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mikado







§U−8§「花火」


 ......チャンチャン......チャカチャカ......ピーヒャララ......トントントントン......ドンドンドドン............

 祭囃子の和楽器の音が聞こえてくると、それだけでワクワクしてくる。
 浴衣を着たヒナも、御門の車を降りるなり聞こえてきたお囃子に、目を輝かせた。
「マロぉ、聞こえてるよぉ〜♪早く行こうよぉ〜♪」
「ちょっと待て。俺も下駄に履き替えるから・・」
 御門は車を運転する間は安全の為にスニーカーを履いていた。
 後部座席に置いてあった紙袋から下駄を出し、履き替える。
「ねぇ〜、屋台あるかなぁ?」
 ヒナは暗い駐車場から、空が少しだけ明るくなっている方へと背伸びして様子をうかがっている。
 それで見えるはずもないが、気持ちがそうさせてしまうのだ。
「そりゃ、あるだろう。いくら田舎のお祭りとはいっても、神社が主催だしな。」
 御門はクスクスと小さく笑いをこぼし、車の鍵を掛ける。
「じゃぁ、綿菓子あるよね?」
「あるある。」
「あんず飴もある?」
「・・・多分・・・」
 一応そう答えたが、御門はあんず飴がどんな物か知らない。
「えー…じゃぁ、風船ヨーヨーは?」
「うん。それは、あるな。」
「わ〜ぃ♪…金魚すくいもあるよね?」
「あ・・まぁ、あるだろうが・・・金魚は持って帰れないぞ?」
「えーーーーーッ……」
「仕方ないよ。車で3時間以上掛かるんだ。金魚をすくったはいいが、帰りに死なれたら可哀想だろ?」
「…ぁ……そっか……」
 街での大きなお祭りは、すでに終わってしまっていたので、御門が夏の終わりに開かれるお祭りを探して、ヒナをこの小さな山里に連れてきたのだ。

 ヒナが赤い鼻緒の下駄で駐車場の草を蹴った。
 普段は運動場にでも使用している所なのだろう・・・舗装されてない土の匂いがする。
「・・・そんなに金魚が欲しかったのか?」
 拗ねたようにうつむいて草を蹴るヒナ。
 その金魚柄の浴衣が可愛くて、御門は優しくヒナの髪を撫でた。
 ヒナは、
「……だって……毎年、お兄ちゃまが……」
 と、言いかけたが、御門に悪いと思ったのか、途中で口ごもる。
「ヒナの家に金魚なんていたか?」
 聞いたことがなかった御門が、多少ムッとして聞く。
「本宅の方の庭に小さな池があるもん。」
 現在、マンション住まいのヒナは、実家のことを”本宅”と呼ぶ。
 本当の家、という意味で言ってるのだろうが、変な響きだ。
「・・・本宅って・・・親父さんがいない時は留守だろ?エサとかどうしてるんだ?」
「藻とか苔があるから大丈夫なんだってぇ。」
「・・・放置かよ。・・・カエルかカラスに全部喰われてるかもな・・・」
 雄志がすくった金魚だと思うと憎たらしい、・・・と嫌味が口をすべって飛び出す。
「ママが三日に一度は帰ってるから大丈夫だもん。」
「あっそ。」
 そこまで面倒見のいい母親には見えないが、せっかくのデートなのに怒らせてもつまらない。
 御門は追求をやめて、
「そんなに金魚が好きなら、今度改装する部屋に水槽を置いてやるよ。」
 と、話を変えた。
「…マロの部屋?」
「ああ。改装中だって話してあるだろ?」
「…うん。」
「大画面の液晶TVがくつろぎながら(=ベッドに寝ながら)見られるようにしたんだ。」
「…へぇ……」
「波とか海中とか・・イルカが泳いだりする環境ビデオ?みたいなのをゆっくり観られるよ。そんな時は照明も青く波模様に揺れたりするし、きっとヒナも気に入る(=ヒナも人魚になって俺という海の中で泳げる、、ニヤリ、、)と・・・コホンッ・・・だから、水槽もインテリアにいいかな、ってさ?」
 ヒナを連れ込む為の改装なのだと、今はとても言えないが、それとなく遊びに来たくなる興味を持たせたい。
「…ふーーん……」
 ヒナは自分とは関係ない話だと思っているので、首を傾げて聞いている。
 御門もヒナの反応が薄いのは仕方ないと諦め、
「それより、お祭りに行こう?」
 と、ヒナに手を差し出した。
「うん♪」
 ヒナも、…金魚は諦めても他に欲しい物がいっぱいあるし…と気持ちを切り替え、笑顔で御門と手を繋いだ。


 ......ピーヒャラピーヒャラ......トトント......ドンドン.............

 お囃子の音が大きく聞こえるようになると、神社の参道に沿って並ぶ屋台が見えてくる。
 村里の人々だけでなく、近隣からも人が集まって来ているようで、けっこうな賑わいだ。
「あ〜♪あんず飴〜あるあるぅ〜♪」
 ヒナが嬉しそうに言って、御門の襟元を軽くつかむ。
 素肌の胸に、ふと触れるヒナの指先が、御門の血を熱くさせる。
「・・あぁ、まぁ・・取り敢えず、お参りしてからにしような。」
「……うん…」
 ヒナは御門に手を引かれながら、キョロキョロと屋台を眺め回して、帰りに立ち寄る店をチェックしつつ歩く。
「ほら、階段上がるぞ?・・・前見て歩かないと転ぶだろう・・・」
「は〜ぃ♪」
 返事だけはいい。
 が、階段を上がりながらも振り返ったりするものだから、御門は手に負えない子供を連れている気分になってくる。
 そうした御門の心配をよそに、ヒナは空いている方の手を指折りながら、
「…綿菓子でショ…あんず飴でショ…風船ヨーヨーとォ…ぁ…金平糖もアッタァ…」
 と、独り言を呟いている。
 注意を促す御門も、ヒナの可愛い浴衣姿に、自然と顔が緩む。
 頭のテッペンで髪を留めている赤いリボンと、赤い帯と、下駄の赤い鼻緒が、昔見た絵本の童女のようで、手を繋いでいる自分がそれだけで後ろめたい気分になるのは、近頃過激になった妄想といけない夢のせいなのか・・・。


「・・・なぁ、ヒナ。」
 御門が湧いてきそうな妄想を吹き消そうと呼び掛ける。
 ヒナは、買い物リスト作りに夢中で上の空、といった目を御門に向ける。
「屋台もいいけどな・・・それより、せっかく神社にお参りすることだし、俺達の仲が永遠であるように、って祈ろうぜ?」
 照れ臭くなるほど真面目な言葉を、敢えて口にする。
 二人一緒にお参りするのは、二人の人生で今夜が初めてなのだ。
 きっと何十年経っても、今夜が忘れられない日になるだろう。
 まずはその思い出のスタートに、多少格好をつけておきたかった。
 ・・・けれど、
「……祈るの?」
 と、ヒナからは意外な返事が返ってきた。
 ヒナは、瞬きをして一瞬動きを止めた後、今度はしっかり御門を見て聞き返す。
「え・・まぁ、お願いする、ってゆーか・・・あ、恋愛成就のお守りもあるらしい。お揃いで買って持つのもいいもんだろ?」
 真面目に言った言葉が滑ったようで、御門は軽く鼻の頭を掻き掻き話を続ける。
「……そぉ……うん…わかった……」
 ヒナはコクリと素直に頷くが、何か納得してない表情をする。
「・・・俺が神頼みなんて似合わないか?」
 自嘲的に言って、御門が苦笑すると、
「…そんなことないけど…」
 と、ヒナが繋いでいる手に、ギュッ、と力を込めた。

 表情といい、含みのある言い方といい、ヒナの気持ちがわからなくなった御門は、階段の途中で立ち止まり、
「ん?・・・どうした?」
 と、ヒナの顔を覗き込んだ。
 ヒナはうつむきがちに躊躇っている。
「・・・まだ・・・俺は信用されてない?」
 恐々と聞いてみる。
 と、ヒナが苦しそうに首を振り、
「違うの…違う…」
 と、リボン頭を振る。
 サラサラの髪がヒナの白い頬を打ち付ける。
「…あのネ…ヒナもお守り、欲しい…御利益があるって評判なら、尚更に欲しい…」
「フフッ。・・・だろ?」
 女の子はみんなお呪いや占いが好きなものだ、と御門はホッと笑みを浮かべる。
 けれど、ヒナはますます顔を曇らせ、
「…でも……怖い……怖いからいらない……」
 と、小声で言った。

 ズルッ、とコケそうになった御門は、
「いや。怖いほどの御利益ってものじゃないさ・・・多分。」
 と、真剣に受け止め過ぎて怖がるヒナをなだめる。
 ヒナは、自分自身でも自分を持て余すかのように唇を噛む。
「・・・別にお守りくらいで祟りがある訳でもないしな?」
 逆に御利益がありすぎたら、誰もが気軽には持たないだろう。
「…そうだとしても……でも……」
「でも?」
「…でも……想いを、形あるものに替えてしまったら…無くすかも知れない、壊すかも知れない、一時の感情で捨ててしまうかも知れない……それが怖いの…」
 そう言うと、ヒナが御門の腕にしがみついて顔を埋めた。
「・・・・・ヒナ・・・・・」

 御門は言葉に詰まった。
 ヒナの言いたいことが、わからなくもない。
 見えない心を不安に思う気持ちはあっても、見えないからこそ一層に強い”想い”もあるだろう。
 それを思えば、お揃いのお守り、婚約指輪、婚姻届、結婚指輪等々、あらゆる”もの”という存在の、なんと儚いことか。
 御門自身もヒナも、身に染みて感じていることだ。
 ”想い”を”もの”に替えたくない、というヒナの気持ちが御門にはわかる。
 ”無”である心こそ、真に強い願いなのかも知れない。
「・・・そうだな、ヒナ。」
 御門はヒナの髪にそっとキスをし、
「俺達はお互いの魂に誓い合った。神様には、その報告をすればいい。」
 と、込み上げてくるヒナへの愛しさに、熱く震える息で囁いた。
「……ウン…」
 ヒナはようやく御門の腕から顔を上げ、スンッ、と鼻を啜って頷いた。
 微かに潤んだ目と赤らんだ頬が、妙に色香を放つ。
 童女ようでいても、ヒナには持って生まれた妖艶さがある・・・と、御門は熱い想いと共に、胸をときめかせて見つめた。


 階段を登りきると、境内には小さなやぐらが組まれていた。
 祭囃子は、そのやぐらの上のステージで、半被姿の男達が演奏していたものだった。
 下では浴衣姿の女性や子供が、やぐらの周りで輪になって踊っている。
 境内は一面に提灯が吊られ、ポゥッ、と優しい光で辺りを照らしている。
 地元の人達が仕切っているのか、参道の屋台とは違った趣の店も出ている。
 神社の方でも書き入れ時とばかりに、火毛氈を貼った台にお札やお守りを並べて売っている。

 チャリンッ…チャリンッ……シャンシャンッ……
 お賽銭を投げて、大きな鈴を打ち鳴らし、手を合わせる御門とヒナ。
「ヒナを生涯愛し、守り、幸せにします。」
 そう言って両手を合わせ、目を閉じた御門の耳に、
「…マロが無茶をしませんように。…でもって、早く傷が完治しますように。」
 と呟く、ヒナの声が聞こえる。
「・・・あのな・・・・・違うだろ?」
 しっかり願い事をしているヒナに御門が文句を言うと、
「…ン??…」
 と、惚けた顔で首を傾げる。
 そして、
「…あ…ねぇ〜、破魔矢があるよぉ〜♪魔除けになるかなぁ?」
 と、御門の浴衣の袖を引っ張って、巫女が立っている台の方へと促した。

「わぁ……ねぇねぇ〜、このお守り〜…可愛い〜♪」
「・・・あのなぁ・・・お前・・・言うことと行動がいつも矛盾してるぞ?」
「え?…だって…可愛い小物、って思えばいいぢゃん♪」
 ヒナは自分の中では全然矛盾を感じてないらしく、どれが可愛いか、でお守りを選んでいる。
 よく「男の方が単純だ」と言われているが、こうも行動が読めないヒナを見ていると、「確かに。」と言いたくなる。
 お守りそのものを信じていない訳ではないらしいが、お守りも可愛ければ小物、と考えられるヒナがわからない。
 念のため、ヒナが選んだお守りの御利益や特徴を聞くと、おそらくバイトらしい巫女は、「袋に書いてある通りです。」としか答えられない。
 袋を見ても、多少の区別以外は、どれも似たような説明だけ。
 例えば、同じ『健康祈願』でも中には全くアクセサリーにしか見えない物もある。
 「これだけ種類があって、みな同じはずはないだろ?」と聞き返しても、巫女は「さぁ・・・」と困った顔をする。
 結局、こうした所で扱われているお守りは、その程度の気休め的な物なのだろう。
 まだ、パワーストーンの方が根拠がありそうな気がしてくる。
「マロぉ…そんなに拘らなくてもぉ…」
「・・・お前がそれを言うのか?」
 御門は片眉を引き上げて、皮肉をこぼした。
「祈願ってあるんだもん。ご祈祷はされてるでしょ?…それでいいよ。記念だもん。」
「・・・記念ね。」
 御門は、やれやれ、と溜息を吐くと、首を軽く回した。

「これ、可愛いからマロにも買おうっと。」
 ヒナが選んだお守りは、カエルの形をした鈴で、効果は『交通安全祈願』だ。
 ・・・ダジャレかよ・・・と、思いつつ、
「・・・え・・・いや、俺が・・・」
 と、懐から財布を出しかけると、
「ダメ。ヒナが買うの。…この前のケーキのお礼〜♪…ウフッ…」
 と、可愛く笑った。
 …ウフッ…と言われると、御門も強く言えない。
 鼻の下が伸びてきて、・・・もう何でもいい・・・交通安全だろうと安産祈願だろうと・・・と受け入れてしまう。
 ヒナは巫女に、
「二つください。」
 と言うと、帯と胸の間から、金魚の形の小さな小銭入れを引っ張り出した。
 金魚の小銭入れは、よく見ると根付けが付いていて、根付けも赤い金魚の形をしている。
 不意に、「…おとと…かぁいぃ…」と言っていただろう、10年前のヒナの姿が御門の脳裏に浮かんできた。
 ・・・出会う前から愛していた・・・
 と、思いたくなる時とはこうしたものか・・・
 郷愁に近い切なさに胸が締め付けられながら、御門は、ヒナが生まれたこと、生きて今日まで育ってきてくれたこと、そして・・・出会えたこと、全てに感動し、感謝した。


「ねぇ、マロぉ…早く行こう?」
 お参りも済ませたヒナは、参道の屋台に行きたそうに御門を見上げる。
 けれど御門は、甘酒をサービスしている場所にヒナを連れて行き、
「ここで少し休んでてくれ。」
 と、注いで貰った甘酒のカップをヒナに渡し、空いたイスに座らせると、一人で変わったお面を売っている所へ行ってしまった。
 そこは普通の屋台とは違う、ヒナが見たこともないお面ばかりを並べて売っている。
 しかも、変わった半天を羽織った男達が数名集まっていた。
 ヒナが不思議そうに眺めていると、御門が、男達の中でも一番恰幅の良い強面の男に近付き、何やら話し掛けながら祝儀袋を差し出した。
 半天の男は強面に笑顔を浮かべ、御門と話し込む。
 そう離れていないが、お囃子の音に掻き消されて、御門と男が何を話しているのか、ヒナにはわからない。
 ただ、時折笑顔を返して話す御門は、制服の時より大人びて見えた。

 …こーゆー時が「色々な都合」っていうんだろか……
 考えても仕方がないので、ヒナは甘酒に視線を落として、突っ込んであった割り箸の片割れで中味を掻き回した。
 甘酒は、毎年3月のお雛祭りの時に雄志が作ってくれるので、初めてではない。
 が、それとは違って、この甘酒はふやけた米粒が見える。
 試しに一口啜ると、香ばしくて濃厚な甘さが口いっぱいに広がった。
「……美味しぃ……」
 すでに暦では秋になっている8月末の山里は、山から足元に冷たい風が下りてくるように感じる。
 参道の屋台でかき氷を食べようと予定していたヒナだったが、境内で飲む甘酒が体をジンワリと温めてくれて、小さな幸せを味わうことが出来た。

「お待たせ、ヒナ。」
 御門が呼び掛けるまで、ヒナは甘酒の香ばしい世界に浸っていた。
「ぁ…うん。お帰り〜。」
 ヒナが機嫌良く顔を上げると、御門が奇妙なお面を二つ持っていた。
「…どうしたの、それ?」
「ご祝儀のお返しにってくれたんだ。ヒナはこっちのオカメだな。」
 と、御門がヒナの頭に面をつける。
「ぅぅぅ……オカメって……」
 お正月の福笑いとか納豆のパッケージとか、印象があまり良くない。
 ヒナの落ち込みを察した御門は、
「オカメは昔なら美人の代表なんだよ。」
 と、笑って説明し、
「・・・それともこっちがいいのか?」
 と言って、もう一方の面をヒナの顔の前に出した。
 御門が差し出した面は、理解し難いほどに口が曲がっている。
「……こっちでいい。」
 ヒナはいかにも嫌そうな顔をして、乱れた前髪を指先で直した。

「これは伝統工芸品だぞ。下で売ってるお面の何十倍の値がする物なんだから、そう無碍にするなよ。」
 と、苦笑して、御門も斜にヒョットコの面を着けた。
「…ププッ……そぉなんだぁ……」
 妙に似合う御門に吹き出し、工芸品だと聞いて感心しながら頷く。
 それから、普通のお面の数十倍、という金額に驚き、
「…でも…高いねぇ……」
 と、そっと自分のオカメの面に触れた。
 言われてみれば、手に触れる感触が普通の物とは全然違う。
 それにしても、ご祝儀のお返しにくれたとなると、あの祝儀袋には相当な金額が入っていたということだろう。
「…あの人、マロの知り合い?…何でご祝儀を渡すの?」
「知り合いの知り合い・・・ってところだな。ここの境内で店を出せるのは地元の人間だけって聞いてたから、近くの穴場を教えて貰おうと思ってね。・・・たまたま頭がいたから少し長話になったけど、お陰でお面も貰えたし・・・」
「…穴場?」
 ヒナにはさっぱり話が見えない。
「花火が良く見える場所を聞いたんだよ。そう深く考えるようなことじゃないさ。」
 御門は謎めいた笑みを浮かべ、ウィンクする。
 謎の笑みが気になるが、”花火”はヒナにも嬉しいイベントだ。
「花火?…わぁ〜ぃ♪…そっかぁ〜花火かぁ〜♪」
 と、ヒナは手を叩いて喜んだ。
「そうそう、花火。ヒナにどうしても見せてやりたかったんだ。」
 御門は、なぜか妖しく瞳を輝かせて、微笑んだ。


 お祭りで、どーしても一番に食べたいのは、”綿菓子”らしい。
 屋台のおじさんがサービスして作ってくれた大きな綿菓子を、幸せそうな笑顔で食べるヒナは無邪気そのものだ。
 デジカメでヒナの姿を追う御門も、心が無になっていくように感じる。

 イカに囓りついて噛み千切れず、情けない顔で口にぶら下げてしまうヒナを、何の衒いもなく笑い飛ばす。
 浴衣に付かないようにと前屈みになり、「バガマヂョォ〜ゥゥ〜…」と涙目で抗議するヒナを写してから、イカに口を近付け噛み切ってやる。
 ヒナがイカの串を渡さないものだから、今度は御門がイカを口にぶらさげる結果になり、ヒナが大笑いする。
 御門は強引に”焼きイカ”の残りを口の中へ押し込む。
 周囲から常に注目され溜息が聞こえてくる御門も、この時ばかりは様にならない。
 ヒナは御門のデジカメを奪って、「仕返し〜♪」と、頬をパンパンに膨らませた顔を写した。
 ようやく口の中のイカを飲み込めた御門は、デジカメを取り返して「アホヒナ。」とおでこに指を弾く。
 さして痛くないようにしているので、どちらも笑顔が絶えない。

 持ち帰れないとしても挑戦したいのが”金魚すくい”で、「勝った方がたこ焼き奢ることにしよ♪」と勝負を挑むヒナに、「余裕だぜ。」とやる気満々に答える御門。
 結果は、兄にコツを伝授されているヒナの圧勝。
 御門は呆然と敗北感に項垂れた。
 普段なら奢ることに抵抗はないが、この”たこ焼き”だけは悔しくて、ヒナが食べようと楊枝を刺すたびに、「あーーん♪」と口を出してねだり、結局ヒナより多く食べてしまう。
 「…ン??」と気付いたヒナに、「あ〜美味かった。・・なぁ?」と意地悪っぽく笑ってやると、ヒナがプーーッとフグばりに膨れ顔をする。
 「アハハハ、怒るなって。風船買ってやるから。」と、ふわりふわりと夜空に浮かぶハートの形の”風船”を買ってやった。
 風船のヒモを手にしたヒナは、目を輝かせて見上げてから、ちょっと恥ずかしそうに瞬きして御門に視線を向けた。
 それが妙に艶めかしく、御門も照れて視線を逸らし、黙ってヒナと手を繋いだ。

 屋台であれこれと買い込んで、手に持ちきれなくなった頃、人の流れが変わった。
 神社から少し下った川沿いの広場へと向かっていく。
「そろそろか・・・」
 御門は荷物でいっぱいのヒナの手首をつかむと、
「俺達も急ごう。」
 と、人の流れに逆らって早足で歩き始めた。
「……ぇ……方向が違うよ?」
 ヒナが目を丸めながら聞くと、
「だから、穴場へ行くのさ。」
 と、御門が再び微笑んだ。


 駐車場に戻った御門は、ヒナを車に乗せると、車を発進させてしまう。
「…花火はぁ?」
「山の方に谷を見下ろせる場所があるんだ。そこから観る花火は最高らしいよ。」
「…そぉーなんだぁ…」
 何となく不安を感じながら、ヒナが頷くと、
「大丈夫。俺を信じろ。」
 と、御門がヒナの手を握った。
 それから、手をハンドルに戻し、
「慣れない山道だから、少し運転に集中するな?」
 と、言うと、後はあまり話をしなくなった。
「…ウン……」
 ヒナは来る途中で聞いていた曲をかけて、ヘッドライトに浮かぶ道を眺めた。


 『私有地』と看板のある脇道に入ってほどなく、車が止まった。
 辺りは真っ暗で身動きが出来ない。
 恐る恐る車を降りたヒナは、風に揺れる葉音に首を竦めた。
「……マロぉ……ホントにここなのぉ?」
 ヒナが自分の声にも脅えるように言った時、
 シュルシュルシュルッ.............
 《 《 《《《ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 と、花火が上がった。
 途端に当たりが明るく照らされる。
 と、同時に、あまりにも大きな花火と大きな音に、ヒナは唖然と立ち尽くした。
 シュルシュルシュルッ.............
 《 《 《《《ドガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 再び花火が上がる。
 反響が山全体を震わせる。
 後から追い掛けて聞こえる爆裂音が《木霊》なのだと気付く。
 小さな山里のお祭りなので、一個ずつ大事に打ち上げている。
 初めからいきなり一度に上げてしまうと、時間が持たないのだろう。
 それでも一個上げるだけで三回音が響くのは、何となく得した気分になる。
 空気の振動がビリビリ伝わり、肌まで振動するようだ。
 シュルシュルシュルッ.............
 《 《 《《《ズガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 大音響と共に目映い閃光がきらめく。
 街の花火大会の時より、花火をすごく間近に感じる。
 山に上がってきた分、実際に花火との距離が近いのかも知れない。
 風向きによっては見上げている顔に灰が降ってきたりする。

「わぁぁーーッ…マロぉ、スゴイよぉ!」
 ヒナが数歩前に進むと、
「あまり前に行きすぎるなよ。その先は崖だから。」
 と、御門が後ろから注意する。
「ぁ…うん。」
 と答え、振り返って見ると、御門はいつの間にかシートを広げていた。
 小さなランタンが御門を淡く浮かび上がらせている。
 ランタンは、花火の妨げにならないように布の衝立で囲ってあるので、蛍火のように儚い光を灯している。
 夜陰に浮かぶ御門は妖しい美しさに満ちていた。
「・・・いっぱい歩いたから足が疲れただろ?・・・ここで座って観よう?」
 優しい声が誘う。
「…ウン……」
 ヒナは胸騒ぎのようなドキドキを感じながらも、御門の誘いのままに並んで座った。

 シートには柔らかな毛布が敷かれてあった。
 クッション付きの耐熱シートなので、そのままでも冷たさはないが、山陰の冷たい夜風が地面を這ってくる。
 柔らかな毛布は幾分風を遮ってくれるので、シートだけより暖かかった。
 更に御門は、下駄を脱いで座ったヒナに、
「足元が冷えるからね。」
 と、もう一枚、別の毛布を膝に掛けてくれた。
「…アリガトォ……」
 妙に恥ずかしくなり、ヒナが小声で言った時、
 シュルシュルシュルッ.............
 《 《 《《《ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 《 《 《《《ドガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 と、今度は続けて花火が上がった。
 徐々に盛り上げていくのだろう。
「ぉぉぉ……ホントにスゴイねぇ……」
 ヒナが見上げて息を吐く。
「ああ。・・・綺麗だ。」
 御門は花火に浮き上がるヒナの横顔を見つめて答えた。


 打ち上がる花火と花火の間隔が微妙に空くので、静けさに包まれる時がある。
 いきなり会話するのも不自然のようで、ヒナは黙って膝を抱えていた。
 と、スルッと御門の腕が背中を滑って肩に置かれる。
 それだけならともかく、ヒナの体を抱き寄せた御門が、顔を近付けてくる。
「……マロぉ…花火ぃ……」
「・・・ん。ヒナは花火を観ていればいい。」
 御門は耳元で囁き、頬からコメカミへと唇を押し当てていく。
 シュルシュルシュルッ.............
 《 《 《《《ズガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 《 《 《《《ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 《 《 《《《ドガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 大きく開く大輪の華。
 ヒナは言われるままに花火を見上げている。
 他にどうすればいいのか、わからなかったのだ。
 けれど、次の瞬間、体を硬直させた。

「…ぁ……ぃゃ……」
 目を閉じて首を竦める。
 御門の手が毛布の中で、ヒナの浴衣の裾を開いて、太腿に触れてきたのだ。
「嫌なのはわかってる。ヒナにとって怖くてたまらないのも・・・」
 御門は優しい声でなだめるように言うと、ヒナの気持ちを解そうとキスをする。
「…ンン……ぃゃァ……」
 ヒナは御門の腕から逃れようと身を捩る。
「ヒナ・・・ヒナが人混みの中で、時々息が止まりそうに怖がることがあるのを、俺が気付かないと思うか?」
「……だって……」
「一度辛い経験をして、トラウマになっていることぐらい知っている。」
「…………ッ?!!」
 ヒナは御門が、例の痴漢事件のことを知っていたのだ、と驚き、悲しくなった。
「ヒナ・・・俺も悲しいし、悔しくてたまらない。」
「……マロ……ゴメン……」
「そうじゃない。事実よりも、ヒナがいつまでも嫌な記憶に囚われているのが辛いんだ。・・・しかも、知らない奴に陵辱された屈辱と恐怖を、未だに抱えている。」
 ヒナは項垂れて唇を噛む。
「・・・だから、俺が全ての嫌な記憶を消してやる。・・・消して・・・ヒナに俺だけの記憶を刻み込みたいんだ。」
 シュルシュルシュルッ.............
 《 《 《《《ドドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》


 《 《 《《《ドドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 《 《 《《《ズガガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 次第に華やかに目映くなる花火。
 閃光に照らされた御門の顔は、苦しいほどに真剣だった。
 ヒナにも御門の想いは伝わってくる。
 けれど、どう答えていいのか、わからない。
 それに、刻まれた恐怖心は理屈ではなかった。
 ヒナが答えられずに御門を見つめていると、
「俺を信じて・・・」
 と、御門がヒナをシートに押し倒した。
 帯が手早く解かれ、毛布の柔らかな感触に背中が包まれる。
 が、御門に抱き締められると、恐怖と嫌悪感が背筋を這い上がってきてしまう。
「…ぁぅッ……ゃァァァ……」
 首を振って御門の胸を押し返そうとするのを、やんわりと受け止め、
「ヒナは花火を観ていろ。」
 と、口を塞ぐようにキスをする。
「・・・愛している・・・ヒナ・・・」
 《 《 《《《ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 《 《 《《《ドガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 花火が涙に滲んで映る。
 ヒナは涙を御門の浴衣に擦り付けて拭うと、
「…ウン……ヒナも……」
 と、御門にしがみついた。

 《 《 《《《ドドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 花火が上がるたびに地響きが伝わってくる。
 御門の手が太腿の奥へと伸び、秘部へと指が滑り込む。
「......ァァァ............ゥゥ............ンーッ......」
 恐怖と屈辱と嫌悪感が蘇ってくる。
 逃げ出したい、と体が引ける。
「大丈夫・・・怖くないよ・・・ヒナ・・・」
 御門は優しく囁きながら、巧みに指を動かし、感じるスポットを刺激する。
 ヒナは奇妙な疼きを感じていても、すぐには快感へと繋がらない。
 戸惑い混乱して、自分がどうなっているのかさえ、わからなくなっている。
 《 《 《《《ズズゥゥゥーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 夜空に広がる目映い閃光。
 キラキラと煌めいては儚く消えていく。
 ……ひと時の夢……?
 ヒナは今が本当の今なのかも判断がつかなくなり、耳鳴りと目眩を感じながらぼんやりと夜空を眺めていた。

 《 《 《《《ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 《 《 《《《ドガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
「......ぁッ......ンンッ、、、ぁぁ、、、ん、、、」
 ヒナの反応に変化が生じた。
 御門の指使いが早くなり、大胆になっていく。
「、、、ぁ、、、ぁぁ、、ンン、、、」
 ヒナは体の奥で灯った火に炙られるような疼きを感じて喘いだ。
 疼きが甘く痺れるように全身に広がっていく。
「いいよ、ヒナ・・・そのまま感じて・・・」
 御門が熱い息で囁き、耳をしゃぶる。
「ぁッ、、、ぁぁん、、、マロぉ、、、」
 思わず背を弓形に逸らした時、浴衣の前が大きくはだけた。
 胸が剥き出しになり、ヒナは慌てて前を合わせようとするが、御門がその手を押し留め、
「浴衣・・・シワになると困るだろ?・・・脱いでおこう?」
 と、ヒナの肩から浴衣を落とした。

 答えられず、動けず、ヒナは御門の為すがままになっていた。
 花火が途切れ、淡いランタンの灯りだけがお互いの姿を浮かび上がらせる。
「……クシュン……」
 山の冷気に思わず鳥肌立ってしまう。
「ごめん。・・・今、暖めてやるからな。」
 そう言って毛布を引き上げた御門も、浴衣を脱いでいた。
 肌と肌が触れ合い、ヒナは身を強ばらせる。
「はぁぁ・・・寒いか?・・・はぁぁ・・・」
 暖かい息をヒナの首筋から胸元へとかけ、腕を回した背中を優しくさする。
 毛布が二人の体を覆い、体温を中へ留める。
 ……遭難者みたい……
 次第に体が暖かくなってきたヒナが、そんなことを考えていると、
 《 《 《《《ズドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
と、再び花火が上がった。
「・・・地響きがするな・・・」
 御門がクスッと笑う。
「……ウン……」
 ヒナも笑みを浮かべて答えた。
 …マロもこんなに近くで観る花火は初めてなんだ…と…そう思えたことが何だか嬉しかったのだ。
 そして、…同じ感動を覚えているんだろうか…と…心が近付いた気がした。


 体と心が温まってくると、強ばっていた体の緊張も解れてきた。
 《《《 《 《《《ドンッ!ドンッ!!ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》》》
 花火も一層華やかになっていく。
「・・・綺麗だな・・・」
「……ウン……」
 ヒナが安心感に浸りながら頷いた時、御門が動いた。
「……ぇッ……ぁ……ゃ……」
 御門がヒナの体に乗るように、覆い被さってきたのだ。
 気が緩んでいた不意だったので、簡単に両足を開かれてしまった。
 しかも、そこに御門が腰を挟み込んできたので、閉じたくても閉じられない。
 さっきまで御門の指に翻弄されていた秘部が大きく押し割られる。
「…ゃぁ……ダメェ……」
 上に逃げようと藻掻いても、足が地面につかず、身動きが取れなかった。
 《 《 《《《ズドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 秘部に熱く固い物が押し当てられるのを感じた瞬間、熱い痛みが走り抜けた。
「......ヒッ......クゥゥッ......アァァァーーッ!」
 《《《 《 《《《ドンッ!ドンッ!!ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》》》
 ヒナの叫びが花火に掻き消される。
 《 《 《《《ドガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 御門はヒナの体を固定しつつ、腰を少しずつ動かして、更にヒナの奥深くへと刀を突き刺していく。

「......ゥゥッ......ヒックッ......」
「泣くな、ヒナ。・・・一つになりたい・・・心も体も。・・・それは自然な想いだろう?」
 責めるように泣きじゃくるヒナに、キスをしながら訴える。
「......ダッチェ......グシュッ......イタィィ......」
 ヒナは焼け付く痛みと、股間の異様な違和感に、涙が止まらない。
「・・・最初だけだから・・・」
 ストレートに”痛い”と言われて御門は焦った。
 ヒナの溢れる涙を吸い、キスをしながら、罪悪感が脳裏をよぎる。
 それでも、貫いた刀は、ドクン、、ドクンッ、、と力強く脈打って、もっと!もっと!と、ヒナを求めている。
 《 《 《《《ズドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》
 男の血が騒ぐ。
 《 《 《《《ドガァァァーーーーーンッッ!!》》》 》 》
「俺もヒナの中で弾けたい!」
 御門はむしゃぶりつくような激しいキスをすると、再び腰を突き上げ始めた。

 《《《 《 《《《ドンッ!ドンッ!!ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》》》
 ヒナの中を熱い塊が突き上がってくる。
 《《《 《 《《《ズドンッ!ドドンッ!!ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》》》
 裂かれるような痛みが続く。
 圧倒的な力と強さは、確かな存在感を持って、ヒナを蹂躙する。
 嫌も応なく、御門の存在を体の中で感じる。
 《《《 《 《《《ズドンッ!ドンッ!ドンッ!ドドォォンッッ!!》》》 》 》》》
 御門に突き上げられるたび、ヒナの中でも花火が打ち上げられる。
 目映い閃光が、夜空にも、ヒナの頭の中にも、眩しく煌めく。
 そして、夜空に残像を残しつつ消えていく時、ヒナの体に切ない痺れを与えた。
 切ない痺れは、やがて甘い疼きとなって、電流のように体中を走り抜ける。
 《《《 《 《《《ドンッ!ドンッ!!ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》》》
「、、、、、ぁ、、ぁぁ、、、、、ん、、、」
 目が眩む閃光…頭の中で激しくスパークする。
 体が宙に浮かぶ錯覚を覚え、ヒナは御門の背中につかまった。

「・・ヒナ・・・あぁ、ヒナ・・・可愛い俺のヒナ・・・」
 御門は、ヒナが自分を受け入れてくれたのだと感じ、愛を込めて抱き締めた。
 自信を持った刀が力強く跳ね上がり、腰の動きも一層早まる。
「、、、、、あぁぁぁぁ、、、マロぉぉぉ、、、、、」
 《《《 《 《《《ズドンッ!ドドンッ!!ドォォォーーーーーンッッ!!》》》 》 》》》
 立て続けに打ち上がる花火。
 盛大なスターマインが炸裂し、夜空いっぱいに百花繚乱の花吹雪が舞う。
 ヒナの中でも激しくスターマインが打ち上がり、意識を目映く煌めく閃光の花吹雪で包み込んだ。

「ウウウッ・・・あぁぁッ!」
 御門の短い雄叫びが饗宴の終わりを告げた。
「・・・・・ハァハァ・・・・・ヒナ・・・愛してるよ・・・」
 汗ばんだ額をヒナのコメカミにつけ、熱い息で御門が呻くように言った。
「、、、、、ハァハァ、、ンン、、、ハァハァ、、、マロぉ、、、ヒナも、、、愛してるぅ、、、」
 朦朧となりながら、ヒナが掠れた声で言った。
 ヒナは激しく炸裂したスパークに目も意識も霞んでいた。
 御門を見ようとしても、瞼が重く、目が開けられない。
「・・・ヒナ・・・嬉しいよ・・・ありがとう・・・」
 ヒナから聞く初めての”愛してる”という言葉を、御門は噛み締めるように味わう。
「、、、ハァハァ、、、ハァァ、、、マロォ、、、」
「目を閉じて、休んでいいよ。・・・俺がずっと守っているから・・・」
 御門はヒナを優しく抱き包み、毛布でお互いの肩まで包み込んだ。

「・・・少し・・・こうしていよう・・・」
「、、、、、ウン、、、、、」
 ヒナは、フゥゥゥ......と、大きく息を吐くと、御門の肩に凭れて目を閉じた。
 御門も深くゆっくり深呼吸をして、達成感と満足感に浸りながら、静寂を取り戻した夜の空を眺めた。