やっぱ去年のだからぁ・・胸がちょっとキツイんだけどぉ・・・」
「谷間がチラッと見えるとこもぉ・・アンバランスセクシーで最高!」
「アン・・?」
「あどけなさと色っぽさ・・・猫の魅力の基本だよね。」
「うぅぅ・・・それで友子は・・?」
「え?あはは・・公演って言っても小劇団だしぃ・・って思ってたけど・・・子猫に合わせてキメてくかぁ。帰ったら着替えるから・・行こ?」
「うん。」
友子は子猫の大きい方のバッグを持ち、子猫の手をとって歩き出した。
 友子の家はマンションの3階にある4LDKだった。長女が結婚で家を出てから、姉と使っていた部屋が友子のものになった、と説明した。そのせいか、ドレッサーや他の家具や部屋自体の雰囲気が大人っぽかった。
「散らかっててごめんねぇ。すぐ着替えるからそこに座って待っててぇ。」
「あ・・うん。」
子猫はあまり観察するように見るのも悪いと思い、手近に積んであった雑誌を見始めた。
「お待たせー!」
友子の声に顔を上げた子猫は目を丸くした。膝丈ノースリーブの赤いチャイナドレスは横に股までの大胆なスリットがあり、豪華な金糸で竜が刺繍されていた。
「・・ス・・ッゴォーイ!超ーカッコイー!」
「うふっ、ありがと。似合う?」
「超ー似合うー!超綺麗ー!超ー最高ぉー!」
友子は子猫の言葉に合わせてポーズをとって見せた。
「でもなぁ・・海で焼いちゃったからさぁ・・」
「健康的でいいぢゃん。」
「そう?・・なら良かった。じゃっ、行こっか?」
「うん!」

 会場の公民館はそれなりの人だかりがあって、子猫と友子が入って行くとほとんどの視線が注がれた。子猫にチケットを売った彼は受け付けでパンフレットを渡していた。何故かはっぴにねじり鉢巻きで、他にも数名同じ格好をしている人達がいた。チケットを渡して挨拶をした時、不思議がる子猫に、これが衣装なんだ、と照れ笑いをした。
 出演者全員が祭りの支度に手作りとわかる甲羅とカッパの頭をつけて演技していたそのミュージカルは、初めの違和感を忘れる面白さで観客を惹き付けていった。端役だと言った彼も塾で怠そうに居眠りをしていた人物と同じとは思えない生き生きした表情でステージを飛び回っていた。子猫は『カッパの冒険』の物語に引き込まれる一方で、やりたいことのある生き方に感動と羨望を覚えていた。
 出演者全員の大合唱で幕を閉じた後、出演者の紹介と挨拶があった。そしてその直前、後ろの方にいた集団の一人から、主役の役者に渡して欲しい、と大きな花束を手渡されていた子猫は、友子に促されておずおずと前まで行き、花束を渡した。その途端、子猫に頼んだ集団から口笛とかけ声がかかり、場内に笑いと拍手が起こった。

「さっきはありがとう。野郎共から花束貰うより、可愛い子からの方があいつも嬉しいだろうから・・助かったよ。」
会場から出ようとする子猫と友子を追いかけてきた青年が二人を引き留めてそう言った。
「お礼に食事奢らせて貰えないかなぁ?・・俺達これからコンパなんだけどさ。」
「それって私も?」
「ああ、もちろん!じゃぁOKだね?」
「そんなぁ・・友子ぉ・・・」
「大丈夫だよ。食事だけなんだから。」
お小遣い浮かせなきゃ、と子猫の耳に友子が囁いた。子猫が渋々頷くと、その青年は笑って後ろを振り返り、手で丸を作って見せた。後ろには男性ばかり5人がかたまってこっちを見ていた。そしてOKの出たことがわかると歓声があがった。

 子猫達を誘った彼等は今日の主役と同僚だと言うことだった。女子社員が少なく、しかも女子と言えないほど年輩なので、彼女が出来ないと嘆いていた。途中から、片付けを終えて駆けつけた主役も参加して男性7人になり、圧倒された子猫は言葉少なく受け答えしていたが、友子は大学生の兄につき合ってコンパを経験していたので、ホステスぶりを発揮していた。
「あのチケットじゃぁ知らない人は警戒して買わないですよぉ。」
お酒が入って友子は饒舌になっていた。
「そうかぁ・・弱小で予算とかないからなぁ・・・会場借りるだけで精一杯なんだ。」
「でもぉ、広く一般の観客を集めたいならそれなりに信用出来るものじゃないとぉ・・」
「あれじゃダメかぁ・・・」
「猫にチケット見せられた時、もしかして猫が騙されてるんじゃないかって焦りましたよ。会場の立て看板見るまで半分疑ってました。」
「なるほどぉ・・・」
「兄貴もたまにライブするからチケットを買って貰うのが大変なのは知ってます。」
「あぁ!そうなんだ。」
すっかり今日の主役と気があった友子は大人びた口調で話し込んでいた。子猫は感心してその様子を見ながら、自分を取り囲む男性達の質問責めに内心辟易しながらも笑顔でさりげなくかわしていた。

 居酒屋を出て、二次会のカラオケまでつき合った後、三次会まで誘われたが、どうにか断って別れた時にはもう12時を回っていた。
<35>
[友子の家]
<35>友子の家

 友子の家に戻った時には夜中の1時近かったが、友子の両親も弟の友成も起きてTVを見ていた。昼間来た時には誰もいなかったので、子猫は初めて会う友子の家族に挨拶をした。友子の両親はかなりお酒が入っていて陽気な笑顔で歓待してくれた。子猫にもしきりにお酒を勧めるので弟の友成が怒り出すほどだった。
「いやぁ〜、ハハハ。トモはうちで一番固い子でねぇ〜、ハハハ。」
「そうそう。将来は医者か弁護士になるんだってぇ〜、きゃははは。」
友子は自分で水割りを作って飲んでいた。かなり酔って帰宅したのに、それを注意することもなく、更に一緒にお酒を飲んでいる家族に子猫は圧倒された。
「猫はねぇ〜全然お酒飲めないんだってぇ〜。ちょっとくらい〜いいのにねぇ〜。」
「何言ってんだよ!この前まで入院してた子なんだぞ!」
「おお〜・・そうだったなぁ。そりゃすまないことをした。友子〜無理をさせちゃダメだぞぉ〜、ハハハ。いやぁ〜、こんな子ですが〜仲良くしてやって下さい。」
「あ・・はい!こちらこそ・・」
すでに子猫のことは友子の家族には初対面とは思えないくらい受け入れられ知られているようだった。
「あ〜ん・・猫ぉ〜ごめんねぇ〜。」
友子はいつものように子猫に抱きつくと、体をもたれかけて頬に何度もキスをした。弟の友成が友子を引き剥がすようにしてその間に割り込み座ると、
「友子は飲み過ぎなんだよ!」
と、一睨みしてから、
「しょーもない姉貴だろ?猫ちゃんもたまには叱ってやってくれよな。」
と、子猫に笑いかけてきた。
「そんなぁ・・友子にはいつも助けられてるし・・友達になれて感謝してますぅ。」
子猫がペコッと頭を下げて言うと、
「いやぁ〜、ハハハ。そ〜言って貰えるとありがたいですよ〜、ハハハ。」
「ホントに〜こんな可愛らしいお嬢さんでねぇ〜、ホホホ。」
「猫ちゃんは俺のクラスでも人気あるんだぜ。」
「バーカ、中2のくせになぁ〜まいき〜!」
と、家族同士の会話が飛び交った。友子が言っていたようにホントに賑やかな家族で初めのうちは戸惑いもあったが、一人っ子の子猫には羨ましい光景だった。子猫もいつの間にか家族の会話に引き込まれて笑っていた。

 2時間以上も話し込んでいたが、さすがにもう遅いからと友子の両親が寝室に引き上げていったので、友子と子猫は一緒にお風呂に入ることにした。
 先に友子が髪と体を洗う間、子猫はお湯につかっていた。交替で子猫が洗う番になると、
「洗わせてぇ〜、洗わせてぇ〜!」
と友子が言ってきた。友子は子猫をお風呂のイスに座らせ、
「ん〜・・・めちゃめちゃ綺麗な肌ぁ〜・・・」
と、背中にキスをした。子猫に上を向かせて髪を洗う間も、時々背中に指を走らせてくすぐってきたので、子猫の乳首が固く立ってしまっていた。
「恥ずかしいからいいよぉ・・・」
と言う子猫に、
「ダメダメェ〜、洗うのぉ〜!」
と言って、友子はボディーソープを含ませたっぷりと泡立てたスポンジで、子猫の体を優しく擦り始めた。指先から腕、肩、首とスポンジを丸く動かしながら胸までくると、
「綺麗ぇ〜・・大きい〜・・柔らかい〜・・乳首も可愛い〜・・」
と誉めながら丁寧にスポンジを回転させた。
「ここって・・敏感?・・感じる?」
友子は泡に隠れた子猫の乳首をそっと摘んで囁いた。
「・・・ぁ・・・」
子猫が体を引こうとすると背中に腕を回してキスをしてきた。これまでの頬へのキスではなく、口を吸い舌をからめてくるキスだった。キスをしながら子猫の胸を揉み乳首を摘んで愛撫した。初めは身動いで抵抗しようとしたが、感じて頭がぼぉーっとなった子猫はなすがままの人形のようになっていた。
「ずっと・・こうしたかったの・・・」
友子は子猫の足もつま先から丁寧に洗っていき、股の部分は手にたっぷりの泡を乗せて指先ですみずみまでそっと触れながら洗った。

 のぼせてふらつく子猫の髪を拭いて、友子は子猫の持ってきたパジャマを着せてやった。夏用の丈の短い物だったが、余所のお宅に伺うことを考えて、シンプルな物を選んで持ってきてあった。が、友子は可愛いを連発していた。
 と、そこへバイトから帰った友子の兄の圭輔が現れた。子猫はパジャマ姿が恥ずかしかったが、一応初めて会う相手だったので挨拶をした。
「キョーレツにイケてるぜー!」
圭輔がいきなり子猫を抱き締めたので、友子は兄の背中に蹴りを入れ、
「バカ兄貴!今夜部屋に来たら承知しないよ。」
と睨み、子猫の手を引いて、さっさと部屋に連れて行った。
 台所から冷たい飲み物を持ってきた友子は子猫と並んでベッドに座り、
「あんなバカ兄貴、相手にしなくていいからね。」
と言って、唇を重ねてきた。
「・・ん・・・ねぇ・・・友子ぉ・・・」
子猫が困ったように言うと、
「あ・・そっか・・もう疲れたよね。寝よっか。」
と笑って、部屋の灯りを消した。友子に奥に行くように言われて、子猫はベッドの壁側に横になった。友子は子猫にぴったり体をつけて入ってきた。姉と使っていた2段ベッドを買い換える時セミダブルにして貰ったというベッドはそれでも二人で並ぶと体がついてしまうのは仕方がなかった。部屋の隅にある貝型の弱い照明が部屋をほんのり淡くピンク色にしていた。

 友子は子猫の胸をパジャマの上から愛撫しながら、何度もキスを求めてきた。子猫もなんとなく応えていたが、友子が子猫の胸をはだけて乳首を吸ってきた時、
「・・ぁ・・ぃゃ・・・」
と首を振った。
「友子ぉ・・・猫・・・出来ない・・・」
「猫は何もしなくていいの。・・・感じていてくれたらいいんだから・・・ね?」
「・・・だけど・・・どうして?・・・だって・・・」
「猫が男の人ぢゃなきゃダメなのはわかってる・・・」
「友子だって・・・そうぢゃないのぉ?」
「・・・私・・・わかんない・・・」
「だって・・彼のことが好きなんでしょう?」
「・・うん。・・・でも・・・猫も好き。」
「猫も友子・・好きだけど・・・」
「私のは特別な・・好き・・なの。・・・猫といると触りたくなっちゃうんだもん。・・・でぇ・・感じさせてみたくて・・・猫の・・感じてる顔見たい。・・・感じてる声聞きたい。」
「・・ぅぅ・・猫には出来ないよぉ・・・無理だよぉ・・・」
「ねぇ・・ちょっとだけ・・・オナニーしてると思ってくれればいいから・・・ね?」
「・・・だってぇ・・・」
「猫の全部が好きだから・・・彼がいてもいいの。・・・セックスしててもいいの。・・・そのまんまの猫が好きだから・・・」
「・・・でもぉ・・・」
「お願い・・・お願い・・・猫のこと束縛しないからぁ・・・好きでいさせてぇ・・・お願い・・・」
友子は子猫の口を覆うようにキスをして、お腹のとこから下腹部へと手を滑らせてきた。
「・・・ぁ・・・ぁ・・・ぃ・・ゃ・・・」
子猫は泣きそうになりながらも、友子の指の動きに反応していた。
「・・っぁ・・・ぁぁぁ・・・・」
「感じて・・それだけでいいの・・」
「いやぁ・・・」
子猫は身をよじってすすり泣きだしたが、弄ばれる花弁からは蜜が溢れ出し、友子の手も下着もしっとりと濡らして、甘い香りを漂わせていた。
「・・ね?・・・猫の体は欲しがってる・・・」
「・・ぅぅ・・・ちがぅ・・・」
「泣かないでぇ・・・怖くないから・・・ねぇ・・・このまま感じてくれればいいの・・・ね?」
友子が指を奥まで差し込み、感じる場所を刺激したので、子猫は思わずのけ反ってよがり声を漏らした。
「・・・あぁぁ・・・いぃぃ・・・・」
「可愛いよぉ・・猫ぉ・・・すごく素敵ぃ・・・ホント綺麗だよぉ・・・」
腰が意識しないのに動いて反応してしまう。
「感じていてね。・・・怖くないから・・・めちゃめちゃ猫可愛いよぉ・・・」
子猫はもう逆らうことが出来なくなった。友子は子猫が素直に反応するようになったのを感じ取って、
「・・ありがとぉ・・」
と言うと、子猫のパジャマを優しく脱がせた。

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