|
|
『S』番外編《魔の郷》
|
|
(★本編では謎のままにされている魔の郷のお話★) *************************************************** §魔郷(まきょう)伝説§「化身」 万里様作 これは、魔の郷に昔から伝わるお話です・・・・・・・・・・・・・・ まだ、時の政府に虐げられていた時代、 郷の者達の結束は固く、郷を出た事が無いものたちには、 よそ者を受け入れない気風がありました。 そんな中、郷のはずれに若い娘が住み着いたのです。 何処から来たのか、何時から居るのか・・・・ 気がついた時には、あばら家を立てて住んでいました。 庭にいくばかの作物を作り、 それを物々交換する事で何とか暮らしていけるこの時代、 受け入れられない娘の暮らしは、どうにか命をつないでいる ・・・というような生活でありました。 外の世界で学んだ事のある若者が 郷の白蛇神様の神社を継いだとき、 この娘の境遇を知り「これも何かの縁」とばかりに、 郷に溶け込むように働きかけていきました。 そんな宮司の若者に、郷の長老達の反感が募り 「政府の犬だったらどうするつもりじゃっ!」と詰め寄りましたが、 「その時は、その時です。 私達が強虐者になることはないのですよ。 はずれとはいえ郷に住んだのも、蛇神様がお許しになったからでしょう」 と、皆を諭したのでございます。 郷の者達は 常にこの郷は白蛇神様に守られていると感じていましたので、 この言葉に何となくうなずいてしまいました。 それからです。 少しづつではありますが、郷の者と娘の距離は近づいていき 娘の顔にも笑顔が見られるようになっておりました。 ある日の事です、若者のもとに娘が尋ねてまいりました。 「宮司様、 素性の知れぬ私の為に心を砕いていただきありがとうございます。 お礼に何かお役に立ちたいのです。どうか、何かお申し付けください。」 深々と頭を下げる娘と「何もいらぬ」という若者と 押し問答になりましたが、娘の引かぬ態度に折れた若者は申しました。 「では、神社のお手伝いをお願いできますでしょうか? 女手が無いもので至らぬ事が多々ありまして・・・」 苦笑気味に頭を書く若者に、娘の顔にも笑みが漏れました。 娘が神社を手伝うようになると、 ますます郷の者と娘の距離は近くなり、 娘の顔にも笑顔が見られるようになって来ました。 若者は、心からよかったと思っていたのですが、 ある日郷の老人達から 「宮司様もそろそろ身を固めればよかろう? あの娘ごなどどうじゃ?年頃もお似合いじゃて。」 などといわれると人とは不思議なもの、 どうしても視線が娘を追ってしまいます。 何気なく娘を見るようになっていたある日の事。 朝早く蛇神山の祠に参ろうとした宮司の若者は 道の先に、娘の姿を見つけました。 郷の者もなかなか寄り付かない山です。 よそ者の娘が一人で登っていくことに疑問を覚え若者は後を追いました。 娘は祠の手前で脇にそれ 森を抜け小川が流れている所まで迷わずたどり着きました。 その小川は、郷の者でもほとんど知ってる者がいない場所です。 その場所を娘が知ってることに若者は驚きました。 娘は小川のそばに行くとためらわず着ている服を脱ぎ始めました。 (水浴びにきたのかっ?!) 若者は思わず赤くなり顔をそらそうとしましたが、 ふいに娘の体の輪郭が揺らいだように見え視線を戻しました。 するとどうでしょう、 娘がいた場所に白銀の鱗をきらめかせた大蛇がいるではないですか。 びっくりした若者は手にしていた小枝を折ってしまい音を立ててしまいました。 その音に振り返った大蛇は若者の姿を見つけると、 その金色の蛇眼を見開きその身を川の中に躍らせて去ろうとしました。 「まっ,待ってください!!」 転がるように大蛇の傍まで走りよった若者は、 大蛇の尻尾を逃がさないようにつかみ話しかけました。 「どうか私から逃げないでください。 ここであなたが去ったら もう二度と私の前には現れてくださらないのでしょう?」 「・・・・・私が怖くないのですか? このような恐ろしげな大蛇の姿の私が・・・?」 「どんな姿でも、貴方は貴方です。 それに私を誰だと思っているのですか? 蛇神神社の宮司ですよ?」 おどけたようにいう若者に 大蛇はきょとんとした顔をして、次の瞬間笑い出しました。 「そうでした。 貴方はこの蛇神山の祠にも恐れず入ってくるお人でした。」 「えっ、私を前から知っていたのですか?」 若者のその問いには答えず、大蛇はにっこり笑いました。 「逃げませんので、出来れば尻尾を離してほしいのですが・・・・」 「いやです。 私の傍にずっといてくださると約束してくださるのなら、離しましょう」 「・・・・・私は、蛇です。人間の貴方の傍には居れません。」 「大丈夫ですよ。 ここは魔の郷です。何がおきても不思議ではありません。」 にっこり笑っていう若者に負けたように、大蛇はうなずきました。 世間では年の瀬も迫ったある日。 郷では盛大なお祝いが開かれておりました。 温泉のせいで色とりどりの花が咲き誇る中、 その当時では珍しい純白のドレスに身を包んだ娘の姿は、 可憐な花のようでした。 百花繚乱、魔の郷に新たなる伝説が加わったそんなお話です。 ≪≪ これが『覇羅蛇一族』の始まりと伝えられています。 ≫≫ |
|
(★本編では謎のままにされている魔の郷のお話★) *************************************************** §魔郷の花嫁§「百花繚乱」 万里様作 ズルッ、ズルッ・・・・・・・ 参列者が見守る中、 普段は姿を見せない白銀の蛇神が館の中から姿をあらわす。 その傍には、寄り添うように可憐な花の姿・・・・・・ 郷での結婚式。 蛇神はマサトの報告を受けた後一人考えていた。 自分の分身の御めでたい席なのだ。 一緒に祝いたいと・・・・・・・。 館でドレスを着て、緊張した面持ちのミルクは思いがけない訪問を受ける。 光の中で見る蛇神は、怖いと言うよりも幻想的で、綺麗だった。 「一緒にいってくれるの?」 目が語りかけたように、 何となく蛇神の言いたいことが分かったような気がした。 ミルクの言葉を「もちろん」とでも言うように、 口を大きく開け目を細めニタァ〜〜と笑うと、先導するように先を促す。 まるで父親と娘のように寄り添い 館から出てくるミルクと白蛇神は、まるで一対の花のようであった・・・・。 百花繚乱・・・・魔の郷に新たな時代が巡り来る・・・・・。 |
|
|
|