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<51>
「学園祭」
§51§「学園祭」

 慌ただしい学園祭の朝。
 今日と明日、土日の二日間だけの祭典ではあったが、積み重ねてきた努力の成果が披露される時だ。
 ミルクは朝食も喉を通らないほど緊張していた。
「ミルちゃん。少しは食べないと、かえって気持ち悪くなっちゃうわよ。」
「そうそう。朝はしっかり食べた方がいい。会場に入ったら、それこそ忙しさに追われて、昼食だってまともに食べる暇がなくなるぞ。」
 ミツルは自分も生徒会長をしていたこともあり、経験からミルクに注意する。
「・・ぅん。・・・ママぁ・・スプーン。」
 ミルクはご飯を味噌汁に入れて食べることにした。
「まぁまぁ・・・ちゃんと噛んでよ?」
 母親がスプーンをミルクに渡しながら言った。
「・・この学年ごとの合唱大会は時間がハッキリしてないのか?」
 ミツルがプログラムを眺めて聞く。
「順番は三番目なんだけどぉ・・・そこまではわかんない。」
「けっこう早いんだな。じゃぁ、開始時間までには場所を取っておいた方がいいな。」
「え・・・お兄ちゃん、午前中から来るの?」
「ああ。今日は剣道部も練習だけだし、副主将の海堂に任せることにしたんだ。ミルクの晴れ舞台の写真を撮ってやらないとな。」
 ミツルは兄らしい笑みを浮かべて言った。
「・・ぅ・・口開けてる所は撮らないでねぇ・・・」
「・・・それは・・難しいぞ・・・」
「いいじゃないの。合唱大会なんですもの。歌ってるミルちゃんだって可愛いと思うわ。フフッ。」
「・・そぉかなぁ・・・」
 ミルクは眉を寄せながら、ニャンコご飯をスプーンで啜る。
 (味噌汁かけご飯は、昔、魚で出汁を取って味噌汁を作っていたのでニャンコご飯と呼ばれているらしいが、今時の猫がこれを食べるとは思えないのだが・・・。)
「海堂も午後の劇の方は観に来るって言ってたよ。」
「うわッ。・・・あのお兄ちゃんと一緒に学園に来た人?」
「あら。ミルちゃん、知ってるの?」
 そこでミツルが咳払いをした。
「あ・・うん。ちょっとだけ・・・えへっ。」
「そう。・・ママもなるべく間に合うように行くようにするわね。高藤さんも写真撮りたいって言ってるし・・」
「えー・・・」
「きっとマサトさんから言われてるんじゃないかしら。」
「あ・・・そっか。」
 ミルクはフッ、と寂しそうに目を伏せた。
「お兄ちゃんが撮った写真はパパに送ってあげましょうね。」
 母親はミルクを慰めるように言ったのだが、ミツルが、ムッ、と顔をしかめた。
「あんな奴に送る必要はない。」
「ミツルさん・・・パパだってきっと見たいと思ってるでしょう?」
「仮に送った所で、どうせ相手の女が破っちまうさ。」
「そんな・・・孝司さんに子供がいるのは事実なんですもの。その過去を否定することは、相手の方にだって出来ないはずだわ。」
「そんな配慮の出来る女なら、離婚を急がせたりはしないだろ?・・一方的に離婚を突き付けてきたのだって、相手の女に焚き付けられたんだろう。」
「・・だとしたら・・・パパも大変ね。・・・でも、ママは相手の方がどう思っても、パパには二人のことを忘れて欲しくないわ。・・・それとも、ミツルさんはパパに自分達のことを綺麗サッパリ忘れて欲しい?」
 ミツルは黙って唇を噛んだ。
「ミルがお兄ちゃんから写真貰って送るから。」
 ミルクがにっこり笑った。
「そうね。そうしてあげてね。」
 母親も静かに微笑んだ。
「お兄ちゃん。合唱大会の写真撮るなら、小百合さんも撮ってね。ピアノ担当なの。フフッ。」
「なんで俺が・・・彼女の家の人だって来るだろう?」
「・・来るかなぁ?・・・小百合さんのママが来たら、スゴイねぇ。サイン貰っちゃおうかなぁ。」
「お忙しいでしょうから、ご迷惑にならないようにしてよ?」
「わかってますぅ。」
 ミルクは頬を膨らませる。
「ほらほら。もう時間ないわよ。」
「はーい。」
 ミルクは何とか残ったご飯を口に掻き込み、口をもごもごさせて、
「・・ごひほぅふぁまぁ・・」
と、席を立った。
 やれやれ、と溜息を吐いて首を振ったミツルは、母親も同じ仕草をしているのに気付き、二人で目を合わせると苦笑を洩らした。

 学園に登校すると、ミツルの言っていたように、鞄を置く間も惜しまれるほどの忙しさに追われることとなった。
 チャレンジクラブはくじ引きでお好み焼きの屋台を出す権利を獲得していたが、麗子のこだわりで、山芋を擂って生地に混ぜるようにした為、準備に時間が掛かっていた。
 男子が屋台を設営する間、調理室で材料を刻み、山芋を擂る。
 滑る、粘る、痒い、と苦戦しながら、ようやく大鍋いっぱいに擂れた所で、小百合が合唱の練習をするから、と呼びに来た。
 合唱大会は一、二年生だけの参加で、三位までが表彰される。
 各々自分の所属する部活動でも、研究発表や各種趣向を凝らした出し物、それに屋台やレストハウスを出展させているので、クラス対抗の合唱大会は手抜きになりがちだった。
 特に男子は照れもあってか、やる気がなかったのを、小百合が、
「やるからには優勝を目指さなくて、何の意義がありますの?」
と、一喝した。
 鶴の一声とも言える小百合の言葉に、男子もやる気を起こして練習に熱を入れるようになった。
 ミルクは、お嬢様パワーの真価を見出したようで、ひたすら感心していた。
 そんな経緯で、今朝も練習する時間を作っていたのだ。

 練習から戻ると、
「じゃぁ、アリス。衣装に着替えてね。」
と麗子が言った。
「え?・・・劇は午後ですよね?」
「メインの役の人達は衣装で呼び込みをするのよ。」
「えぇーッ?!・・・嫌ですぅぅぅッ!」
「なるべく宣伝して、大勢の人に観に来て頂いた方がいいじゃないの。チケットの販売いかんで、チャレンジクラブの今後の活動が決まるのよ。資金を稼いで、リッチに活動。これが学園祭のモットーなんだから。」
「・・・そぉーなんですかぁ?」
「私流解釈ではね。フフン。」
 麗子はウィンクして笑うと、ごねるミルクを急かせて、赤ずきんの衣装に着替えさせた。
 他の部活の生徒にまでジロジロ見られ、クスクス笑って通りすぎていくので、ミルクは顔を赤らめてうつむいていたが、
「こーゆー時は堂々としてる方が見る側も納得するもんなんだぜ。」
と、オオカミ王子役の上杉が言うので、ミルクもようやく腹を決めた。
 学園祭が開場となり、お客様が入場し始めた。
 ミルクは、勇気を振り絞って、
「・・ほ・・本格お好み焼きはいかがですかぁー!」
と、呼びかける。
「チッチッチッ。・・赤ずきん姫はあくまで可愛くね。演技の練習と思って、思い切りブリッ子でやって頂戴。」
 麗子の指摘が入り、ミルクは目を眇めて呻ったが、仕方なく、
「・・山芋を擂ってあるのよ。・・いかがかしらぁ?」
と、可愛く歌うような発声で誘う。
 体を左右に回転させて、フレアスカートの襞が広がるようにして呼びかけると、たちまち男子学生やおじ様方が集まってくる。
 いきなり一緒の記念撮影を求めてくる客もいたが、麗子がすかさず、
「記念写真ご希望の方は、午後の演劇『創作赤ずきん』のチケットをご購入下さい。」
と、商魂を燃やす。

「何やってんだぁ?」
 人混みを掻き分けてミルクの側まで来たミツルが、苦笑して言う。
「あ、お兄ちゃん。・・見ての通り・・売り子。」
「プップップッ。かぁーわいいなぁ。」
 ミツルと一緒に来た水瀬、川端、清水、の三人が口々に誉めて笑う。
「・・・ぅぅ・・・笑われてるとこが・・微妙ぉ〜・・・」
 ミルクが拗ねて頬を膨らませるので、麗子が、
「ほぉら、アリスは笑顔、笑顔。」
と言ってから、ミツル達に向かって、
「有栖川君・・とお友達のみなさん。来たからにはお好み焼きを買ってって頂きますからね。」
と、にんまりと笑った。
「麗子。そんなに商魂燃やしてると可愛げがねぇぞ。」
 ミツルが遠慮なく片眉を眇めて言う。
「こんな女に誰がした、よ。中学時代、生徒会で散々絞られて、お陰様でこんなに逞しくなれました。」
 麗子が、ベェッ、と舌を出す。
「アハハッ。そりゃ、有栖川が悪いぜ。」
 生徒会長としての厳しさを知っている水瀬が笑う。
「けど、しっかり者の美人ってのも魅力あるよな。」
と、川端がフォローするように言う。
「アリスちゃんはふわふわ綿菓子みたいな所が可愛いけどな。」
 幼馴染みの清水は、以前からミルクとも顔見知りなので、ミルクにも笑い掛ける。
 ミツルを合わせて、この四人がいると、周囲の空気まで違って見える。
 爽やかな風と光に包まれているようなオーラがあった。
 憎まれ口をきいた麗子も、頬を赤らめてミツルを見ている。
 ・・・うーん・・・この雰囲気は・・・ヤバイ?
 ミルクが会話を弾ませている麗子とミツル達を眺めながら思っていると、
「ミルクさん。」
と、小百合が声を掛けて側に来た。
「まぁ・・ミツル様。お早うございます。お友達の皆様方もご機嫌よろしくて?」
 小百合はまずミツル達に優美に微笑みかけてから、
「ミルクさん、そろそろお支度なさらないと。」
と言った。
「あ、そかそか。ごめん。」
「そう言えば、もう合唱が始まるな。」
「うん。・・じゃぁ、ちょっと行ってきます。」
 ミルクは慌てて麗子や他の部員達に言うと、
「小百合さん。着替えてすぐ行くから、先に体育館に行っててね。」
と、制服のある部室へと走っていった。
 小百合は、
「ミツル様もいらっしゃるのでしょう?・・ご案内致しますわ。」
と、目を輝かせて言う。
「あ・・では、よろしく。・・・麗子、ミルクのクラスの合唱を聴いたら、また来るよ。」
「ええ。待ってるわね。」
 麗子が小さく手を振る。
 その仕草に女の子らしさが滲んでいることに気付いた小百合は、チラッ、と一瞥してから、
「お客様が多くて・・・迷わないでくださいませね。」
と、ミツルの腕に手をかけて引いた。
「お友達の皆様も、どうぞ。」
 ミツルにつかまったまま、小百合が三人に微笑みかける。
 三人は顔を見合わせると、にやにやしながら後に従う。
「おい。顔が弛んでるぞ。」
 ミツルがちょっと振り向いて、三人をひと睨みするが、
「お急ぎになって。」
と、また小百合に腕を引かれ、小さく溜息を吐いた。
 そんな様子を麗子は、ふーん、と眉をそびやかして見送った。

   ミツルとは別に、高藤と学園祭に来た母親は、どうにかミルクのクラスの合唱には間に合った。
 ミツルは高藤に会釈だけして、デジカメを構え直す。
 高藤も穏やかな笑みで会釈を返すと、望遠レンズのついたカメラを構えた。
 他にも客席の前側にはカメラを構えた人達がズラリと並んでいる。
 記者が紛れているかどうかはわからないが、ミルクファンもそこにはかなりいるようだった。
 クラスメートと舞台に上がったミルクは、一斉にレンズを向けられ耳まで赤くしたが、屋台の呼び込みで度胸が座ったせいか、歌うことに集中した。
 こうした合唱はヘタに歌う方が目立つのだ。
 息を合わせ、声を合わせ、懸命に声を出した。
 小百合のピアノ演奏もドラマチックに歌を盛り上げていた。
 優勝したクラスはアンコールで短い歌を歌うことになっている為、全てのクラスが歌い終わるまでは待っていなければならなかった。
 各クラスが歌い終わった後、その場で審査結果が集計され、ほんの一点差で二年のクラスに優勝を持っていかれてしまった。
 小百合は、
「まぁぁ・・・絶対私達のクラスが一番でしたわ。」
と、不服そうだったが、ミツルに、
「俺もそう思うけどね。・・でも、相手は二年だし、小百合君達には来年があるんだから、花を持たせてやったと思えばいいさ。」
と言われ、
「ホホッ。それもそうですわね。」
と、嬉しそうに微笑んだ。
 ミツルに慰めて貰ったことが、相当嬉しかったらしい。
 そして、
「ミツル様は午後もいらっしゃるのでしょう?・・私がずっとご案内致しますわ。」
と、うっとりとした表情で言った。
 ミツルは困惑し、
「あ・・いや。友達と一緒だから適当に見学しますよ。・・君も自分の部活の出し物があるだろう?」
と、辞退しようとしたが、
「私のクラブはアートフラワーですのよ。もう、飾り付けが出来てますし、特に必要な用事はありませんのよ。」
と言われ、返事に窮してしまった。
「まぁ、いいじゃないか。広い学園だし、迷子になるよりはいいさ。」
 水瀬が含み笑いをしながら小百合の応援につく。
「小百合さんはご家族は来られないの?」
 川端がさり気なく聞く。
 小百合は眉を曇らせて、
「忙しさを理由にする人達に、来て頂かなくて結構ですわ。」
と、冷めた口調で答えた。
「・・有栖川。せっかくのご好意だ。受けてやれよ。」
 清水が眉間にシワを寄せて促す。
 ミツルも、気丈さの中に寂しさを隠す小百合が、可哀想に思えてきて、
「そうだな。」
と頷いた。

 ミルクが部室で再び赤ずきんの扮装をして、お好み焼きの屋台に戻ってくると、母親がみんなにケーキを配っていた。
 小百合もミツルの友達も一緒に御馳走になっている。
「あー・・・ミルもぉ!」
 その言い方が駄々っ子そのものだったので、あまりの可愛さに爆笑が起こった。
 周囲にいた客達も事情はよくわからないものの一緒になって笑った。
 ミルクは拗ねて真っ赤な顔になりながら、母親のケーキを頬張った。
「本当に・・・アリス様の周囲には、いつも笑顔の花が咲きますね。」
 高藤は目を細めて、母親に言った。
「・・あら・・?」
 高藤はミルクとはそれほど顔を合わせていないはずだったので、母親が不思議そうに首を傾げた。
「あぁ。・・会長がよく仰るのです。アリス様は、明るい陽射しの南国の花だ、と。・・そこにいてくれるだけで、人々の笑みを誘う、花の妖精のようだ、と。」
「まぁ・・・」
 母親は胸が熱くなって、静かに微笑みながら頷いた。
「母親として、娘をそう言って頂けることは、この上ない喜びですわ。」
「・・・きっと母君譲りなのでしょうね。」
 高藤は小さな声でさり気なく、そっと言い添えた。
 母親は黙ったまま微笑みを深くした。

<52>
「お土産」
§52§「お土産」

 日曜日。
 学園祭、最終日。
 ミツルは剣道の試合で早朝から出掛け、母親も今日は建築デザイナーとの打ち合わせで来られないと言ってた。
 学園祭としては今日がメインなのだろう。
 各クラブの出し物はほとんど午前中に回され、午後には招待した”ちょっと人気のアイドル歌手”の公演があった。
 人手もその分多く、ミルクは赤ずきんの衣装で、一日中材料の用意と販売で忙しくしていた。
 お好み焼きを求める行列は途切れることなく、ミルクと記念写真を撮りたがる客も男性だけでなく女性もいて、疲れても笑顔でいるしかなかった。
「アリス。山芋が足りなくなりそうなの。補充お願いね。」
と、声を掛けた麗子が、
「少し休んできていいわよ。」
と、小声で付け足した。
「いえ、大丈夫です。すぐ、擂ってきますね。」
 ミルクは笑顔で答えると、鍋を抱えて調理室へと急いだ。
 麗子にもミルクが何処か無理をしているように見えたらしい。
 だが、ミルクは忙しくしている方が良かった。
 ・・・何も考えないで済む。
 一番来て欲しい人の姿がないのだ。
 昨夜は電話もなかった。
 余程景山に電話して聞こうと思ったが、どうせ”忙しいのでしょう。”と言われるに決まってる。
 寂しさに心が麻痺しているようで、もうどうでもいいような気さえしてくる。
 それでも考え出すと泣きたくなってしまうので、ミルクは殊更クルクルと独楽のように忙しく動き回っていた。

 午後5時に学園祭は終了となり、慌ただしく片付け作業となる。
 ミルクの迎えの車は6時前には来ていたが、
「先に帰ってもいいわよ?」
と言う麗子の言葉に首を振り、最後まで残って片付けていた。
 7時近くなって校舎の明かりも消え、ようやくアリスは迎えの車の所へ行った。
 警護の男が待ち兼ねたように助手席から降りて、後部座席のドアを開けた。
「アリス様、お疲れ様です。」
「・・ありがとう。」
 ミルクは疲れ切って項垂れたまま小さく答えると、車に乗り込んだ。
 座ってから気が付いた。
 隣りに足があったのだ。
 ハッ、として視線を上げると、そこにマサトの笑顔があった。
「お疲れ。大変だったね。」
 マサトの生の声は電話で聞くよりずっと優しく温かかった。
 ミルクは驚いて声も出ず、じっとマサトを見つめていた。
 ドアが閉められ、車が静かに走り出す。
 それでも、ミルクはただマサトを見つめていた。

 マサトの手がフワッと伸びてきて、ミルクを抱き締めた。
 マサトは目を見開いたままのミルクに頬ずりをして、髪を撫でる。
 温かく力強い腕、逞しい胸。
 ふわりとトワレが香り、頬からマサトの体温が伝わってくる。
 ミルクは張り詰めていた緊張がプッツリと切れたように、マサトの胸に崩れ落ちた。
「・・ミルク・・・寂しい思いをさせて済まなかった。」
 マサトが耳にキスをしながら甘く囁く。
 夢なのか、幻なのか。
 顔を押しつけた胸からは確かな鼓動が聞こえる。
「・・マサト・・・」
 顔を歪めたミルクの目から熱い涙が零れた。
 マサトが顔を被せるようにしてミルクの涙にキスをする。
「何とか学園祭に間に合わせたかったが、飛行機が遅れてしまって・・・」
 ミルクは答えず、顔をスーツのYシャツに押しつけた。
「・・明日は代休で休みらしいな。・・今日はこのまま本宅へ行こう?」
 マサトが髪にキスをしながら言う。
 ミルクは顔をマサトの胸に埋めたまま首を振った。
「大丈夫。ミルクのママには許可を貰ってあるから。」
「・・・ぃゃ・・・」
「ミルク?・・やっと会えたんだぜ?・・今夜はもう離れたくない。」
 ミルクは悲しげな表情で首を振る。
 マサトは怪訝な顔になり、ミルクの顔を上げて覗き込んだ。
「・・どうして?」
 ミルクはマサトの顔を少し見つめてから、また視線を落とす。
「・・あ、約束のお土産・・」
 ポケットから小さな袋をつかみ出し、ミルクの目の前に差し出す。
 透明なセルの袋で、中には折り畳まれた純白のハンカチが入っていた。
 マサトは袋から出して、ミルクに広げて見せる。
「これで良かったんだろ?・・ドイツでようやく見つけたよ。これは70歳の婦人が1ヶ月掛けて刺繍した物だそうだ。細い糸と針で一刺し一刺し刺繍してある・・これのことだろう?」
「・・・ぅん・・・」
 ミルクは手に取って、じっとハンカチを眺めた。
「・・・綺麗・・・ありがとぉ・・・」
 ミルクはハンカチを胸に押し当て、目を閉じた。
「長年刺繍を続けてきて、その技術も評価されて勲章を貰った婦人だそうだ。・・・俺とミルクも、婦人の歩んだ人生の長い道のりに負けないくらい、共に生きていきたいと思って、・・売れないと言うのを頼み込んで譲って貰ったんだ。」
「・・・そぉなんだぁ・・・凄ぉい・・・」
 ミルクはもう一度じっくりとハンカチの刺繍に見入った。
 それからハンカチを広げた手にそっと頬を傾け、刺繍の盛り上がった感触を確かめると、深い溜息を吐き、
「・・ありがとう。・・一生の宝物にする。」
と、小さな声で言った。
 ミルクがハンカチをたたんでセルの袋に戻すのを待って、マサトは再びミルクを抱き締めた。
「・・機嫌・・直して貰えた?」
 ミルクはハンカチに視線を落としたまま、
「・・・ごめんなさい。・・・疲れちゃったの。・・・今夜は帰る。」
と、答えた。
「・・ミルク・・・」
「・・・ごめん…なさい・・・」
 マサトは天を仰いで大きく溜息を吐くと、
「・・わかった。・・家に送ろう。」
と言って、運転手に指示を出した。


 翌月曜日。
 ミツルは普段通り高校へ登校し、代休のミルクはゆっくり目を覚ました。
 それでも今日はマサトと会う約束があったので、怠そうに起き出すと食事をし、身支度を整えた。
 ミルクを迎えにきたマサトは、玄関で母親に挨拶をすると、一度では運びきれないほどのお土産を積み上げた。
 ミルクとは約束でひとつのお土産にしたが、”ミルクの家に”、と理由付けして、色々な物を渡した。
 母親は、驚いたり苦笑したりしながら、
「まぁまぁ、こんなにたくさん・・・ありがとうございます。」
と感謝の言葉を言ってから、一度呼んだもののまだ顔を出さないミルクを、また呼びに行った。
「・・ミルちゃん?・・マサトさん、お待ちよ?」
「・・わかってますぅ。・・・今行くから・・・」
 ミルクは浮かない顔でドライヤーをかけながら答えた。
 玄関に戻った母親が、やきもきしながら当たり障りのない会話をマサトとしている所に、ようやくミルクが顔を出した。
「お早う、ミルク。」
 マサトは優しい笑みを浮かべて、ミルクに声を掛けた。
「・・・お早う。」
 ミルクはマサトと視線を合わせないまま靴を履いて、
「・・・行ってきます。」
と言うと、玄関を出てマサトの車へと勝手に歩いていってしまった。
「行ってらっしゃい。・・まぁ・・どうしたのかしら。申し訳ありません。・・何だか疲れてるようで・・」
 母親は、ミルクの後を追おうとしたマサトに、済まなそうに言った。
「わかってます。・・大丈夫ですよ。」
 マサトは母親にそう言って、ミルクの方へと足早に向かった。

 マンションへ向かう車の中でも、一言も話そうとはしないミルクに、マサトは胸を痛めていた。
 ・・・可哀想なことをした。
 マサトが日本を飛び立った後、ミルクや自宅周辺に取材陣が殺到して大変だったことを、昨夜、高藤の報告で知った。
 中にはストーカーまがいにミルクの後をつけ回し、高校生へ向ける質問とは思えない卑猥なことを聞いてくる記者もいたようだ。
 自分の目が届かない留守中は、ヘタに組織の人間を動かせないと思い、近付かないようにと言っておいたのが、良かったのか、悪かったのか。
 だが、陰険な記者の誘導に引っ掛かってムキになったり怒ったりしても、それをまた記事にされてしまう。
 マサトは、取材合戦が下火になってはいたが、念の為、各新聞社並び雑誌社の社主に報道を控えてくれるようにと頼んだ。
 記者にモラルを問うのは初めから無理な相談なのだ。
 彼等は相手が傷付こうが、読者が面白がって、結果購読部数が増えさえすればいいのだ。
 特ダネと称し、人の裏を暴いて天下を取った気でさえいる。
 それでいて、上からの命令には呆気ないほどに従順だった。
 結局、心が通じない相手は権力でねじ伏せるしかない。
 そして権力にある者は裁判沙汰を嫌う。
 未成年であり、一般の高校生であるミルクの、プライバシーを損なうことは、充分法的被害を訴えることが出来る。
 マサトの社会的地位や知名度は、ある程度取材されても仕方ない部分はあったが、まだ結婚してないミルクまでそれを甘受する必要はないはずだった。
 公人となって初めて、取材に応えればいい。
 それだって取材に応じるかどうかは、取材内容で選ぶことが出来る。
 抵抗出来ない弱い所に漬け込んでくる卑劣なマスコミ。
 自分が日本にいれば、対処手段をすぐに取ってやれたのにと、マサトは悔やんでいた。

 マンションに着いて、部屋に入ったマサトはミルクを優しく抱き締めた。
 けれど、キスをしようとすると下を向いてしまう。
 マサトは思いあぐねて、ミルクを抱き上げると、
「いざ、愛しの姫をさらって逃避行なるぞ。」
と、芝居がかった口調で言い、寝室のドアを足で蹴飛ばして開けると、ベッドにミルクを横たえた。
 マサトが横に並んで寝そべると、ミルクは体を反転させ背中を向けてしまう。
「・・ミルク・・・機嫌直せよ。・・・悪かったと思っているんだ。」
 マサトはミルクの髪を撫でながら背中に語りかける。
 返事がないので、背中から抱き締めようとすると、ミルクは顔を強ばらせ、困ったように泣き出してしまった。
「・・高藤から聞いた。・・・一人の時に辛い思いをさせて、本当に済まなかった。」
 マサトは前に回した腕の方の手で、ミルクの頬を撫でた。
「・・今回は数カ国・・組織関連の国へも出向かなければならなかったんだ。・・それで、どうしても半月はかかるし、ミルクが寂しくないようにと婚約を急いだんだが、・・・それが、かえってミルクを騒動に巻き込むことになってしまって・・・側にいてやれない苦しさを実感したよ。」
「・・・嘘・・・全然、平気な態度でいたじゃん。」
 ようやく口を開いたミルクは、啜り上げながらそう言って、自分の指を噛んだ。
「それは・・実際に今回の騒ぎを聞いたのは帰ってからで・・。いや。・・そこまで注目されると予想しなかった甘さは認める。反省してるよ。」
「・・・それだけじゃないもん。・・・ミル・・すごぉーく寂しかった。」
「俺だって、めちゃめちゃ寂しかったぜ。」
「・・・劇のお話だって・・笑ったくせに・・・」
「・・あれかぁ・・・」
 マサトはミルクのうなじに顔をつけて、甘い匂いを吸い込んだ後、大きく溜息を吐いた。
「・・まさか、ミルクが俺達とダブらせて感じてるって、知らなかったんだよ。・・だいたい話が陳腐過ぎるぜ。・・俺はそのオオカミの王子みてぇに逃げなきゃならねぇドジは踏まねぇし、確かめもしねぇで乳母を疑ったり、まして飛び込んできた軍隊だか何だか知らねぇが、そんな奴等の弾になんか当たったりしねぇぜ。」
「・・・ぅぅ・・だって・・・離れ離れになって寂しい気持ちって・・・ミルには共通する痛みだったんだもん。」
「・・ミルク・・・」
 ミルクは体を丸めて縮こまろうとする。
 マサトはミルクをもっと抱き締めようとミルクの体に乗り掛かる。
「・・ぁ・・いやぁぁ・・・」
 ミルクは泣きながら首を振って嫌がった。
「俺だって寂しかったんだぜ?」
「いやぁ!・・・ミルは・・話すのさえ・・出来なくなった。・・・何か言葉を言えば、泣き出しそうで・・辛い、って・・寂しくてたまらない、って・・帰ってきて、って・・・そう言いそうになって・・・話すことが出来なくなったのに・・・マサトは・・いつも変わらない。・・・いつも・・何でもないみたいに・・普通に話してた。」
「・・なぁ・・・俺にとって仕事は戦いなんだぜ?・・男が戦場でそう簡単に弱音を吐けるかよ?・・簡単に泣いて済めば苦労はないぜ。」
 ミルクは指を強く噛んで顔をしかめる。
「・・噛むなって・・・な?」
 マサトがミルクの指を口から離し、キスをしようとするが、ミルクは更に激しく首を振り、体を捩って嫌がってしまう。
「いやッ!・・・マサトの世界に・・ミルはいないんだ、って思ったの。・・・マサトの側には・・きっと別の女性が・・・」
「バカッ!怒るぞッ!・・俺が他の女に興味を持つと思ってるのか?」
「・・・わかんないもん。・・・マサトがわかんない。・・・わかんないのに・・Hだけするのはいやぁ・・・ぁぁぁ・・・うえぇ〜〜ん・・」
 ミルクはボロボロと涙を流し、声を上げて泣きじゃくった。
「あぁ・・・もぉぉ・・・クソッ!」
 マサトは嫌がるミルクを強引に抱き締めた。
「いやいやいやッ!」
「何もしねぇ!・・こうしてるだけだ。・・・お前が俺を信じてくれるまで・・・納得してくれるまでは何もしねぇって。・・な?」
 ミルクはマサトの腕の震えに気付いて、抵抗を止め、おとなしくなった。
 それでも、横隔膜を痙攣させながら泣きじゃくる。
 時々、息が詰まったように咳き込み、マサトは優しくミルクの背中を撫でて落ち着かせた。
「・・・パパが言ってた。・・・離れるべきじゃない、って。・・・離れたら・・マサトの姿だけじゃなく・・心も見えなくなっちゃう・・・」
「・・そんなもんか?・・・そんなもんじゃねぇだろ?」
「・・・ミル・・・わかんない・・・」
 マサトは眉間にシワを刻んで、グリグリと頭を押しつけてくる。
 ミルクはマサトの熱い息を感じて、唇を噛んだ。
「・・なぁ。・・・ミルクは俺が相手でさえ、わかんないって感じたら、体を重ねられねぇだろ?・・肌と肌を触れ合わせることが怖くなるだろ?」
「・・・ぅん。」
「俺だって、わかんねぇ女の肌になんか触りたくもねぇぜ。・・中には旅先でどんな女かも知れねぇような相手とHする奴もいるけどなぁ・・俺は心がねぇ人形には興味がねぇんだ。・・仮にその場限りの愛とかって嘘を見せつけられたって、俺自身が好きでなきゃ何の意味もねぇ。」
 マサトは苦しそうにミルクを見つめている。
 ミルクは息を震わせ、そっと見つめ返した。
「・・俺の母親は、金で買われたようなものだった。」
「・・・え?」
 ミルクは耳を疑い、瞬きをしてマサトを見つめる。
「・・一度狙いを付けたら、手に入れなければ納得しねぇ親父は、汚ねぇ手を使って母親の両親の会社から屋敷土地といった財産の全てを奪い、逃れようもない状況に追い詰めて、強引に嫁にした。・・深層の令嬢だった母を、散々陵辱し、己の欲望を満たすだけの道具のように扱った。」
 ミルクは思わず身震いをした。
「・・親父は俺の目の前でも、母親を抱いたよ。まるで、女とはこう扱うものだ、と見せつけるようにな。・・・母親は親父の為すがまま、虚ろな感情のない目で悶えよがり声をあげていた。・・ま、少し精神に異常をきたしている所があったから・・もとより息子なんて目に入ることもなかっただろうが・・。・・・正直、吐き気がしたね。」
 マサトは苦笑を洩らしてから、ミルクの頬をそっと撫でた。
「・・心の通わねぇ女に何の感情も欲望も湧かねぇ。言い寄られても胸くそが悪くなるだけだった。・・ミルク・・惚れたのはお前だけだぜ。」
「・・・マサトぉ・・・」
 ミルクは初めて自分からマサトに手を伸ばして抱き締めた。
「・・ミルク・・・愛している。・・・地獄の闇にいる俺に、透明な光を届けてくれるのはお前だけだ。」
 マサトは愛おしそうに頬ずりをする。
「・・離れていても・・この想いが変わることはねぇんだぜ?」
「・・・うん。」
「これほど惚れられる女に出会えるとは思わなかったぜ。」
「・・・ミルもぉ・・・マサトが好きでたまらない。・・・だから・・・」
「わかってる。・・・寂しかったんだよな?」
「・・ぅぅ・・・ごめんなさいぃ・・・」
「寂しい思いをさせた俺が悪かった。・・大抵は一週間くらいだったのが・・組織のゴタゴタもあって長引いちまった。」
「・・・ミル・・・待てなくて・・・我が侭言って・・・」
「ちゃぁーんと待っててくれたじゃねぇか。・・会ったら泣くくらい、ミルクの歳なら当たり前だぜ。・・ミルクはとっても偉い、いい子だぜ。」
 マサトはまだ何かを言おうとしたミルクの口を唇で塞いだ。
 今度はミルクも素直にキスに応えた。
 熱い舌がミルクの舌を捉えて絡みついてくる。
 マサトの熱を感じて、ミルクの体も温かくなるようだった。

 長いキスの後、
「ずっと・・一緒にいような?」
と、マサトが言った。
「うん。、、ずっと、、一緒。」
「一刺し、一刺し、愛を縫いつけ、俺達だけの一枚の絵を描こうな?」
「、、うん。、、、マサトぉ、、、」
 ミルクは自分からマサトに体を擦り付けるようにした。
「ミルク・・・ひとつになろう?」
 マサトはミルクの髪を撫でながら、耳元に囁いた。
 ミルクはゆっくり頷き、マサトの胸に顔を埋めた。
 マサトは優しくゆっくりとミルクの服を脱がしてやった。
 それから、自分も服を脱ぎ捨て、熱い体でミルクを包むように抱いた。
「ぁぁぁ、、、マサトぉぉ、、、」
 ジワァーンと熱が伝わってくる。
 疲れが蓄積されたせいか、寂しさに気力が萎えていたせいか、ずっと体温が上がらず怠かったミルクの体が、溶けるように温かくなっていく。
「・・可哀想に。・・・まるで・・・月明かりに照らされた人形みてぇに冷えきっちまってるじゃねぇか。」
 マサトは熱い息を吹きかけるように体中を舐めていく。
「、、んぁぁ、、、マサトは、、温かぁい、、、」
「・・華奢に白くって・・・月下美人の花みてぇだな・・・」
 ミルクの胸を掌で包んで、ピンクの先端に吸い付く。
「、、ぁん、、、」
「・・夜の月明かりにしか咲けねぇ月下美人。・・・ミルクも・・俺という闇でしか咲けねぇ・・健気な花だぜ。」
「、、ぁぁ、、、ミルは、、マサトの為だけに咲けたら、、幸せなのぉ、、、」
「・・ああ。・・・めいっぱい咲かせてやるぜ。」
 マサトはミルクの足を開き、すでに蜜をたっぷり溢れさせて濡れている花弁に、熱く天を睨んだ蛇をゆっくりと挿入させた。
「あぁぁぁぁぁ、、、マサトの熱い塊ぃぃ、、、」
 ミルクは懐かしさに体を震わせて感激しながら、マサトにしがみついた。
 欲しくて欲しくてたまらなかった熱い蛇。
 恋しくて恋しくて、悶える体を持て余していた夜の記憶が、遠くへと消えていく。
「突いてぇ、、突いてぇ、、、いっぱい突いて、マサトを感じさせてぇ、、、」
 ミルクは自分でも腰をくねらせ、奥へ奥へと誘う。
「いいぜ。・・俺だけしか見えなくなるまで・・俺でいっぱいにしてやるぜッ!」
 マサトは腰を大きく動かし、ミルクの子宮を押し上げるように突き上げ始めた。
「あぁぁ、、あぁん、、、気持ちいいぃ、、、マサトを体いっぱいに感じるぅぅ、、」
 ズブッ、、ズブッ、、ズブッ、、、
 力強く突き上げられる度に大きく仰け反る。
 久し振りに押し広げられる膣襞が悲鳴を上げるように痙攣する。
 下半身に痛みに近い痺れが広がっていく。
「、、ぅぅ、、、ぅぁぁぁ、、、あぁぁん、、、」
 ミルクは目を閉じて、マサトの熱く硬直した蛇の感触を味わう。
 繰り返されるピストン運動。
 ズルズルッ、、、と引かれる度に、魂まで引っ張られそうに感じる。
 押しては引き、引いては寄せる波のよう。
 お互いの息遣いが潮騒のように聞こえる。
 たまらなく腰を震わせ痙攣してしまう。
「あぁ、、ぁぁぁ、、、あぁん、、、トロケるぅぅぅ、、、」
「・・可愛いよ、ミルク。・・・可愛くて、可愛くて、どうしようもねぇぜ。」
 マサトは込み上げる熱い想いを送り込むように腰を打ち付ける。
 ジュブジュブジュブジュブッ、、パシパシッパシパシッ、、、
「ぁん、、ぁん、、ぁぁん、、、ぁぁぁん、、ぁん、、ぁん、、、」
 マサトの熱い想いに押し上げられるように魂が上空へと昇っていく。
 もう言葉もなく、悶えて喘ぐのみ。
 ガクガクガク、、と引き付けたように大きく痙攣を始めたミルクを、マサトはしっかりと抱き締めて、自らも頂点を目指す。
 もうギリギリ限界にきている。
「あぁぁ・・・ミルク・・・いくぜぇぇーッ!」
 バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ、、、
 蜜を飛ばして蛇がエンジン全開に体をうねらせ前後する。
「ああぁぁぁぁ、、、、、ああああああああっっっっっ、、、、、」
「ぐぅぅ・・あぁぁぁ・・・うぅぅぅっっっっ!!」
 ミルクはエクスタシーの陶酔の中、意識を手放した。
 マサトは繋がったままミルクを抱き締め、愛しさを噛みしめていた。

<53>
「溶け合う心」
§53§「溶け合う心」

 ぬくぬくと温かい。
 気持ちのいい微睡みから光を感じて意識を戻したものの、まだ目を開けずに満たされた幸せに浸る。
 お日様の匂いを含んだサラリとした感触の物に包まれている。
 手触りで感じるそれはタオルケットのようだ。
「、、うふっ、、、うふふっ、、、」
 ミルクが小さく笑いを洩らす。
「んー?・・・起きたのかぁ?」
 マサトがミルクの鼻に鼻を擦り付けてくる。
 ミルクは眩しそうにちょっと目を開けて、また、
「、、うふん、、、うふふっ、、、」
と、笑った。
 ミルクはころころと左右に転がってタオルケットを体に巻き付ける。
 すっかりマサトに掛かってた分も巻き上げると嬉しそうに、
「タオルケットぉ、、、気持ちいいねぇ、、、」
と、タオル地に頬ずりをして言った。
「あぁ・・フッ。・・もう、毛布じゃ暑いみたいだからな。」
 全裸に剥き出しになったマサトは、気にすることもなく笑みを浮かべて、ミルクを愛おしそうに見つめている。
「、、そぉ?」
「そぉ・・ってなぁ・・・毛布を何度掛けてやっても暑がって剥いじまうから、タオルケットを出してきてやったんじゃねぇか。」
 マサトは片肘をついて頭を支えながら、苦笑してミルクの鼻をつまむ。
「、、ぁん、、、だってぇ、、、家では剥がないもぉーん、、、」
 マサトの体温が高いので、肌を触れているだけでも温かいせいだろう。
 それがまたミルクには気持ちが良かった。
 大きなベッドを左右に転がっていたミルクは、ベッドの端まで転がって行って落ちそうになり、危うい所でマサトに抱き寄せられた。
「芋虫って言うより、ロールパンだな。・・喰っちまうぞ。」
 マサトは優しく笑って、ミルクの顔にかかった髪を退けてやってから、キスをした。
「、、ん、、、ンッチュッ、、、ッチュゥーッ、、、」
 ミルクは甘えるように音をさせてキスに応える。
 マサトの蛇が音を聞きつけて伸び上がってくるのを、ミルクはじっと眺める。
「、、ふふっ、、、蛇しゃん、、元気いいねぇ、、、」
 手を伸ばそうとして、タオルケットから腕が出せないことに気付いたミルクは、困った顔になりモゾモゾと体を捻る。
 けれど、いくら捻っても肩を揺らせても腕が出せず、
「、、ぅぅ、、、マサトぉ、、、」
と、上目遣いに助けを求める。
 そんな様子を含み笑いをしながら見ていたマサトは、
「クックッ。タオルケットを独り占めするからだぞ。」
と言って取り合わず、体を起こすとクッションを背中に当てて寄り掛かり、サイドテーブルの煙草を取って吸い始めた。
 芋虫状態のミルクは頬を思い切り膨らませた。
「クククッ。そんな顔の幼虫がいたなぁ。・・あれは・・カブト虫か・・・?」
 細く煙りを吐き出して目を細める。
 ミルクは唇を尖らせると、尺取り虫のように体を動かし、マサトの腰辺りで顎を使って這い上がると、伸び上がって様子を眺めている蛇の頭を、カポッ、とくわえた。
 マサトは、フッ、と笑みをこぼし、ミルクの髪を撫でる。
 しばらくミルクが蛇をしゃぶる感触を、煙草と同時に楽しんでいたマサトは、たまらなそうに大きく息を吐いて煙草を灰皿に捨てた。
「はぁァァ・・・その吸い付きっぷりはヒルか?・・クックックッ。」
 そう言って、マサトはようやくミルクが抜け出せなくなっていたタオルケットを解いてやった。
 手が自由になったミルクは、手も添えて赤黒い蛇を無心に扱き上げる。
 蛇はネズミでも丸飲みしたかのように胴体を脹らませ、ドクン、、ドクン、、と体を這う筋を脈打たせている。
 粘った涙のような我慢汁が溢れ出し、ミルクは舌の先で先端のくぼみを抉ったり、縫い込みのような筋にそって舌を擦らせたり、カリの周囲を傘の下まで舌を差し込んで舐め回したりして遊んだ。
「・・・なぁ・・・何か・・・留守の間にヤケに上手くなってねぇか?」
 マサトは気持ち良さとは裏腹に、怪訝な顔をする。
 ミルクは、シュブッ、、シュブリ、、と唇で扱きながら、上目遣いにマサトを見上げ、ちょっと首を傾げる。
「・・・寂しいからって・・・他の男のペニスをくわえてねぇだろうな?」
 ミルクは思い切り眉を寄せて、
「そんなこと、しないもん。」
と答えると、蛇の胴を横からくわえて根元から裏側をなぞった。
「・・・だよなぁ。・・・それはそうだろうが・・・マジに上手過ぎるぞ。」
「、、だって、、、寂しいから、、、」
「・・寂しいから?」
「、、、マサトの蛇を頭に浮かべて、、、どう舐めよっか、とか、、、想像してたんだもん、、、」
「・・はぁーん・・・なるほど。イメージトレーニングね。クククッ。」
 マサトは納得して、笑いながら頷いた。
 それから、ふと思いついたように、にやり、と口の端を上げると、
「・・で・・・オナニーは何回くらいした?」
と聞いた。
「、、ぇ、、、それって、、、男の人がすることでしょう?」
「女だってするだろ?」
「、、、聞いたことないよぉ、、、」
「そりゃ・・普通の友達同士でそんな話題はしねぇだろうが・・雑誌とかにあるんじゃねぇのか?」
「、、、あまり、、そーゆー本見ないもん、、、」
「じゃぁ、何で男のは知ってるんだ?」
「、、中学の頃ねぇ、、男子がアイドルの写真とか交換しながら、、これは2回はイケる、、何て話してた時、友達が、、朝から嫌らしい話しないで、、って言って、、、男子が、、オナニーして悪ぃかよ、、って、、、」
「へぇ・・・」
「その時は意味がよくわからなかったけどぉ、、最近わかったの、、、」
 ミルクは顔を赤らめて、また蛇を口にくわえた。
「・・ふーむ・・・その程度の知識か・・・」
 マサトはつくづく無菌状態できたミルクに感心して、ミツルのガードの固さを感じた。
 あどけない顔でしゃぶるミルクの幼い頬を指先で撫で、
「・・女のオナニーってのはな、自分の指でクリトリスやおまんこを擦って感じる行為を言うんだぜ。」
と説明する。
 ミルクは、ふーん、と言う顔をして、
「、、そーゆーのは、、してない、、、」
と答えると、目を伏せた。
 無意識に自分で触れるという行為に罪悪感を感じるのだろうか。
 ・・まぁ、いい。
 ・・その内、じっくり教えてやろう。
 マサトは、よしよし、と頭を撫でてやると、
「もう、いいぜ。・・お・い・で。」
と、ミルクの顔を上げさせた。

 ベッドに寄り掛かったマサトを、跨いで座る姿勢で挿入し、ひとつに繋がる。
「、、ぁ、、、ぁぁ、、、ん、、、」
 ミルクは甘えてマサトの胸に抱きつく。
 マサトは膝を少し曲げ、両腕でしっかりと抱き包んでやる。
「・・ミルク・・・いい子だ。」
 ・・・俺が咲かせた純白の花。
 ・・繊細で、傷付きやすく、俺の腕の中でしか咲けない可憐な花。
 ・・天使の羽のような月下美人の花。
 マサトは慈しむように優しいキスを繰り返した。
 ・・・どんな深い闇にも染まることのない、羽衣のような純白の花びら。
 ・・月下美人の花を闇が守るように、俺がお前を守ってやる。
「愛している。・・・お前の為なら死んでもいい。」
「、、ぇ、、、そんなの、、、いやぁぁぁ、、、」
 キュゥゥゥーッ、、と膣口が蛇の根元を締め付ける。
「・・クッ・・・バーカ。例えだよ。」
「、、クスン、、、そんな例えは、、やだもん、、、」
「・・だな。・・俺はそう簡単に死んだりしねぇさ。」
「、、ぅぅ、、、絶対、絶対、、、絶対やだからぁ、、、マサトに何かあったら、、ミルも一緒なのぉ、、、」
「ああ。わかってるぜ。・・・逝く時は一緒だ。お前を一人にはしねぇ。」
「、、うん。」
 マサトはミルクを力強く抱き締めて、貪るように唇を重ねた。
 死んでもいい、と思ったのは初めてだった。
 何があろうと生きて勝ち抜いてやる、と決めていたのだ。
 肩を母親に抉られたあの時から・・・。
 ・・だが、死んでもいい、と思った時、母の全てが許せた気がした。
 もういい、と母への憎悪が消えていく。
「、、マサト、、?」
 ミルクの指がマサトの頬を撫でる。
「・・・ん?」
 気付かない内に熱い涙が零れていたようだ。
「ククッ。・・どうかしてるな。・・俺も寂し過ぎたらしい。」
 マサトは自嘲的に笑うと、涙を拭い、それから、
「二人でずっと生きていこうぜ。・・この世に生まれてきたことに感謝し、出会えた喜びを抱き締め、共に楽しく生きていることを謳歌してやろうぜ。」
と、熱い眼差しでミルクを見つめて言った。
 ミルクも胸が熱くなり、目を潤ませて、
「うんッ。」
と、答えると、マサトの首に腕を回して、ギュゥゥッ、と抱き締めた。
 ひとつに繋がった部分も、ギュゥギュゥ、と締め付けてくる。
「あぁぁ・・・それにしても・・・この魔性の花は・・・キツイぜ。」
 マサトは苦笑して、収縮しすぎた膣壁を解すように、ゆっくりと肉襞を擦り始めた。

「、、ぁ、、ぁん、、、ぁぁん、、、」
 抱っこされて、肌を密着させたまま擦られると、心まで気持ち良くなる。
 だから、ミルクは抱っこが一番好きだった。
 前のめりにマサトの肩につかまり、マサトの腹筋の動きに合わせて腰を動かす。
「ぁ、、ぁ、、あぁ、、、ぁ、、」
 あまり大きな動きはなかったが、マサトの存在感と微妙に擦られる襞が気持ちいい。
 ミルクの気持ちを反映してか、肉襞も膣の柔らかいうねりに合わせて微動を続ける。
 時々、ピク、、ピクピクッ、、と痙攣する襞に包まれ、マサトもじっくりと感触を楽しんでいる。
「あぁァ・・・ミルク・・・可愛いぜぇ・・・」
 愛し合う者同士の甘く切ない陶酔の時間。
 愛する心がなければ、この気怠さを含んだ恍惚のひと時は理解出来ないだろう。
 永遠に続けばいいと思うほどに、心も体も溶け合ってひとつになっている。
「・・ミルク・・・俺の膝に寄り掛かってごらん。」
「、、ぁ、、、ぅん、、、こぉ?」
 マサトの立てた膝にゆっくりと体を傾け寄り掛かる。
「そう。・・・足を前に伸ばして・・・」
「、、ぁ、、、あふん、、、」
 マサトの目の前に、繋がった部分からのミルクの姿が全て晒されている。
 マサトはミルクの胸を両手で優しく回すように撫でた。
「、、ぁぁ、、、気持ち、、ぃぃ、、、」
 ミルクは目を閉じて仰け反り、甘い吐息を繰り返す。
「・・とても綺麗だよ。」
「、、はぁぁ、、ぁぁん、、、マサトぉ、、、」
「・・ミルク・・・俺を見て・・・」
「、、うん、、、」
 見つめ合い、指と指を揃えて掌を重ね、それから指を絡め合ってキスをする。
「・・あ・・そうだ。・・・新しいブレスレットをつけないとな。」
 マサトはサイドテーブルに手を伸ばすと、小さな鞣し皮の袋からブレスレットを取り出した。
 何本かまとめて用意してあるようで、皮袋はまだ膨らみがあった。
「、、何の記念日?、、、てゆーか、、、もぉ、、婚約したんだから、、指輪だけでいいのにぃ、、、」
「クックッ。・・そんなに嫌そうに言うな。・・これはいい子でお留守番出来た記念なんだぜ。」
 マサトはミルクの手にキスをしてから、10本目になるブレスレットをつけてやった。
「、、ん、、、ありがとぉ、、、」
 ミルクは煌めくブレスレットの束を、シャランッ、、シャララッ、、と腕を上げ下げして音を鳴らせる。
「、、これ以上豪華になったら、、学校で叱られちゃう、、、」
「・・・そうか?」
 ミルクはちょっと拗ねた顔でコクン、と頷いた。
「なら、次からはアンクレットにしよう。・・靴下を履いちまえばわからないだろ?」
「、、う、、ん、、、」
 ミルクは手首を翳すようにして、揺れて輝くブレスレットを眺めながら、綺麗だからいっかぁ、と納得させた。
 こうなったら麗子の言うように、首長族の女性かインド人の女性を真似て、肌を埋め尽くすまでつけちゃうぞ、と覚悟を決めると、ミルクはにっこり笑った。
 マサトも満足そうに笑みを浮かべて、ミルクを抱き寄せて熱いキスをした。
 繋がったまま放っておかれた蛇が怒ったように、ドクン、、ドクン、、と襞を震わせる。
「、、ぁぁ、、、蛇しゃん、、、熱い、、、」
「ククッ。きっと真っ赤な顔して、悔し泣きしてるかもな。」
 マサトが揶揄して笑い、ウィンクをしてみせた。
 ミルクはクスクス笑って、
「、、じゃぁ、、ミルが撫で撫でしてあげるぅ、、、」
と、腰をくねらせた。
「あァァ・・・もう少し・・・ミルクをこうして眺めていたいけどなぁ・・」
 そう言いながらも、マサトは足を引き寄せると腰を浮かせて、ミルクの膣を擦り始めた。
「、、ぁ、、ぁぁぁ、、、ぁぁん、、、スゴクぅ、、感じるぅ、、、」
 ミルクの肉襞も蛇の胴体を包んで、上へ上へと扱きあげ始める。
「うぅぅ・・・いいぜぇ・・・吸い込まれそうだぜ。」
 マサトはミルクを抱っこしたまま前に倒れ、ミルクの体をベッドに寝かせてやると、抱き締めたまま腰を大きく動かし突き上げた。
「あぁッ、、、ぁん、、、ぁん、、、あぁん、、、」
 ミルクも腰を振って応える。
 苦悶の表情で悶え、甘い喘ぎ声をあげてよがる。
「はぁぁん、、、あふん、、、あぁぁぁ、、、」
 声が次第に高くさえずり出し、腰を大きく振って欲望を剥き出しにする。
 瞼の裏側が眩しくスパークしていて、頭の中が真っ白になってしまう。
「あぁぁぁぁん、、、はぁぁぅぅ、、、あぅ、、あぅ、、、あぁん、、、」
 痺れるような快感が体中を駆け巡る。
 体を大きく反らせ、ぷるぷると痙攣して狂いそうな快感に悶え続ける。
「あぁぁ、、、あぁぁ、、、あぅぅ、、、ぅぅぅ、、、ああぁぁぁ、、、イクゥゥゥーー!」
「くッ・・うぅぅッ・・・はぁぁぁッ・・・イクぜッ・・・ぐぅぅぅゥゥゥッ・・あぁぁッ!」
 燃え尽きた二人は重なり合ったまま、ひとつの結晶となって動きを止め、融合された甘い陶酔に浸った。

 ミルクの痙攣が治まり、意識が戻ってくると、マサトはミルクを抱き上げて浴室へと運び、体中を綺麗に洗い流してやった。
 まだトロンとして火照った顔のミルクは、なすがままに任せていた。
「、、ん、、ねぇ、、、どこか出掛けるの?」
「ああ。・・たまには外で食事しようぜ。」
「えー、、、大丈夫かなぁ、、、」
 ミルクは不安に表情を曇らせる。
「もう、しつこい取材はさせねぇから、安心しろ。・・ま、特ダネ狙いの一匹狼もいるだろうが、俺達にそうそう特ダネなんかねぇだろ?・・ククッ。こーんなにラブラブなんだからな。」
「、、うふっ、、、そうだよね。、、うふふっ、、、」
 ミルクの笑い方がマサトの脇腹辺りをくすぐるように感じて、マサトはウェストのストレッチをするように体を捻った。
「・・おい・・・出掛けようって前に誘惑するなよ。」
「、、、してないのにぃ、、、」
 マサトは片眉を眇め、やれやれ、と首を振る。
 自分だけならまだしも、他の男にも無意識の誘惑をされたらたまらない。
「・・劇で随分、ファンが出来たらしいな。」
「、、、そぉ?」
「ミルクとの記念写真に人が殺到した、って聞いたぞ。」
「あ、、クスクスッ、、あれはねぇ、、麗子さんが作った赤ずきんの衣装があんまり良く出来てたから、それでだよぉ。、、ふふっ、、だってオオカミ王子もかなり人気あったもん。」
「ほぅ・・・」
 劇でも他の男とラブシーンをしたと思うと、相手のオオカミ王子を絞め殺したくなる。
 マサトはフツフツと腸が煮えてくる前に話題を変えた。
「・・あー・・で、食事したら、地下を覗きに行こう。」
「、、地下?、、、あ、あそこかぁ、、、何でぇ?」
「俺の留守中、改築しておくように言っておいたんだ。・・それで、ミルクの部屋にシャワー室が出来たと景山が言ってたからさ。」
「、、、そぉなんだぁ、、、」
 ミルクは何だか照れ臭くて、首筋を赤くした。
「、、そっか、、、ミルミルは元気にしてるかなぁ、、、」
「ミルミル?」
「うん。、、ミルクスネークの名前ぇ。、、ふふふっ、、、」
「・・ミルミルねぇ・・・」
「ミルのミルクスネークだからぁ、、、ミルミルぅ、、、」
「・・こっちには名前付けねぇのか?」
 マサトがそう言って腰を振ったので、ミルクは、
「、、、ぇ、、、いやぁ〜ん、、、クスッ、、クスクスクスッ、、うふっ、、うふふっ、、」
と、笑い出してしまった。
 あんまり体中がこそばゆくなってきて、名無しの蛇が頭をもたげ出したので、マサトは、
「よしッ、洗えたぞッ。」
と言って、ミルクの頭から威勢良くお湯をかけた。
 サッバァーン、、と泡とお湯が飛び散る。
「、、、ケホッ、、、ゴホッ、、、あ〜ん、、、マサトぉ、、、」
「ククッ。あまり長湯してると逆上せちまうぜ。」
 マサトはシャワーで残った泡を流してやると、
「先に上がってろ。」
と、ミルクを浴室から出した。
 これ以上欲望に任せてミルクを抱いてしまったら、出掛けられなくなる。
 ミルクの為にもセーブしなければ、と思うマサトだった。

<54>
「重大ニュース?」
§54§「重大ニュース?」

 薄ピンクの白衣を着たナースが、スリットの入ったタイトスカートを太腿も露わにたくし上げ、回転イスに座った男の膝に座っている。
 やはり白衣を着た男の腕が、ナースの緩められた胸元からこぼれ出ている胸の膨らみをつかんで揉んでいる。
 もう一方の腕は腰に回されリズムを刻む。
 ギッシッ、、ギッシッ、、ギッシッ、、
 イスのバネが軋む。
「、、ハァハァ、、、ぁぁ、、、せ、、ん、、せい、、、」
 ナースは苦悶の表情で首を振る。
 ナースキャップをピンで止めた髪がほつれて、汗ばんだ首筋に貼り付いている。
 ギシッ、、ギシッ、、ギシッ、、ギシッ、、
 軋む音が早くなり、ナースが仰け反って喘ぐ。
「、、ぁぁぁ、、、先生、、、好きぃ、、、あぁん、、、」
 ナースの揃えられた両足がぷるぷると震えている。
「・・じゃぁ・・立って机につかまって。」
 白衣の男は診察しているような口調で言うと、イスを引いて机との間にスペースを作る。
 ナースは指示に従い、机に肘をついてつかまると、尻を後ろに突き出し繋がっていた部分を露出させる。
 赤く綻んだ花弁がヒクヒクと痙攣している。
「、、ぁぁ、、、先生、、、早くぅ、、、」
 ナースの切なそうな声に、イスに座ったまま観察していた男が立ち上がり、そそり立った肉棒を再びナースの赤く熟れた花弁の中心へと押し込んだ。
「ハァァ、、、素敵ぃ、、、ぁぁぁん、、、」
 男はナースの片方の手首を握って後ろに引くと、腰を大きく動かし始めた。
「あぁぁ、、、ぁん、、ぁん、、、」
 手首を引かれて背中が反り返り、ナースの剥き出しになった胸が大きく回転するように揺れている。
 溢れ出す愛液が太腿を伝って足首まで濡らす。
「ハァハァハァ、、、あぁぁぁぁ、、、先生のぉ、、、奥まで当たってぇ、、、凄い、、、」
 ナースは口を大きく開けて、荒い息遣いでよがり声をあげ続ける。
 男の腰を振る速度が増し、少しだけ開いていたズボンが、カチャンッ、、とベルトの金具の音をさせて男の足首まで落ちる。
 男は構わず激しくナースを責めたてる。
 パンッ、、パンッ、、パンッ、、パンッ、、
 クチュッ、、クチュッ、、クチュッ、、
 湿った肌のぶつかり合う音と、こね回される淫靡な音が入り交じる。
「あぁぁぁ、、、凄いッ、、凄いよぉ、、、あぁん、、、イッっちゃいそぉぉ、、、」
 若いナースは男が上司だということも忘れて、腰をくねらせ喘ぎ叫ぶ。
 男の大臀筋が、キュッ、と締まり、小刻みに打ち付け始めた。
「あ、、あ、、あぁ、、、イ、、イ、、イクゥ、、、イクゥゥゥ、、、ああああぁぁぁ、、、」
 男は動きを止め、つかんでいたナースの手首を離してやると、体を引き抜いてティッシュを数枚取り、濡れている場所を拭き取った。
 ナースは解放された手を前に戻すと、やっと机にしがみつき、崩れ落ちそうな体を支えている。
 支えるのがやっとで、しばらく動けずに熱い陶酔の余韻に浸っているようだった。
 白濁液が花弁から泡だって流れ出てきている。
 ドロォーリ、とゆっくり太腿へと伝っていく。
 男はナースをそのままに身支度を整え、イスに座り直した。

 バンッ!!
 勢い良くドアが開かれた。
「本郷ッ!」
 そう呼ばれた男は目を眇めて乱入者を睨み、
「騒々しいな、財前。ノックくらいしろ。」
と、平静な声で言う。
 財前は、ドアを開けたものの、目の前にパックリと開いた仇花を見てしまい、言葉をなくしていた。
「・・由美君。薬の在庫をチェックしてきてくれ。」
「、、ぁ、、はい。、、、先生。」
 ようやく我に返ったナースは、火照った顔を益々赤らめて、コソコソとテイッシュで汚れを拭き取り、スカートを下げると、お辞儀をして診察室を出ていった。
 ナースの後ろ姿を見送った財前は、大きく溜息を吐き、診察台に腰掛けると、
「・・ったく。何人目だ?・・若い子を入れては喰っちまうんだから、呆れるぜ。」
と、眉をひそめて言った。
「たいした数じゃないさ。職場は快適に、意志の疎通も大事な仕事の内だよ。」
 本郷はイスを軽く左右に揺らせて、片頬で笑った。
「孕ませちゃ、覇羅蛇の郷で生ませて・・・もう7人も子供がいるのに、まだ懲りないのか?」
「医師として郷の人口増加に貢献している、と言って欲しいね。」
「よく女同士で喧嘩にならないもんだぜ。」
「一夫多妻制の国だってあるだろう。要は、生活力と愛情だな。」
「・・・フンッ。・・洗脳だろ。」
「何とでも言え。俺は魔郷様のお役に立てればそれでいいんだ。・・それより、財前。慌てて飛び込んで来た用事は何なんだ?・・怪我人がいるなら、こんな無駄話している場合じゃないだろう?」
 話を振られて、腕組みをしていた財前は、ハッ、と思い出したように表情を明るくした。
「そう!それだぜ!」
「だから、何だ?」
「・・なぁ・・・赤ん坊が生まれる場合、どんな贈り物がいいんだ?」
「・・くれるのか?」
「ケッ!誰がお前に・・」
「冗談だ。」
 財前はからかわれていることに気付き、悔しそうに歯ぎしりした。
「・・だったら、もう、この重大ニュースを教えてやらねぇぞ。いいんだな?」
 本郷は、ピクッ、と眉を動かす。
「重大ニュース?」
「ああ。」
 財前は得意げに顎を突き出す。
「・・時は金なりだぞ。勿体ぶらずに、早く言え。」
「チッ。・・・あのなぁ、どうやらアリス様にお子様が出来たらしい。」
「・・えッ?!」
 それまでイスの背にもたれていた本郷が、目を丸くし肘掛けをつかんで身を乗り出した。
「どうだ?・・驚いただろう?」
「・・あ・・ああ。・・・だが、確かなのか?」
「メイドの話では確からしいぞ。・・ボスが育児法とか子育ての本を熱心に読んでいるそうだ。」
 本郷は腕組みをして、顎を手で撫でながら考え込む。
「・・本か・・・」
「他にも色々、ベビー服やオモチャの通販本も見てるらしい。メイドはボスが慌てたように隠したのをチラッと見ただけ、とは言ってるが・・・他に理由が考えられるか?」
「・・うーむ・・・だとしたら、こんなに嬉しいニュースはないな。」
「だろう?・・あのボスに二世が誕生されるんだ。・・俺達の郷も安泰だぜ。」
 本郷は考えながら、うんうん、と頷く。
「確かに、魔郷様とアリス様のお子様なら、素晴らしい素質とお心を持たれるだろう。」
「俺はこのニュースを聞いた時、感激で体が震えたぜ。」
 財前は胸の前で握り拳を作って、ブルブルと震わせながら涙ぐんでいる。
「・・しかし・・・ボスが隠されているなら・・・俺達が騒ぎ立てるのは早計じゃないか?」
「善は急げだろ?・・ああ見えて、ボスは女性には疎い所がおありになるし・・照れておられるのかも・・・」
「・・ふむ。・・アリス様は高校在学中だしなぁ・・・」
「ま・・まさか・・・生まないなんてことはないだろう?」
「それはいけない!・・堕胎はまだまだ危険な領域だ。万一、お子様が産めないお体になられては困る。」
「だろう?・・だから、俺達で盛り立てて、快く産んで頂く環境を作った方がいいだろ?」
「うむ。・・そうだな。」
 本郷は深く頷くと、
「まずは景山参謀に相談しよう。」
と言って、イスから立ち上がった。

 雨が、バシャバシャ、と地面を叩き付けるように降り続けている。
 どうやら、本格的な梅雨に入ったようだ。
 重く垂れ込める黒雲は、蒸し暑さだけではない不快感を持たせるのだろうか。
 ・・と言うより、マサトはミルクが、期末試験の勉強で放課後デートが出来ない、と言ってきたことに、怒るに怒れない苛立ちを感じていたのだが・・。

 マサトは、いつにも増してハードな鍛錬をこなした後、サウナで筋肉を解し、シャワーで汗を流した。
 それから総裁室でいつもの毒蛇エキスワインを味わっていると、ドアをノックして景山が入ってきた。
「恐れ入ります。部下達がボスにご挨拶をしたいと申しておりますが、よろしいでしょうか?」
「・・挨拶?・・改まって何だ?」
「それは皆の口から申し上げるでしょう。」
 景山は妙に嬉しそうな顔で言う。
 マサトはちょっと肩をすくめて、
「別にいいぜ。」
と言うと、煙草を取ってくわえた。
 景山がすかさず火を差し出し、マサトが一回吸って煙りを吐いてから、ドアを開け、
「お許しが出たぞ。」
と、ドアの外に向かった言った。
 すると、シンとしていた廊下が一気に活気付き、ドヤドヤッ、と十数名がなだれ込んで来た。
 しかも皆が皆、手に様々な物を抱えている。
 マサトはしばらく眉を寄せて部下を見回していたが、煙草を灰皿に捨てると溜息を吐いて、
「・・いったい、何の騒ぎだ?」
と言った。
「ボスッ!おめでとうございますッ!」
 口火を切ったのは若松だった。
「・・若松・・・何遊んでんだ?」
「え・・いえ・・・」
 若松はマサトに睨まれ、動揺しながらキョロキョロと視線を動かし、景山と視線が合うと助けを求めるような顔をする。
「ボス。皆、アリス様のご懐妊をお祝いしようと伺ったのです。」
 若松に変わって景山がにこやかに答えた。
「・・・・・あ?」
 マサトはそう言われて、もう一度ゆっくりと見回す。
 皆の手には、ガラガラ、ベビー服、木馬、哺乳瓶セット、手押し車、ベビーカー、等々、いわゆる”赤ちゃんグッズ”なるものが大事そうに抱えられている。
 そして、皆、普段では見られないような笑顔を浮かべている。
 ・・・そーゆー意味か・・・
 マサトは、ズルッ、とソファーに寄り掛かって、呆れたように息を吐き、首を振った。
「私はお祝いに車用のチャイルドシートをご用意させて頂きました。」
 景山は、心得ている、と言いたげな表情で得意げに言って、頭を下げた。
「・・・景山。」
「はい。」
「お前まで一緒に乗っかってどうするよ?」
「は?・・いえ、車には同乗致しませんが・・」
「バーカ。・・・こんなデマに、って意味だ。」
「・・・デマ?」
「「「「「デマァッ??!!」」」」」
 景山に続き、皆が一斉に繰り返す。
 そして、視線が一点に集中する。
「え・・ですが・・・ええ?!」
 視線を浴びせられた財前が、信じられない、とばかりに焦って事情を説明する。
 マサトは、眉間に指を当て目を閉じて聞いていたが、しまいに笑い出していた。
「いくらなんでも・・俺が育児書だって?・・子育て?・・クックックッ。・・・まぁ、その時になれば読むかも知れないが・・・」
「じゃぁ・・メイドが嘘を?」
「・・嘘ってこともねぇか。・・だが、俺が読んでいたのは、教育と躾に関する本だぜ。」
「・・・似ているようで・・・違うとも言い難く・・・何です?・・それは?」
 景山が首を傾げる皆を代表して聞く。
「俺は普通の家庭環境ってものを知らねぇし、俺の中の常識がミルクにはとんでも無い現実だったりする。・・その落差って物を知っとかねぇと、気付かねぇ内に傷つけちまいそうだからな。・・まだ、15歳って言やぁ、教育や躾も途中の段階だし、俺といる時間が長い以上、俺が気を付けてやらなきゃならねぇだろうが。」
 ああ、と皆が納得して頷くが、落胆の溜息が漏れる。
「クックックッ。みんなの気持ちは嬉しいが、子供はもう少し先まで待ってくれ。・・子供が子供を産んでも、幼い心と母親としてあるべき心との板挟みで、本人が一番辛いだろうからな。・・と、本を読んで感じたぜ。それまでは出来てもいい、と思ってたが、高校生活くらい普通にさせてやりたくなった。」
「・・確かに。」
「・・・あ・・・では、ベビー服やオモチャの本というのは?」
 まだ納得出来ない財前が重ねて尋ねる。
「あれかぁ?」
 マサトは苦笑して、気まずそうに眉根を掻いた。
「正式婚約したことで、ミルクのお泊まりも増えるかと・・ベビードールや”大人の”オモチャを眺めてたんだよ。・・チッ、悪いかよ。」
 マサトのふてくされた態度に、プッ、と何処かから笑いを洩らした音が聞こえた。
 マサトは、ムッ、とし、
「お前ぇ等、その辺の芸能レポーターよりタチが悪ぃぜッ!なんで恋人同士の夜のことまで暴露しなきゃならねぇんだッ?」
と、テーブルを軽く蹴り、
「もう、解散だッ!・・その”赤ちゃんグッズ”は郷に寄付するから、その辺に集めとけ。いいな、若松?」
と言うと、煙草を再び吸い始めた。
「はッ。承知しました。」
 若松はすごすごと他の部下達を部屋の外へと促す。
「ボス。・・教育上、”大人の”オモチャはよろしくないでしょう。・・その手の物は、アリス様が成人されてからがよろしいかと思われますが・・・」
 景山が小声で囁く。
「・・うむ。・・そうだろうな。」
 マサトは、煙そうに煙草の煙をくゆらせ、片頬で笑った。

<55>
「激情」
§55§「激情」

 5日間会えなかった土曜日。
 午前中いっぱい甘えて過ごし、お昼は二人で作った素麺を食べた。
 錦糸卵も刻みネギもたっぷり用意して、ゴマとユズを添えて食べる素麺は、火照りの冷めない時でも食欲をそそる。
「んー・・美味ちぃ〜・・梅雨時にはお素麺が美味しいねぇ。」
 タンクトップにショートパンツのインナーを着たミルクが、脹らんだお腹を撫でて言う。
「・・肉が喰いてぇ・・・」
 マサトも同じようなインナーを着て、食後の煙草を吸っている。
「お昼にお肉のメインディッシュは重いよぉ・・」
「ちゃんとタンパク質を摂って筋肉付けないと、夏バテするぞ。」
「筋肉くらい、ありますぅー。」
 ミルクは腕を曲げて、力瘤らしき物を作ってみせる。
「クックックッ。それのどこが筋肉なんだぁ?」
 マサトが力瘤を作ると、筋が浮き上がる。
「・・ぅぅ・・・ないよりはいいじゃん・・・」
 ミルクは拗ねて唇を尖らせる。
 マサトは、クスッ、と笑って、尖った唇にキスをする。
「ま、昼は軽くていいが、夕飯はステーキ庵に行こうぜ。」
「・・分厚くて火が通ってないのは食べれないもん。」
「あそこのビーフシチューならとろける程煮えてるから、ミルクだって食べれるだろ?」
「・・あ・・うん。」
 ミルクが頷くのを、マサトは目を細めて見つめる。
 スッ、と手をミルクの頬に伸ばし、指先で丸みをなぞる。
 ミルクはくすぐったそうに、首をすくめて笑いをこぼす。
 愛しさが込み上げて、また抱きたくなってしまう。
「・・今夜は泊まっていけるんだろ?」
 甘い声で囁くように言う。
 けれど、意に反してミルクは目を丸くする。
「え?・・無理に決まってるじゃん。」
「何でだよ?・・俺達はもう婚約してるんだぞ?」
「だってぇ・・・旅行とか以外は基本的に外泊禁止だもん。もちろん、門限は午後7時のままだしぃ・・」
「・・いい加減、それ、変えろよ。」
 マサトは目を眇めて、煙草の煙を細く吐く。
「お兄ちゃんが、一本のたがが外れて、なし崩し的に生活全般のケジメがなくなるのは、良くない、って。」
 ・・・チッ。クソ兄貴の奴・・・。
「今日だって、来週が試験なのによくデートなんてしてられるな、って睨むんだよぉ。」
「放課後デートを我慢してたんだぜ。週末くらい会えないでどうする?・・気が変になっちまうぜ。」
 マサトは忌々しそうに、煙草を灰皿で乱暴に揉み消した。
「ミルだってぇ・・マサトに会えないと、勉強だってする気にならないもん。・・だから、夜はちゃんと勉強するからいいの、って言ってきたの。」
「・・勉強ってそんなに難しいのか?」
「ぇ・・っとぉ・・・ミルにはぁ・・・」
「ふーむ・・俺は景山が家庭教師も兼ねてたからなぁ。12歳で高卒までの知識は習得したし、どの程度に難しいのか、わからないな。」
「・・マサトみたいな天才にはわからないのぉ。・・プンッ。」
「景山に家庭教師させようか?」
「えー・・・嫌だぁ・・・」
「ククッ。そう嫌うな。あれで、けっこう人情家なんだぜ。」
「嫌いじゃないけどぉ・・だって、お仕事大変そうだしぃ・・あんまりおバカなのがわかると恥ずかしいもん。」
「なら、俺が教えようか?・・今度教科書持って来いよ。」
「やだぁ。・・マサトに会う時くらい、学校のことは忘れて甘えたいもん。」
「・・ったく、面倒臭ぇなぁ。・・だったら、勉強なんて適当でいいじゃねぇか。」
「だってぇ・・・ミルが赤点取ったら、笑われるのはミルよりマサトの方だって、お兄ちゃんが言うんだもん。」
 ・・・また、兄貴かよッ。
 マサトは溜息を吐いた。
「俺は別に構わねぇけどな。」
「マサトはそうでも、もし、マサトのフィアンセは学校の成績が赤点ばかりらしい、って噂になったら、ロリータ趣味だけで婚約者を選んだ男、って見られちゃうってぇ・・・」
「俺はロリコンじゃねぇッ!」
 マサトは眉間にシワを寄せて、テーブルを、バンッ!と叩いた。
「・・ぅ・・だからぁ・・・ミルがちゃんとしないと、そう見ちゃう人もいるから、これまで以上に気を付けて、一人前のレディーに見て貰えるように振る舞え、って。見せ掛けだけじゃなく、ちゃんと中身のあるレディーになるよう努力するのも、マサトへの愛情だろう、って。」
 マサトはコメカミを指でマッサージしながら、
「・・・兄貴の言い分もわからないじゃないが・・・」
と、面白くなさそうに言った。
 ・・・言い分としては、正論だろう。
 ・・だが、未だにミルクを管理しているのが、ミツルだというのが気に食わねぇ。
 ・・ミツルの奴も躾本でも読んでやがるのか?
「チッ。・・相変わらず、親父ぶりやがって・・面白くねぇ。」
「クスッ。焼き餅?・・キャハハハッ・・マサト、ムキになると子供っぽいー。くふふふっ・・可ぁ愛いー。」
「・・・あのなぁ・・・」
「なぁに?」
「28にもなる男を可愛いなんて言うな。相手によっちゃ、バカにされてると思うぞ。」
「・・ぇ・・・ぁ・・・ごめんなさい。」
 ミルクは、ドキッ、として笑いを消すと、指をくわえて上目遣いにマサトを見つめた。
 マサトは苦笑して、ミルクの腕をつかんで引き寄せると、
「可愛い、ってのは、ミルクみてぇなのを言うんだぜ。」
と言って、唇を重ねた。

 ゆっくりと舌を絡ませ、歯茎まで舌先で舐め回す。
 サラリとしたサテンのタンクトップの上から、ツンと突起した乳首をつまみ、グリグリと捏ねる。
「、、ぁ、、ん、、、マサトぉ、、、んふっ、、、ごめんね、、、」
「・・ミルク・・愛してるぜ。・・・俺だってお前のことは考えているんだ。」
「、、うん、、」
「・・なのに・・・兄貴のことばかり言われたら・・・情けねぇぜ。」
「、、ごめん、、、ぁ、、ぁん、、、」
 乳首をキツク抓られ、ミルクは思わず腰を浮かせる。
 マサトは、ミルクの顎のラインに沿ってキスをし、耳たぶをしゃぶって、カリッ、と噛む。
「んッ、、、ぁぁ、、、」
 唇を離すと、耳たぶに血が滲んでいた。
 マサトはその血を舌先で舐め、更に首筋から肩へとキスをしていく。
 そして首の付け根をキツク吸う。
「ぁぁぁッ、、、ぁん、、、マサトぉ、、、」
 ミルクは腰を浮かせたまま、苦悶に眉を寄せ、顔を仰け反らせる。
「、、ぁ、、ぁぁ、、、許してぇ、、、」
 マサトはまだ同じ所を吸い続けている。
 チリチリ、と焼け付くような痛みが、何故か股間を熱くする。
 まだ、愛し合った熱の残っている秘部が、再び疼き始める。
「ぁぁぁ、、、ん、、、ん、、、」
 乳首もキツク捻られ続けている。
 痛みが走るのと同時に、言いようのない快感も走る。
 ミルクは腰をわずかにくねらせ、ドキドキする興奮に息を荒くしていた。
 ようやく離したマサトの唇は、血を吸ったように赤くなっていた。
「お前は俺のもんだぜ。」
 マサトは妖しいほどに目を熱く滾らせ、赤い唇を舌なめずりした。
「、、うん。、、ミルクはマサトの物ぉ、、、」
 ミルクはたまらず、マサトの短パンを盛り上げている硬直した蛇を、柔らかい生地の上からさする。
「・・まだ、お預けだ。」
 マサトはそう言ってミルクの手を引き離すと、ミルクをソファーに座らせ、マサト自身はその前に胡座をかいて座る。
 ミルクは不安そうに首を傾げる。

「ミルクがどれだけ俺の言うことを聞けるか、テストしよう。」
「、、ぇ、、、テストぉ?」
「俺が”合格”と言うまでは、嫌とかダメとか、逆らう言葉は禁止する。・・いいな?」
「、、ぅ、、ん、、、」
「返事は、”はい。”がいいな。」
「、、ぅぅ、、、はぃ、、、」
 いつもと違うマサトに戸惑いながら、ミルクは小さく頷いた。
「ちゃんと言われた通り出来なかったら、シッペをするぜ。」
 マサトはそう言って、揃えた二本指に息を吹きかけ、ニヤリと笑みを浮かべた。
 ミルクは泣きそうになって、生唾を飲み込んだ。
「泣いたら、そこでやめる。”合格”もなしだ。・・ん?」
「、、はぃ。」
 ミルクは唇を噛んで、覚悟を決めるように頷いた。
「よしよし。・・じゃぁ、早速テストを開始する。・・服を脱いで裸になれ。」
「はぃ、、、」
 ミルクはもぞもぞと座ったまま、タンクトップとショートパンツを脱いでいく。
 全裸になって、膝を揃えた足に手を重ねて置く。
「次。・・両膝を開く。」
「、、ぇ、、、」
「はい、だろ?」
「、、ぁ、、、はぃ、、、」
 ミルクはゆっくりと膝を開いた。
 両手は間に置いて、股間が見えないようにしている。
「次。・・両方の手で胸を撫で回す。」
「、、、ミルが、、、自分で?」
「そう。自分で愛撫してやるんだ。」
 ミルクはちょっと躊躇ったが、言われた通りに両手で胸をつかんで揉み始めた。
「時々乳首をつまんで、ちゃんと感じるようにしろ。」
「、、はぃ、、、ぁ、、、ぁん、、、」
 ミルクはマサトの見守る目の前で、胸の愛撫をする。
 膣が反応して、ヒクヒクと痙攣してしまう。
「乳首を強くつまんで、前に引っ張る。」
「ぁぁ、、ん、、、はぃ、、、ぁぁぁ、、、ん、んん、、、ハァハァ、、、」
 ミルクは目を閉じて眉を寄せた。
 恥ずかしさで全身が熱くなり、痛みが膣を疼かせる。
「ククッ。・・感じるか?」
「、、はぃ、、、感じます、、、ん、、ンック、、、」
「では、感じているかを見せろ。」
「、、ぇ、、?」
 ミルクは意味がわからず、困惑顔で目を潤ませる。
「膝を開いたまま、両足をソファーに上げるんだ。」
「、、、ぁ、、、」
 ミルクは何となくわかってきたが、躊躇していた。
「カエルのように膝を曲げろ、と言ってるのがわからないのか?」
「、、ぅぅ、、、わかりますぅ、、、」
「だったら、早くしろ。」
「、、ぅぅぅ、、、はぃ、、、」
 ミルクの口がヘの字になる。
 それでも泣くまいと我慢して、足を片方ずつソファーの上にあげていく。
「膝をもっと開いて。」
「、、、ぁぃ、、、」
 ミルクはもう、はっきりとした返事も出来ないほど、恥ずかしさに顔を真っ赤にしていた。
 ソファーの上に大きく開かれた両足が微かに震えている。
 剥き出しになった股間は、愛された痕の残る赤味を帯びた花びらを綻ばせている。
 それでも胸への愛撫で、再び蜜に濡れて艶やかだった。
「お尻を前にずらせて、もっと俺に見せろ。」
「、、、ぁぃ、、、」
 ミルクはソファーに背中をもたれかけ、ヒクつく膣口を晒して見せる。
「クリトリスもよく見えるように、自分の指で開いて見せろ。」
「、、ぅぅ、、、」
「返事は?」
「、、、ぁ、ぃ、、、」
 ミルクは両手の人差し指と中指を使って、割れ目を大きく左右に開かせた。
 パシャッ!
 フラッシュが光り、ミルクは顔を反らせる。
 マサトがいつも側に用意しているデジカメで、おまんこ写真を撮ったらしい。
「、、マサトぉ、、、」
 ミルクが少し抗議するように名前を呼ぶ。
「他の誰に見せるわけじゃねぇ。会えない夜に、電話で話ながらこの写真を眺めたら、蛇も少しは慰められるだろうぜ。クククッ。」
「、、ぅぅぅ、、、マサトのエッチィ、、、」
「バーカ。Hじゃなきゃ、男じゃねぇぜ。」
 マサトは片頬で笑って、煙草に火を点けた。
「次。・・片手はオッパイを揉んで、片手でクリトリスを擦れ。」
「、、、それって、、、オナニー?」
「そう。・・ちゃんと覚えてるじゃねぇか。」
 マサトが目を細め、煙草の煙を吐いた。
 ミルクは泣きたくなって唇を震わせたが、クッ、と唇を噛んで、命令に従うことにした。
 ・・マサトの望むことなら、どんなに恥ずかしくたって出来るもん。
 ミルクはそう心の中で言って、自分を勇気づけた。
「、、ぁ、、、ぁぁ、、、あふっ、、、」
「・・もっと、強く。」
「、、ぁぃ、、、ぁぁぁ、、、ぁぁん、、、ハァ、、、」
 グリグリ、と指を回転させながら擦る内に、快感が込み上げてきて、愛液をソファーにまで垂らしながら喘ぎ声をあげる。
 乳首をつまむ指先にも自然と力が入り、一緒にグリグリと指を動かして快感を貪る。
「ぁぁぁぁ、、、ぁぁん、、、ぁぁぁ、、、感じちゃぅぅ、、、」
「・・あぁ・・・それが女のオナニーなんだぜ。」
 マサトは煙草の巻紙が唇に貼り付きそうになり、乾いた唇を舐めて唾を飲み込んだ。
 マサトからも熱い息がこぼれる。
「今度は花弁の襞を擦ってやれ。」
「ぁふん、、、ぁぃ、、、」
「・・っと、俺が許可するまで、膣に指を入れるなよ。」
「、、ん、、、」
 ミルクは頷いて、中指と薬指を揃え、花弁をなぞるように擦り始めた。
 もう膣の疼きは指先に伝わるほどにヒクついている。
 指を入れて掻き回したくなる欲望が、沸々と湧いてくる。
「ぁぁぁ、、、ぁぁぁぁ、、、ぁぁぁん、、、マサトぉ、、、」
 マサトは指先の根元まで煙草が短くなっていることに気付き、灰皿に捨てた。
「・・まだだ。・・・花弁を開いて、膣の中が見えるようにしろ。」
「、、ぁぃ、、、」
 ミルクの中の羞恥心が、快感に取り憑いた魔物に押しやられてしまったようだ。
 ミルクは躊躇いもなく両方の指を添えて、赤く早熟の膣口を開いて見せる。
 膣がヒクヒクと収縮を繰り返して、マサトの蛇を欲しがっているようだった。
 マサトは熱に浮かされたように熱く潤んだ目でじっと見つめた。
 何度も唾を飲み込み、顔が前に引き寄せられていく。
 溢れてくる蜜を啜りたい欲望に駆られる思いを、グッ、押さえ込み、また、
 パシャッ!
 と、撮影する。
「じゃぁ、擦っていいぞ。」
「、、ぁぃ、、、」
 愛液に濡れた指で花弁に添って擦る。
 が、下から上へと擦る時、指先がわずかに花弁の奥へとめり込む。
 ビシッ!
「あッ、、、ぁぁ、、、」
 白い太腿が二本の指の形がくっきりと赤く浮かび上がるほど、したたかに打ち据えられた。
「誰が中に入れていい、と言った?」
「、、ぁぅぅ、、、ごめんなさぃぃ、、、」
「いいか?・・ミルクのおまんこは俺のものだ。」
「ぁぃ、、、」
「俺が許可しない限り、ミルクでも触れることは許さない。・・いいな?」
「、、ぁぃ、、、」
「一人の時オナニーしたくなっても、俺の許可なくすることは禁止する。」
「ぁぃ、、、わかりました、、、」
 ミルクは鼻を赤くしながら頷いた。
 マサトは満足そうに微笑み、
「いい子だ。・・それじゃ、指・・一本だけ入れていい。」
「、、ぁぃ、、」
 ミルクは甘い吐息をついて、中指をそっと蜜壺へと侵入させた。
「ぁぁぁ、、、ぁぁ、、、温かぁーい、、、」
「・・そうか。自分で触るのは初めてだったな。・・どうだ、感触は?」
「、、、ぐにょぐにょ、、してるぅ、、、」
「クスッ。それが襞ってんだぜ。」
「ん、、、ぁぁぁ、、、なんか、、、ザラつく?」
 ミルクは中指を奥まで入れて、中を探るように擦る。
「襞が細かいからな。・・それがまた気持ちいいんだぜ。」
「そぉ、、、ぁぁぁん、、、あ、、、ぁぁぁ、、、ぁぁん、、んん、、、」
「・・どうした?」
「、、指ぃ、、、締め付けられるぅ、、、」
「・・・おいおい・・・」
「あぁぁん、、、どぉしよぉぉ、、、」
 ミルクが開いていた膝を閉じて体に引き寄せる。
「こらッ。まだ、閉じていい、と言ってねぇぞッ。」
「、、、ぁぁん、、、だってぇ、、、」
 ミルクは中指を膣に差し込んだまま、手首を太腿に挟まれ、自分でもどうしていいか、わからない状態に陥っていた。
「、、くふん、、、マサトぉ、、、ぁぁぁぅ、、、」
「・・しょーがねぇなぁ・・」
 マサトは苦笑しながら立ち上がると、ソファーに座ってミルクを抱き締めてやる。
 キスをしながら足をゆっくり開かせ、手を引き抜いてやり、変わりに自分の指で蜜壺を掻き回してやる。
「あぁぁ、、、ぁぁぁん、、、ぁぁ、、やっぱり、、マサトの指が好きぃぃ、、、」
「クックッ。当然だろ。・・そうでなきゃ困るぜ。」
「、、ん、、、ぁぁん、、、んぁ、、、あふっ、、、マサトぉ、、、ミル、、、失格ぅ?」
「・・・んー・・・半分だけ”合格”にしておこう。」
「、、半分、、、ぅん、、、ありがとぉ、、、」
「ただし・・・言い付けを破ったお仕置きはするぞ?」
「、、、ぁぃ、、、」
 ミルクは微かに、プルッ、と震えたが、マサトの口を求めて首を伸ばし、自分から唇を重ねた。

 ビシッ!
「あぁッ、、、ぁぁぅぅ、、、」
 ビシッ!
「あッぁぁ、、、ぅぅ、、、ぁぁぁ、、、」
 ミルクは、ソファーに上半身を倒し、絨毯に膝を着いて、お尻を突き出している。
 突き出したお尻には、マサトの股間が重なり、蜜壺に蛇が突き刺さっている。
「ぁぁぅぅ、、、ごめんなさぁいぃぃ、、、」
 ミルクが腰をくねらせる。
 苦悶に歪んだ目から、一筋の涙が伝う。
「・・泣くなら泣いていいぜ。・・初めてのオナニーが出来た御褒美だ。」
「、、ぅん、、、くふん、、、」
 ミルクは許された途端に、ボロボロと涙を溢れさせた。
 マサトは腰を動かして、蛇で膣壁を擦ってやり、叩かれた痛みを緩和してやる。
 ピリピリするお尻の痛みと、膣を擦られる甘い疼きに、目眩のような快感を覚え、泣くのさえ気持ちが良かった。
「ぁぁぁ、、、マサトぉ、、、愛してるぅぅ、、、」
「よしよし。・・いい子だ。・・俺のミルク。」
 グッチュッ、、グッチュッ、、グッチュッ、、、
 愛液でぐっしょり濡れた膣は、いつもに増して淫靡な音がする。
「あぁぁぁん、、、ぁぁぁ、、、んん、、、」
「どうする?・・・もっとお仕置きされたい?」
「、、、ぁぃ、、、」
「なら、ちゃんと頼まなきゃな?」
「ぁぃ、、、お仕置きしてくだしゃいぃ、、、お願いしますぅ、、、」
「・・・よしよし。・・それでいい。」
 マサトはすでに真っ赤になっているミルクの尻を両手で撫で回してやる。
 それから、また、人差し指と中指を揃え、
 ビシッ!
 と叩く。
「あぁッ、、、くふん、、、ぁぅぅぅ、、、」
 ビクン、、ビクン、、と膣壁が大きく痙攣して、マサトの固い蛇竿を締め付けてくる。
 マサトはまた腰を動かし、緊張を解してやる。
 ビシッ!
「あぅッ、、、ぁぁぁん、、、ぅぅぅ、、、ぁぁぁ、、、」
 ビシッ!
「くッ、、、ぅぅ、、、あぁぁぁぁ、、、痛いぃぃ、、、グフン、、、」
 ビシッ!
「あぁッ、、、痛いよぉぉ、、、んん、、、ぁぁぁん、、、」
 ミルクは体を震わせ、腰をくねらせて、よがり泣く。
 叩かれることを嫌がる素振りはない。
 むしろ、叩かれる度に恍惚とした表情になっていく。
 ・・・Mの素質があったのか・・・
 マサトは愛おしそうに赤くなった尻を撫でた。
「・・・お仕置きはここまでにしよう。」
「、、、ぁぃ、、、」
 ミルクは大きく息を吐いた。
 マサトはミルクを背中から抱き包んで、髪に優しく頬ずりをする。
「愛しているよ。・・俺のミルク。」
「、、、ぅん。、、、ミルもぉ、、、」
 肩越しにキスを交わし、マサトはミルクの頬の涙を掌で拭ってやった。
 それから、激しく腰を振り、思い切り子宮を突き上げ、ミルクがエクスタシーの中で気絶するまで抱き続けた。

 気絶したまま眠るミルクを見つめながら、マサトは自分の激情を押さえなければ、と言い聞かせていた。
 ミルクをマゾに仕立てるつもりはない。
 ほんの少し、お仕置きの効果があればいい。
 マゾとなって体を壊す女を何人も見てきているマサトは、適度な痛みだけを効果的に使うだけに留めると決めていた。
 ミルクの肌を傷つけるなんてとんでも無い。
 そんな真似は他の誰であっても、自分自身でさえ許すことが出来ない。
 ・・キスマーク程度なら・・許容範囲だが・・・。
 激しすぎる愛情でミルクを壊してしまわないように、大事に大事に、そっと包むように愛していこう。
 マサトはミルクの足元に平伏し、足の指一本一本にキスをした後、金のアンクレットを足首につけてやった。
 ・・・オナニーが出来た御褒美だよ。
 そっと心で呟き、優しい笑みを浮かべると、マサトもミルクに添って横になり、起こさないように腕枕をしてやった。