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mikado







§5§「愛奴」


 薄暗い寝室。
 淡い二色の照明がゆっくりと回転し交差する。
 赤い光は禍々しく、青い光は冷たく、交差して生まれる紫はピンク色に近く、妖しい空間を演出する。

 ビシッ!
「、、、アァッ、、、、、、」
 バシッ!!
「、、、ウッ、、、クゥゥ、、、、、」
 犬のように四つん這いになった沙也香の白い肌を、淡い照明が舐めていく。
 フローリングの冷たい床に両手を着いて、顎を上げた顔は苦しげに歪みながら、どこか恍惚とした表情をしている。
 薄闇の中で、照明を浴びたその顔が、時々壁の鏡に浮き上がる。
 ビシッ!ビシッ!
「、、アァッ、、、、ン、、クゥッ、、、、ハゥ、、、、、」
 仰け反った背中が湾曲し、張り出している白い尻が小さく震える。
 膝を開いて突き出した尻は、全てを御門の前に晒している。
 ローションを塗られたアナルは、シワの収縮までよく見え、痛みでヒクついている。
 開きかけた花弁は蜜が滴るほど溢れ出し、細いコードが垂れ下がっている。
 膣内に挿入されているピンクローターのコードで、途中で短く束ねられている為、スイッチがぶら下がった状態で揺れ、クリトリスを揺れるコードが刺激する。

 ボンテージファッションに身を包んだ御門は、革手袋をはめ、細い革ひもを束ねたムチを手に持っている。
 体をピッタリと包む革製のボンテージファッションは、単なる演出効果の為だが、御門を大人の顔にしている。
 学校では見ることのない御門の姿に、沙也香はドキドキとトキメキながら、鞭打たれる喜びに浸っている。
 何本も束ねられた細い革ひもは、肌を傷付けにくいが、鈍い痛みが骨まで響く。
 淡い照明の中でも、沙也香の尻が赤く腫れてきているのがわかる。
 御門は、鞭を振り下ろす手を休め、
「・・・辛いか?・・・サヤ。」
 と、聞いた。
「、、ぃぃぇ、、、嬉しいですぅ、、、御門様、、、あぁ、、ご主人様ぁ、、、もっと、、、」
 鞭打ちは沙也香自身が望んだプレイだ。
「ククッ。明日、イスに座るのが辛くなるぞ?」
 御門が苦笑してセーブするように言うが、沙也香は陶酔した表情でねだる。
「、、ぁぁ、、、かまいません、、、痛みの中に、、、御門様を感じていられます、、、」
「・・・フッ。まぁ、少し間を置こう。続けても感覚が麻痺してくる。」
「、、、はぃ、、、」
「物足りなさそうにするな。・・・アナルをマッサージしてやろう。」
「はぃ、、、ありがとうございます、、、」
 沙也香は切なそうに掠れた声で言うと、床に肘が着くように肩を落とし、更に高く尻を突き出した。

「膝をもう少し開いて。」
「、、、はぃ、、、」
 開いた沙也香の両膝の間にタオルを敷く。
 ピンクローターのコードが左右に揺れる。
 御門は揺れるスイッチを捕まえて、バイブレーションを<中>から<強>に入れる。
「、、ァゥッ、、、ハァァン、、、」
 沙也香が身を捩り、乳房の先で固くなっている乳首を、冷たい床に擦り付ける。
 バシッ!
 自慰行為を目聡く見つけた御門が、掌で尻を叩いた。
「いけないな。オナニーは許した時だけの約束だぞ?乳首だけでも、勝手な愛撫は許さない。」
「、、ハゥゥッ、、、申し訳ありません、、、」
 沙也香はアナルをヒクヒクと収縮させながら詫びる。
「アナルに意識を集中させろ。俺の指の動きを研ぎ澄ました感覚で味わえ。・・ククッ・・嫌でも好きになる・・・ん?」
「、、、はぃ、、、仰る通りですぅ、、、」

 御門は、革手袋から薄い手術用のゴム手袋に替え、指先にたっぷりとアロマオイルのローションを絞り出した。
 …クッチュ…クッチュ……
 アナルと周囲にローションを塗りたくってから、中指を立ててアナルにめり込ませていく。
 ほとんど抵抗なく、静かに指が埋没していく。
 ―――調教前の甘い愛撫の時に、すでに多少のマッサージはしてある。
 いきなりの調教は沙也香には出来ない。
 厳しい家柄に育ったせいで、慎ましくあるべき教育を施されてきたので、照明や甘い言葉でムードを作り、異世界に誘い込むように、心を解放させてから、調教に入るようにしていた。
 御門のボンテージファッションも、愛撫の時から香りのいいアロマオイルを使ってやるのも、その為だ。
 そうやって、心の戒めを解かれた沙也香は、驚くほど大胆に己を晒し、従順な奴隷となる。
 アナルも、まだ石塚静江のように、御門の逞しいペニスを受け入れられる状態ではないが、指一本なら快感を感じるまでに開花されている。
 沙也香自身は、もっと高度な調教を受けたがっているし、静江のようにアナルセックスにも憧れている。
 ただ、親の保護下にある沙也香には、ハードな調教は控えていた。
 全てを自己管理出来る状況にない相手は、体を傷付けかねない調教は出来ない。
 やはり、御門自身も高校生であり、お互い学業を優先させたい気持ちもあったし、御門の保身による計算もあった。―――

 ズブズブズブゥゥー・・・
 中指の根元までアナルにめり込ませた御門は、手首を回転させてアナルの肉壁を掻き回す。
「、、アン、、、ン、、、ンン、、、アァァ、、、」
 床で握りしめている手に額を押し付け、沙也香が小さく喘ぐ。
 ヒクヒクと収縮するアナルが御門の指を締め付けてくる。
 …グチュ、、、ヌチュ、、、ズブッ、、、
 掻き回す動きに擦る動きを加え、捏ねくり回す。
「アァァ、、、ハァァ、、、ンクッ、、、気持ちいいですぅ、、、」
 蜜が滴る花陰も、花弁がヒクヒクと痙攣している。
「クククッ・・・サヤのおまんこがグショグショになってるぞ。」
「、、、す、、すみません、、ハァ、、感じて、、、たまらなくて、、、」
「それでいい。感じるサヤはとても可愛いよ。・・・だが・・・ローターごときに・・・・・俺の指よりいいのか?」
「いいえ、いいえ、、、御門様の指が、、、欲しいですぅ、、、アァァ、、、」
「欲しい時は?」
「ぁ、、はぃ、、、ハァ、、、ご主人様、、奴隷のサヤにお恵みを、、、ハァハァ、、、サヤのおまんこを、、ご主人様の指で、、叱ってくださいまし、、、」
 床に這い蹲っている肩越しに、沙也香が御門を振り返り、涙を浮かべて哀願する。
「クックッ・・・いいだろう。」
 ちょうど青い照明が御門の顔を浮き上がらせ、冷酷な笑みを一層不気味にしている。
 沙也香はゾクゾクと鳥肌立ちながら、うっとりと御門を見つめた。

 ・・・ズルン・・・
 スイッチを止めたピンクローターが、沙也香の膣口からヌルッと飛び出した。
 御門は、蜜とローションでベトベトのローターを、脇のカゴに放り入れた。
 調教に使用した物や汚れたタオルなどは、後で調教を受けた者が綺麗に洗って、元の棚にしまう決まりになっている。
「ハァァ、、、ンッンー、、、、、」
 …グチュ…クチュ…ヌチュ…
 左手の中指は、相変わらずアナルを掻き回して愛撫している。
 そこに、今度は右手の中指と薬指を揃え、花弁を割って奥の蜜壺へと侵入させた。
「アッ、、、、、アァァァァッ、、、、、」
 たっぷり時間を掛けた前戯とピンクローターのバイブレーションで、膣内の襞は盛り上がって締め付け始めている。
 御門は指を曲げてGスポットを優しく擦ってやる。
「ンッ、、クゥゥッ、、、あぁぁん、、、ハァハァ、、、アゥゥ、、、、、」
 顎を上げてよがり声をあげた沙也香が、尻を左右に震わせる。
「・・・おまんこもアナルも・・俺の指をキュウキュウと締め付けてくる・・・」
「ァゥ、、、スミマセン、、、感じて、、、アァァァァ、、、狂イソウ、、、、、」
「狂え。・・・そして、俺に感応しろ。・・・俺と共鳴し、舞い上がり、虹の光の中でスパークし・・・サヤは俺の一部となる。」
「、、、ハァハァ、、、サヤはもう、、、ご主人様の、、、ものでございますぅ、、、」
「・・・・・まだまだ・・・だ・・・」
 御門は謎めいた笑みでそう言うと、アナルとワギナを愛撫する指の動きを早めた。

「アァァァァァーッ、、、、、御門様ァァァッ、、、、、」
 沙也香は両方の穴を同時に愛撫され続け、たまらずに大きく仰け反り、床から腕を離して天井を仰いだ。
 ガクガクと体が痙攣し、エクスタシーの頂点に達したのがわかる。
 御門は沙也香のオーガズムの波が過ぎるのを待ってやってから、一度体を離してゴム手袋を外した。
 それから、沙也香をタオルを敷いたベッドに軽く腰掛けさせ、またたっぷりとアロマオイルを指に塗った。
 ぷっくりと赤く膨れたクリトリスを指で転がすと、
「アァァァ、、、、あ、、ぃゃ、、アァァァ、、、」
 と、羞恥心を捨て去った剥き出しの声で喘ぎ、よがる。
 肘を伸ばした腕を後ろに突っ張って上体を支えているが、感じてくると背中を反らして尻が浮く。
 御門は頃合いをみて、再び蜜壺に指を挿入する。
 今度は人差し指も加えた三本で、Gスポットと手首を反転した裏Gスポットを、交互に強く擦り始めた。
「うぁぁぁァァ、、、ハァ、、、あぁぁん、、、ハァハァ、、、アアアァァァーッ、、、、、」
 沙也香はもう訳もわからない様子で首を振り、荒い息遣いとよがり声しか出せない。
「可愛いよ、サヤ・・・さぁ・・・迷いを解き放て!」
 御門がそう言うと、苦悶に眉を寄せた沙也香が、
「あっあぁぁぁぁッ、、、イキますぅ、、、、、あぅッ、、、あぁぁぁぁ、、、イッちゃぅぅぅぅッ!」
 と、叫んで、透明な液体を御門の体に掛かる勢いで噴出させた。
 細く弧を描く様は、クジラの潮吹きにそっくりだ。
「いい子だ・・・とても素敵だよ・・・」
 御門は淡い照明にもキラキラと飛沫を上げる潮を、満足そうに眺めてから、タオルで潮を浴びた自分の体を拭き、悶絶してベッドに倒れ込んでいる沙也香の汚れた股間も拭いてやった。

 仕上げは、御門もボンテージファッションを脱ぎ捨て、全裸になってベッドに上がった。
 沙也香を鏡に向かわせ、背後からコチコチに勃起しているペニスを、ワギナに挿入してやる。
 何度もオーガズムを繰り返した沙也香は、かなり疲労が見えるが、それでも御門の男のシンボルであるペニスを己の体内に迎えることが最高の喜びであり、御褒美だった。
「あぁぁ、嬉しいッ、、、御門様ぁぁ、、、、、」
「今日はよく頑張れたからな。・・・思う存分、俺を感じて昇天するといい。」
「はぃッ、、、、あぁ、、、サヤは、、ハァハァ、、最高に幸せな奴隷ですぅ、、、、、」
 沙也香は鏡に映る御門を、霞む視界の中で見つめる。
 薄暗い闇を淡い照明がグルグルと照らし、自分と繋がっている体と御門を浮き上がらせる。
 腫れぼったく見える自分の顔が、恍惚とした笑みを浮かべている。
 これが男に愛されるということ・・・
 そうした実感がヒシヒシと沸き上がる。
 ズズンッ!
「あぁぁぁーーーッ、、、、、」
 両肘をつかまれ、後ろに引かれながら、子宮を突き上げられる。
 船首を飾る女神像のように、胸を張り出して反り返る。
 女神像と違うのは、柔らかな乳房が突き上げられる度に弾み、大きく揺れること。
「あぁ、、、あぁぁん、、、あぁぁぁぁん、、、あぁぁぁぁッ、、、」
 現実感が消え失せた意識の中で、苦悶に歪んだ顔でよがり声を上げる自分の姿が、やけにリアルに見える。
 グイッ、と強く引かれた後、御門に背中から羽交い締めにされた。
 御門は沙也香の胸を鷲掴みにし、激しく揉んでいる。
「ああぁぁぁ、、、御門様ぁぁぁ、、、」
 沙也香は仰け反った頭を御門に凭れかけた。
「可愛いサヤ・・・俺の愛奴・・・」
「、、、、、あぁぁ、、、嬉し、、ぃぃ、、、」
 全身を駆け巡る快感が大きな渦となって、意識を絡め取り上昇させていく。
 息が出来ないほどの勢いで雲を突き破り、虹色の目映い世界を知る。
「あぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!」
 究極のエクスタシーに包まれ、沙也香は意識を手放した。
 グッタリと御門の腕の中に崩れ落ち、オーガズムの痙攣を起こして震えている。
 御門は痙攣が治まるまで抱き締めていた。
 それから、そっと体を離して、沙也香をベッドに残し、寝室を後にした。


 御門はシャワーで体を洗い流した後、部屋着を着てガウンを羽織った。
 髪は面倒なので濡れたまま首にタオルを掛けて、書斎に向かう。
 何をするかと言えば、勉強である。
 御門は”学ぶことは一生の趣味”と思うタイプで、受験勉強を特にする必要がなくても、もっと進んだ知識や掘り下げた学問を、学習する時間を大切にしていた。

 一時間ほど経った頃、沙也香が書斎に焙じ茶を持ってきた。
「ん・・・いつものことだが・・・いい香りだ。」
 御門が目を細めて啜る。
「ありがとうございます・・・」
 支度を整えた沙也香は、恥じらう少女の顔をしている。
 どれほど激しい性戯の後でも、淑女の顔を持てるのは、沙也香の特技と言ってもいいだろう。
「・・宜しければ、お茶漬けをお持ち致しましょうか?」
「遅くなるだろう?・・・帰らなくていいのか?」
「お茶漬けくらい・・・フフッ・・・すぐお持ち致します。」
 沙也香はイソイソと書斎を出ていく。
 結婚しても、こんな生活になるのかな・・・と、ふと、そんなイメージが御門の脳裏をよぎる。
 彼女なら、貞淑でありながら妖艶な、良き妻になるだろう。
 ただ、結果が見えすぎても冷めてしまうものだ。
 御門は熱くなれない自分の心を、忌々しく思いながら、沙也香には相応しくない男だと、自嘲の溜息を吐いた。
 と、その時、
 ・・・「超最悪な奴!」・・・
 頭の中で、そう叫ぶ声が響いた。
 可愛い顔をして、冷たい眼で睨む人形・・・白鳥比奈。
 ・・・何でこんな時にアイツを思い出さなければならないんだ?!
 御門は舌打ちをして、意識を机の上の本に向けた。

 沙也香は御門に茶漬けを出した後、寝室を綺麗に直し、道具も丁寧に洗って拭き、洗濯したタオルやシーツも乾燥させて畳んだ。
 そして、全てをやり終えてから、タクシーを呼んで、御門に暇を告げた。
「ん?・・タクシーを呼んだのか?車を買ったのを知ってるだろ?」
「はぃ。・・・ドライブに誘って頂くのを楽しみにしております。」
「それもそうだが・・・送ってやるぞ?」
「・・・大丈夫です。それでは、失礼致します。・・お休みなさいませ、御門様。」
 沙也香は御門が勉強する時間を奪いたくなかった。
 その気遣いが御門にもわかっていたので、抱き締めて労るようにキスをし、タクシーが待つマンションの玄関口まで送ってやった。
「お休み、沙也香。」
 御門の投げキスに、タクシーの中から手を振る沙也香を見送り、
「いい女だろうが・・・え?」
 と、誰に言うともなく呟いた。



 白鳥比奈は、家に送って貰ってから三日間、学校を休んだ。
 東郷が心配して、姉の朋子に様子を聞くと、
「何だか学校で嫌なことがあったらしくて、体調は戻ってるはずなのに行きたがらないのよ。」
 と、溜息混じりの返事が返ってきた。
「・・・そうかぁ・・・」
 ”嫌なこと”と言われて、東郷は御門とヒナの言い争いを思い浮かべ、(マズイなぁ・・・)と頭を掻いた。
「でも、明日は行くみたいよ。中学時代からの先輩とクラブで一緒になれるから、って。」
「・・・それを早く言ってくれ。心配してんだぞ。」
「私だって心配だわよ。ヒナちゃんのこと、ちゃんと見てやってくれないと、お金返して貰うわよ。」
「・・・う・・・わかってるさ。」
 念押しされて、東郷は早々に電話を切った。
 (・・・御門にヒナちゃんのことを説明しておかないとな・・・)
 心身共に不安定なヒナには、御門の強烈な個性が毒になるのだと・・・。
 東郷には、御門の強烈で鮮烈なオーラが憧れであり素晴らしいとさえ思えるのだが、ヒナには我慢ならない暴君に見えるらしい。
 一方ヒナは、多少我が侭かも知れないが、東郷に縋るように甘えてくる必死さは充分可愛いのに、何故か御門には露骨に嫌悪感を表し、御門もムキになって対抗しようとする。
 この対立をどうにかしなければ・・・。
 東郷は難題を抱えて、溜息を吐いた。


 柔道部の朝練を早めに切り上げ、東郷は生徒会会長室へと顔を出した。
「東郷様、おはようございます。」
 京極沙也香が爽やかな声で挨拶をする。
 楚々として慎ましく、華やいだ美貌ではないが、それ以上に男心をくすぐる和の美を持っている。
 いつもきちんとした身嗜みで、長い髪も顔に掛からないように頭頂で留め、清潔感に溢れている。
 身のこなしも上品で、さすがに日本舞踊や琴を習っているだけのことはある。
 東郷は目を細めて思わず見取れてしまう。
 (・・・何だか、今朝は一段と色っぽいなぁ・・・)
 清楚でありながら漂う色香に、つくづく感心していると、
「東郷。お前、溜まってるのか?」
 と、沙也香が入れた紅茶を飲みながら、御門がクスッと笑いを零す。
 御門もまた清々しい顔で、眩しいほどの美貌に、いつも以上の自信を漲らせている。
 詰め襟姿がこれほど似合う男はいないだろう、と東郷はやはり見取れてしまう。
 紅茶を飲んでくつろいでいる時でさえ、凛とした気品を纏っているのだ。
 まったく似合いの美男美女だ、と呻りながら御門の前に座る。

「朝からつまらん冗談は返事する価値もない・・・と、お前がいつも言うセリフを、そっくり返してやるよ。」
 東郷はそう言うと、すぐに本題に入った。
 朝のHRは生徒会の用事をしていた、と言えば済むが、何と言っても時間がない。
「ヒナちゃんのことだけどな・・・」
 名前を出しただけで、御門の眉が曇る。
 と、東郷にも紅茶を入れて差し出した沙也香が、
「あのぉ・・・ヒナちゃんって、白鳥比奈さんのことかしら?」
 と言った。
 御門と東郷が、えっ?、と同時に顔を向けると、
「あぁ・・・やっぱりそうでしたの?・・・フフッ。ヒナちゃんは中学時代の後輩なんですよ。」
 と、はにかみながら答えた。
「え・・・あ・・・じゃぁ、ヒナちゃんが憧れていた先輩って沙也香さんかぁ・・・」
 意外な接点もあるものだ、と東郷は大きく息を吐き、紅茶を一口飲んで喉の乾きを湿らせた。
 御門は平静を装っているが、眉が微かに痙攣して、不快感を表している。
「憧れ、なんて恥ずかしいですけど・・・お兄様に一時期家庭教師をして頂いてましたので、親しくさせて頂きましたの。・・・ここ一年ほどはあまり会う機会もなくなってしまってましたけど・・・入院してた時には何度かお見舞いに・・・」
 ”素敵な御門様”と”御親友の東郷様”の話題は、その時にしたのだろう。
 東郷は納得した笑顔で頷き、御門は益々表情を曇らせた。
「それで・・・ヒナちゃんがどうかしましたの?」
「ああ・・・また体調を崩して休んでいたんだが、今日はクラブで沙也香さんと一緒になれるから、と・・・多分、登校してると思うんだが・・・」
「まぁ・・・歓迎会の後で、クラブは同じ手芸クラブにしました、って嬉しそうに話してくれてたんだけどぉ・・・」
「入学ストレスだろ?・・環境が変わると、それだけでも体調を崩す者もいる。」
 御門が冷めた口調で言う。
「それがわかってるなら、もうイジメるなよ?」
 東郷の言葉に沙也香がわずかに目を見開く。
「イジメてないぞ。あれは・・・と言うより、彼女は我が侭すぎないか?」
「・・・そうかなぁ・・・うーむ・・・だが、御門。お前だって姉貴に”大丈夫です”とかって太鼓判を押してただろ?多少、気に食わない所はあっても目を瞑ってやってくれ。」
「・・まぁ、帝高校の生徒である以上、ここでの高校生活に馴染んで貰えるよう配慮はするさ。」

 御門は早めにこの話題を切り上げたかった。
 沙也香の知り合いとなると、(性奴隷にして調教してやろう。)と思っていた計画がやりづらい。
 保健室の行為も出来れば沙也香に話したくない。
 沙也香と静江がお互いに御門の愛奴だと承知していても、表には出さないライバル心があることはわかっている。
 御門が微妙なバランスをとってきたのが、ヒナの乱入で崩れ兼ねなかった。
「沙也香さんも、よろしく頼みます。姉貴が結婚した相手の妹で、俺にも妹みたいなものですから・・・」
「ぁ・・・雄志様の奥様が・・・そうでしたの。ええ、私もヒナちゃんが早く馴染めるようにと、願ってます。」
 沙也香は品のいい笑顔で答えてから、
「それでは、教室に参りますので、失礼致します。」
 と、御門と東郷にお辞儀をして会長室を出ていった。
 東郷は上品すぎる態度に首を傾げた。
 慎ましすぎても、時として何を考えているか、わからない。
 普通、後輩の話なら、もっと積極的に乗ってきそうなものだが、と思うのは都合のいい願望だろうか、と。
 御門は逆に、沙也香があまり興味を持たない様子に、ホッとしていた。
「それじゃ、俺も教室に行くとしよう。・・・東郷、そう心配するな。俺も出来る限り優しい態度で接するようにするから・・・な?」
 御門は立ち上がって東郷の肩を叩き、東郷にも教室へ行くようにと促した。


 週一回の手芸クラブの日。
 放課後、第一回目の集まりがあった。
 メンバーは女性ばかりの10名で、その内一年生はヒナともう一人早坂翔子(やはさかしょうこ)だけだった。
「わぁ・・・一年って私達だけぇ?・・・白鳥さん、仲良くしようねぇ。」
 翔子がヒナの隣りの席に座って囁く。
「…ぅん…よろしく……」
 ヒナはうつむきがちに返事をした。
 上目遣いの視線は、上級生同士で話している沙也香に向けられている。
 特別扱い出来ないのはわかるが、視線くらい向けて欲しかった。
 けれど、沙也香は話が終わると、分かれて適当に座っている二つのテーブルの間に立ち、
「皆さん、初めまして。部長の京極沙也香です。少ない人数のクラブですから、仲良くしましょうね。」
 と、部長としての挨拶を始めた。

 手芸クラブは部室がなく、資材室にクラブ専用の棚があって、必要な物や資料を収めてあるが、ほとんど各自の持ち込みなので充分だった。
 教室は毎週、家庭科教室を借りている。
「作りたい物は各自の自由で結構です。材料は自費購入ということで宜しくお願いします。文化祭には展示されますから、頑張って素敵な作品を作りましょうね?作ってみたいけど、作り方がわからない、というような時は、先輩にでも顧問の先生にでも気軽に聞いてください。」
 そう言って、沙也香が一年の二人に視線を向けた。
 ヒナの目が、パッ、と輝いた時、
「部長。私、ビーズの小物を作りたいんですけどぉ、全然知識がないんですぅ。どんな物が必要かもわからないんですけどぉ・・・」
 と、翔子が質問をした。
「あぁ・・・それでしたら、ビーズの本が資材室の棚にあったわね。・・・えっと・・・早坂さん、持って来れるかしら?あ、ヒナちゃんも一緒に行ってあげて?」
「ぁ…はぃッ。」
 名前を呼んで貰えたヒナは、嬉しそうに席を立った。
 他の皆が、へぇ、という顔でヒナを見ている。
「フフッ。ヒナちゃんは中学の後輩なのよ。・・・つい、いつもの呼び方をしたけど・・・いいわよね?」
 沙也香の説明に、皆は、ふーん、と頷いた。
 翔子は目を丸くして、二人で廊下に出た時、
「白鳥さん、いいなぁ。あんなに素敵な先輩がいてぇ。」
 と、羨ましそうに言った。
「もう、早坂さんにとっても先輩じゃない。同じだよぉ。」
 と答えたが、ヒナはそれだけで、(やっぱり登校してきて良かったぁ。)と思っていた。

 中学の頃は、兄が沙也香の家庭教師をしていたこともあり、沙也香がヒナの家に遊びにくることも度々あった。
 卒業してからも、しばらくは電話で話したり、遊びにも来てくれていた。
 けれど、高校生になると下校時間も遅く、勉強も大変らしくて、あまり行き来することがなくなっていたが、ヒナにとって沙也香はずっと憧れであり、理想の女性として尊敬する先輩だった。
 ヒナの気分が昂揚していたせいもあり、翔子との会話が弾み、資材室から家庭科教室に戻る頃には、すっかり仲良くなっていた。
 特に作りたい物が決まっていなかったヒナは、翔子と一緒にビーズ作りをすることにした。
 そうして、教室に戻ると、そこに沙也香の姿はなかった。
「部長は生徒会の方へ行ったのよ。」
「もうじき生徒総会があるでしょう?それに、改選を前に整理しておかなきゃならないことが山積みなんですって。」
 そう言われたら諦めるしかない。
 ヒナは急に気持ちが萎れて、翔子とビーズの本を眺めながら、何度か小さく溜息を吐いていた。


 今日は作る物を持ってきている生徒が少なく、早めにクラブ活動は終了した。
 翔子と一緒に並んで校庭を眺めながら帰る。
 校庭には体育系の部活動をする生徒が、まだ汗を流している。
「私も運動能力があったらなぁ・・・」
 と、翔子が呟く。
「……そうねぇ……」
 入院する以前はバトミントン部だったヒナも、相槌を打つ。
「でも、塾とか習い事が出来なくなるからって、ママが反対しているから、どっちにしても出来ないんだけどぉ。アハッ。」
 明るい性格の翔子は、気持ちの切り替えも早いらしい。
 二人で校門の所まで来ると、
「じゃぁ、またね。夜にメールするね。」
 と、翔子はヒナと反対方向へと走って行った。
 手を振って後ろ姿を見送ったヒナは、翔子がメモしてくれたメアドを携帯のメモリーに入れておこうと、鞄を開けて探った。
「……ぁれ……?」
 あるはずなのに手応えがない。
 校門前で屈み込み、道路に鞄を置いて隈無く探すが、やはりなかった。
 昼休みに届いていたメールに返事をした時にはあったのだから、家に忘れてきた訳ではないのは確かだった。
 昼休みが終わるチャイムで焦っていたから、その時の記憶が曖昧だった。
 急いで鞄に入れたような気もするが、ロッカーにしまったのか、机の中に押し込んでしまったのか、今となってはハッキリしない。
 ヒナは仕方なく、もう一度教室に戻ってみることにした。

 すでに日が沈み、空に薄闇が広がっていく。
 校庭や体育館では、元気な声が聞こえるが、校舎の中に入るとほとんど生徒の姿が見えない。
 毎日部活動をする部は部室を持っているし、そうでない部は週一回程度の集まりで、生徒が用もなく教室に残ってる姿はなく、薄ら寒くなるような静けさがあった。
 ヒナは小走りに教室へ急ぎ、机の中とロッカーを調べてみた。
 けれど、携帯は何処にもない。
 念のため、家庭科教室も調べてみることにした。
 教室に戻らなくていいように、鞄を持って集まりに出ていたのだ。
 それは、他の生徒達も同じで、特別変わったことではなかった。
 暗くなりかけの空が光を失っていくのは早い。
 家庭科教室を覗いた時は、中を覗くのが怖いほど薄暗くなっていた。
 ヒナは灯りを点けて、座っていたテーブルへ行ってみる。
 (……え?!……何でここにあるのぉ?!)
 座っていたイスの上に携帯が乗っている。
 手芸クラブへの参加申し込みの用紙に記入した時、鞄を開けたのを思い出す。
 (あの時、落としちゃってたのかぁ……でも、全然気付かなかったぁ……)
 誰かが拾って置いてくれたのだろう。
 持ち主がわからないから、誰かが取りに来る、と思ってくれたのかも知れない。
 ヒナはホッとして、携帯に翔子のメールアドレスを入力してから、鞄にしまった。

 家庭科教室を出ようと入り口に向かう途中、小さなペンケースが入り口付近に落ちていることに気付いた。
 中に入った時は薄暗かったし、携帯を探すのに必死で気付かなかった。
 落とし物をする慌てん坊は自分だけじゃなかった、とヒナが微かに笑み作ってペンケースを拾った。
 革製のおしゃれな物で、細くて金色のネームシールが張ってあった。
 ・・・Sayaka.K・・・
 (…沙也香先輩のだぁ……)
 どうしよう、と思った時に、生徒会室にいるかも知れない、という考えが浮かんだ。
 ヒナはそっとペンケースを握り、うろ覚えにしかわからない生徒会室へと向かった。


 帝高校は二棟が並ぶ校舎で、二年生の教室と特別教育の為の各施設と部室等が北側校舎に設置されている。
 生徒会室はそこの三階にあり、説明会の時に一度見学していた。
 それでもうろ覚えの為、遠回りしてしまい、ようやく三階の生徒会室まで辿り着いたので、すでに廊下には外から差し込む光はなく、暗くシンとした空間がそこにあった。
 生徒会室のドアを恐る恐るノックして返事を待つ。
 シンとしているのは人の気配がないからだろうか。
 ヒナはそっとドアを開けて中を覗き込んだ。
 案の定、中は電気も消えていて誰もいなかった。
 (…何だぁ…もう帰っちゃったのかぁ……)
 ガッカリしてドアを閉めようとした時、わずかに人の声がした。
 ドッキーンッ!……として、耳を澄ます。
 何を話しているかまではわからないが、確かに人の声だ。
 ドアを更に開いてもっと奥まで覗いてみると、奥に別の部屋があるらしく、少しだけ開いたドアから灯りがもれている。
 生徒会室の場所は知っていたが、中の様子までは知らなかった。
 (…あぁ、そうかぁ……そっちの部屋で用事をするんだぁ……)
 ヒナは、暗闇の恐怖からか、緊張していた気持ちが楽になり、灯りのもれるドアへと進んだ。


 ドアに近付くと声がはっきりしてきて、中に沙也香がいることがわかった。
 けれど、沙也香の声だとわかるものの、いつもと様子が違う。
 ドアをノックするのが躊躇われるような声で、ヒナは動揺しながらドアの前に佇んでいた。

「、、、ハッ、、、アゥッ、、、アァァ、、、御門様ぁ、、、」
 壁を背中にして立っている沙也香の片足が、大きく持ち上げられている。
 スカートの襞が太腿の付け根までめくれて、白い太腿も露わに見える。
 沙也香の片足を腕に掛けた御門は、沙也香の体を壁に押し付けるようにして重なっている。
 クイッ、クイッ、と前に突き出すような腰の動きが、そこで何がおこなわれているかを物語っている。
 辛うじて床に着いた足もつま先立っている沙也香は、御門の首に腕を回してしがみついている。
「・・ククッ・・・どうした?・・・急にこんな所で欲しがるとは・・・サヤらしくないぞ?」
 そう言いながらも、この状況を楽しんでいる御門は、腰の動きを早める。
「アァン、、、だって、、、一年の役員の子が、、、あんまり御門様に慣れ慣れしいんですものぉ、、、アッアン、、、」
「それをサヤらしくないと言ってるんだ。・・・子供に興味はないさ。・・・ん?」
「、、、ぇぇ、、、アッ、、、ハゥッ、、、アゥン、、、ハァハァ、、、」
 ズンズンズンッ・・・
 押し上げられるように突き上げられ、沙也香の体が浮き上がる。
 ズッチュッ、、ズッチュッ、、ズッチュッ、、
 淫靡に湿った音が会長室に響く。
「、、アァァ、、、ゥゥン、、、感じますぅ、、、御門様ぁァァ、、、」
 沙也香は、浮き上がった両足を御門の腰に巻き付けた。
 壁に背中を支えられながら、御門に抱っこする状態になり、沙也香は御門の肩に顔を乗せて恍惚の表情となっている。
 力強く沙也香を抱き上げる御門は、一層動きを大きくして、沙也香の蜜壺を太くそそり立つペニスで激しく突く。
 グチュッ、グチュッ、グチュッ、グチュッ、、、
「ンッ、、、、、アァァァ、、、ハァハァ、、、突いてくださいませ、、、アァァ、、、もっと、、、もっと、、、アァン、、、」
「・・・制服を着た姿で、乱れるサヤもいいものだな・・・クククッ・・・」
「アァァ、、、サヤは、、、いつでも、、、どんな時でも、、、御門様の奴隷ですぅ、、、ハァハァ、、、」
「・・・愛しい奴隷・・・俺の愛奴・・・サヤ・・・ぁぁぁ・・・いい子だ・・・」
 御門の声も甘い呻きが混じっている。
「、、、ンン、、、嬉しぃィィ、、、ご主人様ぁァァァ、、、」
 沙也香がギュゥーッ、としがみつき、御門のペニスを締め付ける。
「うぅッ・・・いい締め付けだ・・・そろそろ中へ出すぞ?」
「、、、アッァン、、、下さいませ、、、御門様の精液で、、、アァァ、、、サヤを満たしてェェ、、、」
「・・・ただし・・・声は我慢しろよ?・・・まだ外には生徒が残ってるからな・・・」
「、、はぃ、、、我慢しますぅ、、、ンッ、、、クゥ、、、、、」
 ズンズンズズンッ・・・ズズンズズンッ・・・
 ズップズップ、、ヌチュッヌチュッ、、、
 卑猥な音と沙也香の押さえた微かな喘ぎ声、そして二人の荒い息遣いだけが響いている。
 ドアの外では、信じられないままに立ち尽くすヒナ・・・。

 (…嘘ッ……嘘、嘘ぉーーッ!……沙也香先輩までが…そんな……)
 悲鳴が出そうになる口を手で押さえ、ヒナはガタガタ震えていた。
 信じられない、と思いながらも、すぐ目の前で起こっている事実が、見えなくても確かな音で伝わってくる。
 聞いたこともない厭らしく湿った音までが聞こえている。
 一体どうなってるのかは想像がつかない。
 想像がつかないのだから、信じたくない。
 ヒナは何度も躊躇いながら、ついにそっとドアの中を覗き込んでしまった。
 (……………ヒッ!!)
 ヒナは自分で鼻と口を押さえていた。
 それでも、大きく見開かれた目に、その異様な光景が飛び込んでくる。
 あの清楚で可憐な沙也香先輩が、太腿を大きく開いて男の腰に巻き付けている。
 いつかは自分も着たいと思ったシックな制服のスカートもめくれて、御門の動きに合わせて襞が揺れている。
「、、、アァ、、、、、アンン、、、、、ハァハァ、、、、、アゥゥ、、、、、、」
 か細いのに艶めかしい声が、火照った顔の沙也香の口から発せられている。
 トロンとした顔は、これまで一度も見たことがない表情だった。
 表情といい、こぼれる声といい、生々しくて厭らしい。
 ヒナは生まれて初めて、男女の絡み合う本物の現場を目撃してしまった。

 (……ここにいてはいけない!!)
 頭の中で警鐘が打ち鳴らされているが、すぐに身動きが取れなかった。
 膝が咬み合わないほどワナワナと震えていて、足に力が入らないのだ。
 ヒナがどうにか体を引こうとしている時、御門の肩越しに沙也香の視線が動いた。
 驚くでもなく、うっすらと微笑んでヒナを見ている。
 と、その時、再び御門が振り返った。
 ”またお前かッ!!”
 怒りに燃える銀色の目がそう叫んでいる。
 ”それはこっちのセリフじゃんッ!!”
 ヒナも腹の底から怒りが込み上げてきて、思い切り御門を睨み返した。
 怒りが足の感覚を呼び戻した。
 ヒナはクルッ、と踵を返し、その場から走り去っていった。