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<11> 「SSS」 |
§11§「SSS」 「「えぇッッ??!!」」 田代と福島が同時に叫んだ。 「SSSメンバーが来られるんですか?!」 実直そうな福島の顔がひきつっている。 「日本でクーデターでも起こそうっちゅうんすか?」 一見クールに見える田代の顔も蒼白になる。 「何を勘違いしているんだ?・・アイツ等だって日本は祖国。たまには里帰りもするだろうが。」 景山は溜息まじりに言って腕時計をチラッと覗く。 「けど、アイツ等ッ・・」 うっかり景山の言葉をマネして言ってしまい、景山に睨まれた田代は慌てて言い直す。 「ッ・・SSSの方々は・・こことは関係なしに、いつも日本での休暇を楽しんでおられるじゃないッスか。」 「そうそう。俺達、日本しか知らない組織員をバカにしています。」 福島も田代に加勢する。 「アイツ等の仕事は海外がメインだ。オフに組織から離れて過ごすのは当然だろ。それに私達は皆、ボスの元に気持ちを一つにしているはず。少し変わった連中ばかりだが、毛嫌いするもんじゃないぞ。」 静かだが厳しい景山の口調に、田代と福島は首を竦める。 「「・・・済みません。」」 「今回は戦死したSSSメンバー、渡部の墓参りも兼ねた帰国だ。とは言え、全員で帰国させる訳にはいかないからな・・・目が離せない仕事に従事している者達や、蛇窟島の留守を預かる者達もいるから、若林を含めた4人だけだ。」 「・・そうでしたか・・・」 福島は表情を曇らせ頷いた。 直接話したことはない渡部だったが、憧れのSSSメンバーの戦死は日本にいる組織員達にとっても痛かった。 田代も言葉が過ぎたかと、うつむいて反省した。 「それと今回はSSSの4人も忘年会に参加したいそうだ。」 ゲッ?!・・・っと、二人同時に顔を上げ、目を見開いた。 「まぁ、そーゆー訳だから、空港までの迎えは頼んだぞ。・・私はこれから出掛ける用事があるが、夕方までには戻る。・・と、よろしく言っておいてくれ。」 景山はもう一度腕時計を見ると、忙しそうにイスから立ち上がった。 「・・参謀はどちらへ?」 「ボスやアリス様が隠し芸でお召しになる衣装を急ぎ用意しないとな。私も今年は’ついで’に衣装を新調したから合わせる予約がしてあるんだ。・・じゃぁ、頼んだぞ。」 景山は、ニッ、と笑みを浮かべ、二人を部屋に残したままさっさと出掛けてしまった。 取り残された田代と福島は、顔を見合わせてガックリと肩を落とした。 「・・・何で参謀が忘年会の衣装の心配をしなきゃならないんだ?」 田代が恨めしそうに呟く。 「まぁ・・ボスやアリス様の御衣装は御自分の目で確かめられたいんだろうさ。」 「で・・俺達にSSSメンバーを任せるって・・・何かが違う気がするぞ。」 「シッ。・・・聞かれるとヤバイぜ。」 福島がどこかから覗かれていないか、部屋を見回しながら声を潜める。 田代もビクッ、として周囲を見回し、文句が飛んでこないのを確かめてから溜息を吐いた。 「ハァァ・・・よりにもよってSSSかぁ・・・」 「海外組の中でも最強最悪軍団だもんなぁ・・・」 「迎えに行ったって、俺達なんて鼻にも引っ掛けねぇんじゃねぇか?」 田代が忌々しそうに言うのに、頷いて呻った福島が、 「あッ・・秋からこっちに配属されたSS隊員がいただろ?」 と、思い出したように言った。 「あぁ。アリス様の警護にアリス様と面識がなくて腕の立つ奴ってことで呼ばれたらしいな。」 「若いからそれなりの服装をさせれば街に溶け込んで目立たない、ってこっちの若い連中のリーダーになってる・・星野優・・アイツも連れて行こうぜ。」 「そうか!・・星野ならSSSとも馴染みがあるだろうしな。・・って、アリス様の警護中じゃねぇのか?」 「さっきトレーニングルームにいたぜ。この所アリス様はあまりお出掛けにならないから、他の連中に任せてるんじゃないか?」 「チッ。生意気な奴だぜ。・・よし。SSSの機嫌取りは星野に任せよう。」 そう相談をまとめた二人は早速トレーニングルームへと向かった。 シュッシュッ・・シュッ・・・バシッバシッ・・バスンッ・・・ サンドバッグを一心に睨んで、素早いパンチを繰り出している。 汗が飛び散り、体から湯気が立っている。 21歳という若さとは思えない眼光の鋭さに、田代と福島は言葉を失っていた。 視線の隅で立ち止まって見つめる二人を捕らえた星野は、握った拳を下ろして田代と福島の方へ体を向け、 「田代先輩、福島先輩。ご苦労様です。」 と言って、直角に頭を下げた。 顔を上げた星野は白い歯を零して笑顔になっていた。 笑うとまだ少年らしさの残る素直そうな青年だった。 「どうかされましたか?」 屈託のない笑顔で聞かれ、田代と福島は照れ臭そうな笑みを返した。 「あ・・いや。・・・あ、そうそう、ちょっと頼みがあってな。」 福島が景山からの話をする。 「えー?!SSSの方がいらっしゃるんですかッ!」 星野が嬉しそうに声を上擦らせる。 「あぁ。だから、お前にも迎えに行って貰おうと思ってな。」 「わかりましたッ!すぐ支度してきますッ。・・すぐッ、汗を流してきますので・・5分くださいッ。」 星野はそう言うと同時にシャワールームへと駆け出していた。 「10分でもいいぞー。」 田代は呆れて後ろ姿に声をかけた。 「ありがとうございますッ。」 と、星野の声が聞こえた時にはもうトレーニングルームにその姿はなかった。 「・・何て奴だ?」 福島が呆気に取られて呟くと、 「けど、そう生意気でもなさそうだな。」 と、田代が笑みを浮かべて言った。 空港へ向かうベンツの中で、後部座席に陣取った田代と福島は浮かない顔をしている。 助手席に乗った星野は、ちゃっかり持ち込んだMDを、運転手から迷惑そうな顔をされながら、車のプレーヤーで音量を上げて聞いている。 礼儀正しさと自己主張を持っているのが、今時の若者なのだろうか、と少しだけ年上の大人二人が、世代の相違を感じていた。 けれど、田代も福島も星野より4歳だけ年上で、マサトより3歳年下なのだ。 マサトの側近や幹部は遙かに年上で、本部勤務の二人には気の重い時もあるポジションだった。 同期の中では羨ましがられる出世頭の二人だが、何のプレッシャーもない星野の若さにタジタジとした心境だった。 今時の若者だからなのか、星野が特殊なのか、SSSのメンバーを嬉しそうに迎えに行く様子に気圧され気味だ。 趣味の合いそうもない音楽の喧しさに、福島はぼんやりと前を見ている。 ベンツの前には迎え用の豪華リムジンが走っている。 田代は黙っていることに飽きて助手席の星野に声を掛けた。 「SSSのメンバーとは親しかったのか?」 田代の質問に星野が笑顔で振り返った。 「いえ。ご挨拶をさせて頂く程度です。」 「ふぅん。・・っつーか、星野。話も出来ねぇから音量を下げろ。」 田代が睨むと、 「あッ・・済みませんッ。」 と、星野は急いで音量を下げた。 やっぱり素直らしい、と田代は兄貴的心境で頷いた。 「SSSってのは相当凄いらしいな。」 「はいッ。自分の憧れですッ。・・自分もいつかはメンバーに加わりたいと思っているんですが・・まだまだ鍛錬が足りなくて・・。」 星野は助手席から振り返ったまま悔しそうに眉を寄せた。 「それでいつもトレーニングをしているのかぁ。」 福島は感心したように頷いた。 「・・あれは体慣らし程度です。・・あれではまだまだ・・・SSSの皆さんの訓練は、もぉ言葉に出来ないくらい壮絶ですから。訓練所でも特殊なエリアで鍛錬なさってるので、滅多に見学も出来ませんが、見学が許された時はもぉ・・感激で体が震えます。」 「へぇ・・・SS隊員でもSSSは雲の上か・・・」 「全然違いますから。・・時々、自分の才能が情けなくなります。・・でも、諦めたら諦めてしまった時が自分の限界点になってしまう。だから自分は自分の限界を決めずに努力しよう、って思っているんです。」 「・・偉いなぁ。」 「俺達なんてなぁ・・・研修で半年、蛇窟島の訓練センターに行っただけで、後は日本組だもんな。」 「SSSの顔なんて、遠くから見たくれぇで、訓練なんて見学する余裕もなかったよなぁ。」 田代と福島が、チリリ、とSSに選ばれるだけのことはある星野への羨望を覚えて、嘆くように愚痴った。 「森林地帯は一般の方には危険ですから。」 星野は謙虚な笑顔で言うと前を向いた。 「けど、噂は聞いたぜ。」 田代の言葉を肩越しに受け、星野は可笑しそうに頷いた。 「SSSの皆さんって、ホント色々な武勇伝をお持ちですよね。」 「最悪なのが雷音轟、通称ボムってメンバーかな・・?」 田代が福島に同意を求めると、福島は、 「いや・・スナイパー、矢上準って人の方が強烈な気がするぞ。」 と答えた。 「いやぁ、ボムだろぉ?・・第一名前が、らいね・ごう、なんて気取ってるが、あれは、ライオン・ガォー、って読んだ方が合ってるぜ。」 自分で言ってウケた田代がクスクス笑う。 「アッハハハ。それってウケますねぇ。・・SS仲間では、カミナリの音とどろく、って言ってましたけど、ライオン・ガォー、ですかぁ。アハハ、最高です。」 ”憧れ”だという星野も特に否定しない。 むしろ、そう言われるくらいの個性が好きだ、と言わんばかりに楽しそうに笑う。 田代と福島は苦笑し、 「まぁ、誰がどう凄い、と言っても、俺達のボスほど強烈な個性と輝くオーラの方はいらっしゃらないしな。」 「そうそう。ボスが熾烈なほどに、俺達の血も熱く燃え滾るってものさ。」 と、星野がSSSに憧れるのもわかるような気がした。 空港の到着ロビーで三人が待っている。 迎えに行けと言われた時間より早めに到着し、かれこれ一時間は待っているが、一向にSSSメンバーの姿が見えない。 「・・星野。ちゃんと見てんだろうな?」 「はい。・・・どなたも出ていらっしゃらないようですが・・・」 「帰国するのは若林さん含めた4人、って言ってたけどなぁ・・」 「じゃぁ、ちょっと確認して来ましょうか?」 「若林さんの名前しか聞いてないんだぞ。わかるのか?」 「・・多分。任せてください。」 星野は爽やかな笑顔で答えると、人混みの中へと紛れていった。 しばらくして、星野が暗い表情で戻ってきた。 「わからなかったのか?」 福島もつられるように暗い顔で聞いた。 「まぁ、気にするなって。」 田代は兄貴ぶりたい様子で星野の肩を叩く。 「あ、いえ。わかることはわかったんですが・・・」 星野は田代に人懐こそうな笑顔を向けてから、 「皆さん、3時間前に到着されてるんです。」 と、困惑気味に答えた。 「はぁ?・・・って・・・俺達が参謀に言われたくれぇの時間じゃねぇのか?」 「だよなぁ?」 「どうも予定の便が途中でトラブったらしくて、それで多分、別便の空席かキャンセルのチケットを取られたのだと思われます。」 どこでどう調べたのか、星野の優秀さを伺わせる報告を、二人は感心して聞いていた。 「3時間前ってのは確かなのか?」 「はい。入国リストにありましたから。」 「じゃぁ、若林さん以外の名前もわかったのか?」 「はい。・・雷音轟(らいね ごう)さん、矢上準(やがみ じゅん)さん、海園麗(かいえん れい)さんのお三方です。」 田代と福島は息を飲んだ。 「・・・うぅ・・・最悪だぁ・・・」 「・・・まさか・・・よりにもよって・・・なぁ?」 公衆の面前なのでそれ以上は口に出来なかったが、二人は重い溜息を吐いた。 電話で景山に報告すると、待っていても仕方ないだろう、と言うことで、三人は空っぽのリムジンをそのまま帰して、自分達もベンツで本部に戻ることにした。 星野は、”SSSメンバーをお迎えする”という大役が果たせなかったことでガッカリしていたが、それ以上に田代と福島は落ち込んでいた。 SSSの噂にどれほどの信憑性があるのかはわからないが、雷音轟と矢上準に関する噂は言語を絶するほどに凶悪凶暴だった。 行く前とは違って、すっかり元気のない二人に気付いて、星野は笑顔で振り返り、 「海園麗さんはとても素敵な方ですよ。」 と言った。 「・・ぁ?・・・あぁ、何でも”深海の真珠”って言われるほどの美貌らしいな。」 「はい。それはもぉ・・・先輩方もお会いになられれば、きっと噂以上だと思われると思います。」 「・・フン。いくら綺麗って言っても、男じゃなぁ?」 「あ・・俺は男も女も関係なく・・アリス様が一番だから興味ねぇぜ。」 「・・田代。そこでアリス様を出すのはズルイぞ。」 「アリス様は光に包まれた天使そのもの。・・暖かくてたまらねぇ。」 田代は視線を上に向けて目を細める。 田代の遠い眼差しは、車の屋根を突き抜けて遠い空を見ているようだ。 「そりゃ、俺だって。・・けどなぁ、今はSSSのメンバーのことを話しているんだぞ。」 田代は現実に引き戻され、つまらなそうに肩を竦めた。 「・・で、何で”深海”なんだ?・・綺麗だがよっぽど冷てぇ奴ってことじゃねぇのか?」 「違いますよぉ。」 星野はムキになって首を振った。 「どんな状況でも、決して慌てず騒がず、静かな笑みを湛えてらっしゃるからです。ですからボスが”ドルフィン。お前はまるで深海の真珠だな。”と仰られたと・・そう聞いてます。」 「・・・ボスが・・・ふーん・・・」 「海園麗さんがお見えになるのは、ボスのご要望じゃないでしょうか?・・・海園麗さんのピアノ演奏は、感動物ですから。・・・一度だけ海園麗さんの『ラ・カンパネラ』をお聴きしたことがあるんですが、胸がキュンと切なくなって泣けてしまいました。」 そう話す星野の頬が、赤らんでいる。 「ほぉぉ・・・星野の憧れの人かぁ?・・・案外惚れてたりして?」 田代がからかうように言うと、 「め・・滅相もないことを言わないでくださいッ。」 と、更にムキになって否定した。 そして、 「お世辞でも冗談でも、その手の話題を持ち出すと、病院送りにされちゃいますよ。・・いくら潜水艦の操縦担当という地味な役割をされているからと言っても、それだけでSSSの隊員になれるはずないですから。」 と、声を潜めるようにして言った。 「・・・慌てず騒がず、静かな笑みじゃねぇのかよ?」 「ですから・・・慌てず騒がず・・静かな微笑みを浮かべて・・・」 星野は舌を鳴らして指で首を掻き切る仕草をして見せた。 田代と福島は、ゾクリ、として首筋を押さえ、 「・・・やっぱ・・・SSSは・・・恐ろしいぜ。」 と、呻った。 田代と福島に星野を加えた三人が地下アジトに戻ってくると、マサトが表の仕事を終えて総裁室でくつろいでいる所だった。 それで、三人は一緒に総裁室を訪ねた。 「「「失礼しますッ。」」」 と、挨拶をして部屋に入った三人だったが、星野はソファーでお茶を啜っている若松にも敬礼をした。 若松は軽く目で了解の合図をすると、また目を伏せてお茶を啜る。 日本ではマサトの影として、なるべく目立たないように行動していた若松だったが、蛇窟島での訓練を見て知っている星野には、皆から軽く見られがちな立場に甘んじていることの方が信じられなかったようだ。 「ん?・・星野も一緒だったのか?」 若松の前で戸惑っている星野にマサトが声を掛けた。 「はい。自分達だけでは顔もはっきりしませんので・・」 福島はマサトの質問に星野に代わって答え、景山から受けた命令の内容と、迎えが間に合わなかったことを報告した。 「・・トラブル・・?」 マサトの片眉がピクリと反応する。 若松も湯飲みをテーブルに置き、訝しそうに立ち上がると、マサトの座るイスの横に並ぶように立った。 星野はマサトだけでなく、若松も前にして緊張の面持ちで、 「はい。何でも、エンジン音が変だ、とか、翼部分から火の粉が上がった、と乗客からの苦情があって、油圧系統のメーターも調子が良くなかったので、最寄りの空港に緊急着陸したそうです。」 と、自分が入手した詳しい情報を話した。 「・・・アイツ等・・何かしやがったか・・・」 マサトが親指の爪を噛んで呟く。 若松は腕組みをして顔をしかめている。 「丁度、立ち寄った空港に日本への直行便が出る間際だったようで、予定時間より早く到着出来たようです。」 「・・・間違いねぇな。・・若林ならやりかねないぜ。」 「そうですね。・・彼等のことですから。」 若松も頷きながら肯定する。 「マ・・マジっすか?!」 田代と福島は、信じられない、とばかりに顔を見合わせた。 「・・ったく、大人しく帰るように言っておいたのに・・・」 マサトは舌打ちをすると、星野に視線を向けた。 「で・・星野。ミルクの警護に抜かりはねぇんだろうな?」 笑いを噛み殺していた星野は背筋を伸ばして敬礼し、 「勿論ですッ!常に連絡を取って指示を出しておりますので大丈夫ですッ!」 と、胸を張って答えた。 そう言えば、星野は空港に入る時も出てすぐにも携帯で誰かと話をしていた。 謙虚な態度とは裏腹に、星野も相当に優秀な男らしい。 「やり方はお前の自由だが、ミルクに何かあった時には、全てお前の責任になることを忘れるなよ?」 「心得ておりますッ!」 「・・つーか・・・何かあってたまるかッ。何の為にお前を呼んだと思ってるんだッ?・・部下に任せきりにするなら、お前は必要ねぇんだぞッ!とっとと、自分の目で確認して来いッ!」 サーッ、と星野が青ざめ、直立して敬礼する。 「イエッサーッ!!」 星野が慌てて退室を申し出て、総裁室を出ようとドアを開けた時、部下の一人が蒼白な顔で転がりそうに飛び込んできた。 自分で開けようとしたドアがいきなり開いたので、勢いが余ったらしい。 「ボッ・・ボスッ!・・矢上さんが・・・」 《 《 《ドッガァァァーーーンッ!!》 》 》 言葉を続ける前に、凄まじい音と地鳴りと振動が、総裁室を揺るがした。 「ボスッ!」 咄嗟に若松がマサトの上半身を両腕で覆う。 振動はすぐに治まり、 「構うな。大した規模じゃねぇ。」 と、若松を鬱陶しそうに押し退けたマサトは、 「で?・・・スナイパーがどうした?」 と、目を眇めて部下を促した。 呆然と固まっていた部下が、ハッ、と正気に返り、 「ぁ・・いきなり・・・射撃訓練がしたい、と・・・バズーカ砲を担いで来られ・・・お止めしたのですが・・・」 と、唾を何度も飲み込みながら、ようやくそこまで報告した。 「クッ・・・あのバカがッ・・・」 呻くように呟いた若松は、天井からパラパラと落ちる砂埃がマサトに掛かるのを払いながら、普段滅多に見せない憤怒の顔をしていた。 マサトは溜息を吐いて、 「若松。俺はいいから地上を見てこい。・・この振動はバズーカぐれぇじゃねぇぜ。」 と、天井を睨んだ。 「・・わかりました。」 頭を下げた若松がドアに向かった時、まだ固まっていた田代と福島が慌てて道を空けた。 沸き上がる怒りを押し殺した若松からは、人が変わったようなドス黒い妖気が立ち上っていて、側を通るだけで、ゾクッ、と身震いするほどだった。 考えてみれば、若松もSSSなのだ。 隊長補佐としてマサトに付き従うには、それなりの実力もあって当然だった。 若松に続くようにして総裁室を出たマサトは、長い脚を大股に動かし射撃訓練室へ向かった。 田代や福島達も恐々と付いて行くことにした。 星野はミルクの所へ向かうにしても、どのみち地上に出なければならないので、同じ方向へ進むしかなかった。 そんな一行が急ぎ足に通路を行く途中、コンクリートの床にしゃがみ込んでいる見慣れない姿の男に出会った。 「・・ドルフィン。何をやってる?」 「え・・ぁ・・ボス。」 振り返った男は、鳥肌立つほどの美貌で優美に微笑み、しなやかな動きで立ち上がった。 だが、その手には猛毒の蛇が巻き付いている。 マサトの後ろに付いてきていた者達が、ジリッ、と後ずさった。 「フフッ。今の振動で蛇が逃げちゃったみたいですよ。」 ドルフィン、と呼ばれた男、海園麗は、何でもない様子で蛇が巻き付く手を軽くあげて見せた。 「ソイツは通風口で繁殖しちまった奴の子供だな。」 マサトは特殊な音のしない口笛で、蛇を海園の手から自分の手に巻き付かせ、通風口に戻した。 そしてマサト自ら通風口の外れ落ちた枠をはめて、 「ネジが緩んでるから補強しておけ。」 と、部下に命令した。 部下が恐る恐る枠を押さえると、マサトは再び射撃訓練室へ向かった。 そのすぐ後ろを海園が並ぶように付いていく。 SSSメンバーは組織では幹部に次ぐ地位に与しているし、マサトに近い存在なのはわかるが、恐れ多くて近付き難い部下達にしてみると、微かな寂しさを感じてしまう。 こんな時、景山がいてくれたら、と思ったのは田代達だけではなかっただろう。 「若林はどうしたんだ?」 マサトは顔を少し後ろに向けて海園に聞いた。 「コウメイ副隊長なら、空港で別れました。何でも昔馴染みの女性の所へ顔を出すからと。」 「チッ!」 マサトが忌々しそうに舌打ちするのを、海園は楽しそうに目を細めて見ていたが、 「・・なら、お前はスナイパーとボムと行動を共にしていた訳だな?」 と、マサトに低い声で言われ、 「え・・・っと・・・そうなりますね。」 と、頬をピクリとさせて答えた。 「そうか。では、お前にも事情を聞く必要がありそうだな。」 「えー・・・ヤダなぁ。何であんな奴等の悪ふざけに、僕まで責任を問われなきゃいけないんですか?」 フッ、と微笑む海園は、男でも見取れてしまう妖艶さがあった。 ここまで美貌な容姿だと、ある種性別を越えるものがあるようだ。 マサトは、ピタッ、と足を止め、海園を睨む。 「聞く前に答えるか、その口をこじ開けられてぇか、どっちだッ?」 「…ぁ…ぁ…もぉ・・・ボスもそんなムキにならなくても。・・答えますから。」 「さっさと言えッ。」 マサトはまた歩き出した。 「僕はただ・・ここのアジトに温水プールでもあれば、もっと楽しいのにね、って言っただけです。・・・そうしたら、ボムとスナイパーが、スペースがなくて出来ないなら広げればいい、とかって勝手に盛り上がっちゃって・・・」 海園はケロリと言って、苦笑しながら肩を竦めてみせた。 SSS、恐るべし。 綺麗な顔をしていても、SSSはSSSなのだ、と海園のセリフを聞いた部下達は、思考が停止しそうに頭痛のする頭を怠そうに振った。 「キャッホォー!ボスッ!」 射撃訓練室のドアの前で、バズーカを肩に担いだ男が、近付いてくるマサトに手を上げて叫んだ。 「スナイパーッ!何をやってるんだッ!」 怒りのオーラを発したマサトが怒鳴りつける。 スナイパーこと矢上準が、マサトの怒りように戸惑った顔で頭を掻く。 「いやぁ、ちょっと腕が鈍らないようにと練習を・・ハハッ。けど、ここの施設は壁が薄すぎじゃないッスかぁ?・・少ーし、弾丸の火薬を増やしただけで、壁が吹っ飛ぶなんて脆すぎッスよ?」 ボカッ!! マサトが歩いてきた勢いのまま問答無用に殴りつけた。 「ざけんじゃねぇッ!」 後ろに倒れた矢上からバズーカが転がり落ちた。 「・・・ボ・・ス・・・」 頬を押さえて泣きそうな顔の矢上が海園に視線を向ける。 海園は、バレちゃった、と目配せした後、美しい笑みで誤魔化している。 と、そこへ、 「イテテテテテッッ!!・・離せェェェッッ!!」 と、叫びながら大きな男が若松に腕を捻り上げられてやって来た。 怒りを纏った若松が、二回りも大きな体躯の男を固定して離さず、時々蹴りを入れながらマサトの前に引っ立てて来たのだ。 「ボス。・・ボムの野郎、ボイラーを爆発させちまいました。」 ボム、こと雷音轟は、思い切り尻を蹴られてマサトの前の床に転がった。 「何ィッ?!・・・ボイラーだとォォォッッ??!!」 マサトの全身から紅蓮の炎が巻き上がったようだった。 拳を握り締め、肩を怒らせた姿は、筋肉がクッキリと盛り上がり、普段より数段大きく見える。 「・・えッッ・・・ボ・・ボス・・・」 スナイパーが仰け反ったまま後ずさる。 「アワワッ・・・ボスッ・・・聞いてくれェェェッ!・・・地下だけの爆音じゃ、警察に疑われるだろうと、事故に見えるようにボイラーを暴発させただけだぜッ?」 雷音は、機転を効かせたのだ、と言いたげに弁明した。 だが、マサトの怒りのオーラは益々激しさを増すばかりだ。 「あのボイラーは地下の暖房にも使われてるんだぞッ!」 逃げ腰のスナイパーとボムを蹴り付けて若松が怒鳴りつける。 「だから何だッ?・・俺達は永久凍土のロシアでの仕事をやってきたばかりだぞッ!ヌクヌクと暖かい場所にいる奴等に、俺達の思いを味合わせてやって、何が悪いーッッ!!」 ライオンが吠える。・・いや、雷音が開き直って叫んだ。 一瞬、シンッ、とした空気が流れた。 取り囲んでいた部下達は、SSSの仕事は相当キツイ、という噂も聞いていたので、自分達には彼等を非難出来ない、と思ってしまったのだ。 が、その時、 「そりゃぁ、飛んでもないことをしたもんだな。」 と、集まってきていた部下達の後ろから、恐ろしく冷たい声がした。 部下達が二手に分かれて通り道を作る。 中を抜け出てきたのは景山だった。 「お前達はとんでもない失敗をやらかした。・・わかるか?」 景山はブリザードよりも冷たい視線を、ボム、スナイパー、ドルフィン、の三人に向けた。 三人はそれぞれ顔を見合わせ、見当がつかない、という表情をした。 「フンッ!キツイ仕事が嫌ならSSSを外れりゃいいッッ!!」 マサトは吐き捨てるように言うと、クルッ、と背を向け、総裁室へ一人で戻って行ってしまった。 その背中は全てを拒絶するようで、誰にも後を追うことが出来なかった。 「・・・ボス・・・」 さすがの海園も眉を曇らせている。 「わからないようだから、教えてやろう。」 マサトの姿が角を曲がって見えなくなった所で、景山が言った。 「地下の暖房が使えない、と言うことは、アリス姫も当分こちらには来られない、と言うことだッ!」 あッッッ!!! 三人の顔が硬直する。 マサトにとって、ミルクがどれほど大事な存在かは、彼等も充分にわかっている。 景山は続けた。 「やっとアリス姫を再びお迎え出来たばかりなのに・・・お前等は何てことをしやがるんだッ!!」 部下達の間にも非難めいたざわつきが起こる。 三人は自分達が犯した”悪ふさけ”が、マサトのもっとも痛い部分を突いてしまったことに、ようやく気付いて項垂れた。 「若松。コイツ等をみっちり締めてやれ。」 景山はそう言うと、地上の騒ぎを収める為に、来た道を戻って行った。 若松は男二人を引きずってトレーニングルームへと向かう。 海園も笑みを凍り付かせ、トボトボと後に従った。 夜になって顔を出した若林は、事の顛末を景山から聞かされ、懇々と説教された挙げ句、若松とのスパークリングに夜中まで付き合わされた。 暖房の効かない地下で、若林からは白い湯気が濛々と上がり、 「鍛え方が甘いな。」 と、若松に嫌味を言われてしまった。 ようやく若林が総裁室を覗いた時には、すでにマサトの姿はなかった。 マサトは組織の仕事を片付けると、誰とも口を利かずに、アジトを出ていったらしい。 その日、深夜すぎまで、寒風の吹き荒ぶ路地に、シルバーアクセサリーの露店が出ていた。 帽子を目深に被り、誰とも視線を合わせず、売る気もないような露店売りの姿は、暗い闇に覆われていたと言う。 怒り以上に虚しかったのか・・・マサトの気持ちを推し量れる者は、誰もいなかった。 |
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<12> 「クリスマスイブ」 |
§12§「クリスマスイブ」 明日は12月24日、クリスマスイブ。 イブが二学期の終業式なんてイジワルぅ、と思ってしまう。 それでも、早く家に帰れるのが嬉しい。 午前中に家の用事とプレゼントのラッピングをして、午後からはママのケーキショップを手伝える。 ラッピング用の可愛い包み紙とリボンは今日の帰りに買ってきておいた。 ミルクはミツルのマフラーを編みながら、チラリと綺麗な包装紙を見て嬉しそうに微笑んだ。 ミツルへのプレゼントは間に合わないかと思ったが、ここ数日夜中過ぎまで頑張った甲斐があり、どうにか今夜中には仕上がりそうだ。 マサトに編んだマフラーは、一度軽く押し洗いして香りのいい柔軟剤で仕上げてある。 気に入って貰えるだろうか。 二年前よりは進歩したマフラー。 練習した訳ではないのに、以前より上手く編めるようになっていたことが嬉しい。 ミツルへのマフラーも順調だし、冬休み中に自分用にもマサトとお揃いで編んでみようかな、なんてことを考えながら、手は休まずに毛糸を編み棒にくぐらせる。 けれど、さすがに寝不足続きで目が霞んできてしまう。 ミルクは目を擦ると、冷めたコーヒーを口に含むようにして飲んだ。 マナーモードの携帯が着信を知らせて点滅する。 と、メールではなくて、マサトからの電話だった。 もう夜中の12時近くなので、ミルクは一瞬躊躇ったが、電話に出た。 「・・もしもし?」 息をするような微かな声で話し掛ける。 ―「ミルク・・・こんな時間に悪ぃな。・・・けど、メールじゃなく、お前の声が聞きたかったんだ。」 「ぅん。・・大丈夫だよ。」 そう言いながらも、ミルクは小さな声しか出せなかった。 ―「・・明日・・店に迎えに行けばいいんだよな?」 「ぅん。」 ―「・・時間は・・6時だったな?」 「ぅん。本当は閉店まで手伝いたいんだけど、遅いお客様は多分予約された方だけだろうからって。」 ―「・・ん。・・そっか。・・・早くお前に会いたいぜ。」 「フフッ。ミルもぉ。・・・プレゼント、気に入って貰えるといいんだけどなぁ・・・」 ―「・・どんな物だって・・嬉しいぜ。」 「ぁん。・・あげる前に喜んじゃ、ダメぇ。」 ―「・・フッ。・・そうだな。じゃぁ、楽しみにしてるよ。」 マサトの静かに笑う息遣いが聞こえた。 「・・ぅん。・・・ねぇ、マサトぉ?」 ―「・・ん?・・なんだ?」 「元気ないよぉ。・・どうしたのぉ?」 ―「・・・別に・・・お前に会いたいだけさ。・・ずっと会えねぇし、また前みてぇにミルクが離れちまうんじゃねぇかって、不安になっちまう。」 「そんなぁッ・・」 ミルクは自分で出した声の大きさに、ビクッ、として声を潜める。 「違うよぉ。・・説明したじゃん。みんなに約束したプレゼントも間に合わせたいし、出来ればお兄ちゃんにもちゃんとクリスマスにあげたいし、会える楽しみはイブまで我慢する、って。」 ―「・・あぁ。・・わかってるんだけどな。」 マサトの溜息が聞こえる。 いつ聞いても、電話越しの溜息ほど悲しくなる会話はないと思ってしまう。 「・・マサト・・・怒ってるの?」 ―「怒ってねぇぜ。・・いつ会えるかもわからず、声も聞けねぇ、顔も見れねぇ、って時を思えば、待つぐれぇのこと何でもねぇさ。・・まして、お前は俺達の為に頑張ってんだもんな。」 ミルクの胸がキュンと切なくなる。 「・・ミルも会いたいよぉ。・・明日・・会えるね。」 ―「・・あぁ。・・明日だな。・・やっと会える。」 マサトの苦しげな息遣いに、ミルクは不安に駆られた。 一昨日、倉庫街のボイラーが壊れた、と電話してきた時より、むしろ元気がないように感じる。 どんな経緯でボイラーが故障したのかはまだ聞いてないが、マサトの声には怒りを含む強い語気があった。 昨日は一日忙しかったようで、マサトにしては珍しく「疲れた」を数回口にしていた。 けれど、今夜は言葉の全てに力がなかった。 ミルクはミツルのマフラーを仕上げたい気持ちも脳裏をかすめたが、マサトが、 ―「もう、寝ろ。・・早く寝れば、早く明日になる。・・お休み、俺の天使。」 と言うまで、溜息のような会話に応え続けていた。 クリスマスイブ。 朝からどんよりと雲が空を覆っていたが、昼過ぎからとうとう雪が降り出した。 ミルクは学校から帰ると、今夜は一緒に過ごせない母親とミツル用にシチューを作り、煮込みながらみんなへのプレゼントを可愛くラッピングした。 具沢山のホワイトシチューは、多目に作ったので、ミルクもマサトと一緒に食べようとタッパーに詰める。 そして、深夜までかかって編み上げたマフラーにカードを添え、ミツルのドアの前に置いてから家を出た。 マサトや他の人達へのプレゼントとシチューのタッパーを大きめのバッグに納め、母親のケーキショップへ急いだ。 今日はオープニングキャンペーンで予約して貰ったクリスマスケーキのお客様が殺到する。 銀のティースプーンの効果は絶大で、予約客の分だけでも大変だったが、予約出来なかった人達にもケーキを用意する為、母親は二日前から泊まり掛けで頑張っていた。 店に着くと、マサトの部下が数名、また駐車場の案内で応援に来てくれている。 ミルクは挨拶と感謝の言葉を掛けて、忙しそうな店内へと入っていった。 忙し過ぎると時間の感覚がなくなるらしい。 ようやく息を吐いて外に目を向けられるようになった時には、すっかり日が落ちて雪も本降りになっていた。 「あらぁ・・・今年はホワイトクリスマスだわねぇ。」 ぼんやり雪を見ていたミルクは、声に振り返った。 工房の作業を切り上げて母親がショップに下りてきたらしい。 「ぁ・・ママ。・・お疲れ様ぁ。」 「ミルちゃんもお手伝いありがとう。ミルちゃんもいてくれると思うと、ママも心強かったわ。フフッ。」 「ミルなんてぇ・・・ママ、大変だったでしょう?・・お店はみんなで出来るから、ママは休んで?」 「ううん。大丈夫よ。・・これで一つの山は越せたし、ホッとしてる所。・・・あっ・・マサトさんじゃない?」 母親に言われ、振り返っていたミルクが店の外に視線を戻すと、真っ赤なフェラーリがゆっくり通り過ぎて行った。 「あ・・ホントだぁ。」 ミルクの頬が幾分赤らむ。 「お店の方はもういいから、ミルちゃんはマサトさんと素敵なイブデートをなさいな。」 「・・でもぉ・・・」 ミルクが店内の時計に目を向けると、確かに6時近かった。 「はい。・・これはママからミルちゃんとマサトさんに。・・ケーキでごめんなさい。でも、ミルちゃんの好きな”ブッシュ・ド・ノエル”よ。甘さをひかえて作ったから、マサトさんにも食べて貰ってね。」 母親が細長い箱をミルクの前に差し出した。 忙しい最中に、マサトも食べられるようにと特製ケーキを作ってくれていたのだ。 ミルクは感激して涙を潤ませながら、 「ママッ・・ありがとぉッ!」 と、抱きついた。 ミルクは母親に促されて急いで着替えることにした。 そしてロッカーに置いておいたバッグから、母親と高藤へのお揃いの携帯ストラップを出して、店を出る時母親に渡した。 「気持ちだけの・・ささやかなプレゼントだけど・・・」 「まぁ・・高藤さんにも?・・・嬉しいわ。・・ありがとぅ、ミルちゃん。」 母親は言葉にしなくても高藤とのことを認めてくれているミルクの気持ちが嬉しくて、目に涙を浮かばせて微笑んだ。 駐車場に駆けて行くと、マサトが車から降りてドアに寄り掛かって待っていた。 「マサト、、、中で待ってればいいのにぃ、、、」 ミルクが駆け寄りながら言うと、 「・・ちょっとでも早く、ミルクをこの腕に抱き締めたくてな。」 と言って、ミルクを抱き締めるなり、熱い口づけをした。 「、、、ぁ、、、ん、、、」 ミルクは両手にバッグとケーキを持ったまま、マサトの唇の温かさにうっとりと目を閉じた。 降りしきる雪が頬や瞼に落ちてくる。 マサトに触れた雪はすぐ溶けて雫となって伝い、重なった唇を濡らした。 ミルクを待っていた時からの雪がマサトの前髪を濡らしている。 はらり、と濡れた前髪がミルクの額にかかって、ミルクは瞼を震わせた。 ミルクの睫毛に雪が留まっているのに気付いたマサトは、 「お前を風邪引かせちゃ、意味ねぇな。」 と苦笑して、ミルクの服の雪を払って車に乗せた。 今夜はマンションで二人だけのイブを過ごす約束になっている。 うっかりイブに地下アジトへ行くと、部下達のお祭り騒ぎに巻き込まれそうだ、と前からのマサトの希望だったが、明けて25日にはアジトでみんなにプレゼントを渡せると思っていた。 「えー、、、明日、地下に行けないのぉ?」 ミルクが残念そうに聞き返す。 当分地下へは連れて行けない、と言ったマサトは、眉間にシワを寄せて前を睨んでいる。 「、、どぉーしたのぉ?」 「・・・SSSの奴等がボイラーと地下の一部を壊しやがった。」 マサトは前を向いたまま答える。 「へ?」 ミルクは耳を疑った。 「、、、壊した、、の?」 「あぁ。・・・ったく、騒ぎを起こしたがる奴等で、参るぜ。」 ミルクは目を見開いて瞬きを繰り返していたが、マサトが本気で怒っているのが可愛く見えてしまって、クスクスと笑い出していた。 マサトは怪訝そうに片眉を上げて、ミルクにチラリと視線を向けた。 「・・何が可笑しい?」 「だってぇ、、、そーゆー途方もない連中だって、前に言ってたじゃん。だけど、だからこそ、いざという時、勇猛果敢に戦える仲間なんだ、って。、、日本は彼等にとって狭過ぎる檻だ、って。」 「・・そりゃぁ、多少のことなら大目に見てきたが・・・今回だけは許せねぇ・・・」 「そんなに被害が大きいのぉ?、、、でも、ニュースでは流れなかったみたいだけどぉ?」 「年末の事故は珍しくもねぇだろ。加熱しすぎてボイラーが撥ねたくれぇにしか、調べに来た消防や警察は思ってねぇよ。」 「なら、ウンピーの浮いてたホテルのプールに怒って、誰もいない夜中に爆破しちゃった、って話よりは軽いんじゃない?」 ミルクはお伽話のように言って、思い出し笑いをしている。 「それだって、祭明けには死体がゴロゴロしているお国柄じゃなかったら、大問題だぜ。・・ま、あの国は貸した金を踏み倒しやがったから、それぐれぇの仕返しは当然だがな。」 ミルクはそう詳しく知らないので、何となく頷く。 「・・・だが・・・ボイラーは大問題だろうが?」 「、、、何でぇ?、、、あッ、、怪我した人がいるの?!」 ミルクはハッとして息を飲む。 「いや。そんなヘマはやらかさねぇが・・・当分、地下は暖房なしだ。空気循環を考えると火を使った暖房は使えねぇし・・だいたいシャワーも使えねぇんだぜ?」 「、、、ぁ、、、そっかぁ、、、」 マサトが言う意味がやっとわかったミルクは、今度はなるほど、と頷いた。 「・・・怒るのも嫌になったぜ。」 マサトは溜息まじりに言うと、渋滞で動かない前の車の列をぼんやり眺めた。 「、、、マサトぉ、、、」 「・・・みんな俺を恐れる。・・・恐れ、敬い、従う。・・・だが・・従ってみせても、俺の想いをわかってくれはしねぇんだ。・・・俺はただ号令し命令するだけの独裁者か?・・・俺の痛みをわからねぇ奴等と・・一体何が出来るって言うんだ。・・・もう・・疲れちまったぜ。」 「、、、そんなぁ、、、みんなマサトを好きじゃん。、、、わかってくれてると思うよ?」 「・・・俺は誰よりも親父に忠実だった。・・だが、尊敬したことはねぇ。心の中ではいつも蔑み憎んでいた。・・・奴等だって、どう思ってるか、・・知れたもんじゃねぇさ。」 「違うーーッ!」 ミルクは堪らなくなって叫んだ。 マサトの心の痛みが伝わってきて胸が苦しくなる。 それでも、違うと思う。 マサトの抱えてきた痛みは他の人には理解が及ばないとしても、その悲しみを今ある自分にまで重ねてしまうのは、もっと痛いと思う。 痛みを周囲に押しつけ出した時、名君も暴君へと変貌してしまうように思えた。 「、、ミルには、、上手く言えないけど、、、みんな、、心からマサトが好きだよ。、、、だって、、、ミルにもみんなの気持ちが伝わってくるもん。、、、ミルが大好きなマサトを、、、みんなも好きで好きで堪らないって。、、、だってそうでしょう?、、、マサトだって、、本当はわかってる、、、」 ミルクは自分の言いたいことが上手く言葉に出来なくて、ポロポロ大粒の涙を零して泣き出してしまった。 「・・・ミルク・・・」 「、、ミルはマサトが好き。、、、何にもしてあげられないけど、、、ちっとも役に立たないけど、、、マサトが大好き。、、、みんなも、、マサトが大好きだよぉ…ぉ…、、、」 声が途切れ、しゃくり上げて泣く。 どうすればマサトの痛みを抱き締められるのか。 どうすれば自分で自分を焼き滅ぼしかねない灼熱の痛みを包み込めるのか。 ミルクは泣きじゃくりながら降りしきる雪に祈りを捧げた。 どうか、どうか、マサトの痛みを冷やしてください。 けれど、加熱する都会に降る雪は、地面や建物に触れた途端に溶けてしまう。 ミルクは溶けた雪のような涙を流し続けた。 「・・・悪ぃ・・・」 マサトはミルクの髪を、クシャクシャ、と撫でた。 「・・ミルクの言う通りだよな。・・・お前に会えねぇのを我慢してたから、俺もキレちまったみてぇだぜ。・・・悪かった。」 そう言って苦笑したマサトは、ようやく動き出した流れに乗って、車をマンションへと走らせた。 ミルクはマサトを抱き締める。 精一杯に腕を伸ばして、マサトの背中を抱き包む。 「、、、ぁ、、ぁ、、、マサトぉ、、、愛してるよぉ、、、」 「・・ミルク・・・俺のミルク・・・」 マサトもがむしゃらにミルクを抱き締め、ひんやりとする肌に熱い肌を重ね合わせる。 繋がりを確かめるように腰を動かし、ミルクの柔らかな感触を味わう。 「ぁ、、ぁぁ、、、ぁぁん、、、マサトぉぉ、、、」 ミルクは力強く奥まで突き上げられ、マサトにしがみついて仰け反る。 激しいマサトの動きに振り落とされないように、必死につかまっているミルク。 突かれる奥から快感が全身に広がっていく。 鈍い痛みも甘い痺れに変わる。 「ぁぁぁ、、、もっと、、、もっと、、、ミルを責めてぇぇ、、、」 もっと強い痛みを感じたかった。 マサトの痛みとひとつになれるような痛みが欲しかった。 「あぁぁ・・・ミルク・・・ミルク・・・」 マサトはうわ言のように繰り返し、腕を巻き付けたミルクの腰に体をぶつける。 「んんッ、、、ぁぁん、、、ぁぁぁ、、、もっとぉぉ、、、」 ミルクは霞む意識の奥で、マサトの熱い痛みを自分にも分けて欲しいと願った。 マサトが望むなら、一晩中でも、こうしてマサトを抱き締めていたかった。 けれど、マサトの体力にミルクが及ぶはずもなく、 「あぁ、、あぁぁぁぁぁ、、、ああぁぁぁーーッ、、、」 と、陶酔の渦に絡め取られるように叫ぶと、ぐったりとマサトの腕の中で気絶してしまった。 しばらくミルクの様子を眺めていたマサトは、ちっとも起きそうにないミルクに焦れて、熱く絞ったタオルで顔を拭いてやると、頬を軽く叩いた。 ペチペチペチッ、、 それでも熟睡モードのミルクの白い頬は真珠のように輝いている。 ペチペチペチッ、、 「おい。・・・起きろよッ。」 マサトは呼び掛けると同時にミルクの鼻をつまんだ。 「、、、フグッ、、、んー、、、」 ミルクは目を閉じたまま眉を寄せ口を尖らせた。 「イブが過ぎちまうだろ?・・せっかく俺もプレゼントを用意しておいたんだぜ?・・サンタクロースが通り過ぎちまうぞ。」 「うー、、、いやぁーん、、、」 ミルクは眠い目を擦りながら、どうにかこじ開けた。 目を開けたすぐ前に、キラキラと輝く物が見える。 あんまり視界に近すぎたので焦点が合わず、首を引いて見てみる。 段々その物がはっきりしてくるにつれ、ミルクの目が大きく開いていく。 涙の形をした大粒のダイヤモンドが目の前で揺れているのだ。 「俺からのクリスマスプレゼントだ。」 マサトはそう言って笑みを浮かべると、ミルクの首に手を回して付けてやった。 ミルクは起き上がって、胸に下がったペンダントを見つめる。 一糸纏わぬ肌に、ダイヤが七色の光を放っている。 呆然と見つめているミルクに、 「まぁ、女王様がつけるほどは大きくねぇけどな。・・ククッ。それぐれぇが手頃だろ?」 と、また笑う。 「、、、ぁ、、、ありが、、と、、、ってゆーか、、、凄すぎ、、、」 「いいじゃねぇか。それぐれぇ付けてくれ。・・お前は俺の天使なんだからな。」 「、、、マサトぉ、、、ありがとぉ、、、」 ミルクはマサトの首に腕を巻き付けて抱きついた。 「よしよし。・・いい子だ。」 ミルクが喜んでくれたので、マサトも満足そうだ。 「じゃぁ・・ミルクのも貰うかな。」 ミルクは、ピクッ、として固まった。 「・・・ん?」 マサトがミルクの髪を撫でながら、顔を覗き込む。 ミルクはゆっくりマサトから体を離すと、 「ぅぅぅ、、、だってぇぇ、、、」 と、思い切り頬を膨らませる。 「いいから、渡せ。ケチケチするな。12時を過ぎたら、もうイブじゃねぇだろ。」 「ぅぅぅー、、、ケチじゃないもぉーん、、、」 ミルクはベッドから下りると、バッグから包みを取り出してマサトに投げつけた。 「おぅ。サンキュ。」 マサトはミルクのイジケている理由が想像つくので、放って置いてプレゼントの包みを開けた。 ダークグレーか黒の間といった柔らかい色合いの黒い毛糸で編んだマフラーが現れる。 マサトは目を輝かせ口笛を吹いた。 「ヒュゥ〜ッ!・・いかしてるぜぇ!」 ミルクはまだ拗ねた目で睨んでいる。 マサトも一糸纏わぬ体で、首にマフラーを巻いた。 「これがありゃ、暖房がねぇ地下でも暖かいぜ。・・しかもミルクの手編み・・最高じゃねぇか!」 「、、、、、ホント?」 「あぁ。・・ミルクの柔らかで暖けぇ気持ちが流れ込んでくるぜ。」 「、、、、、気に入ってくれた?」 「ああ。最高にな!」 ミルクはホッとした笑顔になると、またマサトに抱きついた。 「愛してるぜ、ミルク。」 「、、ぅん。、、ミルもマサトを愛してるぅ。」 プレゼントは愛を形に変えた物。 その価値に隔たりがある訳がなかった。 |
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<13> 「ミツルのイブナイト」 |
§13§「ミツルのイブナイト」 クリスマスイブだというのに、ミツルは図書館に寄って調べ物をした後、剣道の道場で稽古をしてから帰宅した。 高校の部活動は進学校の方針もあって夏以降参加していなかったが、自分自身を鍛錬することはどんな時でも怠りたくなかった。 ”自分を鍛え自身を厳しく律する”、という点においては、一見正反対に見えるマサトと共通している部分だった。 稽古の後で道場の先輩から夕食に誘われたが、ミツルは辞退して帰路に着いた。 クリスマスイブともなれば、夕食と言ってもお酒を交えた席になるだろう。 警察関係者が多い道場なので、ミツルにお酒を勧めるようなことはなかったが、酒宴での冗談にはついていけない。 ミツルは雪の降りしきる中、自転車のペダルを漕ぎ続けた。 自宅が近付くと、玄関脇にミルクが飾ったツリーの、小さな電飾が煌めいているのに気付いた。 ミルクは今夜はいない。 母親の店を手伝ってから、マサトとイブナイトを過ごすことはすでに了承済みだ。 ミルクがこの所、夜遅くまで起きていたのは、おそらくマサトへのプレゼントを間に合わせたかったのだろう。 今でもミルクの父親代わりを自負するミツルだが、家の用事も頑張っているミルクがイブナイトを婚約者に甘えるくらい、認めてやるしかない。 母親がまだ帰ってる時間でもないのに、ツリーに灯りがともっているのは、ミルクのミツルへの気遣いだろう。 ミツルはコートの雪を払うと、玄関の鍵を開けて暗い家の中へと入った。 そして、そのまま明かりも点けずに二階の自分の部屋へと直行する。 自分を曲げるくらいなら一人でいる方がいい、と思うミツルは、ミルクほど暗闇を怖がることはなかった。 ミツルが高校に入ってから掛けるようになった自室の鍵を開けようとした時、足元に置いてある物に気付いた。 ミルクから?・・・と、腕に抱えて部屋に入り、明かりを点ける。 光沢のある薄い水色の包装紙にピンクのリボンが掛けられ、封筒が添えられてあった。 ミツルはベッドに座ると、リボンも包装紙もまた使えるように丁寧に剥がして、包みを開いた。 ふわっ、と包装紙から溢れるように、オフホワイトのマフラーが現れた。 えっ?! ミツルはミルクが自分へもプレゼントを作っているとは思わず、本当に自分がこの包みを開けて良かったものか戸惑ってしまった。 急いで添えられていた封筒からカードを取り出す。 と、カードと一緒に透明に煌めくビーズで出来た携帯用ストラップも零れてきた。 ★∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽★ ☆大好きなお兄ちゃま☆メリークリスマス☆彡 二年前には上手く出来なかったマフラーも、 少しは上達したでしょう? ふふっ☆ お兄ちゃまが作ってくれた仔猫のぬいぐるみは、 今でもミルの宝物です☆ 最近はすぐ喧嘩になっちゃうけど、 きっとミルが我が侭ばかり言うからだよね。。 大好きな大好きなお兄ちゃま☆ お兄ちゃまとイブを過ごせなくてごめんなさい☆ クリアクリスタルのビーズ、綺麗でしょう? 慈雨のように優しく、氷のように強い ミルの自慢のお兄ちゃまです☆ お兄ちゃまにも優しいサンタさんが、 幸せを届けてくれるように祈ってます☆彡 ☆いつまでもお兄ちゃまの妹 ミルク☆ ★∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽★ ミツルは熱いものが込み上げてきて、思わず目頭を押さえた。 それから、オフホワイトのマフラーに顔を埋めて、ミルクの残り香を胸に吸い込んだ。 ミツルには小さい頃から慣れた可憐な花の香り。 今でも変わらず、儚いほど優しく香る、小さな花。 ”ミルクのナイトになる”、と誓った幼い頃が鮮明に蘇る。 ミツルは顔を上げると、枕元に置いてあるクッションを手元に寄せた。 前にミルクが編んだマフラーを、ミツル自身の手で、クッションに作り替えたのだ。 二年前にミルクが編んだマフラーは、編み目が不揃いで、毛糸の繋ぎが弱かった為一部が解れてきてっしまっていた。 マフラーとしては役に立たなくなったが、手元に置いておきたくて、裏地を合わせてクッションに仕立てた。 部屋に鍵を掛けるようになって以来、ミルクが部屋に入ることはなく、ミツルだけの秘密だった。 シスターコンプレックスは自覚している。 だが、友達にからかわれても、無垢で透明な幼い魂を守りたかった。 誰にも汚されたくなかった。 もちろん、ミツル自身にも。 それが、時に厳しい口調になり、わざと自分から遠ざけるようにしてしまった一因だった。 ・・・不様かも知れない。 ・・・笑うなら笑え、蔑みたいなら蔑めばいい。 ・・・何と思われようと、一生何処かに隠してでも、自分で守りたかった妹なのだ。 −−−−−−−−−−−−−−− いつの頃からだろう。 妹の見る世界が、自分や友達とは違っているように感じ始めた。 公園に遊びに連れて行ってやっても、そこにいる子供達と遊ぶより、空の雲を眺めたり、木漏れ日を掌に写して遊んだり、風がくすぐると言って笑うような子だった。 どんぐり拾いに夢中になって頭を木にぶつけたり、落ちてきた木の葉を追いかけて道路に飛び出しそうになったり、シャボン玉を高く飛ばそうとストローを上向きにして石鹸水を飲み込んでしまったりと、失敗ばかり。 失敗しても笑っている妹を、”頭の弱い子”だと陰口を言う大人達もいた。 当時は今よりミツル自身華奢と言われるほど線の細い子で、顔立ちも似ていることから、よく”双子のようだ”と言われたが、大抵その後に、「お兄ちゃんは賢いのにね。」と囁く声が聞こえた。 ミルクの口癖も「お兄ちゃん、しゅごぉーい、ね。」。 自分が貶されることより、兄が誉められるのが嬉しい妹は、いつもニコニコと笑っている子だった。 その妹が庭の隅っこで泣いていた。 小学校に通い始めた頃のことだ。 ミツルより下校時間の早いミルクが、一人で家に帰る途中で見つけたという小さな仔猫を小さな手に抱えていた。 確かに鳴いていたのだ、と主張するミルクは、すでに冷たくなっている仔猫を放そうとしない。 命が消える、ということを理解出来ずに、母親がどう言っても手放そうとしないらしい。 「この仔猫は、きっとお空の上の神様の所に帰りたかったんだよ。」 「…おそら…の上…?」 泣きながら空に向けた妹の瞳は水晶玉よりも透明で綺麗だった。 「だから、土の中でネンネさせてあげよう?」 「…土の中?…ちゅめたいよぉ…しゃみちいよぉ…」 仔猫を抱き締め首を振る。 「ミルがダッコしゅるのぉ…あったかぁにしゅるのぉ…」 「でもね・・・お空に帰れば、また元気な命になって生まれてくるんだよ。だから、帰してあげようね?」 「…ミル…わかんない…」 今、ここで一緒に生きることがどうしていけないのか、が理解出来ずに泣きじゃくる。 それでも、どうにか”魂をお空の神様の所へ送ってあげよう”というミツルの言葉に頷いて、一緒に埋めてやった。 けれど、暗くなってくると、「こねこしゃん…さみしくない?」「もう…おそらにかえれた?」と聞いては泣く。 ミルクの心から、冷たくなった小さな仔猫の姿が消えないのだろう。 土を被せてしまった記憶が妹の心を苦しめている。 そう思ったミツルは、お小遣いで材料を買い求めると、仔猫の姿を思い出しながら、なるべく似ている仔猫のぬいぐるみを作ることにした。 買ったぬいぐるみでは意味がない。 あの仔猫の姿を映したぬいぐるみは、ミツルにしか作れない。 慣れない針が指先を突き、絆創膏だらけになった。 上手く出来たと思っても、綿を詰めるとイメージが変わった。 試行錯誤を繰り返し、どうにかイメージ通りの仔猫のぬいぐるみを完成させた。 夜になり、またミルクの啜り泣く声が聞こえてきた。 両親が心配しすぎるので、聞こえないようにと布団を被って泣いている。 それでも何故かミツルには、妹の泣き声が聞こえていた。 ミツルは妹の部屋に行き、丸くなった布団をそっと叩いた。 ビクッ、としてオズオズと顔を出したミルクの前にぬいぐるみを出してやる。 「…お兄…ちゃ…ん…これ…」 「お空に帰れたお礼に届けてくれたのかな。」 ミツルは照れ隠しにそう言ったが、ミルクにはそれがミツルの作ってくれたぬいぐるみだとわかったようだった。 ミルクは、仔猫の姿をしたミツルの愛を、ギュッ、と抱き締めて、 「…お兄ちゃ…ん…ありがと…」 と、くしゃくしゃの笑顔になり、また新しい涙を零した。 ミツルはそんな妹が可愛くて可愛くて、 「もう、泣くなよ。…俺がいつだってお前の側にいるからな。」 と、優しく髪を撫でながら、”俺がお前を守ってやる!”と誓いを立てた。 妹の綺麗すぎる無垢な心を理解出来ない奴等に、妹は傷付けさせない。 妹の価値を知らない奴等を近付けさせない。 ”俺がミルクのナイトになる!” そう誓った時から、誓いを忘れた日はなかった。 −−−−−−−−−−−−−−− 遠い記憶の幼い妹。 小さな心で精一杯に誓った幼い自分。 ミルクがマサトという聖騎士と出会うまで、ずっと約束を守ってきたつもりだった。 けれど、役目を果たした小さなナイトには、もう居場所がない。 後は妹の幸せを祈るばかりだ。 そう理解していても、胸が時々切なく疼く。 ミルクの一生のナイトになれなかった”兄”という宿命を恨みたくなる。 この胸の痛みが薄らぐまでは、他の女性を受け入れる気持ちにはなれない。 心からマサトを信頼して安心して任せられると納得出来るまで、当分は恋も出来ないミツルだった。 ミツルが溜息を吐いて、制服を着替え始めた時、携帯が鳴る。 ミルクから贈られたクリアクリスタルのストラップが揺れて指をくすぐる。 フッ、と笑みを零したミツルは、電話を掛けてきた相手の名前に眉を曇らせた。 「・・はい?」 ―「あぁ、ミツルさん?・・ママだけど・・・」 「・・何?」 ―「お店閉めてから急いで帰るつもりだけど、9時は回っちゃうと思うの。ミルちゃんがシチューを作ってくれたそうだけど、他にもお料理があった方がいいでしょう?・・何か食べたい物があったら、喫茶店の方で作って貰うから、言って頂戴?」 「・・・母さん・・帰るのか?・・・雪も降ってるし、泊まってくればいいだろ。」 ―「・・え・・・でも・・・」 「俺はシチューでいい。どうせ母さんが帰っても、俺は勉強してるし、今更ケーキなんか喰いたくねぇ。」 ―「・・・・・そぅ・・・・・」 「第一、ウチはクリスチャンじゃないだろ。」 ―「・・そうだけど・・・お祭りくらいは一緒に合わせてあげないと、ミルちゃんが可哀想じゃない。」 「だから、ミルクもいねぇんだから俺に構うな。・・じゃぁな。」 ―「・・・そぅ。・・わかったわ。それじゃ、戸締まりとかお願いね?」 「ああ、わかってる。」 ブツッ、と通話を切る。 まだ何かを言いたそうな母親の溜息なんかを聞いていたくなかった。 ミツルは部屋を出て、キッチンへ行く途中、ツリーの明かりを消した。 一晩中付けっぱなしにするほど、通行人に親切にするつもりはない。 そして、キッチンの明かりを点けて、ガスレンジにある鍋の中身を確かめてから火を点けた。 ダイニングテーブルにはシチュー皿の他に、ラスクと野菜スティックが用意してある。 ラスクも野菜スティックもミツルの好きな物だった。 「メリークリスマス、ミルク。」 ミツルは温めたシチューを皿に盛ると、そう呟いて静かな笑みを浮かべ、一人きりの晩餐を始めた。 |
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<14> 「ホワイトクリスマス」 |
§14§「ホワイトクリスマス」 いつもより眩しい朝の光が、少し開いたカーテンの合間から射し込んでいる。 朝方マサトが外の様子を見た時に隙間を開けておいたのだ。 日常的に生活しているマンションではないので、新聞は取っていない。 マサトは起きてからずっと、小型のノートパソコンで世界各国のニュースを見ていた。 ヘッドホンで音声を聞いているとは言っても、シャワーを浴びたりコーヒーを入れてきたりしているのに、隣りの眠り姫は一向に起きる気配がない。 最初の頃は起こさないようにと、そっとベッドを離れていたが、焦れてきたマサトは座る位置を変えるだけでも、ワザとベッドを揺らせるように大きく体を動かした。 それでも爆睡モードのミルクには効かない。 朝日が顔に差し掛かって、ようやく眩しそうに目を擦った。 「おはよう、眠り姫。」 「、、、んー、、、おはぁ、、、」 ミルクは眩しい光から顔を逸らそうとして枕から頭が落ち、首を傾げた状態でぼんやりしている。 「やれやれ・・・いい加減、朝だぞ。」 「、、、ふにゅ〜ん、、、眠いんだもぉ〜ん、、、」 眠そうな顔で口を尖らせる。 目を擦りながら小さなあくびを手で隠すミルクは、ロマンティックなムードからは懸け離れているが、小動物といった可愛さに溢れている。 マサトは愛しさを込めて苦笑すると、 「外・・雪が積もってるぞ。」 と言ってやった。 「、、え、、、嘘ッ?!、、、マジ??」 案の定、ミルクは目を見開いてベッドを飛び降りた。 ガウンも羽織らず窓まで行って、カーテンから外を覗くと、 「、、、うっわぁぁーーー!、、、凄ぉぉーーい!」 と、歓声を上げてカーテンを全開にした。 たちまち部屋中が光の洪水となり、マサトは目を細めた。 ミルクは自分の恰好も忘れて、窓のガラス戸を開けて頭を出す。 「、、、ホントだぁ、、、おわぁぁ、、、ベランダの手摺りまで、、、あッ、、道路まで雪があるぅ、、、」 どんどん身を乗り出すミルク。 「ぅっひゃぁ〜、、、風がちめたぃぃ、、、ゥフフフッ、、、」 マサトは慌てて駆け寄り、 「こらッ。そんなに乗り出してたら、誰かに見られちまうぞッ。」 と言って、ミルクの体に腕を回して胸に引き寄せた。 「、、、ぁぅ、、、だってぇ、、、雪がこんなに積もるなんてぇ、、、」 ミルクはまだマサトが閉めた窓に貼り付いて外を眺めている。 都会では滅多に雪が積もることはない。 しかもホワイトクリスマスの大雪なんて記憶にあるかどうかも朧だ。 「確かに、この時期に、この大雪は珍しいよなぁ。」 マサトも、ぴったり肌を合わせたミルクの頭の上に、顎を乗せて呟く。 ・・・きっと神様が願いを聞いてくれたんだぁ・・・ 昨夜、降りしきる雪に”マサトの熱い痛みを冷まして”と祈ったことを思い出し、ミルクは嬉しそうに目を輝かせた。 が、すぐに、 「この雪で、ただでさえ忙しい年末の交通網がマヒしちまったらしいぜ。」 と言った言葉に、ウッ・・・と表情を強ばらせた。 「いつならいい、ってもんでもねぇだろうが、年末のドカ雪ってのは迷惑もいい所だな。」 ミルクは頭の上から降ってくる言葉に頬をヒクヒクと痙攣させる。 「、、、ホ、、ホワイトクリスマスって、、、ロマンティックじゃん、、、」 抗議するように呟いてみるが、 「ロマンティックな夜をホテルで過ごした恋人同士も、朝になって帰れねぇ騒ぎで喧嘩しちまってたりしてな。クックックッ。」 と、更に追い打ちをかけられる。 「大体、日本の行政・・つーか、世間一般の生活が欧米型のクリスマスみてぇには出来ていねぇんだから、ホワイトクリスマスをありがたがるのは子供ぐれぇだろうぜ。」 ・・・どうせ、子供ですぅ・・・ ミルクはムッと頬を膨らませる。 「せめて正月休みなら、出掛けるのを控えるってことも出来るが、年末だけに無理して出掛けようとして、あちこちで事故が起きてるらしいぜ。」 ゥゲッ?! ・・・神様ぁ・・・やりすぎですぅ・・・ ミルクは自分の願いがとんでもない事になっているようで、泣きたくなってきた。 それでも、よく考えれば、神様が個人の小さな願いをそう軽々と聞いてくれるはずがない、と思い直した。 個人の都合をいちいち聞いていたら、天候だけでも、晴れにしたり雨を降らせたり暖冬にしたり大雪を降らせたり、と大変なことになってしまう。 誰もが嫌がる台風にしても、恐ろしい被害を伴っているとは言え、日本を洗い流して美しい国に維持してくれているようにも思える。 日本が狭い国土でありながら豊かな水に恵まれるのも、台風が一気に大量の水をもたらしてくれるからだ、と聞いたことがある。 雷が稲をふっくらとした実に育て、風が山間の涼風を街へ届け淀んだ空気を循環させる。 もし自然の現象を嘆く人々が増えているとしたら、人々の心から神様が離れてしまっているような気がする。 それとも自然の現象自体を狂わせるほどに、人々は神の領域に踏み込んでしまっているのだろうか。 マサトの神への想いとは違う想いを胸に秘め、ミルクは遠い空を見つめて両手を合わせた。 「どうした?」 マサトが腰を屈めて、後ろからミルクに頬ずりをする。 「、、、綺麗な雪景色を見せてくださった神様に、、感謝していたの。」 神様は、願うより、感謝する存在なのだと、ふと思ったミルクが呟いた。 「綺麗な雪景色が見てぇなら、覇羅蛇村に連れてってやるぜ?・・今はもうすっかり雪に閉ざされた銀世界だろうぜ。」 「、、、そっかぁ、、、素敵ねぇ、、、」 ミルクはマサトにもたれてうっとりと溜息を漏らした。 「・・あぁ・・・湯煙が上がる雪景色は、いいもんだぜ。」 マサトはそう囁きながら、ミルクの耳をしゃぶり、胸の膨らみを撫で回し始めた。 「、、、ぁ、、、ぁん、、、」 ミルクはまだ外の景色に目を向けながらも、目を細めてマサトに寄り掛かる。 マサトは耳からうなじへと舌を這わせていく。 両手で乳首を捏ね回し、ミルクの息遣いが甘く早くなっていくのを待つ。 「、、ぁぁッ、、ハァ、、ハァ、、、マサトぉ、、、」 ミルクは完全に目を閉じてガクリと頭を後ろに倒した。 乳首をクルクルと回すマサトの指に次第に力が入っていく。 「、、ぁぁん、、、あふっ、、、」 ミルクが切なそうに腰を微妙に動かしている。 丸いお尻にあたる固いモノを、撫でつけるように左右に腰を振る。 マサトは胸の愛撫を左手に任せ、右手を腹から下腹部へと滑らせていった。 薄い恥毛の柔らかな感触が指に触れ、指先で軽く掻き回す。 「、、、ぁ、、ぁん、、、んー、、、マサトぉ、、、クリトリスもぉ、、、」 マサトのゆっくりとした愛撫に焦れて、ミルクからおねだりをする。 「・・ククッ。・・いいぜ。・・クリトリスもいい子いい子しような?」 「、、、ぅん、、、ぁ、、ぁぁ、、、気持ちいいよぉ、、、」 マサトの指先がクリトリスの膨らみに触れて、グリグリと回すように擦る。 「、、ぁぁぁ、、、すごく、、、感じるぅ、、、」 ミルクは足を開き加減にし、窓ガラスに両手を付いて体を支える。 快感に痺れる体の平行感覚が狂い始めていた。 動かない物につかまっていないと、倒れてしまいそうになる。 それでもお尻を密着させて、マサトの蛇にお尻の滑らかな肌を擦り付ける。 マサトも更に腰を屈めて、ミルクの尻の位置に蛇を突き出す。 ・・・見た目はガキだが、挑発する体は一端の女だぜ。 マサトも熱い息で、 「うぅ・・・その腰使いがたまらねぇぜ。」 と、ミルクの髪に鼻を埋めて囁いた。 マサトは乳首とクリトリスを、グリグリ、、グリグリ、、と責め続ける。 スイッチが入ったように、ミルクは体の芯から甘い疼きと熱が広がっていくのを感じていた。 「あぁぁぁ、、、ん、、、ミルもぉ、、たまらないぃぃ、、、ハァハァ、、、マサトが欲しいよぉ、、、」 昨夜いっぱい愛された花陰は、熱い疼きを残したままに蜜を溢れさせる。 今にも滴り落ちそうなほどに溢れた蜜が、焦れったさに拍車をかけている。 「あぁん、、、マサトの蛇しゃんを、、、ミルの中に突っ込んでぇぇ、、、」 ミルクは前屈みになり、お尻を突き出して欲しがる。 「・・ここでいいのか?」 「、、あふん、、、もぉぉ、、我慢ー、、出来ないのぉぉ、、、」 ミルクが窓ガラスにピッタリ両手を押しつけて、両足を開く。 「いいぜ。・・・俺も我慢出来ねぇ。」 マサトは後ろからミルクの花唇に蛇頭を合わせて、グッ、、と押し込む。 ヌルリ、、、ズブズブッ、、、 柔らかく綻んでいるミルクの花弁が、カリ顎を張り出した大きな蛇頭を飲み込んだ。 「あっぁぁぁーッ、、、あ、、ぁぁん、、、めちゃめちゃいけちゃうぅぅぅ、、、」 ミルクはあまりの快感に、自分で自分を持て余し、戸惑いながら股間を覗き込む。 わずかだが、めり込む蛇の胴体と玉袋が見えた。 「、、ハァハァ、、、あぁぁ、、、マサトと、、、繋がってるぅぅ、、、」 「あぁ・・よく見ろ。・・・俺がお前の中にいるぜ。」 マサトは背中を後ろに反らせて股間を突き出し、ミルクの視界に繋がり部分が見えるようにしてやった。 「、、ぅん、、、見えるぅ、、、」 体の中の熱い塊が、確かにマサトの一部なのだと実感する。 「ぁん、、、ハァァ、、、気持ちいいよぉぉ、、、」 ズブリ、、ズブズブ、、ズブゥゥ、、、 たっぷりと蜜を含んだ花弁を押し退けて、蛇の赤黒く太い胴体がめり込んでいく。 溢れ出た蜜がミルクの太腿を伝っていく。 マサトの玉袋も蜜で濡れて照り輝いている。 「あっ、、あぁぁぁん、、、あぁぁ、、ぁぁん、、、」 ミルクは下半身をマサトに預けて、窓にへばり付くようにして顎を上げた。 昨夜広げられた腰骨が軋む気がする。 押し上げられた内蔵が巨大な蛇の為に道を譲る。 そう思えるほどに、圧倒的な蛇の存在感が、ミルクを快感の渦に引き込んでいく。 ミルクの足先は、もうほとんど床に届いていない。 かろうじて着いているつま先も、時々浮き上がってしまう。 ミルクの体重の全てで、マサトの付け根へと花陰を押しつけている。 「はぁぁ・・密着感がたまらねぇ・・・」 マサトは応援団旗を掲げるように腰でミルクの体を支えると、 「俺に体重全部、乗っけていいからな。・・・動かすぜ?」 と、ミルクの体を上下に揺さぶり始めた。 「あ、、あぁん、、、いいよぉぉ、、、あん、、、あん、、、あっ、ぁん、、、」 ミルクは前のめりになり、冷たい窓ガラスに頬を押し当てた。 息でガラスが白く曇り、ミルクは指先で小さく擦って景色を覗いた。 朝日と共に動き始めた人々が行き交う街中。 大雪に迷惑顔で通り過ぎる人々の頭の上で、愛の蜜を滴らせている自分を、漠然とした罪の意識で見ている。 それでも心地のいい罪悪感。 快感に痺れる体が愛おしい。 もっともっと狂いたいと欲望が渦巻く。 今なら、この姿を誰に晒してもいい。 愛に従順な奴隷となった自分を誇らしげに見せつけたい。 誰かに、ではなく、あらゆる存在に対して、自らの存在を主張するかのように。 ズンズンズンズンッ、、、ジュップジュップジュップッ、、、 リズミカルに体がバウンドする。 「、、あっ、、あん、、あん、、あん、、、あっ、、あぁん、、、」 高く澄んだ甘い声もリズミカルに口から飛び出す。 「、、、あぁぁん、、、いいよぉぉ、、、感じるぅぅぅ、、、ハァハァ、、、」 窓ガラスにミルクのヨダレが垂れている。 どこかでこの悦楽の表情を見ている人がいるだろうか。 快感に翻弄されながらも、ミルクは窓ガラスの曇りを掌で大きく拭った。 冷たいガラスで顔を冷やしているせいか、いつもならもう恍惚と意識を虹の彼方へと飛ばしているのに、まだ現実と繋がった意識が残っていた。 それでも目に映る全ての物が、スクリーンを通して見るように、現実味がない。 首から下は溶鉱炉のように熱く、体中が蜜となって溶け出しそうに、目眩く快感に痺れている。 ビリビリ、、ビリビリ、、と絶え間なく、脳天まで快感が駆け上がってきて、つま先の感覚が麻痺している。 「あぁぁぁ、、、もっとぉ、、、もっとぉ、、、突きまくってぇぇぇ、、、」 享楽の叫び声を上げ、ギュゥゥゥーーッ、とたまらずに締め付ける。 意識する前に、体がそう反応してしまうのだ。 「あぁぁ・・・今朝はヤケにノリノリだな・・・」 マサトも熱い息を吐いて、全身から汗を噴き出して腰を動かし、ミルクの体を跳ね上げている。 浮いた体が、ググッ、、と落ちてくる度に蛇竿の根元を締め付けしがみつく。 その吸着感に味をしめ、更に高くミルクの体を浮かせる。 飛び散る蜜でミルクの両股もマサトの股間も蜜まみれになりヌルヌルと滑る。 「あぅぅん、、、だってぇ、、、雪なんだもぉん、、、」 「・・・・・ぉぃぉぃ・・・どう関係あるんだぁ?」 「、、、んー、、、、、わかんなぃぃ、、、」 ガクッ、と腰が崩れそうになる脱力感が一瞬マサトの体に走ったが、態勢を立て直すと、 「まぁ、何でもいいぜ。・・めっちゃ可愛けりゃ、それが最高だもんな。」 と笑いを洩らし、腰に力を込めると、更に激しく突き上げ始めた。 「あぁ、、、あぁぁん、、、マサトもぉ、、、最高ぉぉぉ、、、」 ミルクの上気した顔が朝日を浴びて輝いている。 汗が滲む額も虹色に煌めき、震える瞼が光に透ける。 「・・いい女だぜ・・・」 マサトはダイヤモンド以上に綺麗な汗に、愛おしげにキスをした。 いよいよクライマックスという時に、マサトの携帯が鳴る。 組織からの連絡は不愉快でも無視する訳にはいかなかった。 この雪で何か問題が生じたのかも知れない。 「、、ぁぅ?、、、ぅぁん、、、」 ミルクと繋がったままベッドに戻り、腰を下ろしてサイドテーブルの携帯を手に取る。 「ぅぅぅ、、、ぁぁぁん、、、」 座ったマサトを跨ぐようにミルクも座った態勢になっている。 マサトの動きが止まったことが、マックス手前だったミルクを焦れさせている。 「、、、ぁぁん、、、くぅ〜ん、、、」 ミルクは自分から腰を振って快感を貪り出した。 「・・ぉぃ・・・ちょっと我慢してろ。」 マサトに口を押さえられ、ミルクは、ムスッ、と眉を寄せる。 マサトは宥めるようにミルクの頬にキスをしてから、電話に出た。 「あー・・・俺だ。どうした?」 ―「20cmの積雪になりました。」 電話を掛けてきたのは景山だった。 「あぁ、知ってる。」 ―「電線が切れて停電になっている所もあるそうなので、ご注意下さい。」 「ここは心配ねぇ。」 マサトの答え方はいつもより不機嫌だった。 ミルクはもう半分以上恍惚状態で、快感だけに心が支配されてしまっている。 口を掌で覆われていても、体は動かせるので、腰を振り続けている。 背中を反らせ、腕を思い切り伸ばし、後ろ手にマサトの首へ巻き付けていく。 そのしなやかな動きは、さながら白い蛇のようにも見える。 白磁の蛇がマサトに絡みつく。 しかもミルクは口を覆う掌を、舌の先でチロチロと舐め始めた。 「・・クッ・・ククッ・・・こら、くすぐってぇだろ?」 マサトは携帯を一時遠ざけて、ミルクに小声で囁いた。 ミルクはマサトの声に反応して、 「くふぅ〜ん、、、ふぐん、、、ぁぁぁん、、、」 と、切なげに鳴く。 ミルク自身で動かす腰の動きも大きくなる。 それに加えて、マサトの蛇を締め上げるように、ギュゥゥゥーーッ、と肉襞が取り囲むので、マサトも意識が絡め取られそうになっていた。 「・・クソッ・・・やぶ蛇だったぜ・・・」 ―「・・・あの・・・お取り込み中でしたか・・・申し訳ございません。」 「わかってるなら、さっさと用件を言え。」 ―「あ、はい。・・お時間がありましたら、こちらへお出で頂けないかと、SSSの者達が申しております。アリス様にもご迷惑をお掛けしたことを深く反省しているようで、お詫びしたいそうです。」 「・・・チッ。・・・知るかッ。」 マサトが投げ出すように言う。 ―「ボス。・・・その様な大人げないことを・・・」 景山の声が愚痴っぽい説教モードに入りそうな雰囲気に低くなる。 ミルクはミルクで、指先でマサトの頬やうなじをくすぐり、腰を振って切なそうに鳴く。 ズッチュズッチュッ、、ズッチュズッチュッ、、 蜜が肌で捏ねられる音が聞こえてしまいそうで、マサトは焦り、 「あぁッ、わかったッ!行けばいいんだろッ、行けばッ!」 と、怒鳴る。 「ぁぅぅ、、、ぐふん、、、」 ミルクが訳もわからず怒鳴られ、泣きそうな顔になる。 「ぁ・・ぃゃ・・お前ぇじゃねぇって。」 マサトはミルクにキスをして泣き出さないように慰める。 ―「ぇー・・では、お迎えの車はいつ頃向かわせましょうか?」 景山は状況を推察しながらも、なるべく平坦に話す。 マサトの車は車高が低いので、場所によっては雪が腹を擦るだろうと、迎えの車の手配を考えて聞いた。 ミルクにキスをしながら携帯を耳にあてていたマサトは、唇を少しだけ離して、 「好きにしろ。・・この雪だ。時間を言っても、どうなるかわかんねぇだろ?」 と答えた。 その間にも、ミルクがキスを求めて、マサトの唇を塞ぐように重ねてくる。 「、、、チュッ、、、ウフン、、、チュッチュッ、、、クスクス、、、」 マサトがもう一度ミルクの口を塞いだが、すでに遅く、ミルクの甘いくすぐったくなる声は、完璧に聞こえてしまっていた。 ―「ぁー・・・コホン・・・では、車がそちらに到着したら、もう一度電話致しますので、よろしくお願いします。」 「ああ。・・じゃぁな。」 マサトは通話を切ると、大きく溜息を吐いた。 意識が半分飛んだミルクは手に負えない、と冷や汗もので実感した。 「・・ったく・・・そんなお前が可愛いんだけどな・・・」 マサトは携帯をサイドテーブルに戻すと、優しくミルクを抱き締めてやった。 「じゃぁ、一気にいかせてやるぜぇッ!」 と、ミルクの腰を抱き、焦れて熟れきった果実の蜜壺を、激しく突き上げ始めた。 「、、ぁ、、ぁぁぁあああぁぁぁぁん、、、」 ミルクは嬉しそうなよがり声をあげて仰け反る。 マサトはミルクの大きく揺れる胸をキツクつかんで、 「最高に可愛いぜぇぇッ!」 と叫ぶと、雄叫びをあげながら、熱い想いの塊を発射させた。 ミルクも甘く切ないよがり声と共に体を震わせて絶頂に達した。 完全に意識を恍惚の世界に飛ばしたミルクが、グッタリとマサトの腕の中で力をなくす。 意識を手放しても、エクスタシーの痙攣に体が震えている。 マサトはミルクをしばらくそのままの状態で抱き締め、愛を込めて頬ずりをしていた。 地下アジトのある倉庫街。 SSSのメンバーが率先して雪かきをしている。 「おらおらおらぁぁーーッ!退け退け退け退けぇぇぇーーーッ!!」 猛獣のように、雷音轟が大きなシャベルで雪を押し退けていく。 「もっと狙いを定めて効率よくやれよ。」 矢上準は的確に雪を排除していく。 「・・・・・これくらい難しい海溝に比べりゃ、大したことないね。」 麗しの海園麗は、絶世の美貌を崩さないまま、額に汗して、白い息を吐いている。 不思議なもので、美しい海園の吐く白い息までが、煌めいて美しく見えてしまう。 「こんなの・・除雪車がありゃ、すぐなのに・・・」 若林が愚痴って、 「経費削減、効率重視だぞ。・・滅多に降らない雪にそんな車は買わないのが、ボスのいい所だ。・・ったく、昔っから我が侭な奴だ。」 と、若松に睨まれる。 「・・はいはい。・・お前も相変わらずボスにベタ惚れだなぁ。」 組織のランク的には若林の方が上でも、なかなか冗談が通じず怒ると怖い竹馬の友の若松は苦手なようである。 いにしえの中国で天才軍略家として名高い”諸葛孔明”をあだ名に持つほどの若林。 哲学でも戦略でも陰謀策略でも、まともにマサトと議論出来るのは若林くらいだった。 それでも、冗談好きな性格故か、常に景山や若松から睨まれ、絞られることが多かった。 マサトとミルクを迎えに行った車が到着すると、SSSのメンバーが駆け寄ってくる。 湯気が上がる体で、ビシッ、と敬礼する姿は、他の組織員達より切れ味があった。 車から降りたマサトは、ミルクに手を貸してやりながら、チラッ、と不機嫌に彼等を一瞥した。 「ボス。SSS一同深く反省致しております。」 姿勢を正して言う若林だったが、車から降りた笑顔のミルクと目が合うと、頬を緩め、 「これはこれは、アリス姫。・・ご機嫌麗しゅうに存知、重畳でございます。」 と、ミルクに貴族的な挨拶をする。 ムッ、と目を眇めたマサトだったが、 「、、、ねぇ、、、麗しゅうってぇ?、、、ちょうじょう、ってどこの頂上?」 と、ミルクが聞いてきたので、思わず苦笑を洩らしてしまった。 「見ろ。気取った言葉を使うから、ミルクがわかんねぇだろ。バーカ。」 そう言いながらも、マサトの声にはもう怒気はなかった。 若林は大袈裟に肩を落とし、 「これは失礼致しました。」 と、ミルクに頭を下げた。 「、、ぁ、、、ぃぃぇ、、、」 ミルクは恥ずかしそうにマサトの腕に顔を隠す。 「・・で?・・俺を呼びつけた用事は何だ?」 マサトが地下へ向かいながら若林に尋ねる。 「まぁ、是非とも御覧あれ。」 若林はニヤニヤとしながら、マサトの後について行く。 暖房が出来ない地下も息が白くなる寒さだった。 マサトはミルクの肩を抱いて、愛し合った火照りの残るミルクの体が冷えないようにと気遣いながら、若林に促されて”アリス姫のお部屋”へと進む。 若林は勿体をつけて、案内する理由をすぐに言おうとしない。 不機嫌さがぶり返しそうなマサトの表情が、部屋の扉を開けた途端、怪訝そうに固まる。 「・・・何だ・・あれは?」 部屋の中央にドーンと大きなベッドが置いてあった。 「俺の愛用するMIKAN製のウォーターベッドだ。・・いいぜぇ?・・暖かくてゆらゆらと揺れて。・・これがあれば寒い地下でも、思う存分愛を育めるって訳さ。」 「・・・しっかしまぁ・・・デカすぎねぇか?」 「・・ま・・な。・・・美観を損ねる、と参謀に睨まれちまったから、地下の暖房が復活するまで、ってことで使ってくれ。・・俺達SSSからのお詫びを込めたクリスマスプレゼントだぜ。」 若林がマサトの肩に手を置いて笑い掛ける。 大それた態度も言葉遣いもマサトは片頬で笑って済ませる。 参謀室から出てきた景山が、後できっちり叱らねば、と思いつつ、マサトとミルクに挨拶をした。 「俺からのプレゼントは別口で用意してあるが、・・ボスに見離されたら生きていく意味がねぇ、ってアイツ等もしょげ返っちまってるし・・・許してやってくれ。」 若林は相変わらずタメ語で話し掛ける。 マサトは、クスッ、と笑みを洩らし、 「しょーがねぇなぁ。・・・受け取ってやるぜ。」 と言って、ミルクを抱き上げてベッドに寝かせた。 ミルクは、ほぇ?、と不思議そうにマサトを見るが、若林も呆気に取られた顔をした。 「・・・ボス?」 「せっかくだしな、使い心地を試さなきゃ、ありがたみがわかんねぇだろ?」 マサトは若林にウィンクをして見せると、体を押し戻して部屋の外へと追い出した。 「・・ボ・・・ボス・・・」 「まだ、雪が残ってるだろ。しっかり上を手伝ってやれよ。フフン。」 そう言うと、マサトは部屋のドアを閉めてしまった。 コートを着たまま、マサトもベッドに上がる。 それだけでゆらゆらとミルクも揺れる。 マサトはふんわりとしたオーバーコートを着ているミルクを腕枕してやり、キスをする。 まだ揺れはゆらゆらと続いている。 「、、ぁ、、ん、、、マサトぉ、、、」 ミルクが困惑の表情でマサトを見つめる。 愛し合ってきたばかりで、また始めるのは少しキツイ。 と言うより、ミルクのお腹が、キュゥ〜、、と鳴く。 思ったより迎えが早かったので、起きた時から何も食べていなかった。 「腹減ったか?・・ククッ。・・アメでも舐めてちょっと待ってくれな?」 マサトがいつ用意したのか、ポケットからアメを取り出し、ミルクの口に入れてやる。 「、、、待つ?」 ミルクはアメを舌で転がしながら首を傾げる。 「上の雪かきが終わったら、みんなで食事でもしよう。・・・それまではここで・・のんびりしてようぜ。」 「、、、ぁ、、うん。」 ミルクは納得して頷いた。 マサトは今この場でラブラブを始めるつもりはなかったらしい。 ただ、若林をからかってやりたかったようだ。 ミルクは、若林がマサトの悪友たる由縁を垣間見たようで、クスクスとマサトの胸に顔を埋めて笑った。 マサトも笑って、ミルクの髪や耳に優しいキスを繰り返す。 ミルクがクスクス笑うだけでも、ベッドはゆらゆらと揺れる。 それが可笑しくて、ミルクは笑い続けた。 クスクスとくすぐったい笑い声と、ゆらゆら揺れるベッドに、マサトは頑なだった心が柔らかく解れてくるのを感じていた。 この続き §ミツルのホワイトクリスマス§≪万里様作≫ は、番外編(2)で、お楽しみ下さい☆ |
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<15> 「真冬の陽炎」 |
§15§「真冬の陽炎」 …たぷたぷ…たぷたぷ…揺れている。 ゆらゆら揺れる静寂は、母胎の海で眠っていた頃を思い出しそう。 ミルクはマサトの腕の中で満たされた無の時間に浸っていた。 SSSのみんなが贈ってくれたウォーターベッド。 こんな不思議な寝心地は初めてだった。 海に浮いた小舟でお昼寝するのとは違う柔らかな感触。 このまま夢の中へ溶けていきたくなる。 「・・寒くねぇか?」 「、、、ぅぅん。、、、マサトもベッドも、、あったかぁ〜で気持ちぃぃ〜、、、」 「・・寝るなよ。・・車でも寝てるし・・抱いてる時しか起きねぇ人形みてぇだぞ。」 「ぅ、、、だってぇ、、、寝不足だったんだもん、、、」 「・・あのマフラー、そんなに大変だったのか?」 「、、、てゆーか、、、マサトのは出来てたけどぉ、お兄ちゃんにもプレゼントしたかったからぁ。、、フフッ。間に合って良かったぁ。」 「・・アイツには他にプレゼントくれる奴がいるだろうが。」 マサトは多少面白くなくて文句を言った。 それから、眠そうに目を閉じるミルクに熱いキスをする。 マサトの手が、ミルクのオーバーコートの前をはだけて、中に着ているセーターの裾から胸へと伸びる。 「、、、ぁ、、、ん、、、マサトぉ、、、」 乳首をつままれ、ミルクはまだ火照りの冷めきらない甘い吐息で抗議する。 それでも敏感になっている乳首は嬉しそうに応えて突起する。 中指と親指で突起した乳首をつまみ上げ、人差し指で先端を擦る。 「、、ぁ、、ぁ、、、」 ミルクは顎を上げて自分からもキスを求めてしまう。 甘い陶酔から意識が覚醒する間もなく次の愛撫が始まり、ミルクは現実の世界から隔離されてしまったように、性愛に従順な生き物になっていた。 それを人によっては”奴隷”と表現する。 ただし、逆らえないのは力に屈するからではなく、愛の虜になっている故で、従うことで自らも満たされていた。 マサトもそんなミルクが可愛くて、手持ち無沙汰の手遊びのつもりが、次第に愛撫する行為自体に熱が入っていった。 ミルクの腕枕を外して、セーターを押し上げて顔を埋め、剥き出しにした乳首に吸い付いた。 乳首を弄っていた手は膝からスカートの下に滑り込み、頼りなげに小さなパンティをづり下げる。 「ぁぁ、、、ぁぁん、、、ん、、、」 乳首とクリトリスを同時に弄くられるのがたまらず、ミルクの性欲を掻き立てていく。 柔らかなベッドに頬を押し当て、キューン、とする快感に目を閉じる。 たぷたぷ…と揺れる水底から潮騒が聞こえてくるような気がする。 荒い波が絶え間なく打ち寄せる蛇窟島の白浜の、不思議とゆったりとした、安心感に包まれた時間を思い出す。 「・・俺に感じてるお前が最高に可愛い。」 マサトの吐く息は白い。 キン、と冷え切った空間なのに、体は内側から熱く燃え上がるようだ。 マサトの指が太腿の間を割って奥の花唇へと伸びていく。 「ぁッ、、、ぁぁぁ、、、」 まだ熱く痺れている蜜壺に、マサトの中指と薬指が深く侵入してきた。 「、、ぁぁぁん、、、また感じちゃうぅぅ、、、」 「好きなだけ感じろ。・・可愛いぜ、ミルク。」 クイクイクイッ、、、と二本の指が膣壁を擦る。 「あぁぁぁぁぁ、、、」 ミルクは甘く高いよがり声をあげる。 頭を反り返らせると、反動が返ってきて体が大きく揺れる。 マサトは、両膝で踏ん張りながら愛撫の手を休めず続けている。 ミルクの剥き出しにしたふくよかに白い胸を、交互に吸って舌先で乳首を転がし、もう一方の手で冷たい空気に晒されている胸を揉む。 ミルクの股間に伸びている手は、中指と薬指の位置を微妙にずらせながら、膣壁を力強く擦り続ける。 「ハァハァ、、、あぁぁぁ、、、ハァ、、ハァ、、、」 ミルクの吐き出す息も白さを増していく。 ベッドの揺れを受け止める背中は熱いくらいに温かいのに、セーターをたくし上げられて剥き出しになった白い腹部と、スカートから覗く白い太腿が、空気の冷たさを感じている。 けれど股間の熱い疼きには冷たさが心地良かった。 ミルクは自分で片足を膝まで下ろされていたパンティから抜き出して、足の動きを自由にすると、大きく股間を晒すように開いた。 チュプチュプチュプチュプッ、、、 籠もっていた淫靡な音が大きく響く。 動きやすくなったマサトの指が一層小刻みに動いてGスポットを刺激する。 「あぁッ、、あぁぁぁぁぁん、、、」 ミルクは反り返ろうとする背中が反動に押し戻されて戸惑いながら、腰を振って快感を全身に広げていく。 揺れが大きくなって腰を固定できなくなったマサトは、 「・・クックッ。・・ひとつになっちまった方がいいみてぇだぜ。」 と、苦笑して、ズボンを前だけ開けると、ミルクの片足を自分の体の中央に担ぎ上げた。 ミルクは体を横捻りにされ、揺れるベッドに顔を埋める。 ”松葉崩し”と言われる体位。 双方の足をクロスに組み合わせて結合する性愛の方法である。 これならあまり揺れの影響は受けないだろう、とマサトは蛇竿を握って押し込んだ。 ズルンッ、、と蛇頭が花弁に飲み込まれる。 そのまま一気に奥へと埋めていく。 「あぁぁぁ、、、あぁん、、、」 ミルクは横向きで背中を反らせ、両手を揺れるベッドに広げて体を支えた。 大きく開かれ、高く持ち上げられた足は、まだハーフブーツを履いている。 マサトはブーツを肩に担ぐようにして腰を振った。 ズチュズチュズチュズチュッ、、、 小刻みに腰を振り、膣壁全体を擦り上げる。 「あぁん、、ぁぁん、、ぁぁん、、あぁん、、ハァハァ、、、感じるぅぅ、、、」 マサトは密着したまま腰をより奥へと突き上げるようにしてやる。 「・・いいか?」 「ハァ、、ハァ、、ぅん、、、すごく、、ぃぃ、、、ハァハァ、、、」 「・・おまんこが熱いだろ?」 「、、、ぅん、、、めちゃめちゃ、、熱いぃぃ、、、あぁぁん、、、」 「もう、我慢出来るなんて、ツッパッテんじゃねぇぞ?」 「、、、ぁ、、ぃ、、、」 「お前の体に灯した俺の熱を・・もう絶対に冷まさせねぇぜ。」 「、、、ぅん、、、ァフッ、、、ハァハァハァ、、、熱いよぉぉ、、とろけるぅぅぅ、、、」 ミルクはマサトの熱でゆらゆらと立ち上る陽炎になったようだった。 熱くて熱くてたまらない繋がり。 ジュウジュウ、と焦げ付きそうなほどに体の奥が炙られる。 体から溶け出す蜜が溢れて滴る。 身も心も溶けて、ゆらゆらと揺れる陽炎になる。 「あぁぁぁぁぁ、、、、」 ミルクは揺れに身を任せ、揺らめく蜃気楼を追いかける。 「、、、あぁぁ、、、待って、、、まってぇ、、、行く、、、いくぅ、、、いくぅぅぅ、、、」 「まだまだ・・・もっともっと熱くしてやるぜ。」 「あぁぁぁ、、、熱いぃぃぃ、、、」 ぼやけていく意識…ぼやけて揺れる蜃気楼…。 蜃気楼には何があるのだろう・・・ 「あぁぁぁ、、、いくぅぅぅ、、、あぁぁぁぁぁぁぁーーッッ、、、」 ミルクは蜃気楼に手が触れそうな所で絶頂に達し、感極まった痙攣に意識を絡め取られてしまった。 マサトも大きく呻いてスペルマを迸らせた。 尽きることなく沸き上がる熱情。 たっぷりと愛の白濁液を注ぎ込み、満足したマサトはミルクの足をそっと下ろしてやった。 満たされたミルクの中から泡だった精液の残骸が溢れてくるのを待って、柔らかなティッシュで拭ってやる。 そして、乱れた服装を直してやると、まだ痙攣が治まらないミルクを胸に抱き締めた。 ベッドの揺れは次第に小さくなっていき、愛を確かめ合った二人を包んで、ゆりかごのように優しく揺れていた。 ウォーターベッドを提供して下さった、 みかん様 に感謝致します☆ |
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