ギャルズタウンのお好きな街にあなたのサイトの看板を出せます。 ギャルズタウンをご利用いただいているレジデントの皆様に参加していただきたいです。 21000人以上の皆様にご利用していただいている無料サービスです。 ギャルズタウンのヘルプ委員、メイヤー、レジデントの皆さんが真心を込めて作ってくれたヘルプページです。 ギャルズタウンの案内ページです。 商用サイトを運営なさっている方のための相談・提案サービスです。
ギャルズタウンの総合トップページへ!
Click here to visit our sponsor



S





<61>〜<65>





<61>
「火照り」
§61§「火照り」

 チャレンジクラブは”遊ぶ時も真剣に真面目に大胆に!”をモットーとしているので、定番のビーチバレーとスイカ割りだけでは満足しなかった。
 女子はこの日の為に昼休み練習を重ねていたパラパラを、男子部員達への感謝として総勢5人で披露し、男子もまた練習した組体操を、8名全員で力を合わせショーアップして見せた。
 それは周囲に見物人が集まるほど好評で、麗子は満足そうに笑っていた。
 それにしても、何かと目立ってしまうことの多いクラブである。
 やっと集まっていた人達が捌けて、男子達が再び買い出しに駆り出されていっていた時、ミルクは、
「麗子さんの勇気が羨ましいです。」
と言った。
 すると、麗子が爆笑し、一頻り笑ってから、
「アリスに言われちゃうと何か変な気分かもね。」
と答えた。
「え?・・・どうしてですかぁ?」
「だって、前にも言ったけどぉ、私がこうなったのは有栖川君の影響だもの。」
「・・・お兄ちゃんの・・・」
「そう。中学で生徒会が一緒だった時にね。」
「お兄ちゃん、麗子さんにも厳しかったんですかぁ?」
「厳しいって言うより、当然のことを言ってただけなんだけどね。」
「・・ぅぅぅ・・・そうでしょうけどぉ・・・」
 ミルクは膝を胸に引き寄せて両腕を乗せると、顔半分を隠すようにして呻いた。
 麗子はクスクス笑って、
「当時は私もムカついたり、反発したりしたものよ。・・でも・・今でも有栖川君の言ってくれた言葉が、迷った時の励みになってるの。」
と、懐かしそうに水平線に視線を向けて言った。
 ミルクは腕に頬を乗せて、見上げるように麗子を見つめた。
「やりたいこと、言いたいこと、どんどんやろうぜ!どんどん尖ってぶつかっていこう!・・魂の殻たる心を、今から小さくまとめたってつまらないぜ。小さいまま固めちまったらそれまでだ。どんどん尖って大きなイガイガになれば、尖った角がぶつかり砕け削られていっても、その分だけ心の大きい大人になれるだろ?・・・ってね。」
 ミルクは目を丸くして瞬きを繰り返していた。
 息を吸ったまま吐くのを忘れていて、苦しくなって、フゥッ、と息を吐くと、
「・・すごい・・・」
とだけ呟いた。
「フフッ。そうよねぇ。・・初めてそれを聞いた時は、尖ってぶつかったら痛いじゃない、とかって思ったりもしたけど。・・香蘭学園に高校から入って、下からそのまま上がってくる人達の中で、どんどん気持ちが委縮していっね、・・何か言おうとしても言えなくなって、気が付くと人気のない所で暗くなってる自分を見た時、フッ、と思い出したのよ。・・有栖川君の言葉。それで、ヨォーッシッ!尖ってやれぇーッ!・・って、このクラブを作ったの。」
 麗子は、そこで豪快に、アハハハッ、と笑った。
「・・ハァァ・・・そうだったんですかぁ・・・」
 ミルクは圧倒されて、溜息を吐いた。
 麗子も、フゥゥッ、と息を吐き、深呼吸をすると足元に視線を落とした。
「ほんっと・・・凄い生徒会長だったわ。」
 そう言った麗子の目が、潤んでいるように見えた。
「・・・麗子さん・・・お兄ちゃんのこと、好き?」
「ん?・・もちろん好きよ。・・・え?・・あ・・LikeじゃなくLoveの方?」
 ミルクは恥ずかしくなって小さく頷いた。
 麗子は一瞬言葉に詰まり、
「・・・憧れ・・・かな。みんな、有栖川君が好きだもの。その中の一人っていうだけよ。」
と、答えた。
「・・そーなんだぁ・・・じゃぁ、麗子さんの好きな人って、上杉先輩ですか?」
 麗子は、プッ、と吹き出し、ミルクの肩を、バシバシバシッ、と叩いて、
「この性格で年下と付き合ったら、女王様になっちゃうわよ。」
と言って、また豪快に笑った。
 アタタタッ・・・と前のめりになりながら、ミルクもつられて笑った。

 朝、海へ来る時は、駅で待ち合わせて一緒の電車で来たが、帰りは遅くなって危険だからと、カラオケの時同様に数件の家で迎えの車を寄越していた。
 ミルクはいつものロールスロイスが来てたので、皆に別れを言って、ボディーガードと車に乗り込んだ。
 マサトが乗っているかと思ったが、いなかったので、ミルクは少しガッカリして夕日に赤く染まった海を眺めていた。
 けれど、しばらく走った先にあるレストランに、予告もなしに車が停まり、スーツを着たマサトが出迎えてくれた。
「マサトッ!」
 ミルクは車から飛び出すようにして、マサトに抱きついた。
 マサトの逞しい腕がミルクをすっぽりと包み込んでくれる。
 通りから見える駐車場だったが、二人は自然の流れのままに唇を重ね合わせていた。
 お互いに見える所に相手を意識しながら、近付くこともままならないもどかしさに、心を焦がしていたのだ。
 やっとお互いを腕の中に確認し合えた時、想いを押さえることは出来なかった。
 昼の熱気がまだこもっている熱い体が、絡め合う舌の甘さにとろけてしまいそうだった。
「、、ぁぁ、、、マサトぉ、、、寂しかったぁ、、、」
 ようやく唇を離した時、ミルクは立っていられないほどに感じてしまっていた。
 うっとりと反らした頭をマサトの胸に戻して、顔をスリスリしようとしたミルクは、
「、、ぁぅッ、、、ピリピリするぅ、、、」
と、頬を押さえた。
「あーぁ・・だから帽子をかぶれ、って再三注意させたのに。・・聞かねぇからだぞ。」
「、、だってぇ、、、風で飛んじゃうんだもん。、、、赤い?」
「それほど真っ赤じゃねぇが、多少赤くなってテカってるぜ。ククッ。」
 マサトはピンクにそまったゆで卵をイメージして、
「ま、半熟ってとこか。クククッ。」
と苦笑した。
「ぁぁん、、、ローションでもっと冷やさなきゃ。」
「後でよく効く火傷の薬を塗ってやるよ。日焼けだって火傷の一種だからな。」
「、、うん、、、」
 ミルクは擦らないように気を付けて、マサトの胸に顔を押しつけた。
 マサトはミルクの髪にキスをしてから、
「この様子じゃ、今夜は痛がって、あまりハードには抱けねぇだろうな。」
と、少し残念そうに言った。
「、、、え、、、今夜って?」
「この時間じゃ、帰っても遅くなるだろ?・・つーか・・こんなに焦らされて、帰せるかよッ!」
 マサトは最後には怒り出していた。
 ミルクは、ウフッ、と微笑むと、
「、、、ミルもぉ、、、今夜はずーっと、、一緒がいい、、、」
と、甘えた声で言って、ギュッ、としがみついた。
「・・ミルク・・・俺のミルク・・・」
 マサトは髪や額にキスを繰り返し、切なく祈るような声で囁いた。

 ミルクがマサトの所に泊まれるように、母親にはもう許可を貰っていたらしい。
 車を停めたレストランは海水浴帰りの客達で混み合っていたが、席を予約してあってすぐに座れた。
 予約席は、半分ほどの仕切りがテーブルの脇にあって、座っていると他の客とこちら側が見えないようになっていたので、スーツに見合うような服を着ていなかったミルクも、気にせずリラックスすることが出来た。
 伊勢エビの活き作りにホタテのカルパッチョ、そしてアワビステーキとフカヒレスープ、シーフードが盛り沢山に出される。
「スッゴイ豪華ぁ・・・食べきれないよぉ・・・」
「食べられる物だけつまめばいい。」
 マサトは冷やした白ワインを水のように飲みながら、ミルクをずっと見つめている。
 ミルクも料理に向けるよりマサトを見つめる時間の方が長い。
 見つめられるだけ、そして見つめるだけで、布一枚隔てた奥が熱く潤んで疼いてしまう。
 勝手にヒクつく花唇に思わず目を閉じて熱い吐息を洩らしてしまい、いけない、と目を開けた時、マサトの熱い眼差しと視線が絡み合う。
 頬が日焼けだけではない火照りに赤く染まっている。
 触れずに見つめ合うだけなのに、こんなにも全身で愛しているのだと感じる。
「、、マサトも食べてぇ、、、」
 あんまり見つめられるので、ミルクが拗ねたように言うと、
「・・美食家なものでね。・・・甘い蜜の滴る花を食したい。」
と、乾杯の仕草でグラスを軽く上げ、それから、クスッ、と笑いを洩らした。
 ミルクは、ぁん、、と声に出さずに言って軽く睨んだ。
 けれど、睨んだつもりが、口元が綻んでしまい、何とも妖艶な表情になっていた。
 マサトの蛇は誘われるように、ドクン、と大きく鼓動を打ち、閉じ込められた覆いを突き破ろうと頭を天井へ向けて押し上げる。
 全体にスパイスを利かせた料理なのに、何とも甘い食事となった。
「、、ぁ、、」
「・・ん?」
「、、そー言えば、、干物を作ってたの?」
「あぁ・・クククッ。景山がな。・・今夜は半干しを炙って、冷酒でも飲むんじゃねぇか?」
「へぇ、、、男の人なのに器用ねぇ。」
「シェフや板前は男性が多いぜ?」
「ぁ、、そっか、、、」
 ミルクは、エヘッ、と肩をちょっとすくめて笑う。
 その表情は、あどけない少女の顔である。
 あどけなさと妖艶さが二重螺旋になって、マサトの心をグルグルと取り囲みながら締め付けてくるようで、狂うほどの愛しさが尽きることなく沸き上がってくる。
 マサトは恐れ戦く感情を初めて理解した。
 ・・・愛し過ぎてしまう自分が怖い。
 ・・早くそのヒンヤリとした甘い肌で、俺の狂気を止めてくれ。
 微かに火照りがある程度で、白さを留めた滑らかな肌が、淫靡な世界へといざなう。
「・・ミルク・・・ほら、ちゃんと食べろよ?」
 ミルクのゆっくりした食事に合わせていたマサトは、夜の帳の向こうから漂う魅惑の香りに堪えきれなくなり、さっさと料理を片付けてしまおうと、勢い良く食べ始めた。

 帰りの車は若松が運転していた。
 助手席にはミルクのボディーガード。
 後部座席に収まったマサトは、早速とばかりにミルクを抱き寄せ、熱いキスを始めた。
「、、ん、、ん、、、肩が、、、」
 力強く抱き寄せた手が、ミルクのフレア袖の生地を火照る肌に擦り付けてしまったらしい。
 見た目ではそれほど赤くはないが、やはり腕も日焼けでヒリつくようだ。
 マサトは袖の中へ手を滑らせ、そっと包むように触れた。
 火照っていても、マサトの熱い掌を冷ましてくれる。
「・・今夜は地下へ行こう。あそこなら本郷に診て貰えるし、薬もふんだんに揃ってるからな。」
「ぅん、、、でも、、そんなにたいしたことじゃないよぉ?」
「長引かせたくねぇ。・・三時間で治させる。」
「、、クスッ、、、そんな無茶言ったら、本郷先生、、可哀想、、、」
「・・こう、どこもかしこも痛がってたら、俺はどうすりゃいいんだッ?」
「、、ん、、っとねぇ、、、今夜だけ、、、我慢してぇ。、、、ね?」
「出来ねぇッ!」
「、、ゥフン、、、ミルだってぇ、、、アソコ、、、が、火傷しそうに、、熱いもん、、、」
 マサトが、ゴクンッ、と生唾を飲む。
「・・だろぉ?・・・そりゃもう、長い特別なホースで、消火活動しなきゃな?」
「、、うふっ、、、クスクスッ、、、そうかもぉ、、、うふふっ、、、」
 何とくすぐったい笑い方だろう。
 脇腹から脳天を直撃した甘美な刺激がはね返り、喉元を通って股間に集中していく。
 イブを唆したように、蛇が、この甘い果実を喰ってしまえ、と唆す。
 だが、狭い車内で押し倒しても、無骨なシートがヒリつく肌を虐めてしまうだろう。
 ・・・色即是空、空即是色・・・
 心の中で呟いた時、マサトはふと、ミルクの兄ミツルもこうして何度も唱えただろう、と想像した。
 あの頑なな潔癖さは、自らに課した戒めなのかも知れない。
 マサトは気を紛らせるように煙草に火を点け、窓を少し開けて煙を外に逃がしながら吸った。
 そして、意識を股間から逸らそうと、
「・・あ・・・宿題は進んでるのか?」
と、聞いた。
「、、んー、、、昨夜2時まで本読んでたのぉ。、、でも、まだ少し残ってるから、、読み終わったら感想文書くの。」
「感想文か・・・ククッ。そんなのもあったな。」
「数学の問題集は50ページもあるのぉ。、、先生は、一日1ページなんて朝飯前だろ、って言うけど、、他の教科だってあるしぃ、、現実はそういかないのにぃ、、、」
 ミルクは高校生の顔になって頬を膨らませる。
「まだ夏休み前なんだから、そう切羽詰まった気持ちになるなよ。夏休みだって、7月でも10日以上あるだろ?」
「、、、うん、、、」
 小さく頷いたミルクが、コテン、とマサトの胸にもたれてくる。
 ふわっと花の香りがマサトの鼻孔をくすぐる。
 ・・・クッソォーッ。限界だぜ。
 マサトは煙草を車の灰皿へとねじ込んだ。

「、、ぁ、、でね、、美術の写生は、、、ぁ、、ん、、、」
 思い出したように顔を上げたミルクの唇に、マサトの唇が重なる。
 舌を絡めては吸い、顎に添えた指先で喉をそっとなぞる。
 指が顎と喉を何度か往復した後、ツツーッ、と下へ降りていき、ゆったりとした襟元から胸へと滑り込んだ。
「、、ん、、、ぁ、、、」
 マサトの長い指先が、乳首に触れる。
「・・胸ならヒリつかねぇだろ?」
 マサトがそう言った時には、ミルクのワンピースは背中のファスナーを腰まで下げられていた。
「、、ぁぅ、、、マサトぉ、、、」
「・・シィー・・・」
 マサトは再びミルクの唇を塞ぎ、ブラジャーのホックまで外してしまった。
 背中が開いて前にゆとりが出来たので、マサトは手首まで服の中へ侵入させると、ヒンヤリとした胸を掌で包み込んだ。
 ふっくらと柔らかいのに、弾力があって揉みごたえがある。
 マサトの口から唾液が流れ込んでくるのを、ミルクは、ゴクリ、と飲み込んだ。
 クチュッ、、ンチュッ、、、チュゥッ、、、
 強い磁気に引き付けられた唇は、もう離れそうもない。
「、、んぁ、、、ぁぁ、、、」
 乳首をつままれて洩らした甘い吐息も、マサトの口へ吸われていく。
 見つめ合い過ぎた目を休ませるように、目を閉じて、舌と舌、肌と肌の触れ合う感触を確かめ合う。
 甘く切なく疼き、優しい快感に包み込まれてしまう。
「、、はぁ、、ぁん、、、」
 痺れる快感に体をくねらせた時、肘で持ちこたえていた脱げかけのワンピースから、白い胸がポロンとこぼれ出てしまった。
「、、ぁ、、、ん、、、」
 マサトが素早く覆い被さり、乳首を口に含んだ。
「ぁ、、ぁぁ、、、ん、、、」
 ミルクは堪えきれずに仰け反り、ズルッ、と尻を滑らせて、シートに深くもたれ掛かった。
 スカートから覗いた開き掛けの白い太腿が、乳首を舐めるマサトの視線を引き付ける。
 乳房を弄んでいた手が、股の内側をそっとなぞって、スカートに隠されている花園へと這っていく。
 愛液でぐっしょり濡れたパンティの内側は、ヌルヌルとする蜜が溢れて貯まっていた。
「ぁぁん、、、ん、ん、、、ぁぁぁ、、、」
 クリトリスをクルクルと擦られ、ミルクは更に大きく仰け反り、喘ぎ声を洩らす。
 マサトは、乳首に吸い付いていた口を離して、またミルクの口を吸い、肩にあった手をミルクの脇の下から前へ回して、胸の膨らみを揉んで愛撫し始めた。
 一方の手はますます強くクリトリスを擦り、時々二本指でつまむように挟む。
 三箇所同時に責め続けられ、訳がわからなくなるまで感じてしまっていた。
 ミルクは一つのエクスタシーの高波に乗り、目眩く快感に体を小さく痙攣させて登り詰めた。
 今日の昼間見た、真っ青な空に浮かぶ白い雲に乗った心地に、しばらく恍惚としていたミルクは、荒い息をどうにか落ち着かせ、
「、、ハァ、、ハァ、、、マサトぉ、、、」
と、甘えて名前を呼んだ。
 マサトは熱く潤んだ目でじっと見つめていた。
「あぁぁ・・・可愛いぜ。・・俺もいきそうだ。」
 ミルクはうっとりとした目で、唇を舐めるように出した舌先を、微妙に動かしてみせる。
「・・ミルク・・・いい子だ。」
 マサトがベルトの留め具をはずし、ズボンの前をはだけると、待ち侘びていた蛇がヌルヌルとテカる頭を飛び出してきた。
 ミルクはお尻を少し後退させて上体を倒し、片手を添えて蛇の胴体を握り、蛇頭を口にくわえ込んだ。
 ミルクが髪を揺らせて頭を上下させ始める。
 ジュプッ、、ズチュッ、、チュプッ、、、
 吸い付きながら扱き上げるので、カリに引っ掛かる時、唇に隙間が出来て淫靡な音が漏れてしまう。
 マサトは、ミルクの剥き出しになった白い背中を愛しげに撫でて、苦痛に近い快感を味わっている。
 押し寄せ、込み上げる快感は、解き放ってしまいた欲望に駆り立てる。
 だが、果てる前に、この焦れったいほどに熱く切ない疼きを、もっと、もっと、と求めて耐える。
「・・・ゥゥッ・・・ァァァ・・・」
 喘ぎ声を押し殺した熱い吐息で、
「・・いいぜぇ・・・めちゃめちゃ最高だ・・・クゥゥッ・・・ハァ・・・」
と囁き、背中を撫でる手を、お尻の方へまで伸ばしていく。
 ミルクの肌はどこを触っても、滑らかでヒンヤリとして気持ちがいい。
 ジュプッ、ジュプッ、、、チュプッ、チュプッ、、、ズチュッ、ズチュッ、、、
 ミルクの頭の振りと、竿の根元を握った手の動きが早さを増していく。
 マサトは苦悶に眉を寄せ、片手で口元を押さえると、腰の片側を浮かせて、自らも腰を突き出すように動かし始めた。
 喉の奥に当たるほど力強く押し込まれ、ミルクは、食べたばかりの豪華な夕食が胃から戻ってきそうになり、何度も唾を飲み込んだ。
 マサトの息遣いが荒くなり、腰の振りが一段と早くなって、ミルクの限界が見えかけた時、
「ゥゥゥゥゥーーーッ・・・」
と、かすれる呻き声がして、喉の奥へと熱いザーメンが迸った。

 ぐったりとしているのはミルクだった。
 マサトはミルクの体を起こしてやり、優しく抱き寄せ、こぼれ出ていた胸をワンピースで覆い隠してやった。
「・・嬉しいぜ・・・ミルク。」
 マサトは労るようにキスをし、髪を撫でた。
 それから、スカートの中へ手を滑り込ませ、グショグショのパンティをズラして、蜜を貯め込んでいる蜜壺へと指を押し込んだ。
「、、、んンンン、、、ぁぁぁ、、、」
 マサトは急がず、ゆっくりと指を回転させる。
 クチュッ、、クチュッ、、クチュッ、、
 ミルクの膣壁がグニュグニュとうねり、肉襞と蜜が指に絡みついてくる。
「ミルク・・・ずっと・・ずっと・・・俺の腕の中で感じ続けていろ。・・・一生・・な。」
 マサトが熱い息で囁く。
 そして、地下アジトのある倉庫に着くまで、中指と薬指で蜜壺は掻き回され続け、顔中にキスを降らせるマサトの唇が、ミルクから離れることはなかった。

<62>
「淫魔」
§62§「淫魔」

 マサトが掌にたっぷりと油を取る。
 人肌の温かさで溶け、透明になる油を両手に馴染ませてから、ミルクのうなじから胸元へとそっと塗る。
「、、ぁ、、、ん、、、」
 ベッドに背筋を伸ばして座っているミルクが、目を閉じて甘い息を洩らす。
「・・これは火傷に効く馬の油の中でも、特に優れた鎮静作用があるものなんだぜ。」
 胸の滑らかな肌を撫でる手が、膨らみまで撫でていく。
「、、そこ、、、日焼けしてないよぉ、、、」
 ミルクは、淡いピンク色の照明にテラテラと光る、自分の胸を眺めて戸惑ったように言った。
「どうせ垂れてきちまうだろ。」
 マサトは口の端に笑みを浮かべて言う。
 そしてまた、白濁する黄色がかった油を取り、掌で伸ばして肩から腕へと塗りつけていく。
 溶けると、サラッ、とした感触になる油だったが、それでも油だけに滑る感覚はある。
 一度霧吹きで全身が殺菌消毒され、柔らかいタオルで押すようにして拭き取られた肌は、ヒンヤリとした冷たさを取り戻していた。
 そこにマサトの熱い掌で溶けた油を、優しく塗りつけられていると、治療しているはずなのに感じてきてしまう。
 本郷はミルクの肌に触れる訳にもいかないので、薬をマサトに渡して手順だけ教えた。
 それで、マサトは地下のミルクの部屋で二人きりになり、こうして薬を塗りつけているという訳だった。
 照明を落として淡いピンクの灯りにした訳はわからない。
 白い肌が薄ピンクに染まり、テラテラしてる様は、本当にピンクに染まった半熟卵のようだ。
 治療とは言い難い淫靡なムードが漂っている。
「、、ぁぁ、、、ハァァ、、、」
 優しい感触で滑る熱い掌に、ゾクゾクする快感が走る。
「、、そんなに塗ったら、、もったいないのに、、、」
 大瓶からたっぷりと指ですくい、掌で伸ばして溶かすので、マサトの腕にも垂れていき、ポタリ、ポタリと滴が垂れている。
「擦り込めねぇんだから、これくらい塗らねぇとな。」
 マサトは楽しそうに塗っていく。
 両腕に塗り、ついでに背中と胸へと撫で回し、上半身全てが油まみれになっている。
 マサトはそこでちょっと離れて、角度を変えて観察しながら、塗り残しがないかをチェックした。
「・・おっと・・顔を忘れてたぜ。」
「、、ぇ、、、顔、、、?」
「大丈夫。これは食料品としても使える奴だからな。」
「、、だってぇ、、、お顔が、、テカっちゃうぅぅ、、、」
「ククッ。・・テカる顔もなかなかセクシーだぜ。・・アラブの女みてぇでいいんじゃねぇか?」
 マサトは喉で笑いながら、ミルクの頬や額に掌を当てていく。
「、、、アブラの、、女、、、」
「アラブ。・・つまんねぇダジャレ言ってねぇで、ちょっと目を閉じてろ。」
「、、んー、、、」
 マサトは目に入らないように気を使いながら、目元、鼻、口元、そして耳たぶへも油を塗ってやった。
「、、ぅー、、、目に入ったぁ、、、」
「・・睫毛が長いんだから、きつく閉じたら瞼の油がついちまうだろ?・・ったく。」
「、、ぅぅ、、、何か、、、シバシバするぅぅ、、、」
「害はないんだ。・・ちょっと我慢してろ。」
「、、ぅぅぅ、、、アブラまみれの女ぁ、、、」
「だから、アラブだって。・・ハーレムの女達は香油を全身に塗ってたらしいからな。」
「、、ハーレム?、、、大奥みたいな所だっけ?」
「ああ。多分な。・・持ったことはねぇから、よく知らん。」
「、、、持つなぁぁ、、、」
 ミルクは目をシバシバさせながら睨んだ。
「クククッ。・・ミルク一人でも、俺には充分ハーレム気分だぜ。」
 マサトは腰を屈めてキスをすると、そのまま跪いて、今度はミルクの足へと油を塗り始めた。
 ゾクゾクッ、と快感が走ったミルクの腹筋が、キュッ、と引き締まる。
 全裸で座るミルクの体の微妙な動きが、マサトにも伝わり、生唾を飲み込んで舌先で唇を舐める。
 当然マサトも全裸で、すでに蛇が顔を真っ赤にして背伸びをし、天井を睨んでいる。
「ぁぁ、、ぁん、、、」
 膝から膝の裏側へとそっと撫でられると、もう我慢出来ないほどに感じて、仰け反ってしまう。
「まだ倒れるなよ。シーツに薬が取られちまうぞ。」
「ぁぅ、、、だってぇ、、、感じちゃうぅぅ、、、」
「・・まぁ、少しの我慢だから。・・薬の薬効成分が染み込むまでは・・な。」
「、、、ぅん、、、」
 ミルクは両手を後ろに伸ばして、倒れそうな体を支えるようについた。
「、、ぁ、、、ぁぁ、、、ん、、、」
 足の指一本一本まで丁寧に油を塗られ、指股まで擦られると、喘ぎ声が止まらなくなる。
 いつまで我慢しなきゃいけないんだろう。
 股間の奥の花園が、疼きの嵐に花びらを震わせる。
 ミルクは息が乱れてきて、熱い息を吐いた。
「、、フゥゥ、、、ハァァ、、、ぁん、、、ぁぁん、、、」
「ククッ。・・・何だか女王様に奉仕してる気分になってくるぜ。」
「、、ぇ、、、女王様ぁ?」
 ミルクは体を前に起こすと、熱く潤んだ眼差しでマサトを見つめる。
 マサトは顔を上げ、
「ん?・・バーカ。冗談に決まってるだろ。」
と言ったが、ミルクは怪訝な顔をする。
「、、、女王様って、、、こーゆーことをして貰うの?」
「あ?・・いや・・つーか・・・ミルクが思ってるような女王様じゃねぇぜ、多分。」
 ミルクは眉を寄せ、首を傾げる。
「クスッ。ミルクはSMって言葉、知らねぇだろ?」
「、、、ちょこっとは聞いたことあるよぉ、、、」
「へぇ。・・どれくらい?」
「、、、だから、、、イジメっ子がSでぇ、、イジメられっ子がMぅ?、、、って、、それくらい、、、」
「・・違うなぁ・・・じゃぁ、女王様の意味は?」
「、、、ゲームで負けた人が、、」
「それって王様ゲームのことじゃねぇのか?」
「ぁぅ、、、違うのぉ?」
「・・・全然、違うぜ。」
「、、、そーなんだぁ、、、麗子さん、、、どんな意味で言ったんだろ?」
「は?・・・何?・・・麗子ってクラブの部長のか?」
「ぁ、、うん。」
 それでミルクは、今日麗子とした話をマサトに話した。
 マサトは、ミツルが話に出てきたので、少し面白くなさそうに聞いていた。
 時々相づちを打ちながら、黙々と足に油を塗っている。
「、、、そんな怒んないでよぉ。、、、だって、、、麗子さんがお兄ちゃんを好きだとなると、ミル、、小百合さんとどっちを応援したらいいか、、、迷っちゃうんだもん、、、」
「そんなこたぁなぁ、兄貴の好みに任せときゃいいだろうが。」
 せっかく淫靡なムードで妖艶なミルクの淫乱な姿態を楽しんでいたのに、中断されたマサトは、油を塗り終えて立ち上がった。
「、、それはそうだけどぉ、、、ぅぷっ、、、」
 マサトがミルクの口へ蛇の頭を突っ込んだ。
「ぅぅー、、、」
 ミルクは抗議するように呻ったが、ドクン、、ドクン、、と脈打つ蛇の逞しさに体の疼きが蘇り、うっとりとしゃぶって扱き始めた。
 油まみれになった両手を添えて扱く内に、蛇の胴体もテカテカと光りヌルヌルと滑る感触になってしまった。
「・・滑るのも・・けっこういけるな・・・」
 マサトは掌に余っていた油を陰毛から袋まで塗りつけた。
「・・袋も舐めろ。」
「、、ん、、、」
 ミルクは油の特有の臭いに眉を寄せたが、玉袋を口に含んでしゃぶり、手で蛇竿を握って擦った。
「アァァ・・・いいぜェェ・・・今度は袋を揉みながら・・くわえて・・・」
「、、はぃ、、、」
 慣れてきたせいか、マサトの言葉の調子で、すぐに調教モードに入り込む。
 こうなると、ミルクは素直で躾のいい性奴隷となる。
 所有者であっても支配者になるつもりはないマサトだったが、自分に尽くして奉仕するミルクの姿が愛おしくてたまらなかった。
 車での時より、更に深くくわえ込んで頭を振っている。
 マサトはしばらく立ったまま、ミルクの舌技を堪能した。

「・・よし。・・いいぜ。」
 マサトはミルクの顔を上げさせ、すっかり嵌り込んでいた蛇を口から、ズルッ、と抜いて、御褒美のキスをしてやった。
 それから、一つかみ油を手に取ると、先にベッドに仰向けに横になり、蛇竿から股間全体へ油をたっぷり塗った。
 そして、指示を待って眺めていたミルクに、
「さぁ・・・お・い・で・・・」
と、優しく声を掛けた。
「、、はぃ、、、」
 ミルクがベッドに上がると、
「なるべくシーツに体が付かないようにして跨げよ?」
と、そそり立つ蛇を指差した。
「、、はぃ、、、」
「・・自分でつかんで・・入れられるな?」
「、、ん、、ぁ、、はぃ、、、」
 ミルクはマサトの体を立って跨ぐと、ゆっくり屈んでいき、蛇竿をつかんで花弁に頭を合わせ、お尻を下げて蜜壺へとめり込ませていく。
「あぁぁ、、、ぁぁぁん、、、」
 ズルズルズブゥゥ、、、
 滑る蛇の体が一気に奥まで入り込む。
「あぁ、、あぁぁ、、、ハァ、、ハァ、、、最高ぉぉぉ、、、」
 頭を天井へ向け、荒い息をする。
 ずっと疼いて感じ続けていた膣が一気に満たされていく。
 欲しくて、欲しくて、泣きたくなるほど焦がれていたのだ。
 ミルクはピッタリと座った股間を擦り付けるように回転させる。
 車の中、マサトの指でずっと捏ねられていた柔らかな肉襞が吸い付いていく。
「・・ハァァ・・・俺も・・・最高だぜぇ・・・」
 マサトがミルクの両方のおっぱいをつかんで揉む。
 ミルクは体が要求するままに、腰をくねらせ円を描き続けている。
「あぁぁぁ、、、ぁふっ、、、気持ちいぃぃぃ、、、」
「しばらくこうしてれば・・薬もよく染み込むぜ。」
「、、うん、、、マサトぉ、、、ぁぁ、、、このまま、、マサトに溶けちゃいたい、、、」
「あぁ・・溶け合って、ひとつになろうぜ。・・・お前の全ては俺のもの・・俺の全てもお前のもの・・・溶けてひとつとなって・・・共に生きよう。」
「、、うん、、、ぁぁあぁぁぁ、、、めちゃめちゃ感じるぅぅぅ、、、」
 ミルクは快感に仰け反り、体を震わせて、花弁を擦り付けて腰を回転させる。
 セーラー服姿の初々しいミルクも、鼻を赤くして泣くあどけないミルクも、全てが混然一体となった妖艶な淫魔がそこにいた。
「ぁぁ、、あん、、あぁん、、、イキそぉぉ、、、」
 マサトの腹筋に膝を乗せ、腰を上下に振り始めたミルクが、切なそうに喘ぎながら言う。
「・・ククッ。・・いいが・・まだ果てるなよ。」
「、、ぁぃ、、、あぁ、、あん、、あん、、ん、、、あぁぁぁッ、、、」
 後ろに倒れそうになり、マサトがしっかりと手でミルクの腕をつかんでやる。
 油で滑り、力を入れないと擦り抜けそうになる。
「あぁぁぁぁぁッ、、、」
 ミルクは腕をつかまれたまま弓状に背中を反らせ、小さく痙攣してイッた。
 突っ張って痙攣していた体の力が抜けても、しばらく恍惚として目を閉じていたが、ようやく目を開けたミルクが、苦悶に眉を寄せる。
「、、あぁぁ、、、ぁぁ、、、止まらない、、、あぁぁぁぁ、、、イクのが止まらないぃぃ、、、」
 そう言って、ミルクが再び腰を激しく動かし始めたので、胸の二つの山も大きく揺れる。
「いいぜ。・・好きなだけイケばいい。」
 マサトは片手でミルクの腕をつかんで支え、もう一方で揺れる胸を撫で回す。
「はぁぁ、、んん、、、あぁぁぁ、、、どうかしちゃうぅぅぅ、、、」
「それでいい。・・どんどんミルクが俺の中に、溶けてくるぜ。」
 マサトも熱い息で言う。
「、、あん、、あん、、あん、、あぁん、、、イク、、、イクッ、、、あぁぁぁぁぁ、、、」
 さっきよりも大きく体を震わせて、頂点に達する。
 恍惚として荒い息を吐き、息が落ち着く前に、再び切なそうに喘ぎ始める。
 そうして何度も絶頂を繰り返し、最後は言葉もなく髪を振り乱し、
「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーッッ!!」
と、叫ぶと、ぐったりとマサトの胸に倒れ込んで、気を失っていた。
 マサトも同時に勢い良く射精していた。
 倒れたミルクの花園から蛇が精気を吸い取られたような顔で、ニョロン、、と出てくる。
 マサトはミルクを腹の上に抱いたまま、泡だって大量に溢れてくる白濁液を、ティッシュで拭き取ってやった。
 それから、そっとミルクの体を横に滑らせ、腕の中に抱き包むと、マサトも大きく息を吐いて目を閉じた。

 二時間ほど熟睡したマサトが目を覚ました時、ミルクはまだ規則正しい静かな寝息を立てていた。
 ミルクの安心しきって眠る寝顔は、淫魔とは思えないほどに邪気が無く幼かった。
 マサトは、フッ、と笑みをこぼし、ミルクの額に貼り付いている前髪を脇に避けてやった。
 そっと肌を撫でると、触れ合っている肌は温かいが、剥き出しになっている部分がヒンヤリと冷たい。
 かなり薬の成分が効いたようだが、体に何も掛けてなかったので、冷え過ぎてしまったらしい。
 マサトは体温が上がるように、ミルクの体を撫で回してやっていた。
「、、、ん、、、」
 ミルクがマサトの胸に顔をスリスリさせて意識を戻す。
「、、、ぁふっ、、、ん、、、」
「・・起こしちまったか。・・体が冷えてたぜ・・・」
「、、ぁ、、うん、、、でも、マサトが温かいから、、平気だったよ、、ふふっ。」
「ならいいが・・風邪を引かせる訳にはいかねぇからな。」
 マサトはミルクの額にキスをする。
「、、、何か、、、すっごい、、感じちゃったぁ、、、」
「クックッ。・・あんな立て続けは初めてだったかな?」
「、、うん、、、だってぇ、、、ずっと焦らされてたんだもぉぉん、、、」
 ミルクは、恥ずかしそうに顔を胸に擦り付ける。
「クスッ。めちゃめちゃ可愛かったぜ。」
マサトは髪を撫でて優しく言ってから、
「・・もう擦ってもヒリつかねぇか?」
と聞いた。
「、、、ぁ、、、ホントだぁ、、、もう痛くない。」
 ミルクは手で頬を押さえて確認しながら答えた。
「肩とか腕も大丈夫か?」
 マサトがそっと撫でる。
「うん、、、もう火照りがないぃぃ、、、凄い効いたねぇ、、、」
 ミルクは嬉しそうにマサトの顔を見上げて、無邪気に笑った。
「あぁ。・・良かったぜ。・・・触る度に痛がられちゃ、虐めてるみてぇで、焦っちまうからなぁ。・・クックッ。」
「、、ぁぅ、、、ごめんなしゃぃ、、、」
「・・・だからぁ・・」
「ぁ、、、ぁぅぁぅぁぅぅ、、、」
 ミルクが焦って顔を隠すので、マサトは苦笑してミルクを抱き締めると、顔を押しつけるようにしてキスをした。
「・・っとに・・・可愛くてたまんねぇぜ。」
 そう言って、マサトは、更に貪るようにキスをしてから、
「セーブしようと思ってるのに、あんまり可愛過ぎて我慢出来なくなっちまうんだぜ。」
と、困ったように言って笑った。
「、、、マサトの、、好きに、、して、、、」
 ミルクが甘えて言うと、
「バーカ。・・一日海で遊んで、何度もイキまくって、・・・これ以上疲れている体で無理したら、風邪くらいじゃ済まなくなるぞ。」
と、ミルクの額を指先で軽く叩いた。
「、、、でもぉ、、、せっかくのお泊まりなのにぃ、、、」
「・・そうだなぁ・・・起こしちまったし・・・うーむ・・・」
 マサトは大きく息を吐いて、眉を寄せ思案する。
 ミルクはじっとマサトを見つめている。
「・・そうだな。滅多に外泊出来ねぇなら、夜しか出来ねぇことをさせてやるか。」
 マサトが思いついた顔に不敵な笑みを浮かべて言った。
「、、、夜しか?」
「ああ。・・女王様ってのが、どんなものなのか、見せてやるぜ。」
「女王様をぉぉ?!」
「ククッ。男共がかしずく夜の女王様だぜ。」
「、、うわぁぉッ、、、」
「行ってみるか?」
「うんッ。」
 ミルクは初めての夜遊びというものに、ドキドキしながら頷いた。
「、、、ぁ、、、でもぉ、、、」
「ん?・・・怖いか?」
「、、じゃなくぅ、、、服が着れない、、、」
 ミルクはまだ油でテカる体をマサトに擦り付けた。
「石鹸つけずに、シャワーのお湯だけで流せば平気だろ。もう充分染み込んでるしな。」
「、、そっか、、、うんッ。」
 ミルクは嬉しそうに起きあがると、ベッドを降りてシャワールームへ向かった。
「あ、ミルク。」
「、、ぁぃ?」
「服はそこにあるのが気に入らなければ、本宅のを届けさせるから・・」
「ぁ、、うん。、、でも、大丈夫。可愛いのがあったから。」
「そうか。・・よし。じゃぁ、俺もシャワー浴びて着替えて来よう。」
「はーい。」
 ミルクはマサトに小さく手を振って、シャワールームへ入った。
 マサトもベッドを降りてガウンを羽織ると、”アリス姫のお部屋”を出て、ジムの隣りのシャワールームへと向かった。
 マサトが部屋から出てきたので顔を出した若松に、
「今夜、”蛇窟”の秘密クラブに行くから・・島田に伝えておけ。」
と指示した。
「はい。・・アリス様も御一緒ですか?」
「ああ。女王様に会わせてやろう。クックックッ。」
「畏まりました。」
「・・あ・・ミルクがあまり怖がらないように、ソフトにするようにな。」
「はい。」
 若松は頭を下げ、早速指示の電話を入れる。
 マサトはシャワールームの個室に入ると、お湯を勢い良く出して、ミルクの甘美な香りを惜しむように洗い流した。
 それから総裁室でスーツに着替え、景山が用意した毒蛇エキスのワインを煽ると、ミルクを迎えに部屋のドアをノックした。
「はーい。」
と明るい返事が返り、ミルクがドアを開けた。
 そこに立っていたミルクは、セミロングのふわっとした白いドレスを着ていた。
 薄い生地が重なり合うドレスは、まさに月下美人の花のようだった。
 マサトは満足そうに頷き、
「最高に可愛いプリンセスだぜ。」
と言って、ミルクの手に恭しくキスをした。

<63>
「秘密クラブ」
§63§「秘密クラブ」

 クラブ”蛇窟”。
 マサトとミツルが話し合いをしたVIP個室もあるクラブである。
 1Fはダンスフロアもあり、ハードロックが会話も出来ないほどにガンガン鳴り響き、自らの踊りと汗に自己陶酔している若者が溢れている。
 2Fはビリヤードの台が幾つか並んでいる中央ホールと、それを取り囲むように個室が並んでいる。
 その一番奥手にあるのが、マサトの為だけに用意されている部屋だ。
 けれど、普通に利用する限り、このクラブに秘密クラブがあるとは、誰が見ても思えないだろう。
 特殊な秘密の入り口を知っている会員の人々だけが、地下にある秘密クラブの部屋へと進めるのだ。
 更に、秘密クラブの部屋は二重構造になっていて、会員でも知らない組織幹部の為の空間があった。

 マサトは先に、この幹部の部屋にミルクを案内した。
 マサトが来るということで、出向いていた景山と風俗関連を取り仕切る島田が、笑顔でミルクを迎え入れ挨拶をした。
 ミルクは緊張しながら、
「よろしくお願いします。」
と言って、ペコリ、とお辞儀をした。
「どうぞ、ゆっくり楽しんでらしてください。」
 島田は目を細めた優しい表情でミルクに言ってから、緊張した面持ちになってマサトに向かい、
「ボス。申し訳ありませんが、少しお待ち頂けますか?・・今、ご予約のあった鈴木様と松浦様が調教をなさっておいでですので・・・」
と、済まなそうに言った。
「ほぅ・・・大臣殿、頭取殿・・見物するだけでは物足りなくなったか。クックックッ。」
「はい。お二方とも、自分専用の奴隷が欲しいと言われておられるのですが、調教の仕方を誤ると紹介する奴隷が危険ですので、まずは調教の練習をして頂くようにお願い致しました。」
「うむ。そうだな。」
「様子を御覧になられますか?」
「時間がかかりそうなのか?」
「いえ。じきに終了します。」
「今夜のメニューは?」
「緊縛とムチ、それと蝋燭責めまでです。調教は責める側の自制心がなければ出来ませんので、そのことを初めに理解して頂くようにしております。」
「うむ。・・素人が生半可な知識だけで勝手に女を調教しようとして、歯止めが効かずに暴走の挙げ句、死なせてしまったと泣きつかれるのは御免だからな。」
「はい。・・アザミも、女を道具としか見ない相手でも仕方ないが、道具を大事に扱えない相手は断る、と申しております。」
「だろうな。・・アザミも一度半死半生の目に合わされているし、自分が束ねる女達に同じ思いはさせたくねぇんだろう。・・・本来、SMの関係はお互いに親密な信頼感があって、初めて成立するもので、一方的に責めるのが好きというのでは、ただの狂暴な暴君でしかない。いくら金を積まれても、命に代えられる代価はねぇもんな。」
「はい。・・まぁ、死にたがっている女もおりますが・・・」
「フンッ。死にてぇ奴は苦しまずに気持ちよく死にてぇものさ。誰も地獄の苦しみを味わって死にてぇ奴はいねぇだろう。元々、苦しさに耐えるだけの根性がねぇんだからな。・・・散々いたぶられ苦痛と恥辱で虐め抜かれたら、ここまで苦しんだらもうどんなことをしたって生きられる、生きて復讐してやる、と思うもんだぜ。」
「・・・あぁ・・・確かに。」
 仰る通りです、とばかりに島田が頭を下げた。
「ま、いい。・・その程度ならミルクが見ても平気だろう。・・ちょっと見てこよう。」
 マサトはそう言って、ミルクの手を握ると、薄暗い部屋へと入っていった。
 そこは一面壁がガラスになっていて、その前にソファーが置かれてあった。
 ガラスの向こう側に赤味がかった照明で照らされた部屋がある。
「一応、マジックミラーと防音にはなっているが、・・悲鳴とかは出さないようにしろよ。」
 マサトがソファーに座りながら、ミルクに注意した。
 マサトの隣りに座ったミルクは緊張して頷いた。
 ミルクの反対隣りに景山が座り、三人の後ろに若松と島田が座った。

 20畳ほどのフロアの中央に一段高くなったステージのような場所があり、それを取り囲んで半円のボックス席が置かれてある。
 席の周りを囲む壁はグルリと鏡張りになっているので、席に座った反対側からの様子も対面の鏡に映し出されて見えるようになっている。
 壁が全体に鏡になっているのは、客へのサービスもあるが、この特別なマジックミラーの部屋が客からはわからない為の目隠しにもなっている。
「あのステージは電動で下に降りるようになっているんだぜ。」
 マサトは手始めに、部屋の作りをミルクに話した。
 ミルクはステージで繰り広げられている光景に圧倒されていたが、
「・・そぉなんだぁ・・・」
と、上擦った声で答えた。
「だからその都度、綺麗に丸洗い出来るし、普段使用しない時には別の床が覆うようになっているから、普通にダンスホールとしても使える。」
「・・ふーん・・・」
 ミルクがじっとステージを見たまま返事をするので、マサトは苦笑する。
「ククッ。上の空か?・・調教に興味がある?」
「・・ぇ・・・ぁ・・・わかんない・・・」
「今なら質問を受け付けてやるぜ。・・ただし、あの部屋に入ったら、なるべく感情は出さずに、わからないことがあっても質問するな。わからなくても黙ってろよ?」
「・・どうしてぇ?」
「あまり見当違いの質問をしたら場がシラケちまうし、やってる者達にも悪いだろう?」
「・・ぁ・・・うん。」
「嫌そうな表情や態度もするな。何があっても、とにかく見守っていることだ。」
「・・うん。」
「それでも、どうしても我慢出来なかったり気分が悪くなったら、気付かれないように俺の手を抓るといい。部屋から連れ出してやるからな。」
「・・ぁぃ・・・」
「クスッ。そう怖がることじゃねぇって。」
「・・うん。・・・でも・・・あの蝋燭ぅ・・・熱そう。・・火傷しないの?」
「低温で溶ける蝋を使ってるから、普通の蝋燭ほどは熱くならねぇようになってるんだぜ。・・と言っても全然熱くねぇ訳じゃねぇし、やり方によっては火傷もする。・・・そう言やぁ、バカな男が普通に売ってる蝋燭を使って、女を大火傷させたことがあったな。」
 マサトが景山に話を振る。
「そうですね。・・無知な素人が興味本意だけでサディストぶるのには困りものです。」
 景山が相槌を打つ。
「縄だって、ただ締め付けりゃいいってもんじゃねぇ。」
「・・でも・・・あんなに食い込んでるじゃん。」
「あれでも、ちゃんと内蔵に負担をかけず、息が出来るように縛ってあるんだぜ。腸が押し潰されたり、肋骨が折れたり、首まで締め付けられちまったら大変だろ?」
「・・・ぅぅぅ・・・やっぱ怖いかも・・・」
「・・ミルクにはしねぇよ。」
 マサトはミルクの手を握り、顔に近付けて唇を押し当てた。
 愛しそうに目を閉じ、甘い香りを楽しむように唇を左右に滑らせる。
「ただ・・俺が扱っている闇の仕事には、こんなのもあるって・・見せたかった。・・・綺麗な世界だけを見せてやりてぇ気持ちもあったが、それじゃ俺の本当の姿は見えねぇだろうし・・・俺と共に生きる以上は、ある程度のことは覚悟して欲しい。・・そう思うのは、残酷かな?」
「・・・ううん。・・・どんなマサトでも・・愛している。」
 ミルクはマサトの胸に顔を埋めるようにして抱きついた。
「・・ミルク・・・俺の愛しい天使・・・」
 マサトはミルクを抱き締め、甘く香る髪に頬ずりとキスを繰り返した。

 ステージ上の男達は、縛られたままの女の口で奉仕された後、女の体中にザーメンを飛ばして満足そうに行為を終えた。
 マサト達は一度奥の部屋に戻り、雑談をしながら新しいステージのセッティングが出来るのを待った。
 マサト達組織の幹部は、秘密クラブであっても、クラブの店内では一般の会員の一人にすぎなかった。
 秘密クラブの従業員達もそう思っている。
 従業員達は幹部達の為の部屋があることも知らず、唯一島田のことを、彼等風俗にいる者達のトップに位置しているボスだろう、と薄々感づいている程度で、他の幹部メンバーの事は、その島田が気を使う相手としか知らない。
 マスターと数名組織の者が店を管理する為に入っているので、彼等はもちろん承知していたが、誰の前であってもそれを口にすることはない。
 しかも、秘密クラブの店内では、客達は顔半分を隠す仮面を装着する。
 顔を出しても構わないと言う客もいたが、大抵は額から鼻先まである各自専用の仮面を持っていた。
 身元を調べ会員証を渡す時に、顔型を取り、きっちりはまる固い革製の仮面を作るシステムになっている。
 それで、マスターから「用意が出来ました。」と連絡が入ると、マサトや他の者達は各々の仮面を被った。
 ミルク用のは出来てなかったので、仮面のまわりが白い羽で縁取られてあるフワフワの物が用意されていて、それをマサトがつけてやった。
「・・ぁぅ・・・マサトの仮面いいなぁ。・・これ、鼻がムズムズするぅ・・」
 ミルクは唇を尖らせて、仮面で隠れた顔をマサトに向けた。
 マサトの仮面は顔半分を覆うだけで、紐を後ろで縛るスッキリした物だった。
「まぁ、付けても付けなくても、気分的なもんだがな。会員同士は大体相手が誰かはわかるものさ。・・個人やグループの特別予約がない時は、ショーアップされたステージをみんなで見る訳だし、わかったからといってお互いをこれで強迫するようなこともない。むしろ仲間意識が出来て親密になるケースもあるんだぜ。」
「・・ふーん・・・じゃぁ、どうしてつけるの?」
「気に入らねぇ奴とは親密になりたくねぇからさ。クククッ。・・つーか、顔を隠していれば身元についても、もしかすると、っていう仮定にすぎないが、顔を出すと全面的な肯定になる。・・いくら何でも、そこまで自分を晒すこたぁねぇだろ。特に親密になった相手じゃない限りはな。」
「・・へぇ・・・何か・・色々難しいね。」
 ミルクは、そんなに隠れてまで遊びたいことってあるのかなぁ、と思いつつ、鼻の両側の羽を避けるように撫でつけた。

 他の会員と同じ入り口から、秘密クラブの店に入る。
「いらっしゃいませ。ようこそお出でくださいました。」
 そう言って跪くようにして深々と頭を下げて出迎えたのは、ベルト状の革を体中に巻き付けた胸も露わな女性達だった。
 ミルクは思わず、ムカッ、としたが、マサトと約束しているので、黙ったまま後ろに控えていた。
 どこがどう繋がっているのか、革のベルトは胸やお腹や尻といった本来隠すべき場所を露骨に晒している。
 女性の中には陰毛までさらけ出して、平然としている人もいた。
 今夜はマサト達の貸し切りなので、ステージが一番よく見える席に案内され、男性一人一人にかしづく女性が一人ずつ隣りに座った。
 マサトの隣りに座った女性が、
「そちらのお嬢様には、どの男性をお側につかせましょうか?」
と、数人控えている男達を指し示した。
 ショーでも助手を務める男達は、ローマ帝国時代の戦士のような格好で、筋肉の盛り上がった体を剥き出しにしている。
 マサトが女を横目で睨み、舌打ちをする。
「誰が俺の横に座っていい、と言ったッ?・・俺の連れにも必要ねぇッ。・・ったく、くだらねぇ戯れ言を言うんじゃねぇぜッ。二度と口が開かねぇように、上唇と下唇を縫い付けるぞッ。」
 マサトの低い罵声に、女はたじろぎ、
「申し訳ありません。」
と、席を離れて土下座し、頭を床に擦りつけた。
 そこへ、
「あらぁ・・公爵様・・・どうか、奴隷達の失礼をお許しくださいませ。その者はまだ入ったばかりの子で、公爵様の御嗜好を存じ上げないのです。」
と、言って革ベルトの服に真っ赤なガウンを羽織り、真っ赤なピンヒールの靴を履いた女性が、しなを作りながら近付いてきた。
「・・ククッ。・・これはこれは女王。久し振りだが・・健在でなにより。」
「ええ。ホント、久し振りですわ。最近は日向ぼっこがお好きになられましたの?」
「いや。昼夜の区別もないほど忙しかっただけだ。今夜はショーを楽しませて貰おう。」
 そう言って不敵に笑ったマサトに、女王は恭しく頭を下げ、
「心得ております。」
と言って、ステージへと上がっていった。

 女王がステージに上がると、それまで店内に流れていた音楽が変わった。
 スポット照明が女王の姿を浮き上がらせる。
 女王は、マッチョな男がかしずいて差し出した、蔓の長い鞭をステージに振り下ろして、
 パシンッ!パシンッ!
 と、何度が打ちならした。
 それから、おもむろに顎を突き出し、
「今宵の奴隷をここへ!」
と、凛々しい声で命令した。
 控え室との仕切りのカーテンが左右に開かれ、マッチョな男達が檻を持ち上げて運んでくる。
 檻の中には、手足を縛られ目隠しをされた男が丸く踞るように座っていた。
 檻がステージに上げられ、
「その者を引き出せ!」
と言う女王の命令で、檻が開けられ、男が引きずり出された。
 檻は邪魔になるので、また控え室へと戻された。
 パシンッ!
 鞭が床を打ち付ける。
 全裸で目隠しをされた男が、ビクッ、と体を震わせ、頭を抱えて踞る。
「お前は己の罪深さゆえにここにいるのだ。わかるか?」
 男が黙っていると、また鞭がうなって床を叩く。
「・・うぁッ・・・そうです。私は罪深い者です。」
「ホッホッホッ。すぐに認めればいいのだ。・・愚か者め!」
 パシンッ!
「は・・はいッ。申し訳ありません。女王様。」
「ホホッ。・・では、どのような罪か、わかるか?」
「・・・それは・・・」
 パシンッ!
「あ・・多分・・・女を弄んでは・・捨ててきた・・罪・・・」
「ほぉ・・・何とも小さい罪だこと。・・・そうではないッ!」
 パシンッ!
 女王は鞭を床に振り下ろしながら、男の周りを歩き始めた。
 男は目隠しで見えない為、いつ鞭を自分に振り下ろされるかと脅え、音がする度に体を竦めている。
「お前の罪を私が教えてやろう。・・ん?・・知りたいか?」
「・・はい。」
「そうではないだろう?・・教えを乞う時は、きちんと言葉にして願い出るものだ。」
「あ・・はい。どうか、私の罪をお教えください。女王様。」
「ホホホッ。いいでしょう。・・お前の罪は・・男であるということだッ!」
 女王はそう言って、高らかに笑い声をあげる。
 そして一頻り笑った後、踞る男の肩に片足を乗せ、ピンヒールで、ギュッ、と踏みつけた。
「・・あぁぁ・・・お許しください。女王様。」
「罪も償わずに、許されると思っているのか?」
「・・ですが・・・男に生まれたことは・・・私にはどうすることも出来ない選択です。」
「それが思い上がりだとわからぬかッ!」
 パシンッ!
「男は女を見下す。女を蔑む。女を弄ぶ。・・フンッ。女の股から生まれてきたことを忘れたかッ!」
「いいえ・・・」
「口答えするなッ!」
「は・・はい。その通りです。」
 女王がピンヒールを、グリグリと肩に食い込ませる。
 男は喘ぎ声をもらして体を捻る。
「顔をあげなさい。」
 女王が足を降ろして男に命令する。
 男が顔と上半身を少し上に向かせる。
「ほーら、御覧。・・男の嫌らしいペニスが、もう欲望を剥き出しにしている。・・何て嫌らしいペニスでしょうね?」
「・・済みません。」
 パシンッ!
「お仕置きですッ!・・この者を立たせよッ!」
 マッチョな男がステージに上がり、後ろ手に縛られている男の腕をつかんで立ち上がらせた。
「ペニスホルダーで締め付けておやりッ!」
 そう言われて、今度は女奴隷が革製の物を持ってきて、男のペニスに巻き、きつく締め上げた。
「あぅぅ・・・い・・・痛いです・・・」
 女王の合図で、マッチョな男がつかんでいた手を放し、男は、ガクンッ、と膝を床に着けて前屈みになり呻く。
「ホホホッ。痛いと言いながら、先っぽから垂らしてるのは何かしら?」
「・・・罪に流す・・涙です。」
「嘘をおっしゃいッ!・・欲望のままに女を求めるヨダレじゃないのッ!」
「・・・そうです。・・・女王様の蜜を啜りたい・・・」
「何ですってッ?」
 男の小さい呟きに女王が聞き直す。
「あぁぁ・・・女王様・・・どうか、蜜を啜らせてください。」
「ホホホホホホッ!・・・お前が罪を償うなら・・考えてあげてもいいのよ?」
「償います。・・・どんな・・お仕置きでも・・・どうか私に与えてください。」
「ホホッ。・・私のお仕置きは、甘くはなくてよ?」
 女王は男に近付くと、羽織っているガウン越しに股間を男の顔に押しつける。
 男は大きく息を吸い込み、鼻を擦り付ける。
「私のお仕置きが怖いなら逃げてもいいのよ?・・泣いて土下座して、今すぐこの場を立ち去りなさい。」
「・・・どうか・・・私に罰をお与えください。」
 男はうっとりとした声で答え、女王の股間の毛をすくおうと、薄いガウン地の上から口をパクパク動かした。
「ホホホッ。・・それなら、誓いなさい。どんな罰も受けると。・・誓えばそこからお仕置きは始まります。始まったなら、泣き叫んでも引き返せませんよ?」
「・・はい。・・・どんな罰でもお受けします。・・・どうか、私をお仕置きしてください。」
「いいでしょう。・・最後まで耐えられたら・・その時には、御褒美に私の蜜を思う存分舐めさせてあげます。」
「はい、女王様。・・・感激で体が震えます。」
 パシンッ!
「なんて嘘つきな口ッ!その口、その言葉に騙された女がどれほどいるか、思い知りなさいッ!・・もう、嘘がつけないように口を閉ざしましょう。・・マウスホルダーッ!」
 女王の言葉に従って、再び女奴隷が穴の開いたピンポン玉のような物を持ってきた。
 それを男にくわえさせて玉を通った紐を頭の後ろで縛る。
 男はもう呻くことしか出来なくなった。
「縄を持てッ!」
 マッチョな男が縄を持ってきて男の体に巻き付け縛り始める。
 交差する度に結び目を作り、亀の甲羅の模様のように縛り上げた。
 そして、二本の太いポールをステージに固定し、バールのような物をポールの上部に取り付けると、一度解いた男の手首を上げさせて吊すように縛った。
 男の足は一応、床に着いているが、その足も開かされて左右のポールにくくりつけられた。
 男が縛られる間に女王は言葉で責め立てながらガウンを脱ぎ捨て、長い一本の蔓だった鞭を、馬の尻尾くらいの長さで何本もまとめて束ねられている鞭に替えた。
「男のプライドなど、私の前では無用の物ッ!今すぐにかなぐり捨てておしまいッ!」
 バシッ!
「ううぅぅぅーッ・・・」
 今度は本当に男の尻に打ち据えられた。
「お前の汚いプライドも、醜い男の意地も、全てを捨ててしまいなさい。・・お前はもう私の奴隷なのよ。ホホホッ。・・・怖がるといいわ。泣くといい。・・全身から冷や汗を流し、引き裂かれた皮膚から血を吹き出し、泣き叫んで、洩らした糞尿まみれになって、男の垢を洗い流すのよッ!」
 バシッ!バシッ!
「ぐぅぅぅ・・・うううぅぅ・・・」
 痛みからか恐怖からか、男の足がガクガクと震えている。

 ミルクはもう見ていることが耐えられなくなっていた。
 うつむいて唇を噛み、膝の上で手を固く握り締めている。
「・・天使。・・大丈夫だぜ。あれはただの言葉責め。あの女王は心得ているから、滅多に本物の血は流さないよ。」
 マサトがそっと耳元で囁いた。
 ミルクを天使と呼んだのは、マサトがここでは”公爵”と呼ばれるように、匿名にしている為だ。
 ミルクは小さく頷いたが、どうしても顔を上げることは出来なかった。
「真性のマゾは血を流すことも厭わないが、あの男はまだマゾ歴が浅いようだ。マゾとしても奴隷としても半人前。もっと深みに嵌り込むまでは、無理はさせない。」
 ミルクはまたコクリと頷く。
「・・責める側が望むんじゃない。・・・責められる側が求めていくんだ。」
 マサトは言葉も出ずに頷くだけのミルクの肩を抱き締め、安心させるように優しく腕を撫でた。
 ミルクはゆっくりと顔を上げ、マサトを見つめた。
 仮面の奥の目は意外なほど冷静で深く澄んでいる。
「・・・うん。・・・わかった。・・・きっと、そうなんだよね。」
 ミルクは逆上せて目眩を感じながら、ようやくそう言った。
 それから、
「・・・ごめん。・・・眠くなっちゃった・・・」
と、呟くと、マサトに寄り掛かって目を閉じた。
 景山と若松が顔を見合わせ、若松がマサトの方へ身を乗り出すと、
「お車を用意させましょうか?」
と、小さな声で聞いた。
「・・いや。・・大丈夫。眠り姫には、もうここは遠い世界だ。」
 マサトは、フッ、と優しい笑みを洩らし、ミルクがマサトの膝枕で眠れるように体を横にしてやった。
 そして、
「・・天使にとっては限界でも、せっかくの女王のステージを邪魔したくないのだろう。・・このまま寝かせて置いてやればいい。」
と言って、大事そうに髪をそっと撫でた。
 景山も若松も納得して頷き、再び女王の世界へと意識を向けた。

<64>
「苦悶の恋」
§64§「苦悶の恋」

 日曜日、ミツルは早朝から試合で出掛けている。
 ミルクはマサトの所にお泊まりをしている。
 洗濯と掃除を手早く済ませてしまうと、今日一日何も予定していない空白の時間が急に寂しく感じてしまう。
 高藤とは昨日の午後会ったばかり。
 設計士をまじえて仕事の話をした後、ホテルで3時間を共に過ごし、甘く激しい愛欲に溺れた。
 膣にもアナルにも、高藤の記憶が残っている。
 琉美江は目を閉じて熱い疼きに、昨日の狂おしいひと時を反芻する。
 手が無意識に胸を撫でてしまう。
 乳首が固く突起していることに気付いて、琉美江はたまらずブラウスのボタンをはずして手を胸に忍び込ませた。
 高藤に何度も吸われ、舌で愛撫され、甘噛みされた乳首は、触れるだけでもビリビリ感じてきてしまう。
「、、、ぁぁ、、、英さん、、、」
 琉美江は熱い息を吐き、高藤の名前を呼んだ。
 胸を揉みながら高藤の眼差しを思い出していた琉美江の目に携帯電話が映る。
 ・・・いけない・・・
 そう言い聞かせる時には、もう手を伸ばしていた。
―「はい、高藤です。」
 高藤が事務的な声で電話に応える。
「、、ぁ、、、英さん?、、、ぁの、、、」
 琉美江は何を話せばいいか、言葉を探す。
 と、その時、小さな子供の声が聞こえてきた。
 ――”あん、お兄ちゃん!・・・パパァ、お兄ちゃんがぁ・・・”――
 琉美江は、ドキッ、として通話を切って携帯を投げ出すと、両手で顔を覆った。
 ・・・何てこと?・・・あぁ・・・私は何てことをしているの?
 子供が二人いることは聞いていたが、それ以上深くは聞かなかった。
 立ち入るべきではない、という思いもあったが、知ってしまうことが怖かったのだ。
 高藤に家庭があることは承知で関係を持った。
 家庭を壊す気持ちはない。
 それでも、高藤の家庭を意識すると辛くなった。
 ・・・寂しい心を埋めて欲しかっただけ・・・
 そう思っていたのに、体と心が深く結ばれていくほどに、恋しくてたまらなくなった。
 壊す気持ちがなくても、自分のしている行為が、高藤の家庭に陰りを差していることは確かだった。
 女の子の声、お兄ちゃんと呼んでいるということは、兄妹なのだろう。
 まだ幼い声だった。
 夫の裏切りを知ったら、妻はどんな気持ちだろう。
 自分自身も裏切られた苦しみを散々味わったじゃないか。
 まして、まだ子供は小さく、手もかかるだろう。
 自分の寂しさを埋める為に、別の女性を不幸にしてしまっている現実がそこにあった。
 どんな言い訳も通用しない。
 琉美江は体が震え、涙が溢れてきた。
 ルルル〜ルル〜♪
 携帯の呼び出し音が流れる。
 琉美江は躊躇いながらも、涙を拭って電話に出た。
―「琉美江さん。さっきは済みませんでした。」
「・・高藤さん・・・私こそ・・・ごめんなさい。」
―「いえ。私も家を出たら琉美江さんに電話しようと思っていた所でした。琉美江さんのご都合がよろしければ、お会いしたいと・・」
「・・でも・・・せっかくの休日ですもの。・・お子様と・・・」
―「いや、心配ありませんよ。・・子供達は友達と映画を観に行くことになってるので。」
「・・え・・・でも、まだお小さいでしょう?」
―「・・・それぞれ母親がついていますから・・・」
「・・ぁ・・・そぅよね。・・・ごめんなさい。余計なことを・・・」
―「・・琉美江さん・・・お会いしたい。・・・いけませんか?」
 琉美江は迷っていたが、高藤の声に体が疼いてきてしまい、誘いを断ることが出来なかった。
 高藤が家まで車で迎えにきてくれることになったので、琉美江は急いで支度をすることにした。

 駅に向かう美佳の横を通り過ぎて、有栖川家の前に車が停まった。
 ・・・ベンツねぇ。
 美佳は心の中で、フーンだッ!と思いながら、無視するように歩いていた。
 ところが、有栖川家の門から出てきたのは、ミルクではなくミルクの母親だった。
 車から降りて、ミルクの母の為にドアを開けたのは、落ち着きのあるまだ若い男性。
 ミルクの婚約者は新聞に写真が載っていたので知っているが、彼ではない。
 しかも、ミルクの母親の表情が、一応澄ましているが、嬉しさを隠せない様子で上気しているのだ。
 車はすぐに走り去ったが、美佳は怪しい空気を感じ取っていた。

 ミルクの中学時代の友達である角田美佳は、梅雨も明けた晴れ渡った空に溜息を吐いた。
 約束があって仕方なく出掛けてきたが、今日会わなければならない相手は、カズヤじゃない。
 カズヤは街で出会った25歳のイケメン。
 2年近く付き合ったヒロと別れて、激しく落ち込んでいた時だったから、大人の雰囲気があるカズヤの優しさが嬉しかった。
 セックスだって全然違う。
 こんなに感じるものだと知らなかった。
 うっとりとして、「また会える?」と聞いた時、「お店に遊びにおいで。」と言われて、初めてホストだと知った。
 初めの内は躊躇いもあり、ホストクラブというものが怖かったが、意外に安いお金で遊べるし、大事にされるので、すっかりヒロイン気分で楽しくなってしまった。
 だけど、ファーストドリンクは安いものの、カズヤとお話するには指名しなきゃいけないし、ボトル入れたりプレゼントしないと、他の女性に取られてしまう。
 やっと隣りにきても、「ごめん。俺も従業員だから店の方針に逆らえなくてさ。」と言って、すぐ違う席へ行ってしまった。
 だから、カズヤに内緒で援助交際してお金を稼いでは、お店に通った。
 カズヤは、「来てくれるだけで嬉しいよ。」と優しく言って、お金が足らない分はツケにしてくれていた。
 まさか、それがあんなに貯まってたなんて。
 先週の土曜日、久し振りにデートしてくれたカズヤから、「店長から怒られてさ。もう、ツケにしておくのは無理なんだ。それと、貯まった分を払わないとデートもするな、って・・いや、店以外でも女性に会うのが仕事だからなぁ。・・美佳と会いたくても、時間が作れないんだ。」と、言われてしまった。
 今でさえ援助交際のお金はほとんど注ぎ込んでいるのに、これ以上どうやってお金を出せばいいのかわからなかった。
 泣いていると、カズヤが、「いいバイトあるんだけど・・俺の為にやって貰える?」と言われた。
 カズヤの為ならと付いて行った先は・・・。
 美佳はまた溜息を吐いた。
 今日もそこへ行かなければならない。
 怖い人達に、「てめぇの借金はウチの事務所が立て替えてるんだ。逃げられると思うなよ?・・親や学校に知られたくねぇんだろ?」と言われている。
 知らない男にいっとき我慢して抱かれるくらいなら慣れているし、お金の為と割り切れる。
 でも、何人もの男達に取り囲まれる中、次々と色々な体位で抱かれ、その都度写真やビデオに撮られるなんて、全然楽しくない。
 またあんな思いをするのかと思うと足が竦む。
 それでも、行かなければ、写真やビデオをバラまく、と言われている以上、行かない訳にはいかなかった。
 幸せそうな顔で笑っている人達が憎くなる。
 関係ない知らない人でさえ、不幸を呪いたくなる。
 まして、知り合いなら・・・。
 ・・泣き虫で甘ったれで、どれだけ面倒見てきてやったか知れない子なのに、何であんな子が幸せいっぱいの顔で新聞に載るの?
 ・・青年実業家?資産家?・・・街頭売りのヤンキーじゃなかったの?
 ・・お金持ちだって知ってたから、彼の友達を紹介してくれなかった訳?
 ・・・恩を仇で返すって、このことじゃない。
 美佳はミルクのことを考えるだけで、吐き気がするほどムカついていた。

「おらおらおるぁぁッ!・・泣いてばっかいねぇで、嬉しそうな顔してしゃぶれねぇのかッ!えッ?」
 髪をつかまれ、無理矢理喉の奥まで臭いペニスを押し込まれる。
 吐きそうになって胃が痙攣する。
 後ろからは容赦なく乱暴にペニスを捻り込まれ責め続けられている。
「ったく、もっといい顔が出来ねぇのかッ?」
「ちったぁ、女子高生らしい可愛げのある顔しろッ!」
「使いもんにならなきゃ、ソープで稼いで貰うぜッ!」
 矢継ぎ早に怒鳴られ、美佳は泣きながら、
「、、ぁぅぅぅ、、、ごめんなさぃぃ、、、」
と謝る。
「こうなりゃ、中出ししかねぇな!」
「ひッ、、、い、、嫌ぁ、、、嫌だぁぁぁ、、、」
「うるせぇッ!面白くなきゃビデオが売り物にならねぇんだよッ!」
「てめぇより可愛い顔で、自分から撮ってくれ、って子だっているんだぜ?」
「フェラもヘタ、ザーメンも飲めねぇ、感じてイク顔も出来ねぇんじゃ、レイプしかねぇだろがッ!」
「嫌ぁぁぁ、、、ごめんなさい、、、もっと上手くしますぅぅ、、、」
「うっせぇぇッ!」
 美佳は強かに頬を叩かれ、数人の男達に仰向けに押さえつけられた。
 そこに、よりにもよって男達の中でも一番顔の崩れた脂ぎった中年男が、いきなりペニスを突っ込んできた。
「おらおら・・ヘヘヘッ・・中出しするぜぇ!」
「ひぃぃッ、、、ヤダァァァッ!」
 骨が軋むほど強く押さえられていて身動き出来ず、唯一動かせる頭を激しく振った。
「・・はぁはぁ・・いいぜぇ・・・もっと泣き叫べよ。・・へへへッ・・」
「嫌ぁぁぁ、、、お願いぃぃ、、、やめてぇぇぇ、、、」
「ヘヘッ・・・ゾクゾクするねぇ・・・はぁぁぁ・・・イキそうだぁ・・・」
「ああぁぁぁぁぁ、、、嫌ぁぁぁ、、、助けてぇぇ、、、」
 男は美佳が嫌がるほどに興奮するようで、ますます腰を激しくぶつけてくる。
 パンパンパンパンッ!
 グッチュッ、グッチュッ、グッチュッ、、、
「あぁぁぁぁぁーッ、、、ううぅぅぅーッ、、、」
 子宮を押し上げられる感覚が、今は恐ろしさしかない。
 固い異物が膣を強く擦る違和感に、体が震えてくる。
「、、お願いぃ、、、やめてぇぇ、、、」
「はぁはぁ・・・止めれねぇなぁ・・・はぁぁ・・・あぁぁ・・・イクぜぇぇッ!」
「きゃぁぁぁぁぁッッッ、、、」
 叫びも虚しく、奥深くで男は射精した。
「ヘヘヘッ・・・ほーら・・・いっぱい出たぜぇ。」
「おやっさんの精子が子宮に届いたッスか?」
「ああ、たっぷりな。」
「おぉっと・・出てきた、出てきた。バッチリ撮らねぇとな。」
 美佳は半ば放心状態で、男達の会話を聞いていた。

 精も根も尽き果て、呆然とした虚脱状態で体を横たえている美佳をそのままに、男達は嫌らしい猥談をしながら休憩していた。
 そして、食事をして一休みした後、美佳に、
「まだ撮影は終わっちゃいねぇんだぜ。」
「そうそう。これからが本番ってやつさ。」
と、体を綺麗にしてくるように言った。
 逆らう気力もなく、体を洗ってきた美佳は、どこかで見たことのあるセーラー服を着させられた。
「、、、これは?」
「今、その制服が裏ビデオ業界で流行っててな。そのセーラー服を着た子のビデオにはプレミアムが付くのさ。」
「その制服を着てる子が最近婚約しただろ?」
 美佳は、ハッ、として気付いた。
 見たことがあると思っていたセーラー服は、ミルクが着ていた香蘭学園のものだ。
「、、、何で、、、」
 何であたしがあの憎ったらしいミルクの制服を着なきゃいけないんだろう、と言いたかった。
 けれど、男達がそんな事情を知るはずもない。
「その女子高生が可愛いって評判なんだ。」
「15歳で億万長者のハートを射止めたってんで、妄想が湧くらしいぜ。ケヘヘヘッ。」
「あの幼い顔つきが余計そそられる、ってロリコンじゃねぇ男でもハマるらしいぜ。」
「だから制服着たままヤられまくってるビデオ見て、あの子を想像して重ね合わせるのが最高だって話だ。」
 美佳は唇を噛んだ。
 ・・・どこまで人をバカにすれば気がすむの?
 今の美佳はそれを要求する男達以上に、ミルクへの憎悪を燃やしていた。
「ま、せいぜいお嬢様っぽい顔でいるこったな。」
「泣いて嫌がるのも、それなら似合うだろうぜ。クッフッフッ。」
 男達は怒りに震える美佳の腕をつかみ、また撮影場所へと連れていった。
 ベッドが真っ白なシーツで覆われ、その周りを白いレースのカーテンで囲ってある。
 部屋に侵入した男達に襲われる、というシチュエーションで撮影が始まり、乱暴に腕をつかまれてペニスを口に押し込まれる。
 男は三人で、腕をつかんで押さえる男に、フェラチオをさせる男、そしてスカートをたくし上げてパンティを引きずり降ろす男。
 ・・・何で私が・・・
 美佳は逆らいようもなく、されるままになりながら、今ここでこうされるべきなのはミルクじゃない、と怒りを滾らせていた。
 ・・・みんなミルクのせいだッ!
 ・・あんな子が可愛いですって?
 ・・バカで抜けてて、いっつも失敗ばっかで、みんなに迷惑かけてるくせに・・男達はそんなことさえ見抜けず騙されているんだ。
 ・・あの甘えて潤んだ目で全て許されて・・何てズルイ子だろう。
 ・・自分だけ幸せになって、思い上がりも甚だしい。
 ・・あいつのせいで、こんな惨めな思いをしなきゃないらないんだ。
 ・・畜生ぉッ!畜生ぉッ!畜生ぉぉぉーーッ!
 美佳は嬲られ続けながら、ミルクを呪い続けていた。

 制服での撮影はしつこいほど長かった。
 三人の男は代わる代わる美佳を犯し、口だけでなく顔にも頭にも制服にもザーメンを飛ばした。
 そして、三人共、美佳の中へ中出しし、その度、泡だったザーメンが膣口から垂れてくるのを嬉しそうに撮影していた。
 ようやく開放された時には、すっかり夕暮れになっていた。
 ぐったりとして何も考えられず、無表情に怠い体を引きずって家路についていた。
 歩く度に股間が痛む。
 体中が痛くてたまらない。
 散々泣いて、涙も枯れ果てた。
 駅から家へ向かう道を項垂れて歩いていた。
 が、ふとミルクの家の前を通りかかった時、足が止まった。
 まだ誰も帰らないのか、灯りが消えている。
 ミルクは婚約者と幸せなデート中なのだろうか。
 今朝見たミルクの母親も、デートしてたりして・・・。
 そう思った美佳に疑問が湧く。
 ・・・人妻じゃん。いいのかよ?
 娘が娘なら母親も母親か・・
 ・・・男をくわえ込むテクニックでもあるんだろうか?
 淫乱親子があんな幸せそうな顔して、何であたしがこんなに不幸なの?
 美佳は暗がりに踞ると、じっとミルクの家を睨んでいた。

 琉美江は夢のようなデートから醒めきらない顔で、甘い気怠さに火照る体をシートに沈めていた。
「・・もうすぐ・・家に着いてしまうね。・・・琉美江・・まだ放したくない・・」
 高藤も愛し合った時のままに、熱い想いを引きずっていた。
「、、えぇ、、、でも、、、親の顔に戻らなきゃ、、、」
 琉美江が、ホォッ、と小さく甘い吐息を洩らす。
 高藤はたまらず琉美江の手を握り、
「あぁ・・琉美江の甘い香りに浸っていたい・・」
と、手にキスをした。
 しっとりと吸い付くような白磁の肌。
 甘い花の香りがする肌は、20代と言っても通りそうな張りと艶がある。
 これが二人の子を産んだ体だろうか、と驚嘆する。
 そして、秘密の花園のなんと魅惑的な感触だろう。
 名器に翻弄され溺れてからのアナル責めが、また目眩く快感を引き起こす。
 今日は朝からずっと二人だけでいられたことで、一度繋がったまま眠った後、また再燃する欲望の虜となってしまった。
 仕事も家族も忘れ去って、自分の存在すらわからなくなるほど、愛欲に溺れきっていた。
 意識を現実のしがらみに引き戻そうにも、そう簡単にはいかない。
「・・アナル・・・三度も責めてしまって・・・大丈夫かい?」
 琉美江の指に指を絡ませて、熱い息で囁くように言う。
 顔だけは前を向き、ハンドルを片手で操作していたが、アクセルを踏むのが弱くなる。
 スピードを落として少しでも長く一緒にいたいと願う。
「、、少し、、辛いけど、、、英さんをずっと思っていられるから、、それが嬉しいの、、、」
「琉美江・・・何て可愛いことを言ってくれるんだ。・・あぁ、愛しい人・・君を帰したくない。」
「、、離れるのが辛いのは、、、私の方よ、、、きっと、、、」
「離れていても、いつだって琉美江のことを想っているよ。」
「えぇ、、、私も、、、」
「・・海の様子がTVに映し出されると、琉美江を思い出してしまう。」
「、、ぁら、、、なぜ、、?」
「琉美江が不思議と竜宮の乙姫と重なるんだ。・・あそこが・・イソギンチャクだしね。」
「まぁ、、、いやだわぁ、、、」
 琉美江はクスクスと無邪気に笑った。
「亀が泳いでいると・・僕の亀を琉美江のイソギンチャクに突っ込みたくなる。」
「クスクスッ、、、英さんったら、、、」
「・・琉美江も・・亀を見たら僕を思い出して欲しいな。」
「、、、ええ、、そうします、、、」
 琉美江は赤らめた顔で恥ずかしそうにうつむき、頷いた。
 いくらスピードを落としても、止まらない限り着いてしまう。
 高藤は有栖川家の前に車を停めると、琉美江を抱き締めキスをした。
「、、ぁ、、、、、ん、、、いけないわ、、、」
 琉美江はキスに少し応えたものの、そっと高藤の胸を押し返した。
「琉美江・・・愛している。僕の心は君の虜だ。」
「、、私も、、英さんなしでは、、もう生きられないみたい、、、」
「なるべく早い時期に、身の回りを綺麗にするつもりだ。」
「あぁ、、、ダメよ、、、それはもう何度も話し合ったでしょう?、、お互いの家庭は壊さない、って、、、」
「・・お互いと言っても・・琉美江は一人も同然じゃないか。あんな男とはさっさと別れてしまえばいいんだ。琉美江のことは僕が一生守っていくから・・」
「、、英さん、、、ありがとう、、、でも、、、」
 高藤は再びキスをした。
 琉美江もしばらくキスに応えていた。
「、、、ん、、、もう、、家に入らなきゃ、、、」
「・・わかった。・・だけど、いいね?・・忘れないでくれ。僕が真剣だということを・・」
「、、、えぇ、、、」
 琉美江は妖艶に微笑むと、車から降りた。
 高藤が玄関まで送ろうとしたが、琉美江は首を振り、そっと玄関までいくと鍵を開け家の中へと入っていった。
 高藤は家に灯りがつくのを確認してから、車を発進させた。

 ・・・ふーん・・・やっぱりそうなんだぁ・・・
 生け垣の隅の暗がりにずっと踞っていた美佳は、二人の様子をじっと眺めていた。
 それから、クスッ、と、今日初めての笑いを浮かべた。
 ・・・ミルクに思い知らせてやる。
 美佳は虚ろな顔に笑みを張り付けたまま立ち上がると、家へと向かって歩き出した。

<65>
「裏切り」
§65§「裏切り」

 夏休みに入った。
 待ちに待った夏休み、開放感に心を解き放ち、自由を謳歌する・・・と、言いたいところだったが、目覚ましを止めていても、兄ミツルの素振りのかけ声で早朝から起こされてしまう。
「お兄ちゃんッ、近所迷惑だよぉッ。」
 窓を開けて顔を出すと、ミツルが見上げて、
「起きたらまず顔を洗って、着替えてから、人に話し掛けるものだぞ。・・ラジオ体操して体を動かし、庭の水撒きくらいしろよ。」
と言うと、また素振りを始めてしまった。
 ・・・ぅぅぅ、やぶ蛇だった・・・
 ミルクは仕方なく伸びをすると、顔を洗いに一階へ下りていった。

 ミツルはいよいよ高校最後の大会、高体連が始まる。
 今年こそ高体連総体で全国制覇を狙いたい、と練習にも熱が入っている。
 ミルクも7月中に宿題を済ませなければならない。
 母親もお菓子作り教室とケーキ店の準備や相談で忙しいらしい。
 教室の方が好評なので、お店の上にケーキ作りの教室も作ろうかと迷っているようで、世話役として援助してくれている弁護士の高藤と、度々相談しているのだという。
 有栖川家にのんびりした空気はなかった。

 朝食を済ませたミルクは部屋に上がり、机に向かった。
 マサトとの話し合いで、午前中は家の手伝いをしながら、自宅で宿題をすることにした。
 そして、昼食をマサトと一緒にして、会社か地下かマンションか、その時のマサトの都合に合わせて、マサトのいる場所で宿題をする。
 わざわざ宿題を持って出掛けるのは面倒だったが、母親が留守になりがちの昼間に一人で家にいるのは寂しかったし、何よりマサトがミルクを一人にしておくのが心配で手元に置きたがったのだ。
 会社に行くのは気が引けたが、会長室に籠もっていれば、そう迷惑はかけないだろう。
 調べ物が多い課題は家で済ませ、テキストとノートがあれば出来る物を持って行くことにした。

 宿題を始めて一時間ほど経った時、携帯の音楽が流れた。
 電話に出る前に相手を確認して、ミルクは少し驚いていた。
 春休み以降、ずっと疎遠になっていた、中学時代の友達の美佳だったのだ。
 商店街などで見かけることはあったけれど、お互いに声をかけることもなかった。
「・・はい。ミルクです。」
 多少ぎこちなく電話に出ると、
―「お願い。・・助けて。」
と言う、美佳の暗い声が聞こえてきた。
 ミルクはビックリして、
「美佳?・・どうしたの?」
と、三ヶ月以上話もしなかったことを忘れて尋ねた。
―「こんなことお願いするのは、虫が良すぎるだろうけど・・もう、ミルクにしか頼めないの。」
「なぁに?・・ミルで出来ることならいいけど・・?」
―「・・・今、お金借りた人から脅されてて、どうしても返さないと・・いかがわしい店で働かせるって・・・」
「・・そんなぁッ?!」
―「・・取り敢えず・・10万渡せば、残りは待ってくれる、って言うんだけど・・もう、あたしにはそのお金がないの。」
「・・10万・・・」
 ミルクは自分の貯金通帳を思い出して、頭の中で確認した。
 小学校の時から少しずつ貯めてきたお金がいくらかあるはずだ。
―「こんなこと親には話せない。・・だって、話してカズヤのことを知られたら、もう会わせて貰えなくなっちゃうもん。」
「・・・カズヤ?」
―「今付き合ってる彼。・・ヒロと別れたこと、知ってるでしょう?・・どうせ香織が話しただろうから・・」
「・・ぇ・・・ぁ・・・何となく・・・」
―「フンッ。やっぱりね。」
 美佳の声が妙に冷たく聞こえた。
「ぁ・・香織が美佳のこと、すっごく心配してたよぉ。」
―「・・それはどうでもいいよ。・・それより、お金を貸して貰えるの?」
「あ・・うん。それくらいなら、何とかなりそう。」
―「そう。・・それじゃ、今すぐ、持ってきてくれる?」
「うん。わかった。・・美佳はどこにいるの?」
―「ミルクに住所言ってもわかんないよ。○○駅で降りたら電話して。目印とかで確認しながら教えるから。」
「・・ぇ・・・でも、カーナビに住所入れれば、近くまでなら行けるでしょう?」
―「・・・ミルク一人で来て。」
「・・それは・・・いつもガードが付いてるから無理なの。」
―「家にいる時でもいる訳?」
「うん。ミルが家にいる時には、必ず応接間で一人待機してるし・・今日はお昼前に出掛けるから、運転手ももう来てるの。・・お金下ろすのに途中銀行に寄らなきゃいけないし、車で行った方が早く行けるんじゃない?」
―「・・・たいしたご身分だわね。」
 美佳の暗い声が更に低くなった。
「・・ごめん。・・そんなつもりじゃ・・・」
―「そいつ等ってみんなミルクの彼氏の部下なんでしょう?・・そしたら、あたしのことがみんな彼氏にまで知られちゃうじゃない。・・友達なのに、信じて打ち明けた秘密も守ってくれないの?」
「・・・それは・・・だけど・・・」
―「誰にだって隠したい秘密ってあるじゃない!」
「お金のことは言わない。ミルの貯金、多分50万くらいあるから、それを美佳にあげる。・・本当は全部借りてる分のお金を貸してあげたいけど、ミルにもそこまでお金出せないし、彼に相談したら美佳だって嫌だろうと思うし・・だから、お金を渡すってことは誰にも言わないから・・」
―「・・・へぇ・・・やっぱり玉の輿に乗ると気前も良くなるものね。」
「・・・そんなつもりじゃないよぉ・・・」
 美佳の声にはどこか荒んだ響きがあった。
 それが辛い恋のせいだとしたら、ミルクには、何を言われても言い返すことが出来なかった。
 ホストを好きになって、援助交際という名の売春までしてしまっている美佳が、悲しかった。
 同情と取られてしまっても仕方ない。
 それでも、ミルクは美佳を少しでも助けられるなら、と思っていた。
―「ミルクの彼があたしなんかにお金を出す訳ないじゃん。・・だいたい彼とは電話で一度喧嘩してるし、あたしは彼に嫌われてるんでしょ?」
「・・彼にはお金のことはいわないから。・・ただ、友達に会うってだけガードの人に話すだけだもん。それでいいでしょう?」
―「何で一人で来れないの?・・あたしがそんなに信用出来ない訳?・・もうあたしはミルクの友達じゃないんだ!へぇ!・・随分偉くなったものね?」
「・・・美佳ぁ・・・」
―「ミルクが一人で来れないって言うなら、・・あたしも秘密をバラすからね。このネタって、マスコミにいくらで売れるんだろぉ。アッハハッ。楽しみだねぇ。」
「・・・秘密?」
 ミルクは、ギクリ、として悪寒が走った。
 まさか、美佳がマサトの秘密を知っているというのだろうか。
―「ミルクのママってさ、不倫してるじゃん。」
「・・・えッ?!」
 ミルクはマサトのことでなかったので、安心したものの、あまりにも寝耳に水の話だった。
―「相手にも妻子があるげだし、いいのかしらねぇ?」
「・・・何のことか・・・わからないんだけど?」
―「ベンツ乗ってる30半ばの男性、知らない?・・家の前まで送り迎えするくらいだから、ミルクだって知ってる人じゃないの?」
 ミルクは息を飲んだ。
 美佳が言ってる母親の不倫相手は、高藤のことだろう。
 でも、まさか、そんな関係にあるとは思えなかった。
「・・・そんな・・・何かの間違いだよ。」
―「朝から夜まで一緒にいて、別れ際に熱烈なキスをする相手が、ただの友達とでも言う訳?・・あり得ないじゃん。・・絶対違うって言い張るなら、本当にマスコミに流そうか?」
 ・・・マスコミ・・・
 やっと取材もなくなり、普通の生活が戻ってきた所だというのに、マサトの弁護士と母親がお互いに不倫関係にあるとわかったら、また面白可笑しく書かれてしまうだろうか。
 高藤の家族はショックだろう。
 マサトだって、好意的だったマスコミが、今度は批判するようになってしまうかも知れない。
 ミルクの母親だって、どんな非難を浴びるか知れない。
 ミルクは呆然と言葉をなくしていた。
―「いい?・・ミルクが一人で来ないなら、本当にそうするからね。・・50万は手始めの口止め料ってことにしとくわ。・・とにかく今すぐお金が必要なのよ!ミルク一人で持って来なさい!いいわねッ?」
 美佳はそう言うと通話を切った。
 ミルクは血の気が引いて、体が震えていた。

 ・・・どうすればいいの?
 美佳が困っているなら、出来る限りのことをして助けたいと思った。
 だけど、それは美佳のプライドを傷つけてしまう、思い上がりだったのだろうか?
 ”友達を脅すようになったら、友情は終わりだ。”と、マサトは言っていた。
 そうは言っても、自分が美佳を傷つけているなら、脅してまで”一人でお金を持って来い。”と言う美佳と自分と、本当の加害者はどちらなのか、わからない。
 美佳の言う通りにして美佳の気が済むなら、そうした方がいいんじゃないか?
 ・・・だけど、どうやって一人で出掛ければいいの?
 玄関から出る度に、ボディーガードはついて来るのだ。
 それが隣りへ回覧板を持っていくだけのことでも、ミルクから目を離さない。
 一人で出掛けたい、と言って、聞くようなガードではない。
 もし、ちょっとでもミルクから目を離したら、マサトから厳しい制裁があるだろうことは、ミルクにも想像出来た。
 美佳の指示に従わないことは、美佳への裏切りになるだろうか?
 ガードの人だって、ミスを責められることを思えば、ずっと守ってくれている人への裏切りになるだろう。
 でも、裏切りとかは別にして、母親をマスコミの餌食にしたくない。
 何もかも、自分がマサトと付き合ったことで、起きてしまっていることなのだ。
 好意的な相手でさえ、取材される立場は辛かったのに、それが批判や中傷といったもので、世間の冷たい視線を浴びることになったら、優しい母は耐えられないだろう。
 母親を守る為にも、美佳の言う通りにしなければならない。
 ミルクは思い悩みながら、出掛ける支度をした。

 財布や携帯、そして通帳を入れたポーチを窓から下の植木へ投げ、玄関へと下りていく。
 予想通りボディーガードが、
「お出掛けですか?」
と、顔を出した。
「ううん。宿題に飽きちゃったから、お庭の水撒きでもしようと思って。」
「では、お手伝い致しましょう。」
「ヤァダァ・・・気分転換にするんだもん。邪魔しないでぇ。」
 ミルクはそう言って、ボディーガードが庭に出ないように、誤魔化しながら何とか押し止めた。
 庭に出ると、ホースを引っ張ってきて、水を勢い良くシャワーで出す。
 シャワーの音と水が葉に当たる気持ちのいい音がする。
 ミルクは初め、ボディーガードが窓越しに見える所から水撒きを始めた。
 ボディーガードもチラチラと様子を伺っていたが、水音がする間は安心と思ったようで、新聞に目を落とし始めた。
 それで、ミルクは徐々にガードの視野に入らない方へと移動していった。
 それから、ホースをそのままにして、ポーチを拾うと、そっと門から抜け出した。
 駅までは猛ダッシュで走り、丁度ホームに入ってきた電車に飛び乗った。
 ポールに寄り掛かり、吹き出す汗をハンカチで拭う。
 ・・・第一関門突破・・・
 ミルクは、ドキドキする胸を押さえて、大きく深呼吸した。

 銀行で50万円を下ろし、美佳の言っていた駅で降り、美佳に電話した。
 美佳は一つずつ目印を言って、ミルクがそこへ到達する度に新しい目印を告げた。
 そうしてどうにか雑居ビルの前に辿り着いた。
―「この建物の501号室にいるから・・・部屋のベルを鳴らしてね。」
「・・うん。わかった。」
 ミルクは上を見上げると、覚悟を決めて建物の中へと入っていった。

 ミルクが501号室のベルを鳴らすと、髪を金髪に染めた若い男がドアを開けた。
「へぇ・・・あんたが美佳の言ってた子か?」
 金髪の男は上から下まで、視線を往復させて言った。
「・・はぃ・・・多分。・・・あの・・美佳はいますか?」
「ま、いいや。入れよ。」
「・・あの・・・出来ればここで美佳と話したいんですけど・・・」
「こんな所じゃ話も出来ねぇだろ?・・いいから、入れって。」
 金髪の男がミルクの腕をつかんで、ドアの中へと引き込んだ。
 ミルクは困って眉を寄せたが、仕方なく男に連れられるまま、奥の部屋へと進んだ。
 奥は広めのフロアになっていて、壁際に長いソファーが置かれてあり、そこに数人の男達が座っていた。
 金髪の男はミルクをその男達の前に連れていくと、つかんでいた手を放した。
 それから、またベルが鳴ったらしく、金髪の男は部屋を出ていった。
 ミルクは部屋をグルリと見回し、
「・・あの・・・美佳は?」
と、男達に聞いた。
 男達はニヤニヤしながらミルクを眺めている。
「・・・あのぉ・・・」
「じきに来るんじゃねぇか?」
「・・・ぇ・・・来る?・・・ここにいるって聞いて来たんですけど・・・」
「じゃぁ、あんたの方が先に着いたんだろうぜ。来るのもいるのも似たようなもんだろ?どっちだっていいじゃねぇか。な?」
 ミルクは怪訝な顔になり、数歩後ずさりした。
「あたしはここよ。」
 美佳の声が後ろから聞こえたので、ミルクは振り返った。
 金髪の男と並んで美佳が立っていた。
「・・美佳・・?」
 首を傾げるミルクに、美佳は冷たく笑って近付いてくる。
「お金持ってきたんでしょう?」
 美佳が当然と言わんばかりに手を出した。
「ぁ・・うん。」
 ミルクは、ポーチから銀行の封筒に入れた50万円の札束を出して、美佳に渡した。
「サンキュ。・・ま、取り敢えず今回はこれで秘密は守ってあげるね。」
「美佳ぁ・・・」
 ミルクは美佳ともっとよく話がしたかった。
 50万は自分に出せる限界なのだ、と。
 友達同士で強迫するようなことはやめよう、と。
 だが、美佳はミルクを無視して、男達に向かい、
「あたしの借りた残り分は、この子が何とかしてくれるって言ってるから、あたしはこれで縁を切らせて貰うよ。」
と言った。
「てめぇの借金の残金がこの子に払えるって?・・そりゃぁ、てめぇよりは可愛い顔してるが・・てめぇにも稼いで貰わねぇと困るぜ?・・おい?」
 美佳はドスの効いた男の声に、勝ち誇ったような嘲笑を浮かべ、ミルクを顎でしゃくりながら言った。
「嫌らしい色目でばっか見てないで、ちゃんと顔を見たらどうよ?・・見たことあるんじゃないの?」
「あぁ?・・てめぇのダチに知り合いはいねぇぞ。・・バイトしてえ、って子じゃねぇのかよ?」
「おやっさん、ちょっと待って・・・」
 一人の男が中年の男の会話を中断させると、ミルクをマジマジと眺めた。
 それから、
「うぅわッ!・・・こりゃぁ・・たまげたぜッ!」
と、叫んだ。
「この子は、例の子だぜッ!15歳の婚約者、本人だッ!」
「えぇ?!・・・そう言やぁ・・・って、マジかよッ?!」
 男達は全員驚いた顔で、ミルクを舐め回すように観察した。
 美佳は腕組みをし、冷たい笑みでその様子を見ていた。
「どう?わかったでしょう?・・後はあんた達の腕次第。煮るなり焼くなり、好きにすればいい。・・彼氏は億万長者なんだし、やり方によっちゃ、1億出させることだって不可能じゃないでしょうね。」
 ミルクは会話の内容がさっぱりわからなかった。
 だが、どうやら美佳に騙されたのだということはわかった。
「・・美佳・・・どうして?」
 ミルクが美佳の腕をつかもうとするのを振り払って、
「あんたなんか大っ嫌いッ!あんたのせいで、あたしがどれだけ惨めな思いをしたかッ!あんたも同じ思いをすればいいのよッ!」
と、ミルクを睨みつけて叫んだ。
 そして美佳は、
「後は好きにしなよッ!本人がレイプされるビデオなんて、さぞ高値で売れるでしょうねッ!アッハハハハッ。ザマァーミロッ!」
と言うなり、フロアから駆け出していった。

 ミルクは呆然と美佳の出て行ったドアを眺めていた。
 美佳の言った言葉を繰り返し、意味を考える。
 ・・美佳がミルのせいで惨めな思いをしたの?
 ・・・レイプされるビデオって・・この人達が美佳にしたことなの?
 ミルクは少しずつ状況が見えてきた気がした。
「・・さて。・・・お嬢さんをどう料理するかな?」
 男の声にミルクは我に返って、男達の方へ向いた。
「・・あの・・・美佳の借金って、おいくらなんですか?」
 男達は顔を見合わせて笑い出した。
「そんなのはなぁ、あって、ねぇようなものさ。」
「・・はぃ?」
「つまりな、一度食らいついたら、絞れるまで絞り尽くす、ってことだぜ。わかるか?・・お嬢さんよ?」
「・・そーゆーものなんですかぁ・・・」
 ミルクは納得して頷いた。
「あんたも悪ぃ友達を持っちまった、ってことだな。」
「・・美佳に嫌な思いをさせてたなら・・謝りたかった。・・美佳を助けたい、って思ってました。」
「へぇ・・・そうは言っても、あいつはあんたを裏切ったんだ。もう、しょうがねぇだろ?」
「・・きっと・・裏切らなければいられないほど、ミルが憎かったんだと思います。」
「フン・・・何か憎まれるようなことでもしたのか?」
「・・よく・・わかりません。」
「まぁ、友達が金持ちのカッコイイ男と婚約したら、一方的に妬むってことはあるだろうぜ。」
「・・そうですね。」
 ミルクは悲しげにうつむいて溜息を吐いた。
 男達はミルクの様子に呆れていた。
 男達に脅えるでもなく、裏切った友達を恨む素振りもなく、沈痛な面持ちで考え込んでしまっている。
「お嬢さん、あんた自分がどうゆう状況に置かれているか、わかってるのか?」
「・・え?・・・ぁ・・どーゆー状況なんでしょう?」
 男達はまた吹き出して笑った。
「あんた、面白い子だな。・・まぁ、いい。時間もたっぷりあることだし、座って話でもしようや。」
 そう言って、ソファーの端を勧められたので、ミルクは、
「失礼します。」
と言って、腰を下ろした。

 金髪の男が、男達の代表らしき人物に言われて、ミルクにお茶を出した。
 ミルクは、
「いただきます。」
と言って、お茶を啜り、暑さと緊張から乾いていた喉を潤した。
 それから、
「・・あのぉ・・・皆さんはどちらかの組織に所属されていらっしゃるんでしょうか?」
と、男達一人一人をゆっくり見回して聞いた。
「あー?・・・そんなこたぁ、あんたには関係ねぇだろ?」
「・・そーですけどぉ・・・なるべく問題を大きくしたくないんです。」
「アッハハ。だったら、あんたがここでのことを黙ってりゃ済むんじゃねぇのか?」
「・・いえ。・・・そうもいきません。」
「はぁ?」
「・・実は・・・ここへ来る時に彼に相談したんです。」
「彼?・・・あぁ、あのS商事会長っていう婚約者か?」
「はい。・・美佳は黙ってろ、って言ってましたけど、どう考えても無理なんです。」
「へぇ・・・可愛い顔して、あんたも友達を裏切っていた、って訳か。」
「・・・そう取られても仕方ありませんが。・・彼は常にミルにボディーガードをつけているくらい心配性で・・ボディーガードはとても優秀な人達なので、裏をかくなんてこと出来ません。・・もし、その場は上手く誤魔化して抜け出せたとしても、駅まで走って15分かかりますし、その間には車で追いつきます。追ってくるのを逃れて電車に乗れたとしても、次の駅で彼の指示を受けた誰かが乗り込んで、ミルを保護するでしょう。」
「・・・マジかよ?」
「けど、美佳はあんたが付けられてねぇか、後をついて来たらしいぜ?」
 金髪の男が口を挟んだ。
「ええ。・・多分、そうした可能性もあるからと、彼の指示で一応、抜け出したように見せることにしました。」
「・・・じゃぁ、もうあんたがここにいる、ってことは承知してんのか?」
「はい。そうだと思います。」
「その場しのぎのデマカセじゃねぇだろうな?」
「・・だって・・・携帯が鳴らないってことは、ミルの居場所がわかっているからだもの。そうでなければ、心配して電話してくると思うんです。」
「ほぅ・・・なるほど。んで?・・・だから、どうだって言うんだ?」
「・・彼には風俗で仕事をしている知り合いがいるんです。その知り合いは、関東近辺の親分さん方とは・・多分、話がつけられると思うんですけど・・・」
 男達の顔色が変わった。
「・・・おい。・・・いい加減なこと、言うんじゃねぇぞ。」
「ですから、それを証明する為に、とちらの系列のどの組関係の方か、お聞きして・・・親分さんの方から皆さん方にお話して頂ければ、と・・・」
 男達の代表らしき人物が、腕組みをして考え込んでから、
「いいだろう。ヘタに手を出して、後でゴタゴタになってもつまらねぇ。あんたの言うことが本当かどうか、試してみようじゃねぇか。・・ただし、警察にチクろうなんてマネをしたら、ただじゃおかねぇからなッ?」
と言って、系列と組の名前を告げた。
「もちろん、わかっています。」
 ミルクは携帯をポーチから出し、短縮ボタンを押して電話を掛けると、
「お聞きしました。○○系○○組だそうです。」
と伝えた。
 5分後、代表の携帯が鳴った。
 代表は、ギクリ、と顔を強ばらせて電話に出た。
「――あッ・・――え・・・あ、はい。――あ、いいえッ!滅相もないっすッ!――はいッ!わかりましたッ!すぐに・・え・・――はい!丁重に謝罪してお帰り頂きます!――では・・」
「・・・マジっすか?」
 代表はそう聞いた男の顔をいきなり殴りつけ、
「こちらのお嬢様を疑うんじゃねぇッ!」
と、怒鳴った。
 そして、ソファーから立ち上がり床に土下座をすると、
「てめぇ等も土下座しねぇかッ!」
と、他の男達にも同じように床に平伏させ、
「大変失礼を致しました。」
と謝罪した。
 ミルクはそれを見て、小さく溜息を吐いた。
 マサトの後ろ盾があれば、こうも簡単に難を逃れることが出来てしまう。
 けれど、普通に生活している人達には、こうした後ろ盾はないのが当たり前。
 ミルクは、守られている自分と守られない人達の、大きすぎる違いに胸が痛くなった。
 だが、逆に言えば、ミルク自身も、もう闇の人間なのだと実感する。
 それならば、闇の総裁の妻として、毅然としているべきだろう。
 ミルクは息苦しさを堪えて、ようやく言葉を発した。
「・・・ミルは何も謝って頂くことはされてません。・・・ただ・・・もう美佳には関わらないでくださいませんか?」
 ミルクの言葉に代表は顔を上げ、眉をひそめた。
「・・は?」
「だって・・・ミルは美佳のお借りしたものを返せるだけのことはしてないし・・・またそれを、あなた方が美佳に要求するとしたら、ミルがここに来た意味がないと思うんです。・・・でも、それでは納得がいかないと言うなら、残金は彼がお支払いするそうです。」
「・・はぁ・・・」
「・・彼は・・皆さんも、それが仕事なのだから、仕方がない、って言ってます。」
「あ・・まぁ、そうして頂けるのなら・・・」
 代表はニヤリと笑みを浮かべた。
 ミルクはじっとその顔を見ていたが、ポロン、と涙が落ちてしまい、顔を歪めた。
 涙が落ちると同時に、堪えようとしていた思いが、どうしようもないほどに沸き上がってきてしまう。
「・・彼にそう言われても・・ミルはあなた方が許せない。・・あなた方が美佳にしたことが許せない。」
 ミルクは泣くまいと唇を噛むが、涙が勝手にポロポロと零れてしまう。
「・口出ししちゃいけないことぐらいわかってるけど・・でも、美佳は友達なんだもん。・・ううん。今は友達って言えないかも知れない。そう言われることが美佳には屈辱なら、ただの知り合いでもいい。・・でも、ただの知り合いだけだとしても、美佳がされたことを思うと・・悲しくて・・悔しくて・・どうしても許せない。」
 代表は正座した膝に手を置いて項垂れている。
 ミルクはぶつけようのない憤りに体を震わせていた。

 スッ、と部屋の空気が動いた気がした時、
「ミルク。もう気が済んだだろう?」
と、マサトの声がした。
 ミルクが声の方を向くと、マサトと少し後ろに若松と島田が立っていた。
「・・マサトぉ・・・」
 ミルクはふわりと立ち上がり、マサトの胸へと飛び込んでいった。
「・・美佳が・・・レイプされてビデオ撮られたって・・・ぅぅぅー・・・」
「ククッ。ま、そんなもんだろう。」
 マサトはミルクを両腕で包み込むように抱くと、宥めるように髪に頬ずりをして言った。
「アリス様。危険な店でツケが払いきれなくなるまで遊べば、その程度のことは当然なのです。通りすがりの少女を誘拐して、そのような行為に及べば、一方的に行為者が悪いと言えますが、原因があって結果があることでは一方だけを責められない・・・と、我々業界では捉えております。・・・多少、警察とは意見が違うでしょうが。」
 島田はそう言って、フッ、と笑みをこぼした。
 確かに、マサトや島田が笑ってしまうのは無理ない、とミルクも思う。
 おそらくは、もっと非道なことをする場合もあり得る、闇の組織なのだから。
「・・でも・・美佳はミルのせいで傷付いたって・・・」
「ミルク。そのことは後でゆっくり話そう。」
 マサトはミルクがまだ言いたそうにしているのを制してから、
「島田さん。ご足労頂いて恐縮です。この分野では、島田さんのお力をお借りした方が良いだろうと思いまして、お願いしました。お陰でフィアンセも無事手元に戻りましたので、失礼させて頂いてよろしいでしょうか。」
と言った。
 ・・ぁ・・そうか。
 マサトは表ではあくまでも闇とは無縁の実業家なのだ。
「何かとご贔屓にして頂いておりますのですから、これくらいは当然のことです。どうぞ、アリス様がこれ以上お心を煩わされないよう、早々にお引き上げください。・・後のことは私にお任せ頂きますよう。」
 島田もあくまでも、マサトを得意先としての態度で、返事をした。
「では、お言葉に甘えて、失礼させて頂きます。」
 マサトは演技を終えて片頬に不敵な笑みを浮かべると、ミルクを抱き上げた。
 それから、クルッ、と踵を返すと、若松の開けたドアから外へと出ていった。
 入れ替わりに島田の部下が数名、部屋の中へと入っていく。
 多分、島田が今後一切ミルクや美佳への手出しをしないように、きっちり話をつけてくれるのだろう。

 ミルクはマサトに抱かれたまま、車に乗り込んだ。
 マサトは後部座席のドアが閉められるなり、ミルクに熱いキスをしてから、
「どうなるかと冷や冷やしてたぜ。・・ったく、脅しをかけてくるような奴は放っときゃいいのに。」
と言って、抱き締めた。
「・・でも・・・信じたかったんだもん。」
「信じた結果が裏切られたんだろ?・・もう、庇うこたねぇぜ。いいな?」
「・・ミルだって・・マサトに話したじゃん。・・話さないでくれ、って言うのを裏切ったんだもん。美佳だけを責められない・・」
「話さずにいて、もし、あいつ等にレイプされてビデオまで撮られてたら、どうするんだ?・・話して聞いてくれるような相手じゃねぇんだぞ?」
「・・・そんなの・・・耐えられないけど・・・でも・・美佳はその耐えられないことをされたんだもん。・・・悲し過ぎるよぉ・・・」
「だが、あの女はミルクにそれをさせようとしたッ!・・いくら自分が辛い目にあったからといって、それに関係ねぇ者まで巻き込む道理はねぇだろうがッ!・・・それを忘れるな。」
 マサトは厳しい口調で、吐き捨てるように言った。
 ・・・そうかも知れない。
 だけど・・・
「・・・ぅん・・・」
 そう答えるしかなく頷いたが、ミルクは無性に悲しくなって、マサトの胸に顔を押しつけて、しゃくり上げながら泣き出していた。