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子猫白書

<41>〜<45>

<41>
[ずれ]
<41>ずれ

 山田信夫は真面目に勉強に打ち込んでいるようで、成績をぐんぐん上げていった。その一方で子猫は勉強に対しての意欲を完全に無くしてしまっていた。塾もさぼることが多くなって塾でしていることがだんだん理解出来なくなっていた。学校の勉強は授業さえ聞いていればテストでも上位の点をとれていたが、一夜漬けで頭に入れたものはテストが終わるとともに消えていってしまった。子猫は脳がだんだんカラッポになっていくような感覚に、自分自身の存在する意識さえ薄れていくように感じていた。
 勉強に興味をなくしたからといって、他の同世代の少女達のようにアイドルスターに夢中になったり、好きな音楽に浸ったり、流行のファッションを気にしたりする感覚もなかった。自分の存在さえ希薄になり、体を抜け浮遊する魂が唯一肉体と共鳴するのが、抱かれている時だった。
 何の約束も未来も見出せない子猫と、強い将来への夢を持ち続けるノブと、意識のずれが生じるのは当然のことだった。

 ノブはすでにいくつかの高校の下見もしていた。そして先輩から高校の様子や状況を聞いて、自分なりの目標はすでに決まっているようだった。子猫はただ先生がここが一番いいと薦めたとこが一応志望校になっていた。県立だし県内でも女子高としては評判が高かったから、母親も安心していたようだった。が、子猫は内心では自分の意識的にはふさわしくない場所だという気がしていた。その高校は皆が入りたいと一生懸命勉強しているのだし、そうして努力した人達に開かれるべき高校で、勉強する気力の失せてる子猫が行くのは違う気がしていた。
 子猫には小さい頃なりたい職業があった。入院や通院で接する機会の多かった看護婦さんである。「ナイチンゲール」という本を読んで感動したこともあり、将来の夢を聞かれる度に、看護婦さんと答えていた。が、現実が見えてくるにしたがって、自分の不安定な健康状態ではこなせないほどハードな仕事だとわかってきた。
 退院して通常の生活を取り戻してはいたが、時々体調を崩しては通院しなくてはならなかった子猫には、多くの夢を語ることが虚しく思えた。もっとも、どんなハンデを抱えても夢を語り希望を持ち続けている人達がたくさんいることも、努力によって夢を手に入れた人達も少なからずいることもわかっていたし、そうした感動物語を見たり聞いたりする度に感動して涙が零れた子猫だったが、感動する一方で、努力出来ることがすでに才能なんじゃないかと、自分自身の努力は放棄しているとこがあった。

 ノブとは週に一度か二度、二人だけで会う時間を持っていたが、会話が成立しなくなるに従って、会う回数も減っていった。一方的に話すことの多くなったノブが、浮かない顔でぼんやりしている子猫を心配して聞くので、体調が良くないことを理由にすると、何もしないまま子猫を家まで送ってくれた。そんな日はかえってドッと疲れを感じて、ベッドに倒れ込むと眠れないまま何時間も怠い体を横たえていた。ぼんやりした意識の中涙が布団を濡らすままにしている時、無性に萩原に会いたくなった。会えるはずもないことはわかっていたのに、会えないと思うと余計会いたくて、彼のいる家庭の情景が浮かんでは胸が締め付けられた。
 いつかデパートで見かけたあの可愛い女の子はパパのお膝で無邪気に笑っているのだろうか、あの華やいだ女性は綺麗なエプロン姿で食卓に料理を並べているのだろうか、とそんな想像に孤独が重くのしかかってきた。そんな時、萩原から電話がかかってくると、子猫はもう言葉も出なくて、萩原が買ってくれた携帯電話を両手で抱えるようにして額に押し当てると、声を殺して泣きじゃくった。萩原はいつでも子猫が泣きやむまで、電話の向こうから語りかけてくれていた。

 そんなことが何度かあって、萩原は子猫に、
「出ておいで。」
と誘った。もう夜中の12時を回っているし、次の日も学校へ行かなければいけなかった。でも、子猫にはもうその言葉を聞いた時、会いたい衝動を抑えることは出来なかった。
 深夜の住宅街はシンとして歩き慣れた情景でも違う世界のように映った。自分の足音さえ違って聞こえ、なるべく音をたてないように気を使った。萩原は子猫の家から少し離れた場所に車を置いて、外に降りて待っていてくれた。子猫が駆け寄り抱きつくとギュゥゥーーーッと抱き締めキスをしてくれる萩原が、子猫の唯一の救いに思えた。
 それでも、萩原さえ絶対的存在と無心に信じることは出来なくて、明日には失ってしまうかも知れないという不安がつきまとっていた。もともとが、自分が甘えていい相手ではないのだと、 会えるわずかな時間、つかの間の夢を感触を伴って見ているだけのような気がしていた。
 抱かれながら、感じながら、切なさは消えず、繋がったまま時が止まればいいのにと、子猫の肉襞はしがみつくように一層強く萩原のモノを締め付けた。萩原は子猫の肉体を賞賛しながら獣のような激しさで欲望を満たし充足の叫びをあげた。子猫も絶頂へいく前の登り詰めていく間、繋がっている実感、愛されている実感、萩原を所有している実感、生きて存在している実感に満たされた。だから、いくのをぎりぎりまで我慢して、指先からつま先から髪の1本1本まで放電するように快感が駆け巡り、狂うかも知れない、もう狂っている、と脳裏をよぎる中、夢の世界へと意識を返すのだった。

 朝、まだ朝日が昇る前の時間には送ってきてくれたが、朝食のトーストをかじっている時、
「朝方、外にいた?」
と母親に聞かれた。注意したつもりだったが、玄関のドアが開閉する音を覚めきらない状態で聞いたらしい。
「・・・少し早めに目が覚めたから・・・散歩してきたんだけど・・・」
「そう。もう寒いんだから風邪引かないでよ。」
「・・・はーい。」
子猫の言い訳を言い訳とも思わず、母親はさっさと席を立って、出かける支度を忙しそうに始めた。子猫はホッとする反面、風邪を引かないようにと言う母親の言葉をもう素直に聞くことが出来なくなっていた。
(風邪を引いて寝込まれたら、家事が溜まるもんね。)
仕事を休んで看病してくれるはずはないことくらい承知していたが、言われた用事をしてなかったりすると、その10倍は愚痴を言われ続けてかえって疲れてしまった。怠そうにしていてもうっとうしそうに邪魔にするだけだったし、気分が悪くて吐こうものなら、悲鳴に近い声で叱り早く始末するよう命じる母親だった。
(猫はいない方がいいの?)
子猫が無言のうちに問いかけることが多くなっていた。

 世間では親は子供を愛しているのが当たり前と思っているようだった。どんなに冷たい親だと思っても、そう感じるのは子供にまだ親の気持ちを理解出来るだけの心の許容量がないせいにされる。親が子供を殺す事件がおきても、世間は余程の事情があったのだろうと、悔やんで反省しているという親に同情さえする。TVドラマは必ず、冷酷な親の真実の愛を語る涙で終わる。それはそうした結末にした方が誰もがホッとするからだろうし、それが当然なのだと思っていたいからだろう。子供だって本当は信じたい。本当は愛されているのだと、ただ自分の理解が足りないだけなのだと。冷たくしか出来ない親には親にしかわからない事情があるのだろうと。だから、子供が親を恨むなんてことをするのは親不孝なのだと、この世に誕生させてくれただけでも感謝に値するのだと、謙虚に受け止めて親を労りの気持ちで見守ろうと、全てのメディアは訴えかけているようだった。
 けれど、実際に殺されなくても、心を殺されていく子供も確かにいるのだ。この世に誕生させた親が、もういらないと放棄したら、それだけでも感謝しろという世間の意見とはずれてくる。親に愛されていないと感じてしまう子供に自分を肯定し愛することが出来るだろうか。それこそ、まだ未熟で心の許容量のない子供に。
 翔は自分を愛されていない子供と位置づけることで、自らの手で愛を勝ち取ろうとしているとこがあった。だが、それが出来るのは翔のように強い自我と意志があるからこそで、子猫は母親から愛されたいと思うことに疲れてしまっていた。
 誰かが愛しているよ、と言ってくれることが、生きていていいんだよ、と聞こえるのだった。

 言い訳かも知れない。自分の責任の取りきれない問題を理由付けして納得したいだけかも知れない。翔は、自分の命には自分で責任を持て、と言った。確かにそうだとも思う。そう思いさえすれば、誰がどうだからとか、世間がこうだからとか、言い訳もしなくなるだろう。
 翔は自分が常に前向きであるからと言って、子猫にもそうあるべきだとは言わなかったし、子猫のおかれている状況も子猫の気持ちも理解していてくれた。子猫も翔の気持ちだけはわかる気がした。無意識にお互いの傷を舐め合いながら、翔は傷の舐め合いをすることを嫌っていたので、子猫も傷を意識しないでいられる関係が好きだった。
 でも、翔を見ていると、言い訳を探している自分が嫌になった。言い訳を重ねても何も自分の助けにはならないし、成長させてはくれない。わかっていたし、誰かに言い訳を言うこともしなかった。ただ、自分自身に言い訳してる自分を嫌悪し、また、こんなに弱い人間に生きる資格はないように思えてきてしまうのだった。
<42>
[愛人]
<42>愛人

 秋も深まって落ち葉が舞い落ちる季節になっていた。
深夜に家を抜け出して会った日から、何度か同じように深夜のデートをするようになっていた。翔との約束は週末だけなら会ってもいいということだったが、こっそりデートをしていることは、まだ気づかれていないようだった。母親も気づいていないようで、短い時間だけの逢瀬だったが、それだけに一層激しく燃える夜を重ねた。

 それがここ数日萩原からの電話が入らなくて不安だった子猫は、やっと連絡をくれた萩原の声が沈みがちだったのを気にしながらも、いつもの駅前で待っていた。

 週末のデートはゆっくり出来る為、遠出してドライブしたり、映画を観たりすることもあった。先々週は泊まりで萩原のゴルフに付き合ってコースを回った。萩原は仕事の取引先との約束に子猫を連れていったのだ。
「平気なの?」
と聞く子猫に、
「今日の相手とはお互い秘密を共有する仲なんだ。」
と笑った。
「秘密?・・・裏取引?」
「こらこら。そーゆーことを簡単に口にするもんじゃない。・・ま、ないとは言えないけど・・相手もゴルフによく愛人同伴で来るからさ。ハハハ。」
「愛人かぁ・・・」
「たまには僕も羨ましがらせてみてもいいかと思ってネ。」
「・・猫も・・愛人?」
「愛してる人という意味でも嫌かい?・・じゃぁ・・恋人・・想い人・・女王様・・・」
「何ぃ?・・その女王様ってぇ?」
「ハハハ。だって、ほら。僕の心を支配しているだろう?」
「いやだぁ・・・愛人でいいよぉ。」
というやり取りの後、ゴルフ場の受け付けホールでその取引先の社長に紹介された。彼は目を丸くしてしきりに羨ましがり、彼を車で迎えに行った萩原の部下は、
「あぁー、専務が夢中になってるお嬢さんかぁ!」
と、にこやかに握手を求めてきた。
 景観のいい広いゴルフ場は、ゴルフもしないのにコースを回る子猫には、ちょっとしたハイキングのようだった。
「今度、時間がある時に道具を選んであげるから、君も始めるといい。」
と言う萩原を、
「昨夜はほとんど寝ずに励んでたのかね?今日のスイングは腰に力が入ってないようだな。はっはっはっは。」
と社長がからかった。それから、
「今度、私にも誘わせて貰ってもいいかな?」
と、子猫に言い寄ってきた。
「だめですよ、社長。この子は僕の専属です。・・いずれは妻にする予定ですから。ハハハ。」
「おいおい。本気かね。まぁ、彼女なら無理もない気はするが・・次期社長候補だろう?慎重にしたまえ。」
「わかってます。大丈夫ですよ。・・それに彼女がまず高校を卒業しなきゃならないですから、そっちはまだ先の話です。」
「ふむふむ。なるほど。・・・将来の萩原社長夫人では、口説く訳にもいかんなぁ。」
「そのうち、また若い子を紹介しますよ。・・綾子さんには内緒で。ハハハハ。」
「はっはっはっは。綾子も充分若いが・・10代には特別な魅力があるからな。よろしく頼むよ。」
「わかりました。」
萩原は笑って、子猫にウィンクして見せた。
 その綾子さんという人が社長の愛人なのだと話しの流れで納得した子猫だったが、それにしても何て会話だろう、と大人の世界の会話に当惑していた。翔が仲間とする会話もかなりキワドイものだったが、大人の会話も別の意味でキワドイと思う子猫だった。

 先週は土曜日の夜しか会えなかったのでホテルに直行だったし、今日はまだ昼間だからゆっくり出来るかな、と思いながら、子猫は北風の吹き付ける駅前に立っていた。約束の時間より1時間以上も遅れて萩原の車が駅の敷地に入ってきた時は、もう泣きそうになっていた子猫だったが、フロントガラスを通して見る萩原の表情の暗さに、涙を忘れていた。
「遅れて済まない。」
と言ったきり黙り込む萩原に、子猫は抱きつくことも話すことも出来ず、不安で胸がつぶれそうになりながら、ホテルまでうつむいていた。途中、萩原が子猫の手をギュッと握ってきた。子猫はハッと萩原の顔を見たが、その苦しそうな表情にまたうつむいた。握られる手に伝わる温もりだけを心の支えに。

 ホテルの部屋に入ると、萩原は子猫を強く抱き締めてキスをした。いつもならそのまま抱き上げベッドへ連れて行くのだが、この日は違っていた。子猫をソファーに座らせて、
「子猫・・・落ち着いて聞いて欲しい。君に話すのは僕も辛いし、君を苦しめるとわかっているが・・・どうしても話しておかなければならないんだ。」
と苦しそうなため息をついた。
「君を愛している。その気持ちには何も揺るぎはない。それだけはわかっていて欲しい。」
「・・・うん・・・」
「僕が話すことを聞いても、君は何も心配しなくていい。何があっても僕を信じていて欲しいんだ。・・・わかって貰えるかな?」
「・・・どんな話なの?」
萩原は不安げに見つめる子猫の青ざめた頬を指で優しく撫でながら、話しにくそうに何度もため息をついていた。
「僕を信じると言って欲しい・・・でなければ話す勇気が出そうにないよ。」
「・・・ヒロ・・・」
「信じてくれるね?」
「・・・うん・・・」
子猫はわけもわからないまま仕方なく頷く。萩原はもう一度子猫にゆっくりキスをしてから、覚悟を決めたように話始めた。
「可奈子が・・・女房のことだけど・・・流産したんだ。」
子猫は言葉もなく呆然とした。
「もともと子供はひとりでいいと言っていたのは彼女だし、避妊薬を飲んでいたはずなんだ。まさか・・・妊娠してるとは・・・」
萩原はそこまで言って、子猫の体が震えていることに気が付き、
「子猫・・・済まない・・・許してくれ・・・」
と胸に強く抱き、髪を撫でた。
「・・・君も知ってると思うけど・・・君に出会う以前の僕は・・・浮気は男の甲斐性と思っているような奴だった。仕事を優位に進めるにも利用出来たし・・・可奈子もうすうすはわかっているようだったが家庭が平穏でさえあれば特別追求するつもりはなかったらしい。・・・だが・・・君と出会ってから・・・僕が変わっていくのを感じていたのかな・・・なるべく家庭ではいつも通りにしてきたつもりだったが・・・可奈子は何かの危険信号を感じ取っていたんだろう。・・・僕に内緒で避妊薬をやめていた。・・・もし知っていたら僕が避妊したさ。」
子猫は萩原の腕の中で泣き出していた。
「子猫・・・辛いだろうが・・・わかって欲しい。・・・僕が愛しているのは子猫だ。・・・でも・・・子供はまだ小さい。・・・君ともすぐ結婚出来る状態にもない。・・・今は夫婦生活を続けているしかないんだ。」
子猫は萩原の胸に顔を押しつけて悲鳴のような泣き声をあげた。萩原は背中をさすりながらしばらく子猫をあやすようになだめていた。
「済まない・・・こんなに君を苦しめて・・・愛する君を悲しませている自分が情けないよ。・・・そう・・・愛してる・・・愛してる。・・・だから・・・余計隠そうと努力してきたが・・・努力すること自体がすでに不自然だったのかも知れないな。・・・可奈子は子供が出来れば僕の気持ちが家庭に向かうと思っていたらしい。・・・だが・・・無理な努力は続かないものさ。・・・君のことが心配で心配でたまらなくて・・・何をしていても君のことが浮かんできてしまう。・・・夜でも・・少し散歩するからと言っては駐車場の車の中から君に電話したし・・・そのまま朝まで帰らない日が繰り返されれば・・・可奈子にも僕が浮気ではなく・・・本気だとわかっても当然だったろう・・・」
萩原はしゃくりあげて泣く子猫に、
「こんなに愛しているんだ・・・もう・・・泣かないでくれ・・・子猫・・・」
と言って子猫の顔中にキスを降り注いだ。
「この先のことが・・・話し辛い・・・」
「・・・この・・・先?」
子猫は喉をひくつかせながらやっと言葉を出した。
「・・・うん・・・辛抱して聞いて欲しい・・・」
「・・・いや。」
「子猫・・・頼む・・・必ず埋め合わせするから。」
「・・・聞きたくないもん。」
「ふぅ・・・困ったな。・・・それじゃぁ・・・ひとつになって話そうか?」
子猫が返事につまっているので、萩原は実力行使に出た。子猫を抱き上げてベッドに寝かせ、服を脱がせて自分も服を脱ぎ捨てた。
 今の心境では到底感じることなんて出来ないと思っていた子猫だったが、丹念に愛撫を繰り返されると、体はもう萩原のモノが欲しくて欲しくて、自分から固く反り立った肉棒を蜜の溢れる奥へと引き入れた。ひとつになった萩原はゆっくりと動かし、奥まで深く繋がると、そのまま少しだけ動かしながら、
「僕は君の中にいる。君の中にいる僕にしっかりしがみついて・・・話しを聞いて欲しい。」
とまた話を続けた。
「・・・可奈子は僕が本気になった相手が知りたかったそうだ。・・あっ・・ぁぁ・・そう・・・しっかりつかまっているんだ・・・素敵すぎて・・・僕の方が我慢出来るか不安になるが・・・あぁぁぁ・・・話し等どうでもよくなりそうだな・・・」
「ヒロォ・・・聞くから・・・辛くなってきたらヒロを思い切り感じさせて・・・」
「・・・ん・・・わかったよ。・・・じゃぁ話すよ。いいね?」
「・・・うん。」
「いい子だ・・・愛している。」
「・・・うん。」
「・・それで興信所に調べさせた可奈子は・・・僕の相手が以前デパートで見かけた少女だったことを知った。・・・君は可愛いからね・・・印象に残ってたんだろう。・・・で・・・そんなに前から僕を虜にしている君へ・・・激しく嫉妬した。」
「・・・猫だって・・・猫だって・・・いつも・・・嫉妬してたもぉーん・・・」
「うぅぅ・・・ぁぁあああぁぁぁ・・・」
子猫があまりキツク締め上げたので萩原は呻き、
「ああ・・・そうだ・・・君だって辛いのを耐えていたんだ・・・わかってる・・・わかってる・・・」 としばらく子猫を激しく突く上げた。
「・・・可奈子は嫉妬と悲しみと不安とで・・・かなりのストレスを溜め込んでしまった。・・・その結果流産してしまったんだ。・・・が・・・問題はこれからで・・・その流産がかなり状態の悪いものだったらしく・・・今後・・・可奈子には子供を作るのが難しいそうだ。」
「・・・え・・・」
「こうなったのは僕の責任だ。・・・今、可奈子を見捨てたら自殺しかねない。・・・せめて彼女の気持ちが落ち着くまでは・・・可奈子を追いつめるような行為は出来ないんだ。」
「・・・出来ない・・・?」
「ぅぅうううぅぅぅ・・・しばらくは会えなくなる・・・・ぅああああぁぁぁぁぁ・・・・・ああぁぁぁ・・・放すものか!子猫!君を手放す気なんてない!」
萩原はもう我慢出来ないと締め付ける子猫の襞に包まれて思いを遂げた。 「・・・子供欲しい・・・」
「あぁ・・いつかふたりの子供が欲しいね・・・」
「今でもいい・・・」
「そうだな・・・子供が出来たら・・・すぐに結婚してしまおう。」
萩原は優しく笑った。
「・・・子猫と僕の将来の為にも・・・今は少しだけ待って欲しいんだ。」
「・・・待つって?」
「ん・・・しばらく・・・かな・・・可奈子の両親からも夫としての責任を厳しく要求されててね・・・一応・・・君と別れると約束させられた・・・」
「わ・・別れるの?」
「今放さないって言っただろ?・・・ただ・・・そう言っておかないと・・・また可奈子がおかしくなっても困るし・・・しばらくは監視もきつくなるだろうから・・・別れると言った手前堂々とは会えないんだ。」
「・・・・・そぅ・・・・・」
「そんなに長くは君を悲しませておかないから・・・僕には仕事があるし、仕事の時まで監視につきまとわれても困るしね。・・必ず会える時間を作るよ。」
「・・・うん・・・」
萩原は病院の消灯前までに戻らなければならない、と言いながら、結局かなり遅い時間まで子猫を愛し続け、家の近くまで送って行った。
 子猫は自分の犯した罪の大きさを思わないではなかったが、萩原を失うことの方が怖かった。だから、この時の子猫には、しばらく待つというのがどれくらいなのか、ということの方が深刻に思えていたのだった。
<43>
[募金]
<43>募金

 町はクリスマス飾りに華やぎ、切ないクリスマスソングを流し続けてる。萩原に会えない週末を独りぽっちの家で過ごしたくなかった。まだ、聖夜には日があったが、土曜日ともなれば町には家族連れや寄りそう恋人達で賑わう。
 目的もなくデパートの売り場を眺め、催事場の一角で開かれていた絵画展を覗いてみた子猫は、少し先で絵を鑑賞していた男性に目を惹き付けられた。パパより年上かも知れない、と思える紳士はゆっくりと一枚一枚を鑑賞していった。子猫はその落ち着いた雰囲気と優しそうな横顔が気に入って絵よりも長く見ていた。その視線に気付いた紳士が子猫の方を見た。子猫は思わず赤面して視線をそらし、絵を眺めるフリをした。紳士は時々子猫を気にしながらも絵を鑑賞し終わると展示場を出ていった。子猫は、素敵な人だったなぁ、と思いながら、ちょっとため息をついて外に出た。行く当てないしなぁ、と催事場のちょっとゆったりしたソファーに座ってぼんやりしていたら、さっきの紳士が隣りに座って声をかけてきた。
「一人なの?・・それとも誰かを待ってるのかな?」
子猫はちょっと考えてから、
「・・捨て猫を拾ってくれる優しいおじ様を待ってるの。」
と答えた。紳士はそれを聞くと苦笑した。
「それは・・私でもいいのかな?」
「うん。」
子猫が頷くと、それじゃぁと紳士が子猫を促すように立ち上がった。子猫は紳士の少し後に行き先も知らないままついていった。

 どうして初めて会ったばかりの男性と関係を持てるんだろう、と子猫自身が不思議な感覚に包まれていた。まだ、名前も聞いてなかったっけ、猫も名前言ったかな、そんなことが頭に浮かんでは、込み上げてくる快感に流されて消えていく。
「ぁぁああぁぁぁ・・・」
丹念な花弁への愛撫。服を脱いだ紳士は意外なほど大胆で執拗でどう猛な獣のようだった。
「あん・・・あん・・・あぁぁん・・・」
「君のような可愛い子が誘ってくるなんて意外だったな。」
子猫を四つん這いにさせた紳士は背後から激しく責めながら言った。
「あぅぅ・・・誘ってないぃぃ・・・・」
「充分誘われたよ。・・ほら!今もこんなに喰いついてくる。」
「ぅぅぅ・・・あぁん・・・寂しかっただけだもん・・・」
「彼と喧嘩でもしたのかい?・・浮気していけない子だなぁ。」
「ぁぁぁぁぁんんん・・・おじ様に甘えたかったのぉ・・・」
「はっは・・なんでおじさんがいいのかなぁ?」
「・・・だって・・・ぁぁ・・ぁ・・ん・・・温かいんだもん・・・」
子猫が思い切り締め付けると紳士は呻いて、
「君のここも特別熱く燃えるようだよ。」
と言った。後は会話も途切れがちになり、紳士は子猫の体を貪るのだった。

「今日は時間がなかったが、君とはまた会いたいな。」
と言った紳士はホテルの部屋を出る間際、支度を終えた子猫に数枚のお札を渡した。
「え?・・・これなぁに?」
「お小遣いだよ。」
「えぇ・・・いらないよぉ。」
「まぁ、いいから。取って置きなさい。あって困るもんじゃないだろう?」
「でも・・・」
「連絡先、教えてくれないか?」
子猫はうつむいたまま首を振った。
「ん?・・そうか、親には内緒だろうし・・それじゃ私の携帯を教えておこう。」
紳士は部屋にあったメモ用紙に急いでペンを走らせ子猫に手渡した。
「時間がなくて、急がせて済まなかったね。今度はゆっくり会おう。」
そう言うと紳士は先に部屋から出ていってしまった。
 取り残された子猫は手に持ったメモとお金をぼんやり見ていた。
(これって・・何?・・・猫は・・・買われたの?)
子猫は急にみじめになって、涙が込み上げてきた。温もりが欲しかっただけなのに、今だけのつかの間の夢でいいから愛されていたかっただけなのに。
(お金で買われた体・・・そしたら心はどこにいけばいいの?)
子猫はグッと涙をこらえた。泣いたらもっとみじめになりそうだった。

 ホテルから外に出ると冷たい風が吹き付けてきた。火照りの残る体が今の子猫には忌まわしかった。お金と引き替えに捨てられた心。残された感覚は今でも立ち去った紳士のモノを覚えてる。強く吸われた乳首が疼く。子猫は泣きそうな心を隠すように前を向いて歩き出した。
(風・・風・・もっと強く吹き付けて・・・)
子猫はともすると浮かんできてしまう涙を風が飛ばしてくれることを願った。
 彷徨うように町を歩く子猫の耳に、
「御協力お願いしまぁーす!」
と叫ぶ声が入ってきた。数人の高校生くらいの集団が募金を呼びかけていた。
(こんなに一生懸命頑張ってる人がいるのに・・・)
子猫はそばに行くと、手渡された時のままコートのポケットに手を突っ込んで握りしめていたものを、募金箱に入れた。確かめた訳ではなかったが、10万円近くはあったお金を入れた時、箱を持っていた女性が驚いた顔をした。が、すぐ満面の笑みで大きな声で、
「ありがとーございまぁーす!」
と言ってくれた。
(ごめんね。・・・汚いお金で・・・)
子猫は心で恥ながらその場を逃げるように立ち去った。そんな行為で子猫の心が救われることはなかったが、お金の重さ分だけは気持ちが軽くなれた気がした。
<44>
[ヒーロー]
<44>ヒーロー

 やりきれない思いを引きずりながら子猫は翔のマンションへ行った。今夜も集会で翔は出かけているはずだった。子猫は渡されていた合い鍵で玄関を開けて入った。真っ暗に静まりかえった部屋はそれだけで寂しさが募る。子猫はひとつひとつ灯りをつけていった。一人で暮らすには大きすぎるような2LDK。一部屋を寝室、もう一部屋を翔の趣味なのかPCや細かい配線がいくつも下がってる機械のようなものが占領していた。この機械で翔は市販のゲームを改造しては友達に試させたりしていた。翔は熱中すると2時間でも3時間でもPCに向かっているので、そんな時子猫は部屋の隅に座って目を輝かせた横顔を眺めていた。

 子猫がリビングのソファーに座っていると、寝室から物音が聞こえた。全ての部屋が暗かったのに、と不審に思いながら寝室を開けてみた。
「翔?!・・・どうしたの?」
ベッドに横たわっていた翔は手振りで子猫を呼んだ。
「・・・発作?・・・薬は?」
「ああ・・もうだいぶいい。バーカ、なんて顔してんだよ。」
「何か飲む?」
「いい・・・ここにいろ。」
腕を強く引かれて子猫は翔の隣りに寄り沿うように体を横たえた。翔が腕を回して子猫を腕枕する。しばらくキスをしたが、まだ苦しそうで、唇を離した翔の息は早かった。
 携帯が鳴って、翔は枕元に置いていた電話に出た。
−「ああ・・俺。・・・いや、大丈夫に決まってんだろ。・・・ああ、絶対ぇ行くって。・・・っざけんな!テメェ、殺すぞ!・・・ああ。・・・いい。・・・ああ、じゃぁな。」
電話を投げ出すようにした翔は胸を押さえて顔をしかめた。
「集会?」
「ああ。」
「・・・今日くらい休めばいいぢゃん。」
「今・・いろいろ取り込んでて・・俺がいねぇとマズイのさ。」
「・・・そうなんだ。」
「悪ぃ・・・ひとりにさせちまうけど・・・ゴタゴタにケリついたら引退すっからよ。それまで・・待っててくれな。」
「・・・うん・・・」
「今なぁ・・隣りの県の奴等がこっち来ちゃぁー悪さしてっからよぉ・・・あいつ等ぶっつぶして二度と悪さ出来ねぇよーにしとかねぇーと・・・安心して任せらんねぇ。」
「・・・うん。」
「お前・・うん、ばっかぢゃん。何が気にいらねぇんだ?」
「・・・別に・・・」
「子猫・・俺がその別にって言い方が嫌いなんは知ってんだろ?」
「・・・だって・・・心配したって・・・反対したって・・・聞いてくれないぢゃん。」
「バーカ、聞く聞かねぇはともかく、お前が心配してくれりゃー嬉しいのさ。」
「・・・猫も・・・集会行くかなぁ・・・」
「お前には無理だって・・それは説明したろ?まして今はもっと危険なんだ。お前を巻き込む訳にはいかねぇ。」
「・・・猫も不良になる。」
「アッハ・・似合わねぇことすんなよ。第一お前が側にいたら俺は心配で心配でまともな走りも出来なくなっちまうぜ。」
「・・・ケチ。」
「ケ・・ケチってなぁ・・・」
「・・・翔には仲間もいる。・・・友達もいる。・・・夢中になれるものもある。・・・でも・・・それのどこにも猫の居場所がないぢゃん。」
「ここにお前といるだろ?」
「・・・行っちゃうくせに・・・」
「しょーがねぇだろぉ?わかってくれよ。俺には責任があんだからよぉ。・・・だからケリついたら引退するって言ってんぢゃんか。・・・今すぐって訳にはいかねぇけど・・・来年の夏までには隣りの県の二大グループをぶっつぶしてやるぜ。」
「・・・つぶしたって・・・また出来るぢゃん。」
「はん!俺の名前聞いたら逃げ出すような小せぇ奴等はどうってことねぇ。・・問題はあいつ等さ。やくざと繋がってるしロクなもんぢゃねぇ。しかもこっちの県にまで土足で踏み込んで悪さしていきやがんだぜ?・・ぶっ殺してやんなきゃ気がすまねぇ。」
「・・・翔ぉ・・・」
「つーか・・徹底的に叩きのめしてやるってんだよ。・・・そんなに心配すんなって。殺しはしねぇ。・・・死ぬより怖い思いはさせてやっけどよ。あっはっはー!」
「・・・翔は正義のヒーローだね。」
「バーカ。んなんぢゃねぇ。・・・さぁーて、痛みも引いたしボチボチ行くかぁ。」
「・・・無理しないでね。」
「おぅよ!」
翔は子猫をギュッと抱き寄せキスをする。
「・・寂しいか?」
翔は子猫のセーターの下から手を入れて胸を揉みながら囁く。
「・・・少し・・・」
「強がるなよ。そーとー寂しいって顔してんぜ。」
「・・・翔・・・」
翔は子猫のスカートをたくし上げて触ってくる。
「いや・・・」
子猫はさっきのことを思い出して首を振った。
「どうした?」
「・・・だって・・・時間ないのに・・・」
「帰ったらたっぷりお前を鳴かしてやるさ。今は・・・このままでいいだろ?」
翔は子猫にキスをしながらズボンの前を開けて子猫の中に入ってきた。
「あっ・・・ぁぁっ・・・」
子猫の下着はまだ片足に残っていた。お互い服のまま抱き合った。繋がった部分だけが熱く生々しい。翔のモノが紳士の残した記憶をぬぐっていってくれる。
(翔・・・ごめんね。・・・ごめんね。)
子猫は翔だけの感覚を体に刻むように締め付けた。翔は子猫がいくのに合わせて中に射精した。
「俺のはお前のもんだ。お前さえいりゃぁ他に興味はねぇよ。離れていても俺のを握ってるのはお前だって自信持ってろ。そうすりゃ寂しさも不安もなくなるさ。・・・な?」
「・・・うん。」
「泊まってくならゆっくり寝てていいから。」
「・・・うん。」
「愛してるぜ。」
翔は子猫にもう一度キスをして、集会へと向かった。
<45>
[お仕置き]
<45>お仕置き

 塾の日、子猫はぎりぎりの時間に家を出た。学校から帰って洗濯物を入れ、アイロンをかけてからしまった後、ベッドで横になっていたが、そのバスに乗らないと塾に間に合わない時間になると、怠い体をやっと起こしてバス停へ向かうのだった。最近はずっとバスで塾へ行っている。母親には風が冷たいから、と言い訳したが、塾をサボった時自転車が邪魔になるからだった。
 一応、塾のバッグにはテキスト等の勉強道具を用意して行ったし、塾が近付くと、今日こそは行かなきゃ、と思う子猫だったが、塾前のバス停に着くと降りることが出来なかった。それでも適当には顔を出しておかないと、母親に塾から問い合わせがいきかねなかったし、そうなった時の母親の憤激を想像すると恐ろしいものがあった。

 この日、何とか塾の終わる時間まで耐えて外に出てきた子猫は、バス停に向かおうとして、近付いてくる車に気が付いた。それが萩原の車だということはすぐにわかったので、子猫は不審に思いつつも黙って乗り込んだ。
「お疲れ。」
「ヒロ・・・どうしたの?」
「どうしたも何も・・・君が携帯をオフにしてるから全然連絡が取れなし、心配でたまらなかったんじゃないか。」
「・・・ごめんなさい。」
「電話はなるべくするからって言っておいただろう?」
「・・・うん。」
「この前も塾の前で終わるのを待っていたんだけど・・・君の姿が見えなかった。具合でも悪いんじゃないかって心配だったよ。・・・携帯も通じないままだし・・・君の家にかけると君が嫌がるし・・・」
「奥様、退院したの?」
「子猫・・・いや・・・まだだけど・・・なぁ、子猫・・・」
「なら、こんなことしてちゃマズイんでしょう?・・てゆーか・・退院したってマズイぢゃん。」
「向こうのことはちゃんとしてるさ。病院にも毎日顔を出してるし、子供の面倒もちゃんと見てる。君が心配することじゃない。」
「だったら猫のことも放っとけばいいぢゃん!」
子猫は込み上げてくるものをずっと我慢していたが、堪えきれなくなってワッと泣き出した。萩原は天を仰ぐようにため息をつくと、車を加速させた。

 萩原はラブホテルに車を入れると、泣きじゃくりながら渋る子猫を強引に部屋へ連れこんだ。
「いや、いや、いや!」
子猫はベッドに押し倒されてもキスさえ拒んでいた。
「子猫・・・悪かった。僕の言い方がマズかったな。」
「帰るぅ!帰るのぉ!」
「このままじゃ帰せないよ!・・・子猫・・・いい子だから・・・」
「いやぁぁぁ・・・ヒロなんか知らないー!」
「頼むから・・・泣きやんで・・・僕の話を聞いてくれ。」
「いや、いや!もうヒロの話なんか聞きたくないーー!」
「子猫!・・・子猫・・・子猫・・・・・」
萩原はもがいて逃げようとする子猫を押さえつけて服を剥ぎ取ると、まだ充分濡れてなかった子猫の中に無理矢理自分のモノを押し込んだ。
「ぁぁっ・・っうぅぅぅっ・・・痛ぁ・・ぃ・・・」
「ごめん・・・子猫・・・ごめん・・・」
子猫はまだ泣きながら嫌がっていたが、逃げようとすることは諦めたように、静かになった。というより、子猫の体が萩原のモノを切なくきゅぅきゅぅと締め始めてしまったのだ。萩原は安心したように子猫の頬にキスをすると、奥まで挿入したまま自分の服を脱ぎ始めた。全てを脱ぎ終わるとゆっくりと深い所で静かにモノを動かし始めた。子猫の秘部は次第に蜜で濡れていった。
「あん・・ぁぁ・・あん・・ああん・・・」
子猫は張りつめていた感情の糸が切れ、一気に快感が襲ってきて萩原にしがみついた。
「ヒロォ・・・」
子猫は萩原の首に腕を巻き付け、腰に足を巻き付け、肉棒に襞を巻き付けて、会えなかった分の寂しさを取り戻すように思いの全てを込めて抱きついていた。
「子猫・・・愛してる・・・愛してるよ・・・」
お互いがお互いを貪り合い求め合った。時の過ぎるのも、現実のしなければならないことも、この時の二人の意識からは消え去ってしまっていた。ただただ、見つめ合い愛し合い、お互いを確認するように激しく熱く燃えて結合を繰り返した。

 燃焼しきった余韻に浸りながら子猫は萩原の腕の中にいた。萩原は両腕で子猫の体をぴったりと抱き寄せ、顔中に労るようなキスを終わることなく繰り返していた。
「・・・こうなることが・・・怖かったんだ・・・」
「・・・え・・・こう・・・?」
「君が僕を拒絶するようになることが・・・」
「・・・ぁ・・・」
「僕は君に何もしてやれない。・・・辛い現実を押しつけるばかり・・・」
「・・・いいの・・・もう・・・」
「僕には君を愛する資格はないかも知れない。」
「・・・ヒロ・・・」
「だけど君と別れることは考えられないんだ。どうしても・・どうしても君が欲しい。」
「・・・猫は・・・」
(どうしよう?・・どうしたらいい?)
子猫は言葉が続けられなかった。萩原は子猫の様子に不安を募らせたようで、子猫を抱く腕に力がこもった。
「何度も言ってるように可奈子とはいずれ別れると決めている。君と新しい人生を歩みたいと思っているんだ。・・・だから僕を信じて待っていて欲しい。」
「・・・でも・・・猫は・・・ヒロの家庭を壊したくない・・・」
「君が壊すんじゃないさ。僕が君なしではやっていけないんだ。」
「・・・だけど・・・猫・・・」
「もう寂しい思いはさせないから。・・これまでのように週末を一緒に過ごそう。ん?」
「だめぇぇ・・・」
「子猫・・・」
「お嬢さんが可哀想ぢゃん。・・・ママが入院してて・・・パパがお休みの日にも家にいてくれなかったら。・・・だから・・・だから・・・それはだめなのぉ。」
子猫はまた涙ぐんでいた。萩原が愛しそうにキスをする。
「子猫は優しい子だな。」
「違う・・・違うのぉ。・・・猫だって・・・パパがいない寂しさ・・・わかってるもん。・・・ましてもっと小さくて・・・わかんなくて・・・パパを信じ切ってるのに・・・」
「・・・酷い父親だという自覚はあるさ。」
「ヒロ・・・」
「ん?」
「・・・もし・・・猫を本気で愛してるって言うなら・・・」
「本気だって言ってるだろ!言葉で言ってるんじゃない。心が愛しているって叫ぶんだ。」
「・・・それなら・・・いいパパでいて。・・・優しい旦那様でいて。」
「子猫?」
「我慢するから・・・ちゃんと我慢してるから・・・こんな風にもう困らせないから・・・」
「・・・いやだ。」
「ヒロ・・・」
「いやだね。君を放っておいたら・・僕は君を失ってしまう。」
「・・・我慢するって言ってるぢゃん。」
「ああ。・・・君がとてもいい子なのは知ってるよ。」
「違っ・・ぅ・・」
萩原が子猫の口を唇で塞ぐ。
「しー・・・聞いて。・・・ただね・・・君の体は我慢していられる体じゃないんだ。・・だろ?」
「・・ぅぅぅ・・・」
「隠さなくていい。君の体のことは君以上に知っている。・・・そうさ。わかっていたんだ。君は僕なしではいられないってことを。ノブって子でも翔って子でもだめなんだ。僕じゃないとね。そうだろ?」
「・・・だけど・・・」
「だけどじゃない!・・僕が欲しい。そうだろ?」
「・・・うん・・・」
「欲しいから・・欲しがり過ぎて・・僕の家庭を壊すかもと怖くなる。ん?」
「・・・うん。」
「それくらいなら・・僕を忘れた方がいい?」
「・・・わかんない・・・」
「忘れられる訳がないんだ。君を知り尽くしてる僕を。だろ?」
「・・・かも・・・」
「それをどうやって我慢しようって言うんだ?・・僕の代わりを探すか?」
子猫はビクッとして首を振った。が、動揺を見透かされてしまったらしい。
「・・・子猫・・・そうなのか?・・・他に男を見つけたのか?君を満足させられる男を?」
「・・・違うぅ・・・そうぢゃないよぉ・・・」
「浮気したのか?!」
「・・・ぁぁ・・・ぅぅ・・・」
「誰なんだ?!一体相手は誰だ?!」
「・・ぅぅ・・知らない・・・ぁ・・」
「子猫!・・君は・・君は・・」
萩原は青ざめた顔で起きあがると、子猫の体をうつ伏せにし、お尻を思いっきり叩き始めた。
ピシッッ!
「あぁぁっ・・」
「いけない子にはお仕置きだ。」
ビシッッ!
「ああぁぁっっ・・・」
「浮気は許さない。翔のことは別問題だ。だが、浮気は許さん!」
バシィィッッ!!
「きゃぁぁぁぁっっ・・・」
「これからの君と僕との関係の為にも浮気を許す訳にはいかないんだ!」
ビシィィッッ!!
「あーーーっっっ・・・」
「どうゆう男に抱かれたんだ?え?」
パシィィィッッン!!
「あぅぅぅ・・・し・・知らないー・・・」
「どんな風に抱かれた?言ってみなさい!」
バシィィッッン!!
「あぁぁぁーーーーっっ・・・」
「ちゃんと話すまで許さないよ。さぁ!」
ピシャァーッッン!!
子猫の真っ白だった二つの球体が指の形が食い込むほどの痕になり真っ赤に染まっていく。子猫は喘ぎ喘ぎ全てを告白した。

 萩原は苦渋の顔で聞いていた。聞き終えると今聞いたのと同じように子猫を四つん這いにさせて、紳士以上の激しさで子猫を責めた。白い乳房に歯形を残し、乳首を血が滲むほど強く噛んだ。体を激しく揺さぶられながら乱暴に突き上げられた。子猫は泣きじゃくりながら萩原にしがみついて全てを受け入れていた。今の子猫には痛みが救いであり、萩原の怒りが嬉しかった。
「こんな風に抱くのは本意じゃない。」
激情の嵐が過ぎ去って、ぐったりしている子猫を優しく抱き締めながら萩原が言った。
「君の浮気には僕にも責任がある。だが・・これからは許さないことにする。いいね?」
「・・・うん。」
「僕も君をもう寂しいままにはしておかないから。」
「・・・あ・・・でも・・・」
「でもじゃない。はい、だろ?」
「・・・はぃ・・・」
「よしよし。いい子だ。・・・そう・・・君は本当はとってもいい子なんだよ。ん?」
「・・・わかんない・・・」
「わかんない時はぁ・・・またお仕置きかな?」
「ぅぅぅ〜〜・・・」
「ハハハ・・・愛しているよ。」
「猫もぉ・・愛してるぅ・・・」
「ああ・・わかってる。」
萩原は優しく笑って子猫にキスをした。子猫は疲れ切って、ぼんやりした意識が睡魔に囚われるままに眠りに落ちていった。

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