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「南国の風」
§26§「南国の風」

 ヘリコプターに乗ったミルクは「気圧が変わるから。」と、マサトからあめ玉を貰った。
 一つ二つと舐める内に眠くなってしまい、ミルクはマサトにもたれて熟睡してしまっていた。
 抱き上げられる感覚に目を覚ますと、あたりはすっかり闇に包まれていた。
「・・ぁん・・・」
「目ぇ覚めたかぁ?・・疲れてたんだろうな。よく寝てたぜ。」
 そう言うマサトの含み笑いには闇の色が滲む。
 実はミルクに景山との会話を聞かれないよう、軽い睡眠薬の入ったあめ玉を渡したのだ。
「・・ここはぁ?」
「俺の会社の倉庫があるとこだ。」
「・・ふーん・・・」
 マサトは寝惚け眼で顔を擦るミルクを抱いて、ヘリコプターのすぐ近くに停まっていた車に乗り込んだ。
「・・どこ行くのぉ?」
「ここの管理事務所だよ。倉庫街の中を歩いてったら時間くっちまうからな。」
「ほぇぇ・・・そんなに広いんだぁ。」
 ミルクは感心して窓の外に目を向ける。
 だが、暗闇に包まれてよく見えなかった。

 管理事務所に入り、応接室のような所にミルクは運ばれた。
 革張りのゆったりとしたソファーに降ろされて、軽い毛布を腰から下に掛けられた。
「済まないが・・・ミルクはここで待ってて欲しい。」
「えー・・・また独りぼっちにするぅー・・・」
「いや。若松と部下を二人残していくから、遊んで貰うといい。」
 マサトが笑って言うと、若松は困惑顔で部下達と顔を見合わせた。
「プゥゥゥッ・・・おじさんと何して遊ぶのぉ?」
「クックッ。TVを観ててもいいし・・面白いのをやってなかったら、ビデオでも借りてきて貰うといい。あぁ、ついでに好きな食べ物とかも頼むといいぜ。・・ちょっと夕飯を一緒に喰う暇がねぇみたいだから・・」
「・・・それで、マサトはどこに行っちゃうのぉ?」
「ここの地下に人を待たせてるんで、顔出しにな。」
「ここの?・・だったら、ミルも行くぅ。」
「地下には毒蛇がウジャウジャしてるぜ?」
「ウッソォー。だって、そしたら他の人だって行けないはずじゃん。」
「・・・コホッ・・・毒を持った蛇みたいな奴等がウジャウジャ・・だな。」
「ゥゥゥー・・・」
「だからミルクが行っても面白くねぇだろ?・・漫画とかゲームとか、好きな物を買ってきて貰えばいい。・・な?」
「・・・プンッ。」
「クックッ。拗ねるなよ。戻ったら・・たっぷり埋め合わせするからさ。」
 マサトはミルクの頬にキスをすると、
「若松、頼んだぞ。」
と言って、ヘリコプターで迎えに来た景山と呼ばれた男と応接室を出ていってしまった。

「・・あっ・・・荷物、置きっぱなしで来ちゃったじゃん。」
 ミルクは思い出して独り言のように言うと、若松へ視線を向けた。
「それでしたら心配ありません。今夜中には本宅へ届けられる手筈になってますので。」
 若松は笑みを浮かべて答えた。
「・・ふーん・・・そうなんだぁ。・・・って・・本宅って?」
「こちらのボスのお住まいです。今夜は奥様もそちらにお泊まり頂くことになります。」
「奥様って・・ミルのことぉ?・・・やだぁ〜・・・」
「で・・ですが・・・」
「やだ、やだ、やだぁーッ。」
 ミルクはごねて首を振る。
 ずっとマサトの実家でおとなしくしていた反動か、ベッドにいる所まで見られてしまっている若松には駄々っ子の地が出てしまう。
「それでは、どのようにお呼びしたらよろしいでしょう?」
「普通に名前でいいじゃん。」
「・・・ボスが何と言われるか。・・・と、申しますより、私共は闇の者。奥様のお名前をお呼びすることで汚したくありません。」
「・・意味不明ぇ〜・・・んっもぉ・・・じゃぁ、アリスは?」
「ニックネームですか。・・そうですね、それでしたら。・・わかりました。では、アリス様と呼ばせて頂きます。」
 若松は笑顔で頷き、後ろに控えていた部下達に、
「お前等もいいな?・・今日から、奥様をアリス様とお呼びするように。」
と、ミルクに対するのとはうって変わった厳しい口調で言った。

 二時間以上が経過して、マサトが地下から戻ってきた。
 マサトはドアを開けてミルクを見るなり、吹き出して笑い出した。
 背中に纏っていた暗い闇の影が消えていく。
「プックックックッ。・・・何ともまぁ・・・器用じゃねぇか。」
「何がぁ?」
 ミルクは口にクリームをつけながら、キョトンと首を傾げる。
 アニメのビデオを観ながら漫画本も片手で持って読み、膝に置いた皿のケーキを口に運んでいる姿は15歳の少女そのものかも知れない。
 ケーキはテーブルにある大きな物から切り分けたものらしく、随分乱雑な食べ方をしたのか、原型を留めていない。
 マサトはまだ笑いが納まらずに、小さく首を振ってミルクの向かい側に座った。
 それから室内に目を向け、一人緊張気味に立っている部下に、
「若松ともう一人は?」
と聞いた。
「あ、はい。若松さんはアリス様がそれの続編も観たいと仰るので借りに行ってます。・・田代はゲームを探しに・・・」
「そうか。・・お前も赤い顔して汗をかいてるようだが?」
「初め自分がゲームを買ってきたんですが、それが違うと言われまして、返却してきました。」
 男は戻ったばかりのようで、ハンカチを出すと額の汗を拭った。
「何も返さなくてもいいじゃねぇか。」
「だって赤バージョンは持ってるんだもん。必要ないのにもったいないじゃん。」
 ミルクはシラっと答える。
 どうやらミルクには、一人一人に注文を出して行かせることが遊びだったようだ。
「馬鹿野郎ッ!だったら、さっきまで奥様は一人でここにいらしたってことか?何かあったらどうするんだッ!」
 景山が男を怒鳴りつける。
 ミルクは初め自分が怒鳴られたのかと驚いて肩をすくめた。
「す・・済みません。」
 男が膝に付きそうなほど頭を下げて謝罪する。
「景山。怒鳴んじゃねぇ。ミルクがびびっちまってるだろ。」
「・・はい。・・ですが、奥様を名前で呼んだり失礼な態度が多すぎます。」
「あ・・あの・・それは、奥様が、そう呼ばれたくないと仰られまして・・・」
「ん?・・ミルク、そうなのか?」
「だってぇ・・まだ、ウェディングドレスも着てないのに、いきなり主婦よばわりされたくないもん。」
 ミルクはうつむきがちに頬を膨らませた。
「それに、ミル、プロポーズもされた記憶ないよぉ〜・・・」
「いつも愛してるって言ってるだろ?一生離さないって。」
「そーゆーのとは違うもん。」
 ミルクが駄々をこねるように体を揺らした時、立てていた膝からケーキの乗った皿がお腹に落ちる。
「ぁッ・・・ごめん。大丈夫?」
 ミルクはお腹に向かってそう言った。
 マサトは、え?と怪訝な顔で立ち上がってミルクの毛布が掛かっているお腹部分を覗いた。
 途端、ギクリッ、と表情を強ばらせた。
 マサトがこれほど動揺することは滅多にない。
 景山も近付いて様子を伺うと、息を飲んで青ざめた。
「ミルク・・・じっとして動くなよ。」
 そう言ったマサトが例の音のない口笛を吹いた。
 ズルズルッ、とケーキまみれになった蛇が顔を上げ、それから毛布を伝って床に降りるとマサトの所まで這ってきた。
 マサトは蛇を腕に巻き付けると、ほっとしてソファーに座った。
「何でコイツがここにいるんだ?」
「え?・・・いけなかったの?・・・ケーキ食べてたら側に寄ってきたから、一口あげたら喜んで食べたの。それで、食べきれないから好きなだけ食べていいよ、って言ったら、・・クスッ・・あーんなにいっぱい。・・ほら、お腹ころころでしょう?フフッ。」
 言われてみれば、確かに、異様に脹らんだ胴体をしている。
「でね、お腹いっぱいになったら、ここで丸まって寝ちゃったの。フフフッ。可愛いねぇ。」
 マサトは笑うに笑えず、表情を固くしている。
 体は小さいが噛まれたらゾウでさえ即死する猛毒を持った毒蛇なのだ。
「どうしてここまで来たんだ?・・地下の俺の部屋で飼ってる奴だぞ。」
 マサトは眉間にシワを寄せて部下を睨んだ。
 部下も知らなかったようで呆然としている。
「そっちの方から来たみたいだけどぉ?」
 ミルクは部屋の隅を指差した。
「・・通風口が開いてますね。ここから甘い香りに誘われたのでしょうか?」
 確認した景山が声を潜めて言う。
「仮にそうだとして、何故通風口が開いてるんだ?」
「・・確かに。・・・詳しく調査する必要がありそうですね。」
 景山は静かに頷いた後、部下の男の所へ行って思い切り殴った。
「だから奥様・・アリス様のお側を離れんじゃねぇって言ってんだッ!」
「済んませんッ。済んませんッ。」
 殴り飛ばされた男は床に土下座して体を震わせながら叫ぶ。
 景山はそれでも気が済まないのか、二三度男の腹を蹴り上げた。
 男は呻きながらも土下座を崩さなかった。
「やめてよぉ。ミルが勝手に仲良くしてただけなんだからぁ。」
「コイツは狂暴で仲良く出来るような蛇じゃねぇ。・・しかも猛毒を持ってるんだぜ。」
「・・・ぇ・・・」
「ケーキに目がいったのが不幸中の幸いだったな。」
 マサトはキャビネットからワイングラスを出すと、蛇の頭をつかんでグラスの縁に押し当て、透明な液体を絞り出す。
「この毒に免疫があるのは一族でも俺だけだ。」
 ミルクは今更ながら唖然とした顔で固まっていた。
 マサトはワインを毒の入ったグラスに注ぐ。
「・・マサト?・・・どうするの?」
「俺にとって、この毒は滋養強壮の効用があるのさ。他の奴が真似したら、即死するだろうがな。」
 マサトはミルクに乾杯のポーズをとって、一気に飲み干した。
「・・いやぁーッ・・・マサトぉーッ・・・」
「心配ねぇって。・・今夜は・・甘みが強ぇな。クックッ。」
 マサトは革袋に蛇を入れると、景山に地下に戻すようにと渡した。
 景山は口を縛った紐の部分をつまんで持ち、部屋を出ていった。

 ミルクに頼まれた用事から戻ってきた若松ともう一人の部下も、景山から激しく叱咤された。
 若松は真っ青になって、まさか、そんなことが、と自分で自分の頭を床にぶつけて謝罪していた。
「もう、いい。今回は事なきを得たことだし・・今後は注意してくれ。」
 マサトはミルクをこれ以上怖がらせたくなかったので、簡単に話を終わらせた。
 それから、ソファーで膝を抱え小さくなっているミルクを抱き上げると、
「俺の本宅へ案内しよう。」
と、優しく言ってキスをした。
 微かに血生臭い味のするキスだった。
「・・・毒のキス?」
「毒は俺の唾液や体液で中和する。だから、もう問題ねぇよ。」
「・・・そぅ・・・」
 ミルクはマサトの首に腕を巻き付け、肩に顔を擦り付けた。
「今朝から色々あって疲れちまっただろ?」
「・・ぅぅん・・・ちょっと・・驚いただけ・・・」
「ああ。・・俺も。・・あんな怖い思いは初めてだぜ。」
「ぇ?・・・どうして?」
「ミルクに何かあったら・・そう思うと・・な。」
「・・ぅん・・・」
 ミルクは上目遣いにマサトを見つめ、ゆっくりと瞬きをした。
 マサトはそんな甘える仕草にたまらず熱いキスをする。
 クチュ、、チュプ、、、
 沈黙を続ける男達の前で、繰り返される甘いキス。
「はぁ・・我慢出来ねぇ。早くベッドに行こうぜ。」
「・・ぁん・・・家に・・でしょ?」
「クックッ。そうとも言う。」
 マサトは笑って、もう一度キスをした。

   靴のないミルクはずっとマサトに抱き上げられたまま、マサトの本宅へ到着した。
 実家ほどではないが、本宅もかなり立派なお屋敷だった。
 特に優秀な組織員の研修施設にもなっているということで、使用人の他に彼等十数人も出迎えに玄関ホールに集まっていた。
 けれど、マサトはミルクを抱き上げたまま、
「疲れてるから、解散ッ!」
と、一言言っただけで、ミルクを自分の寝室へと連れていく。
「ぇ・・・ミル、挨拶・・・」
 ミルクは階段を駆け上がるマサトを咎めるように睨む。
「そんなに気を使って頑張らなくていいんだぜ?・・挨拶尽くしで笑顔の引きつったミルクをこれ以上見たくねぇよ。」
「ぁぅ・・・ごめんなさい。」
「そうじゃなく・・あんまり俺の背負ってる物が大きすぎて、ミルクのプレッシャーになるんじゃ、俺がたまんねぇ。・・俺を嫌いになりかけたろ?」
「ぇ・・・そんなこと・・ないよ・・・」
 ミルクは小さな声で言うと、マサトの肩に顔を埋めた。
「・・やっぱりな。・・・お前ってすぐ顔に出るから、わかっちまうぜ。」
 苦笑して言うマサトの声が微かに震えている。
「ミルクは俺だけを見てりゃいいんだ。他への気遣いなんていらねぇ。そんなのは大人になってから覚えりゃいいんだよ。・・・また15歳じゃねぇか。我が侭でいい。駄々っ子でいい。・・・いい子で頑張るお前に惚れたんじゃねぇんだぜ?」
「・・・だけど・・・ミル・・・マサトの知り合いに嫌われたくないもん。」
「アッハッ。そんなことで嫌やしねぇって。・・俺を見てみろ。未だに我が侭だぜ。クックックッ。」
 マサトの我が侭は違う気がしたが、それでも少しだけ気持ちが救われて、ミルクはマサトの肩に顔をすりすりと擦り付けた。

 マサトはずっと抱きかかえていたミルクをベッドに寝かせると、キスをしながら服を脱がせた。
 そして、ミルクの体を舐め回すようにキスをしながら、自分も服を脱ぎ捨てた。
「愛してる、ミルク。・・俺から離れないでくれ。」
 マサトはミルクの首の付け根をキツク吸った。
「、、ぁぁ、、、マサトぉ、、、」
「お前は俺のもんだ。・・それ以外は認めねぇ。」
 強くつかんだ胸の膨らみにも赤く痕が残るキスをする。
 そして何度も乳首を強く吸い、歯を立てた。
「ぁん、、、マサト、、、痛ぃ、、、」
 マサトはハッとして、赤く歯形のついた乳首を舌で優しく舐め回した。
 それでもマサトの激情は納まらないようで、
「お前の体に触れていいのは、俺だけだ。」
と、至る所にキスマークをつける。
「、、ぁ、ぁ、、ぃゃぁ、、、」
 マサトはクリトリスにも強く吸い付いた。
 今朝、温泉に入ったきりの体を、隅々まで舐められる恥ずかしさもあったが、クリトリスを強く吸われるとオシッコが洩れそうに感じる。
 イヤイヤ、と首を振るがなかなか許してくれない。
 小さく隠れていたものが、ぷっくりと赤く膨れて顔を覗かせる。
「可愛いぜ。・・俺だけの赤い宝石だ。」
 しゃぶりつきながらそう言ったマサトは、更に顔をミルクの股間に埋めて、溢れ出た蜜で輝く花唇に舌を這わせた。
「はぅ、、、んん、、、」
 ビクビクと反応してしまう。
 愛される度に敏感になっていく気がする。
「ぁぁ、、、ぁぁん、、、ぁぁぁ、、、」
 マサトが花弁を口に含みながら蜜壺へ舌を差し込んでくる。
 忙しく動くマサトの舌の感覚に、羞恥心以上の快感が走る。
「ぁぁぁぁぁ、、、ぁぁぁん、、、」
 全身へと走る電流のような快感に腰が浮いてきてしまう。
 ・・あぁ〜ん・・・どうしてこんなに気持ちいいのぉ・・・
 ミルクは無意識にマサトの髪を撫で回していた。
 音を立てて蜜を啜り、しばらく吸い付いていたマサトがようやく股間から顔を上げた。
 そして、顔を赤らめているミルクを愛しそうに見つめ、
「ミルクに抱っこされてたアイツを見た時、お前が噛まれたらという恐怖もあったが、同時に引き裂いてやりたいほどの嫉妬も感じていた。」
と、苦しそうに囁いた。
「ぇ、、でも、、、蛇と仲良くなって欲しいって、、、」
「俺の蛇は、まだキスもして貰えねぇんだぜ。」
「、、ぁ、、、」
「俺の蛇を一番に可愛がってくれなきゃ・・他の蛇に甘えさせたくねぇ。」
「クスッ。、、、マサトも駄々っ子ぉ、、、」
「お前は俺の一番なんだ。俺もお前の一番でなきゃ許せねぇ。」
「、、マサトが一番だよ。」
「なら・・・キスしてくれるか?」
「、、、ぅん、、、」
 ミルクが小さく頷くと、マサトは体を上にずらし、ミルクの顔の前に、固く硬直して真っ赤な顔をした蛇を突き出した。
「キスして。」
 マサトが囁く。
 ミルクは恐る恐る顔を近付け、そっと唇を押し当てた。
 蛇は一つの目から透明な涙を溢れさせて喜んでいる。
「涙も舐めてやってくれ。」
「、、ぅ、、、これ、、、何?」
「まだ精子の出てない・・我慢汁とも言うが・・・いいだろ?」
「、、、ぅん、、、」
 ミルクは初めそのまま唇だけで舐めようとしたが、頭が揺れてよく舐められなかったので、ドクンドクンと脈打つ胴体をそっと握って、ペロッ、、ペロッ、、と舐め始めた。
「あぁ・・・気持ちいいぜぇ。」
 マサトはミルクの髪を撫でながら熱い吐息を洩らす。
「いい子だ。・・・そのまま口ですっぽりくわえてくれたら、もっといい子なんだがなぁ・・・」
 ミルクは蛇の頭を舐めながら、上目遣いにマサトを見上げる。
 それから、ちょっと躊躇っていたが、一度大きく息を吸うと、口を大きく開けてくわえこんだ。
 マサトは、蛇の胴体を握っているミルクの手を上下に動かすように、自分の手を添えて教える。
 ミルクは口いっぱいに蛇の頭をくわえ、その胴体を擦り上げる。
「はぁ・・・いい子だ。・・・可愛いぜ。」
 初めは抵抗があったミルクだったが、マサトが喜んでいるのが嬉しかった。
 マサトは気持ちよくなってきて、自分でも腰をわずかに動かし始めた。
 くわえているだけでもいっぱいなのに、喉に当たるほど押し込まれる。
「、、、ん、、んん、、、」
 ミルクは苦しくなって、目に涙を滲ませた。
「、、、ふング、、、んー、、、」
 まだぁ?、と潤んだ目で訴えるが、
「もうちょっと頑張って。」
と、マサトは片頬で笑って言う。
 頑張らなくていい、って言ってたくせにぃ、、、とミルクは睨み付ける。
「歯は立てるなよ。・・これだけビンビンに充血してると、血が噴き出しちまうぜ。クックッ。」
 ミルクは膨れようにも膨れられず、蛇への愛撫を続けていた。
「はぁぁ・・・このまま出してぇ・・・」
 マサトが熱い吐息とともに呟く。
 ミルクはギクリとして首を振ったが、
「なぁ・・・いいだろ?」
と言われると、拒絶も出来なかった。
「じゃぁ、いくぜ。」
 マサトはミルクの髪をグイッとつかんで、自分で強く扱き始めた。
 喉の奥に何度も当たり、息苦しさに頭がボォーっとしてくる。
 苦いのは嫌だったが、早く出してぇ、と目を閉じて願う。
「うううっ・・・はぅっ・・・うぁぁぁぁぅぅっっっ・・・」
 青臭くて苦いものが口に溢れ出す。
 まだ口は蛇で塞がれているので、飲み込むしかなかった。
 ゴクリ、、ゴクリ、、、と、ミルクの喉が動くのを、マサトは満足そうに見ながら優しく髪を撫でていた。

 拗ねたように啜り泣くミルクにスポーツドリンクで口直しさせたマサトは、
「・・泣くなよ。・・・最高に感激してんだぜ?」
と、背中を撫でて、ミルクの顔にキスを繰り返す。
「、、クスン、、、ホント?」
「ああ。・・ミルクが可愛くて、可愛くて、たまんねぇ。」
 そう言われるとまんざらでもない。
 頑張って良かったかも、と思えてくる。
「、、、気持ち、、良かった?」
「めちゃめちゃ最高だぜッ。病みつきになっちまう。」
「、、ぅぅ、、、」
「ミルクが俺の為に、こーんなに頑張ってくれてる、って気分が、またジワーンと嬉しくなるんだ。」
「、、、ぅん、、、」
「他の女がしゃぶらせてくれって懇願してくることもあったが、全然その気にもならねぇし、気持ち悪ぃこと言うんじゃねぇ、って言ってやった。」
「、、、ぇ?」
「惚れたお前だから嬉しいんだぜ。」
「、、、ぅん。」
「俺が欲しいのは、お前だけだ。」
「、、マサトぉ、、、」
 ミルクはマサトの逞しい体に自分の体を押しつけるように、ギュゥーッ、と抱きついた。
「愛しているのも、・・ミルク・・お前だけだぜ。」
 マサトはミルクを優しく抱き返すと、ミルクの中に、再びやる気満々に頭をもたげている蛇をゆっくりと押し込んだ。
「あぁぁ、、、ぁぁ、、、マサトぉ、、、」
 ミルクは足を大きく開いて、マサトの腰に巻き付けた。
 もう、自分から求めるように体を開くようになっていた。
 めり込んでくる感覚が嬉しくてたまらない。
 気持ち良さに足の指先まで痺れてくる。
「ぁぁぁ、、、マサトぉ、、、ミルもぉ、、マサトだけを愛してるぅ、、、」
「ミルク・・・俺のミルク・・・」
 マサトはゆっくり動かしていた腰を次第に大きく突き上げ始めた。
 ジュプッ、、ジュプッ、、ジュプッ、、、
 充分湿った膣が肉襞を蠢かせ吸い付いていく。
 突き上げる度に、キュゥゥーッと締め付ける。
「はぁぁ・・・いい体だぜ。・・・こっちはもう・・とっくに病みつきだ。」
「ぁぁぁん、、、ミルもぉ、、、気持ち、、いいよぉぉ、、、」
「一つになってると・・身も心もとろけそうになっちまう。・・・この俺が・・・形無しだぜ。クックックッ。・・こーゆーのを名器ってんだろな。」
「ぁぁん、、、ミル、、、知らなぁい、、、くふん、、、」
「そりゃ生まれつきなもんだからな。・・ここまで虜になるものがあるとは・・思わなかったぜ。・・・日溜まりのように、側にいてくれるだけで良かったのにな。・・クックックッ。・・嬉しい誤算だぜ。」
「、、、ぁぅ、、、ぁふん、、、わかんないよぉ、、、」
「クックッ。そうだな。・・ミルクはただ感じてればいいさ。・・難しいことなんて必要ねぇ。・・お前の感じてる顔も、最高に可愛いぜ。」
 マサトはそう言って熱いキスをすると、腰の動きを早め、激しく奥へ奥へと突きだした。
「あ、、ぁ、、あぁぁぁ、、、あぁぁん、、、あぁぁぁぁぁ、、、」
 ミルクのよがり声も高く悩ましく、少女から女のものへと変わる。
 快感に悶え眉を寄せる表情は、幼さの中に色香が漂う。
「あぁぁぁ、、、はぁぁん、、、イクゥ、、、イク、、イク、、あぁぁぁん、、、」
 仰け反って体を震わせる少女の柔らかな肌が薔薇色に染まる。
 自分からも腰を動かして、キュウ、、キュウ、、キュゥゥゥッ、、、と締め付ける。
「あぁぁ・・・いいぜぇ。・・・最高だぜぇぇ・・・」
 ビッチュッ、、ビッチュッ、、グッチュッ、、グッチュッ、、、
 淫靡な音も絶え間なく続く。
「あぁぁ、、、あぁ、、あぁぁ、、、イク、、イク、、イク、、イク、、あぁぁぁん、、、」
「俺も・・・我慢出来ねぇぇぇーーーっっ・・・うぁぁぁぅぅぅーー・・・」
 動きが止まり、抱き合ったままお互いの息遣いを聞く。
 マサトの血生臭い汗と、ミルクの甘い花の香りの汗が、ひとつに混じり合い、南国の風のような魅惑的な香りとなる。
 マサトはふと、やはりこの子は南国の姫かも知れない、と思った。
 だが、今それを言う必要もなかった。
 ゆっくりと体を離し、ミルクを腕に抱き包む。
「愛してる・・・ミルク。」
 汗ばむ額にキスをすると、
「、、、ん、、、」
と、恍惚として目を閉じているミルクが微かな声で応えた。
 マサトは尽きることなく沸き上がる愛しさに、フッと微笑み、もう一度キスをすると静かに目を閉じた。

<27>
「本宅の朝」
§27§「本宅の朝」

 ぬくぬくと、暖炉の前でうたた寝をする時のような、顔が火照ってくる暖かさに包まれて、ミルクは目覚めた。
「お・は・よー。」
 マサトがミルクの耳たぶをしゃぶるようにキスをして囁く。
「、、マサト、、、いたんだぁ、、、ウフフッ、、、」
 ミルクも甘えてキスを返す。
「んー?・・一緒のお泊まりを忘れてたのか?」
「忘れないけどぉ、、、だってぇ、、、昨日はいてくれなかったじゃん、、、初お泊まりだったのにぃ、、、」
 ミルクは拗ねてマサトの首に鼻を擦り付ける。
「あ・・・そうか。・・そうだよなぁ。初お泊まりなのになぁ。・・・ごめん。」
 マサトはミルクを、ギュゥッ、と抱き締めて頬ずりをしながら謝る。
 頬ずりをしながら、抱き締める腕が上と下にずれて、ミルクのふっくらとした胸と股間に手が伸びていく。
「、、ぁ、、、ぁぁん、、、朝からぁ、、、」
「一晩中こんなに可愛い子が腕の中にいて・・・目覚めた時からいい匂いに包まれて・・・どうにも気持ちいい感触の肌がぴったり寄り添って・・・欲情しねぇ訳がねぇだろうが。クックックッ。」
「えぇ、、、でもぉ、、、」
「それでもミルクが目を覚ますまで待ってやったんだぜ。」
 マサトは乳首を摘んで、クリクリクリ、と愛撫しながら、もう一方の手でクリトリスを、グリグリグリ、と擦る。
「ぁ、、ぁぁ、、はぁはぁ、、、あぁぁん、、、」
 意識がはっきりしてくるのと同時に快感が体を支配していく。
「、、マサトぉ、、、おしっこ、、いきたい、、、」
「我慢しろ。」
「あぅ、、、ぅぅ、、、漏れちゃうかもぉ、、、」
「クックックッ。漏らしてもいいぜ。」
「いやぁ〜ん、、、ぅぅぅ、、、我慢するぅぅ、、、くふん、、、」
「なら、すぐに入れてやるぜ。・・満タンの膀胱が圧迫されて気持ちいいらしいぞ。ククッ。」
「、、へ?、、、マジぃ?」
「さぁな。クククッ。」
「ぁん、、、あ、、あぁぁ、、、」
 マサトがミルクを後ろ抱きにして、横になったまま挿入してきた。
「ぁ、、ぁ、、ぁぁぁ、、、そんなに、、、押しちゃ、、、やぁぁ、、、ぁぁぁ、、、」
 ミルクの下腹部に掌を当てて、後ろから子宮を押し上げる。
 前から押され、後ろから突き上げられ、中ではグイグイと奥まで擦りあげられて、ミルクの目覚めたばかりの下半身は、自分でも訳がわからない状態になってしまっている。
 漏れそうだけど、出そうで出ない感覚が体を小刻みに震えさせる。
「あぁぁぁ、、、ぁぁん、、、あぅぅ、、、」
 マサトの長い指が、掌で下腹部を押しながら、クリトリスをグリグリと刺激し続けている。
 乳首も交互に、引っ張られたりキツク摘まれたり、クリクリと愛撫されている。
 前屈みになりがちなミルクの肩やうなじに、舌を這わせて吸い付くようにキスをする。
「ぁぁん、、、はぁぁん、、、くぅぅ、、、ぅふん、、、」
 ほとんどパニックに近い状況で、ミルクは快感に全身を震わせ身悶えている。
 マサトの片足がミルクの腰から足へと絡みつくように乗せられ、グイグイグイ、と奥まで子宮を突き上げてくる。
 強烈な圧迫と胃まで持ち上げられるような突き上げに、ミルクの思考回路はショートして、ただただ、目眩く快感に喘いでいる。
 そんな状態でも蜜は溢れ出し、グチョグチョに股間を濡らす。
 漏らしたのかと思うほど、ビチュビチュビチュッ、と湿った音がしている。
「ぁぁぁぁぁ、、、はぁぁぁぁん、、、マサトぉぉ、、、ぁぁぁん、、、」
 ミルクもマサトの動きに合わせて腰を動かし、膣口をマサトの陰毛に擦り付ける。
「はぁぁ・・・いい子だ。・・・可愛いぜ。・・・欲望を剥き出しに吸い付いてくる・・・最高の穴蔵だぜ。」
 マサトはうねるように腰を回し、ミルクの膣壁を掻き回す。
「あぁぁん、、、あん、、、ぁぁぁん、、、あぁぁぁぁ、、、」
 これでもか、というほどの存在感に圧倒され翻弄される。
 下半身が別の生き物のように思えてくる。
 こんな感覚、知らない。
 こんな快感、知らない。
「あぁぁぁぁぁ、、、マサトぉ、、、どうにか、、なっちゃうよぉぉ、、、」
 マサトに抱かれるまで、こんな世界があることを想像も出来なかった。
 積み木を積むように、考えて行動するのが普通だと思ってたのに、積み上げた積み木を乱暴に突き崩すような激しい衝撃。
 何も考えられない。
 快感に悶え狂うのみ。
「いいぜ。・・いっぱい感じろ。・・俺だけをいつも考えてる俺の女でいろ。・・いつでも、どこでも、何をしていても、俺でいっぱいの俺の女だ。」
「あぁぁぁん、、、ぁぁぁぁぁぁ、、、マサトの、、、女に、、、なるぅぅ、、ぅぅ、、、」
「他のことで、心を煩わせるこたぁねぇ。俺のことだけ想ってりゃいいんだぜ。」
「あぁぁ、、、あぁん、、、あ、、あ、、あぁぁ、、、」
 ミルクはもう答えることも出来ず、駆け巡る快感に痺れていた。
「あぁあぁぁあぁぁぁぁぁ、、、」
 ミルクが絶頂感に仰け反って体を痙攣させる。
「よし。今朝は股擦りでイクぜ。」
 マサトは、ズルッ、と長い蛇を抜き出すと、ミルクの太腿に挟んで動かし始めた。
 割れ目に添って後ろから前へ、花弁も膣口もクリトリスも擦り上げる。
「うぅぅ・・・ああっ・・・くぅぅぅっっっ・・・うぅ・・・」
 ザーメンが飛び散り、太腿もシーツも青臭い白濁液でベトベト状態になった。
「・・・あ〜ぁ・・・ミルク・・・お漏らししたなぁ。クククッ。」
「、、、ぅぅ、、、違ぁぅぅぅ、、、くふぅ〜ん、、、」
「バーカ。・・冗談に決まってんだろ。・・つーか、漏らしても良かったんだぜ。」
 マサトは汗ばんだミルクの髪を撫で、頬から首、肩へとキスをして宥めた。
「風呂で綺麗にしてやるから・・・な。」
「、、、トイレ、、、行くぅ、、、」
「風呂場でさせてやるから心配するな。」
「、、、ぇ、、、」
「このままオシッコ出すと、染みて痛ぇだろ?」
「、、、ぅん、、、」
「よしよし。・・・ミルクのおまんこは俺のでもあるんだ。大事にしなきゃな。・・・この連休、いきなりハードに使いすぎちまったから、少し赤く腫れてるしな。後で薬を塗ってやるぜ。」
「、、、うん。」
 ミルクはそこまで管理されることが恥ずかしかったが、大事にされてる、と思うと嬉しくもあった。
 マサトはミルクの逆上せた意識が戻ってくるまで、優しく抱き包み、キスを繰り返していた。
 そして、頃合いをみて、浴室のバスタブをお湯でいっぱいにしてくると、ミルクを抱き上げた。
 ミルクは、昨日馬に乗せられてから、まだ一度も自分の足で立ってないことに気付いた。
 こんなに過保護にされていいのだろうか、と思ってしまうが、逞しいマサトの肩に頬ずりしながら、軽々と抱かれる心地良さを味わうミルクだった。

 お風呂で汗を流し、たまっていたオシッコも放出出来て、スッキリサッパリしたミルクは、大きなバスタオルにくるまれて、おとなしくマサトに薬を塗って貰っていた。
「・・ねぇ・・・荷物、どうなったぁ?」
「ああ。届いてるらしいぜ。」
「え?・・・いつ、聞いたのぉ?」
「昨夜、ミルクが眠ってから報告があったんだ。」
「・・ふーん・・・」
「すぐ、必要な物があるのか?」
「だって・・着替えとか・・靴もぉ・・・」
「クスッ。あぁ・・そうだったな。・・・よし、これでいいだろう。」
 マサトは医者のように真面目な顔で、ミルクの股間から顔をあげた。
「着替えだけど・・・俺が用意したのを着てみないか?」
「・・用意?」
「いずれここにも連れて来るし、と思ってな。・・その時の為に、ミルクに似合いそうな服を買っておいたんだ。」
「えー、そうなのぉ?」
 ミルクは目を輝かせて、寝ていた体を起こした。
 やはり女の子だけに新しい服には興味が沸く。
「見たい、見たい〜。」
「ミルク用の部屋のクローゼットにあるから、好きなのを着るといい。・・他に、下着とか靴とかもカタログの本から選んでおいたから。」
「・・ミル・・の部屋・・に?」
「ああ。当然だろ?お前は俺の花嫁なんだぜ?・・・お前を俺の女にすると決めた時から、部屋を改装したり、新しい家具を揃えたり、準備しておいたのさ。」
 何て用意周到なんだろう。
 ミルクは呆れて目も口も丸くして聞いていた。
「準備が整うまでは内緒にしてたんだ。・・驚いたか?」
 ミルクは口を開けたまま、うんうん、と頷いた。
「フフン。・・気に入るか、どうかは見てからだな。」
 マサトは呆気に取られているミルクに満足そうに笑ってみせると、バスタオルにくるまれたミルクを抱き上げた。
 ミルクは夢心地で、マサトの腕の中、手足を縮めていた。
 ずっと、あの趣味の為のマンションで会っていたのだ。
 本宅は別にあると聞いていたが、きっとそこには案内出来ない事情があるのだろうと、ミルクから行ってみたいと言い出すことはなかった。
 微かに、別の彼女がいるのかも、と不安になることもあったが、目の前にいるマサトを信じていればいい、と思っていた。
 その理由がこれだったなんて・・・
 ミルクはシンデレラにでもなったような、甘酸っぱさに胸が締め付けられていた。

   白を基調にしたヨーロッパ風の造りになっている。
 家具も全体が白く所々が金で装飾された高級感溢れた物で揃えられている。
 レースや刺繍やリボンがふんだんに使われ、まさにプリンセスの部屋と言えた。
 レースのカーテンに取り囲まれた天蓋ベッドは、薔薇の刺繍がされたフワフワの布団だった。
 その上にそっと置かれて、ミルクはドキドキしながらバスタオルを体に巻き付けた。
 汚してしまいそうで怖かったのだ。
「どうかな?・・・気に入らない?」
「・・こんな凄いお部屋・・・ミルにはもったいないよぉ・・・」
 ミルクは拗ねたように膝を抱く。
「言っただろ?・・ミルクを日本一のお姫様にしてやる、って。俺は思ったことは確実に実行する男なんだぜ。」
「・・・それは・・・嬉しいけどぉ・・・ミル・・贅沢しなくていい・・・」
「まぁ、趣味に合わなきゃ、また変えればいいさ。取り敢えず、こんな所で我慢してくれ。」
「そーじゃないよぉ。」
 マサトはミルクの横に座り、肩を抱き寄せてキスをする。
「わかってるさ。・・けど、いいじゃねぇか。俺の大事な花嫁の部屋なんだぜ?これくらいは揃えなきゃ納得出来ねぇんだよ。クックックッ。」
「・・・マサト・・・」
「初めてで慣れてないから違和感があるだろうが、いずれ世間的な結婚をすれば、ここで一緒に暮らすようになるんだぞ。」
「・・・うん。」
「よしよし。・・で、気に入って貰えたかな?」
「・・・うん。すっごく・・最高ぉ。」
 ヒュゥ〜、とマサトは口笛を吹くと、ミルクをベッドに押し倒して唇を重ねる。
「ぁ、、、ん、、、」
 マサトの舌がミルクの舌を吸いながら絡みつく。
 ミルクも応えてマサトの舌を吸う。
 ピチュ、クチュ、チュプ、、、
 優しく甘く、情熱的なキスが続いていたが、
「・・あまり無茶はさせらんねぇ・・・歯止めが効かなくなる前に、顔出してる蛇を押さえ込まなきゃな。」
と、マサトが唇を離した。
 ミルクは指をくわえて少し考えていたが、
「・・もし・・・マサトが・・・して欲しいなら・・・舐めてもいいよ・・・」
と、小さな声で言った。
「えッ?・・いいのか?」
 マサトの顔がもうYesと嬉しそうな顔になっている。
 ミルクは何だか自分も嬉しくなって、頬を赤らめながら頷いた。
 そして、バスローブの裾が乱れて顔を出しているマサトの蛇を、そっと撫で撫でした。
 マサトは早速とばかりに前をはだけると、背中にクッションを重ねて横になった。
 ミルクは横に座ると、筋の浮き上がった胴体を握って、昨日教えられたように舐め始めた。
 こんなに腫れて痛くないのだろうか、と思いながら、頭を舐め回す。
 頭のくびれにも舌を差し込んで舐めてあげると、マサトは呻いて仰け反り喜んでいる。
 盛り上がってドクンドクンと脈打っている筋も下から舐め上げると、
「あぅぅ・・・いけてるぜぇ・・・」
と、熱い吐息を洩らす。
 そんなに喜んでくれるならと、口ですっぽりくわえる。
 マサトが昨日自分でイク時にしていたのを思い出し、顔を動かしてなるべく奥まで加えて擦るようにする。
「あ・・あ・・あ・・めちゃめちゃ・・最高だぁ・・・」
 喉に当たると吐きそうになったりするが、こんなに感激されたら、もっと頑張りたくなる。
 ミルクは一生懸命頭を上下させ、唇と舌で擦り続けた。
「うぅぅ・・・あぁぁ・・・いぃぃ・・・」
 マサトはミルクの髪を撫で回し、喘ぎ声を洩らしては腰を堪らないとばかりに浮かせた。
 そんなにいいんだぁ・・・
 ミルクはなるべく全体を愛撫出来るように、時々根元まで舐めたりしながら、何度もくわえて吸い上げながら扱いていた。
 あれほど抵抗感があった行為も、一度知ってしまうと、愛されるだけでない、愛してると伝える行為なのだと理解出来る。
 そして、まだ完全ではない幼いミルクの体では、マサトの沸き上がる激情を受け止めきれないのだということと、ミルクを気遣って我慢してくれるマサトの為にも、こうして口で奉仕することも必要なのだと感じていた。
「あぁぁぁ・・・最高だぜぇ・・・なんて可愛い子なんだ・・・はぁぁ・・・」
 マサトは腰を浮かせて仰け反りながら感動を全身で表してした。
「いいぜぇ・・・そろそろ出していいか?」
「、、、っん、、、」
 ミルクはくわえたまま頷くと、精一杯、手で扱きあげながら喉までくわえて頭を忙しく上下させた。
「くぅぅぅ・・・めっちゃ上手いじゃねぇか・・・よしッ・・・このままイクぜぇぇぇ・・・はぅぅぅ・・・あぁぁぁぁっっ・・・」
 マサトは腰を浮かせて硬直した後、どっと力を抜いてベッドに体を投げ出した。
 ミルクは口いっぱいに噴出されたマサトのエキスを、零さないように飲み干し、丁寧に舐めて綺麗にした。
「はぁはぁ・・・いい子だ、ミルク。・・おいで。」
 マサトが伸ばした腕に包まれるように、ミルクはマサトの胸にもたれた。
「・・一晩で・・あれだけ覚えたのか?」
 マサトは荒い息を整えながら、ミルクの髪を撫でる。
「・・うん。」
「クックックッ。・・すげぇな。・・・末恐ろしいっちゅうか・・・参った。」
「・・ぁぅ・・・マサトの為にって・・・頑張ったのにぃ・・・」
「わかってるって。」
 マサトは顔を赤くしてイジケるミルクを宥めるようにキスをする。
「けど・・・知ってるか?」
「・・なぁに?」
「かのクレオパトラが、シーザーにアントニウスという時の皇帝を虜にした本当の理由。」
「・・超美人だったんでしょう?」
「そりゃぁ美人だったかも知れないが、顔の作りなんて好みもあるだろ?・・クレオパトラはなぁ、このフェラチオがめちゃめちゃ得意だったのさ。クレオパトラにしゃぶりつかれて、名君も名将もヘロヘロの骨抜きにされちまったって話だぜ。クックックッ。」
「・・ほぇぇぇ・・・」
「クックッ。・・俺も骨抜きにされちまいそうだ。」
「ぁぁ・・プゥゥゥ・・・」
 ミルクは頬を膨らませると寝返りうち、腕枕をされたまま背中を向ける。
「・・いいもん。・・もう、してあげない。」
「あッ・・ちょッ・・・怒るなよ。誉めてんだぜ?・・・なぁ?」
「・・知らなぁーい。」
「ミルクぅ・・・愛してるからぁ・・・また、してくれるって言ってくれよぉ・・・なぁ?」
 マサトはミルクを抱き締めて肩越しにキスの雨を降らせてくる。
「、、ぁ、、、ん、、、」
「機嫌直してくれ。・・・な?」
「・・・ぅん・・・」
「あ、そうだ。服を着たら、屋敷を案内するからさ。」
 そうだった。
 服を見にきたんだっけ・・・
「うん。」
 ミルクは笑みを浮かべて頷いた。

 クローゼットの扉を開けたミルクはまた呆気に取られ、しばらく手に触れることなく眺めていた。
 ほとんどがロングかセミロングの、ドレスと言った方がいいような服ばかりなのだ。
 マサトは自分も着替えるからと部屋を出ていっていた。
 そして、着替えられたら廊下で落ち合おう、と言っていた。
 どれかを選ばなければならない。
 ミルクはなるべくシンプルな服を選んで着ることにした。
 ふんわり脹らんだ袖と裾がレース使いになっているフレアスカートのワンピース。
 多少広めに開いた胸回りが気になるが、外の眩しい陽射しが暖かそうで、これでもいいかな、と思えた。
 可愛いミュールは欲しくても買えなかった人気の物だ。
 大きな姿見の前でクルリと回ってみる。
 襞のたっぷりしたスカートが大きく広がるのが嬉しい。
 着てみるとセミロングでも似合う気がする。
 歩く度に揺れるレースの裾が気分を楽しくしてくれる。
 ミルクはけっこう気に入ってきて、部屋を出た。
 廊下にはスーツ姿のマサトが待っていた。
 マサトは目を見開き、感激したようにミルクを眺め回した。
「うーん。いいね。・・・俺の可愛いお姫様。」
 そう言って手にキスをしてから、抱き締めて熱いキスをする。
 ミルクは朝から興奮続きで逆上せた頭をフラフラとさせながら、マサトの腕の中、キスに陶酔していた。
 本当にもう、マサトしか見えない気がした。
 マサトのことしか考えられないほど、マサトで体も心もいっぱいになっていた。
「クックッ。・・階段を転ばないように、もう少し抱っこしてた方がいいみたいだな。」
 マサトは、上気した顔でうっとりと目を潤ませているミルクを見て苦笑すると、また軽々と抱き上げた。
 そして、
「さて。ミルクのお腹の虫が鳴き出す前に、食事にしような。」
と、頬にキスをして階段を降りるのだった。

<28>
「レモンティー」
§28§「レモンティー」

 一階の大きな食堂で朝とも昼ともつかない食事を摂った後で、マサトはミルクの腕に二本のブレスレットを加えた。
 これで、金のブレスレットは七本になる。
 七本にもなると、一本ずつは細くても、かなり豪華に見える。
 金の重さも微妙に感じてしまう。
「・・わぁぁ・・・綺麗。・・・ありがとぉ、マサト。」
「よく似合ってるぜ。」
 マサトはブレスレットの煌めくミルクの手首をそっと握って、何度もキスをする。
「・・でも、どうして二本なのぉ?」
「初めてのお泊まりの記念だろ?」
「うん。」
「それと・・・初フェラチオの記念さ。」
「・・ぇ・・・」
 ミルクは赤くなって上目遣いにマサトを睨む。
「・・そんな理由・・・誰にも言えないじゃん。」
「他のは言えるのか?」
「・・ぅ・・・」
 マサトは片頬に笑みを浮かべて、喉で含み笑いをする。
「俺達二人だけで納得してりゃいいじゃねぇか。ん?」
「・・うん。」
 ミルクは恥ずかしそうに瞬きを繰り返しながら頷いた。
「クックッ。いい子だ。・・・それと、花嫁になった記念の方は、他のとおなじブレスレットって訳にはいかねぇからな、今デザインさせて用意させてる所だから、ちょっと待っててくれ。」
「・・え・・・でもぉ・・・」
「婚約指輪とか、結婚指輪とか、色々あるだろ?」
「・・でも・・・ミル・・・いらない・・・」
「何も遠慮することはないんだぞ。それくらい当然の権利なんだからな。・・俺が村を援助してるってのを気にしてるのか?・・それだったら、全然心配ねぇって。俺が年間いくら稼ぎ出してるか・・クククッ・・聞いても信じらんねぇだろうな。」
「あ・・・うん。それもあるけどぉ・・・違う理由なのぉ。」
「・・・違う?」
 マサトは眉を寄せて、ミルクを見つめる。
 ミルクはうつむいて困った顔をしていたが、言いにくそうに切り出した。
「だって・・・ミルもいつかはマサトのお嫁さんになりたいって思うけど・・・今はまだ・・・自信ないし・・・」
「だから、それは難しく考えなくていい、って言ってるだろ?」
「うん・・でもぉ・・・やっぱり・・・結婚する時は、ママやお兄ちゃんに”おめでとう”って祝福されて・・・それで、やっぱ、ウェディングドレスとか着て、お祝いされて結婚したいんだもん。」
 マサトは一瞬息を止め、それから大きく溜息を吐いた。
 これまでマサトは人の指図で動いたことはなかった。
 意見を聞くことはあっても、最終的結論は自分で出した。
 言うなれば、全て自分で決めてきたのだ。
 自分がそうしてきただけに、ミルクもミルクの気持ちが決まっていればいいと思っていた。
 だが、考えてみれば、家族から祝福されたいと思うのは、家族がいれば同然だった。
 マサトは再び大きく溜息を吐いた。
「・・・ごめんなさい。」
「あ・・・いや。・・・そうだな。ちゃんと認めて貰って、ウェディングドレス着て結婚式をあげたいよな。」
「・・・うん。」
「どんな贅沢するより、どんな豪華な宝石を貰うより・・・そーゆーことが大事なんだよな。」
「・・ぁぅ・・・マサトの気持ちが嬉しくないんじゃないの。」
「わかってるよ。」
 マサトは優しく笑ってミルクの頭を撫でた。
「じゃぁ、結婚指輪はちゃんと式をあげてからにしよう。」
「うん。・・ありがと、マサト。」
 はにかんで微笑むミルクに、マサトは、うんうん、と頷きながら、頭の中では「あの兄貴を説得しなきゃなんねぇのか。」と結婚する為の重い課題に舌打ちをしていた。

 マサトは「どうやって敵を攻めようか。」と思考を巡らせながらも顔には出さず、ミルクに屋敷と庭とそこにある施設を案内した。
 それでもマサトの実家の村ほど案内する場所もなかった。
 屋敷に戻ったマサトは、
「花嫁という立場は保留でも、俺のパートナーであることに変わりはないんだ。会社のパーティーや招待を受けた時には同伴して貰う機会も出てくるだろう。」
と、前置きしてから、
「だからダンスが出来るように、今日は俺がレッスンしてやる。」
と言った。
「社交ダンスは踊ったことある?」
 そう聞かれて、ミルクは目を丸くして、ブンブン、と首を振った。
「クスッ。まだ中学生じゃ経験ないのが普通だよな。・・経験してたら、誰と踊ったんだろうと、嫉妬してたぜ。」
 マサトは笑いながらそう言って、ミルクを広いフロアへと連れて行った。
 それから、ミルクをイスに座らせ、ミュールからダンスシューズに履き替えさせてやった。
 フロアにあったテーブルやイス等は隅に片付けられた。
 屋敷の使用人は必要な時だけマサトの指示に従い、後は二人の邪魔をしないようにと離れていた。
 いつもマサトの側にいる若松も、今日は朝から姿を見ていない。
 そして二人だけのレッスンが始まる。
 初めは挨拶の仕方から。
 優雅に上品に、時と場合と相手の立場に合わせたお辞儀の仕方があることを、ミルクは初めて知った。
 次に基本のステップ。
 足の運びが自然に出来るようになるまで繰り返し練習し、それが出来るようになってからマサトと組んで踊ってみる。
 基本の姿勢を保ち、足を見ずにリードについて行けるようにする。
 そして、その基本ステップを曲を流し、それに合わせて踊る。
 そこまでで1時間以上かかった。
「あー・・・もぉ、足が痛ぁーい。」
 優雅な動作なのにけっこう汗を掻く。
 緊張したステップと慣れないダンスシューズで、足の指がジンジンと痛くなっていた。
 ミルクは隅に並べられたイスに座って、別のイスに足をあげてグッタリしている。
「クックッ。ホントにひ弱なお嬢さんだぜ。」
 マサトはミルクの靴を脱がせて、指先をマッサージし始めた。
 それから、喉が乾いただろう、とレモンティーを持ってくるように使用人に命じた。

「お待たせいたしました。」
 メイドが銀のトレイに乗せてレモンティーの入ったグラスを運んできた。
 マサトの眉がピクッと動く。
「・・ちょっと待て。」
 マサトはミルクにグラスを渡そうとするメイドを止め、
「お前がそれを飲んでみろ。」
と、静かに言った。
 静かではあったが、その声には有無を言わせぬ響きがあった。
「は?・・これをですか?」
 メイドは不思議そうに首を傾げて聞き直す。
「俺に二度言わせるな。飲めと言ったら、飲め。」
「あ・・はい。」
 メイドはトレイを脇に挟むと、グラスを持ってストローで飲み始めた。
 一口二口と飲んだ時、
「ぅッぐぇぇッ・・」
と、喉を押さえて倒れ込んだ。
 グラスが大理石の床に落ちて砕け、トレイがけたたましい音を立てた。
「財前ッ!本郷ッ!」
 マサトは怒声をあげた。
 ミルクは目の前で起こったことに蒼白となって固まっていたが、
「ぁ・・ぁ・・どうしたの?・・・しっかりして・・・」
と、倒れて苦しんでいるメイドに手を伸ばした。
「動くなッ!」
 ミルクは、ビクッ、としてマサトに視線を向ける。
「動かないでいろ。ガラスの破片で怪我をするぞ。・・その飲み物には毒が入っていたようだ。怪我して触れたらミルクまで毒に侵されるぞ。」
「え・・あ・・だって・・・この人・・・」
 真っ青になったミルクがイスの上で、小さくなって体を震わせている。
「・・・チッ。」
 マサトは舌打ちすると、メイドの側に屈み込み、砕けたコップの破片で指先に傷をつけた。
「え?!マサトッ?!」
「俺は平気だって言っただろ。・・俺の血は多少血清の役目もするんだ。」
 そう言って、マサトはメイドの口に血の滴る指を押し込んだ。
 バタバタバタッ、と足音がして数名が駆け込んできた。
「遅いッ!」
 マサトに怒鳴られ、
「申し訳ありませんッ!」
と、二人の男が前に出て頭を下げる。
 一緒に駆け込んできた者達は、この状況に顔色を変えて立ち竦んでいる。
「本郷。この者を連れていって、すぐに解毒しろ。」
「はいッ。」
 本郷はメイドを抱き上げ、部屋を飛び出していく。
「財前。調理場を押さえ、そこにいる者と出入りした者を連れて来い。それと毒の出所を景山と若松を呼んで調べさせろ。」
「承知ッ。」
 財前も急いで部屋を出ていく。
「他の者達は各自部屋に戻って、許可するまで一歩も出るんじゃねぇ!ここにいない他の者達にもそう伝えろッ!」
「わ・・わかりました。」
 駆けつけた使用人と研修生達は表情を引きつらせて部屋を出ていった。
 ミルクと二人になったマサトは、指にハンカチを巻き付け、震えてるミルクを抱き上げた。
「いいよ、マサト。自分で歩けるから。・・怪我の手当して・・」
「たいした傷じゃねぇ。それよりここは掃除させるから、上の部屋に行ってようぜ。な?」
「・・・手当してぇ・・・」
 ミルクが泣きそうになって言う。
「クスッ。なら、ミルクが傷テープでも巻いてくれるか?」
「・・ミルでいいの?」
「ああ。ミルクが手当してくれりゃ、すーぐ治っちまうぜ。クックッ。」
「ん、・・テープ貼る。」
 ミルクはマサトの首に腕を軽く巻いて、気遣わしげに頬ずりをする。
 マサトは労るようにミルクの髪にキスをすると、二階へと向かった。

 ミルクは不器用にカットテープを数枚使って、ようやくマサトの指先を包みこんだ。
「・・ぅぅ・・・これで、いい?」
「おう、充分だぜ。上出来、上出来。」
 マサトはテープで脹らんだ指先を数回屈伸させて、笑みを浮かべて言った。
 けれど、笑う目の奥に冷たい光を宿している。
 周囲に警戒を張り巡らせるピリピリとした雰囲気があった。
 マサトが急に笑みを消し、キッ、とドアを睨んだ時、ノックする音がした。
「景山です。若松もおります。入ってよろしいでしょうか?」
「・・ああ。」
 マサトは渋い声で返事をすると、ミルクに並んで座り、庇うように腕を肩に回した。
「容疑者はわかったのか?」
「疑わしい者は、昨日の件で8名、今日の件で5名、その内両方に名前が挙がっている者が3名です。」
「3名とは?」
「はい。田代、福島、と研修生の田村です。」
「研修生の田村美里か・・・」
「やはり、一番疑わしいですね。・・・田村だけ尋問しますか?それとも全員取り調べますか?」
「昨日の今日だぜ。狙った相手も同じ。・・身内にそう何人も裏切り者がいて欲しくねぇぜ。・・ったく。・・取り敢えず3名に絞れ。ここではマズイからアジトで事情ってもんを聞いてやろうじゃねぇか。」
「承知しました。・・先に吐かせておきましょうか?」
「いや。俺が直接聞いてやるぜ。どんな了見で俺のミルクを狙うのかな。」
 そこまでは他人事のようにおとなしく聞いているだけだったミルクは、目を丸くして瞬きを繰り返した。
「・・ぇ・・・ミルを?」
「あ?・・・気付いてなかったのか?」
「えー・・・何でぇ?」
「それをこれから聞こうって訳よ。・・ミルクは家に帰った方がいいな。若松に送らせよう。」
「ミルも行くぅ。」
「いや。これは組織のことだから・・」
「だって、今、ミルを狙ったって言ったじゃん。どうしてミルには秘密にするのぉ?・・田村美里さんて誰?どーゆー関係?何か後ろめたいことあるの?」
 ミルクは言いながら風船のように頬を膨らませていく。
「そんなもん、あるわけねぇだろうがッ!」
 マサトが眉間にシワを寄せて怒鳴ったが、ミルクは目を眇めて睨み返す。
「・・・怪すぃ〜・・・」
「・・チッ。・・・あのなぁ・・・」
 今度は額に手を当てて舌打ちしながら溜息を吐く。
「遊びじゃねぇんだ。ドラマでもねぇんだぜ?・・お前の神経には耐えられねぇこともあるんだ。」
「マサトと一緒なら平気だもん。」
「・・蛇神ほど綺麗じゃねぇんだぞ。」
「だって・・・マサトのお仕事のことなら邪魔する気はないけど・・・ミルを狙ったって言ったじゃん。そしたら、ミルだって理由知りたいもん。」
 マサトは根負けしたように溜息を吐いた。
「・・わかったよ。連れてってやるけどなぁ・・口出ししたり、泣いたりすんじゃねぇぞ。いいな?」
「うん。」
 ミルクはマサトを見つめながら頷いた。
 マサトは、やれやれ、と景山に片頬で笑ってみせ、ミルクを抱き上げた。
 景山は口元を押さえながら、そっと苦笑を洩らした。
「マサトぉ・・・ミル、ちゃんと歩けるよぉ。」
「ダンスの練習でアンヨが痛ぇんだろ?」
「ミュールなら大丈夫だもん。」
「・・あんな小っちぇサンダルみてぇな奴で地下を歩けるかよ。転ぶのがオチだぜ。」
「転ばないもん。」
「・・はいはい。ったく、駄々っ子姫は・・・若松。持ってきてやってくれ。」
「はい。」
 若松は笑みを堪えながら頭を下げると、急いでミュールを取りにいった。
「では、私は先に3名を連れて行きますので・・お先に失礼します。」
 景山はそう言って、若松に続いて部屋を出ていった。
 二人きりになると、マサトは心配そうにミルクの頬を撫でた。
「本当に大丈夫なのか?・・辛い場面も出てくるぞ?」
「・・うん。・・・だって、マサトと離れたくないんだもん。・・我慢するぅ。」
「・・・我慢出来るといいけどなぁ。」
 マサトはまだ不安が拭いきれず、ゆっくりとミルクにキスをした。
 本当はミルクも不安だったが、家で一人不安を抱えているよりはマシに思えたのだ。
 ミルクも甘えるようにマサトの口を吸った。
 ミュールを持って戻ってきた若松は、しばらく入り口で二人の熱いキスを見守っていた。

 ミュールを履いたミルクは嬉しそうにマサトの腕につかまり、デートにでも行くような足取りで車へと向かった。
 昨日の倉庫街の地下にあるというアジト。
 異世界を覗くようなワクワクする気持ちは隠しようもない。
 それが、どんなに怖い世界でも、マサトと一緒ならきっと怖くない、と思ってしまう。
 いつでも、どんな時でも、マサトを信じていよう。
 そう思い込むことで、不安を掻き消すミルクだった。

<29>
「駄々っ子」
§29§「駄々っ子」

 倉庫街、管理事務所から地下へ降りる。
 地下と言っても、暗くないのでミルクはひとまずホッとしていた。
 上の事務所には景山が待っていて、マサトとミルクを3名のいる部屋へと案内する。
 尋問すると言っていたので刑事ドラマの小さな部屋を想像していたら、倉庫のようなスペースのある部屋だった。
 連れてこられた3名は部屋の中央に間隔を空けて立たされていた。

「あれ?・・田代さん?・・どうしたのぉ?」
 ミルクは知っている顔があったので、思わず声を掛けた。
 田代はうつむいて緊張していたが、ブルルッ、と体を震わせて顔を上げると、ミルクに懇願するような目を向けた。
「・・ア・・アリス様ぁ・・・私は、決してアリス様に危害を加えようなどと思っておりません。信じて下さい。ううう・・・」
 もう最後は涙声だった。
「うるせぇ!黙ってろ!」
 さっき財前と呼ばれていた男が田代の顔を平手打ちにした。
「あーッ・・何するのぉ?・・・田代さんは、親切でいい人だよぉ。昨日だってミルの言うこと何でも聞いてくれて優しかったもん。」
「え・・そう言われましても・・・」
 財前は困った顔でマサトへ指示を仰ぐような視線を向けた。
 マサトは腕組みをした肩を怒らせ、
「ミルク。お前はここでは黙ってろ。罪状があるかどうかはこれから俺が調べる。」
と、厳しい口調で言った。
 それはミルクがかつて聞いたこともないような冷たい声だった。
 たちまちミルクの目が潤んで、鼻の頭が赤らんでくる。
 マサトは思い切り顔をしかめて、ミルクに顔を近付けると、
「だから言ったじゃねぇか。泣かない約束だろ?」
と、小さく囁いて宥めるように頬にキスをする。
「泣いてないもん。」
 そう言ってミルクは頬を膨らませるが、目の縁に溜まった涙が今にも落ちそうになっている。
「あぁぁぁ・・・もぉぉ・・・クソッ。」
 マサトはミルクを抱き締めて背中を軽く、トントントン、と叩く。
 それから、その状態で若松にゆったり座れるソファーとあめ玉を持ってくるように指示した。
 その部屋には、景山、財前の他にも、部下が10名ほどいたが、いつもと違う空気に戸惑い、なるべくマサトと視線を合わせないようにしていた。

 若松が他の部下にも手伝わせて、ゆったりとしたカウチソファーを運んできた。
「ミルク。ここに座っておとなしくしてろ。いいな?」
 マサトはそう言って、あめ玉の入った缶をミルクに渡した。
 ミルクは缶を手にしたが、
「これ、美味しくないからいらない。」
と、マサトに返してしまった。
「今は買いに行ってる暇がねぇんだ。これで我慢しろ。」
 マサトは何とか睡眠薬入りあめ玉で寝かせてしまおうと、ミルクを言い含める。
「プゥゥ・・・田代さんに買って来て貰えばいいじゃん。」
「だからなぁ・・」
「田代さん、何も悪いことしてないもん。」
 ミルクはじっとマサトを見つめて訴えた。
「はぁぁ・・・わかったよ。」
 マサトは膝をついてミルクの前に屈んでいたが、立ち上がって振り返ると、
「・・田代。ミルクが美味しいアメが欲しいってんだ。買ってきてやってくれるか?」
と、溜息まじりに言う。
 田代は目を輝かせ、
「はい!すぐに買ってまいります!」
と、興奮気味に答えた。
 マサトは頷いてから、もういい、とばかりに顎をしゃくった。
「ではッ、行って参りますッ!」
 田代は嬉しそうに、容疑者の列から抜け出した。
 ダダダダダダダダダダダダダダ・・・
 足音が遠離ってから15分後、また
 ダダダダダダダダダダダダダダ・・・
 と、足音がして、田代が汗だくの赤い顔で、キャンディーの袋をいくつも抱えて戻ってきた。
 田代はミルクの座っているカウチにバサバサと置き、
「これで、いいッスか?」
と跪いて聞く。
 ミルクは袋を眺めてから、
「・・ぅ〜ん・・・ミルキーがなぁい。」
と唇を尖らせた。
「うぅッ・・・すぐ、行って参ります。」
 田代はまた足音を立てて、走り出した。
 マサトは簡単な折り畳みのイスに座って、煙草を吸いながら時間を潰していたが、額に手を当てて首を振ると、
「ミルク。今日は我が侭言ってんじゃねぇ。こっちの話が進まねぇだろうが。」
と、やんわりと言って、立ち上がった。
 ミルクは、今そこにあるあめ玉を口に頬張りながら、コクリ、と頷いた。

「さて・・・二人になっちまったが、お前等がどうしてここにいるかはわかってんだろうな?」
 マサトが二人の正面に少し離れて立つと、低い声で言った。
 二人は顔を上げられずにうつむいたまま体を強ばらせている。
 景山がマサトの側でメモ帳を見ながら、
「福島は昨日、通風口の掃除をしております。ネジが一つ転がっているのを若松が見つけ、注意したそうです。・・そして、今日は非番だったので、朝から厨房で話し込んでいたそうです。」
と、一人の男の説明をした。
 そして、続けて、
「次に田村ですが、昨日は管理事務所でのバイト日だったので、奥・・アリス様をお迎えにあがる時、私が応接室を掃除しておくようにと指示しました。・・今日は午前中、いくつかのレッスンを受けていたようですが、数回厨房に顔を出しています。」
と、研修生の女性の方も説明した。
「・・フン。・・・でぇ?・・・オメェ等どっちがやりやがったんだッ!!」
 いきなりマサトが二人の顔を殴りつけた。
 二人は、ほとんど同時に後ろに飛ばされて倒れ、呻きながら辛うじて上げた顔からは鼻血が吹き出していた。
 喘ぐように口を開けて息継ぎをした福島が、咳き込んで血を吐き出すと、折れた歯が数本一緒に転がり落ちた。
 田村美里は口と鼻を手で押さえていたが、控え目に口から吐いた血の中に、やはり折れた歯が混ざっていた。
 恐怖が戦慄となって部屋に広がっていく。
 カタン・・・
 後ろからも、何か固い物が床に落ちた音がする。
 マサトはチラッと視線を向けたが、無視して、すぐに視線を福島と田村に戻した。
 唖然として口を開けたミルクが、舐めていたあめ玉を落としてしまったのだ。
 マサトはミルクを無視したまま二人を更に詰問しようとしたが、小さく舌打ちすると、若松を手招きして呼び耳打ちをする。
 若松は無言で頷いてマサトから離れると、ミルクの前に腰を屈めて、
「もう、これ以上はお辛いだろうからと、ボスが仰ってます。上で待たれてはいかがですか?」
と、囁いた。
 ミルクはカウチの上で膝を抱え、首を振る。
「誰が座っていいって言った!さっさと立ちやがれッ!!」
 マサトの罵声が響く。
 ミルクは肩をすぼめ、膝に半分顔を隠すが、動こうとしない。
「・・・困りましたねぇ。」
 若松は腰を屈めたまま、ミルクの前にいる。
 そうすることで、せめて悲惨な光景を見せないようにしていた。
 バシッ!ボガッ!
「ぐぇぇぇーッ・・」
「きゃぁぁーッ・・」
 また飛ばされて床を転がる音がする。
「おらおらおらおらぁぁーッ!!立たねぇとそのまま心臓を踏み潰すぞッ!!」
 ミルクはドキッ、として顔を上げると、カウチから立ち上がった。
 若松を避けてマサトの所まで駆けていく。
「いやぁぁぁーーーッ!」
 ミルクがマサトの前に回り込んで、胸にしがみつく。
「どいてろッ!ミルクッ!口出ししねぇ約束だろッ!」
 マサトはミルクを厳しく睨み付ける。
 闇の顔で怒りを露わにするマサトは、ミルクでも知らない人のように感じる凄まじさがあった。
 それでもミルクは、
「殴ってたら理由が聞けないじゃん!それに、どうして二人を殴るの?一人の人は無実なんでしょう?そんなのって変だよぉ!」
と、勇気を出して訴えた。
「どっちも同じ郷の大事な仲間なんでしょう?・・優しくしてあげてよぉ・・」
「うっせぇぇーッ!お前は引っ込んでろッ!・・若松ッ!ミルクをそこから動かすんじゃねぇーッ!」
 闇を纏ったマサトはミルクの願いも届かないようだった。
「・・アリス様・・・失礼します。」
 若松がミルクの肩をそっとつかんで、引き剥がそうとする。
「いやぁぁー・・・いやいやいやぁぁー・・・」
 ミルクはしゃがみ込んで、マサトの足にしがみつく。
「ミルのせいで・・人が傷つくのはいやぁぁ・・・」
「・・チッ。・・お前は関係ねぇって言ったろ?・・組織の全てが郷のもんじゃねぇが、郷の者達は身内と言って重用される。だが、それだけに裏切りは絶対許されねぇんだ。・・俺の大事な・・やっと見つけた唯一の存在を、・・狙うなんてぇことは、俺への裏切りなんだ!これを許してちゃ、組織は成り立たねぇんだよッ!」
「だけど・・・だって・・・二人じゃないでしょう?・・・無実なのに・・・殴られたら、可哀想だよぉ。」
「その場に居合わせて、陰謀を防げなかった奴も罪はあるッ!」
「・・でも、それを言ったら・・その人だけじゃないじゃん。・・このどっちかの人だけに責任を押しつけるのって・・ミル、わかんない。」
「わかんなくていいッ!俺が許さん、と言ったら許さねぇんだよッ!口出ししねぇでどいてろッ!」
「・・ぅぅーぅぅぅ・・・」
「泣くなッ!・・泣かない約束はどうした?・・いいか?ここは闇なんだ。闇には闇の掟がある。闇で戦い、勝ち残る為の、絶対の掟があるんだぜ。・・・頼むから・・口出ししねぇでくれ。・・・なぁ、ミルク?」
 マサトは踞ってしがみついているミルクを屈んで抱き上げた。
「・・だってぇ・・・ミルのことじゃなきゃ・・・何も言わないけどぉ・・・やっぱ、ミルのせいで・・・誰かが怪我するのはやだもん。」
「はぁぁ・・あのなぁ・・・それは理屈になってねぇぜ?」
「クスン・・・マサトだって・・・変な理屈じゃん。」
「じゃぁ、言うが・・・いいか、よく聞けよ?」
「・・ぅん。」
「ここで俺が甘い顔をする。そして気の迷いでお前を殺そうとした奴を許しちまったとする。側で黙ってた奴は関係なかったと、それも許す。・・・そうしたらどうなると思う?」
「・・・マサトに感謝する。」
「ったく、これだからなぁ。・・それは表の理屈で、本当はそんな甘い話はどこにも落ちちゃいねぇんだぜ?」
「・・・そぅ?」
「ここで助かった奴は、感謝なんかしねぇ。罪を犯そうが、裏切ろうが、言い逃れ次第で助かるじゃねぇかと高を括っちまう。そして、また同じように今度はもっと用意周到に命を狙ってくる。・・・黙って見過ごしてた奴も、関係なきゃ罪も問われず知らん顔出来る。なら、ヘタに係わるよりも、いつも知らん顔でいたらいい。そうゆーズルイ考えが他へも定着しちまうんだよ。」
「・・・そっか・・・」
「な?・・・わかったら、いい子で上で待っててくれ。」
 マサトは抱き上げているミルクの額に優しくキスをした。
「・・・そしたら・・・ねぇ・・・」
「ん?」
「・・・次に・・ミルが本当に殺されたら・・・その時はマサトの思うようにして。」
「なッ?!・・・なにッ?!」
「・・・だって・・・やなんだもん・・・」
 マサトは天を仰いだ。
 どう言っても、もうミルクには理屈が通らないのだ。
 感性で嫌と決めてしまったら、テコでも動きそうにない。
「・・ミルク・・・お前、自分が死んじまってもいいって言うのか?」
「・・・やだけど・・・でも・・・今日、ミルのせいで誰かが死ぬくらいなら・・・その方がいいかも。」
 マサトはあまりの衝撃に二歩後ろに蹌踉めいた。
 踏みとどまっても、しばらく呆然と固まっていた。
「・・お前が殺されたら・・・俺は・・・日本中・・世界中の人間共を殺す殺人鬼になってやる。」
「えー・・・マサトぉ・・・」
「お前がこの世から消えちまったのに、まだ存在してる奴等が許せねぇ。」
「そんなぁ・・・」
「俺の好きにしていいって、今言ったじゃねぇかッ?えッ?」
「やぁ〜ん・・・そんなのやぁだぁ〜・・・ふぇぇ〜〜ん・・・」
 ミルクはマサトの肩にしがみついて顔を擦り付けながら泣き出してしまった。
 マサトはふてくされたように、ミルクを抱いたまま立ち尽くしている。
 もう、駄々っ子と駄々っ子のぶつかり合いだった。
「ボス。・・今日の所は・・・」
 景山が策謀を巡らせるように目を細めて、マサトに頷いてみせる。
「・・・そうだな。・・・これ以上は同道巡りだ。」
 マサトは溜息を吐いて肩の力を抜き、ミルクに頬ずりをする。
「ミルクに、怖い思いをさせちまった。」
「もう、お屋敷にお戻りになって、休ませて差し上げてください。」
「ああ。そうしよう。」
「アリス様には当分身辺に警護を張り巡らせますので、ご心配なきよう。」
「うむ。そうしてくれ。」
 マサトはそう言うと、ミルクをそのまま抱いて歩き始めた。
 が、数歩歩いて立ち止まった。
「・・俺は変わらねぇ。・・自分の生き方は変えられねぇ。・・・ただ・・・こんなに綺麗な・・天使を愛しちまったんだ。・・それだけだ。」
 そう言った時、マサトの目から涙が溢れ出した。
 泣きながら天を仰ぎ、そしてミルクに愛しそうに頬ずりをすると、またゆっくりと歩き出した。
 ミルクの白いドレスが純白の羽のように揺れる。
 闇を纏ったマサトの背には、漆黒の翼が見えるようだった。
 景山も若松も、買い物から戻っていた田代も、他のこの場にいる者達の全てが、畏敬の念に鳥肌立ち、頭を垂れて見送った。
 彼等にはマサトも暗黒の神そのものだったのだ。
 二人の姿が見えなくなってから、景山が、
「若松。お前がここに残ってどうする?・・さっさと上へ先回りして車を用意してろッ!」
と、思い出したように叱った。
 若松も慌てて、後を追って走り出した。

<30>
「堕天使」
§30§「堕天使」

 屋敷に着くまで、マサトはずっとミルクを膝に抱えて、両腕にしっかりと抱き包んでいた。
 首筋に鼻を擦り付けるミルクの頬と、涙で濡れた自分の頬をぴったりと合わせている。
 地獄の炎に炙られるように体が熱く燃える。
 平熱でも38℃を常に越えるマサトと、36℃あるかないかのミルクでは、2℃以上の差があった。
 ヒンヤリとしたミルクの肌に触れていると、マサト自身でも時々押さえ切れないほど燃え盛り狂う情念が、静寂な安らぎに包まれる気がした。
 熱く燃えながら同時に冷たく凍り付く魂のマサトと、清流の清らかさのような清浄感と日溜まりの暖かさを持ったミルクの魂。
 初めてミルクを目にした時から、相反する魂同士だとわかっていた。

 神をも恐れぬマサトでも、自分が触れてはいけない聖域があることくらい承知している。
 それなのに時々何の気の迷いか気紛れか、聖域に近い所で暮らしながら、闇の世界を覗きに来る奴等もいる。
 シルバーアクセサリーを売るマサトに麻薬を求める若者もそうだ。
 何の差別も迫害も知らず、親の愛に甘え贅沢に慣れすぎて、平和に飽きて刺激を求める若者達。
 その甘さと愚かさには神経が逆撫でされる。
 マサトは、いくら組織で麻薬を扱っていても、プライベートな時間にまで持ち込む気はない。
 戦渦を離れてくつろぐ戦士が、無闇に武器を振り翳したりはしないのと同じだ。
 マサトも決して平和主義を嫌ってる訳ではないのだ。
 だが、世の中の、特に平和慣れして退屈している連中は、生きる為の戦いではなく、ただ己の欲望と好奇心を満たす為に、猟奇的犯罪を重ねる。
 そんな連中に情けを持つほど、マサトは甘くない。
 利用出来る者は利用し、闇の本当の怖さを知って泣き叫ぼうが、容赦なく生き血を啜る。
 けれど、聖域を侵してまで、闇の影を伸ばすことはしなかった。
 その意味では、マサトの方が聖域を尊重し敬意を表していると言えるだろう。

 だから、雲の合間から垣間見た聖域の少女に、見た瞬間から恋をしていたとしても、触れまいと自分を諫めていたのだ。
 出会える当てもなく、ただ同じ空間に身を置く日々。
 そんな密かな楽しみを味わっていたマサトの前に、迷子のように少女が舞い降りてきた。
 闇への興味などある訳もなく、マサトを真っ直ぐに見つめて、「強いっていいなぁ。」と憧れを洩らす。
 まだ闇も光も区別がつかない幼い少女は、自分にない強さに素直に憧れる。
 光の聖域のあるべき姿とは、おそらくあのミツルのような存在なのだろう。
 己で判断し得る正義と悪の信念に基づき、常に正しくあろうと努力する人間。
 自己に内在する不浄な感情も許さず、鍛錬と修練を重ねて厳しく己を律する。
 自分に厳しいからこそ、周囲にもつい厳しさを求めてしまう。
 強さを持てない者にとって、相手が正しいだけに側にいるのは辛いだろう。
 望みはしないものの、ある種、聖域に憧れるマサトと同じように、常に強く正しくあろうと努力する兄ミツルはミルクの憧れに違いない。
 それでも、いつも失敗ばかりで、人を押し退けて勝つことも知らないミルクは、誰よりも自分の弱さや足りなさを痛感して、ダメな子というレッテルを貼ってしまう。
 そして、単純に、「強いっていいなぁ。」と憧れる。
 聖域で強い光を放ち使命感に燃える光の戦士から見れば、強さを持てないミルクはダメな子なのかも知れない。
 少なくてもミルク自身はそう感じてしまっているし、そう思わせる冷たさが光にはあるのだ。
 自我ばかりを主張する人々に脅え、傷ついた羽を震わせている天使。
 これほど愛しい天使を傷つけていることに、気付こうともしない傲慢な聖域の者達。
 だったら俺が手に入れてやろう。
 マサトがそっと伸ばした手に、天使は飛び込んできた。
 闇に落ちた堕天使。
 落ちて尚、汚れを知らない魂を持った天使。
 俺が守ってやる、とマサトは固く心に誓いながら、ミルクを抱き締めていた。

 部屋まで抱き上げて運んだマサトは、ベッドに横たえたミルクを愛おしく見つめ、再び涙を溢れさせながらキスを繰り返した。
 何故、涙が出るのかわからない。
 大事すぎて思う心が空回りしているようなもどかしさ。
 言葉に出来ない想いが涙となって落ちてくるようにも思えた。
 言葉もなくキスを繰り返すマサトに、ミルクは戸惑いながら応えていた。
「・・マサトぉ・・・ごめんね。」
 ミルクがマサトの頬を掌で撫でて涙を拭う。
 マサトは優しく笑みを浮かべて首を振る。
「・・ミル・・・約束破っちゃって・・・ごめんなさい。」
「いや。・・いいんだ。」
 マサトはやっと言葉を絞り出した。
「ミルクに・・耐えられる状況ではないことは・・わかっていた。」
 マサトの声が微かに震る。
「・・思い切り・・・醜い俺を見せちまったな・・・」
 苦しげな息をしながら切なく見つめるマサトを、ミルクは同じように切なく見つめ返した。
「ううん。・・醜いのはミルだよ。・・本当はマサトのいる世界を乱しちゃいけなかったのに・・・」
「・・ミルク・・・」
「よくわかんないけど・・・そう思う・・・」
「俺を嫌いになってないか?」
「ううん、全然。・・何で嫌いになるの?」
 ミルクが不思議そうな顔をする。
「俺が・・怖くないか?」
「え・・・怖がらなきゃ・・いけないのぉ?」
 確かにマサトを怖がっていたら、あの場面で止めには入れなかっただろう。
 マサトは大きく息を吐いた。
「それならいいが・・・怖がってるように見えたぜ?」
「それは・・・マサトじゃなく・・・ミルがマサトにそうさせちゃてるってことが・・・そうさせちゃうミル自身が・・・きっと怖かったんだと思うけど・・・よくわかんない・・・」
 ミルクは拗ねたように顔を擦り付けた。
「・・ぁ・・痛ぁ・・・」
「ん?・・あぁ・・ネクタイピンか・・・」
 マサトは衿に通して止めるネクタイピンを外し、ついでにネクタイも外して、ワイシャツの衿を緩めた。

 ミルクは少し開いた襟元に顔を押し当て、喉元にキスをした。
「・・ヘビしゃん、、、撫で撫でしたい、、、」
 ミルクが甘えた声で言う。
「クスッ。・・毒蛇だけは勘弁してくれよ。」
 マサトはそう言って、スーツとワイシャツを脱いだ。
「わぁーい。、、ヘビしゃん、、、チュッ、、チュッ、、」
 ミルクは大きく口を開いた胸のヘビにキスをする。
「、、でもなぁ、、、あの毒蛇さんも可愛かったけどなぁ、、、」
「おいおい。・・・馴染んでくれるのはいいが・・毒蛇だけはマズイぜ。」
「だって、、ミルが喉とか頭、撫でたら気持ち良さそうにしてたよぉ?」
「噛まれたら・・・血清打つ暇もねぇぞ。」
「ならマサトと一緒の時ならいいじゃん。、、噛まれたら、ミルがマサトに噛みついて、、血ぃ吸うたる。フフフッ、、、」
「クックッ。そんな柔な顎した綺麗な歯で噛みついても、俺の鋼鉄の肌は血なんて出やしねぇぜ。」
「、、、ダメかぁ、、、」
 ミルクは残念そうに呟くと、ヘビのタトゥーに添って下へとキスをしていく。
「、、行き止まりになっちゃったぁ、、、」
 ミルクがズボンのベルトに歯を立てる。
「カジカジカジ、、、」
「ククッ。下のヘビにもキスしたいのか?」
 ミルクはベルトを囓ったままコクッと頷く。
「フッ・・暴れ出しても知らねぇぞ。」
 マサトはそう言いながらも、手早くズボンと下着も脱ぎ捨てた。
 ミルクは早速とばかりに赤黒いヘビをくわえ込む。
「あ・・おい・・・ちょっと待て・・・靴下脱いでねぇって・・・」
 マサトは股間を占領され、ミルクの上に覆い被さる姿勢で、どうにか靴下を脱ぐことに成功した。
 ズップッ、、ズップッ、、
 吸い付きながら忙しく口で扱きあげている、ミルクの髪を、たまらなそうに優しく撫でて、
「ああぁぁ・・・ミルク・・・いきなり上手くなりすぎだぜ・・・」
と、目を閉じた頭を後ろに反らせる。
「、、ンッチュッ、、、きっと、ヘビとの相性がいいのかもぉ、、、ぅふん、、」
 少し得意げに笑った幼い顔で見つめられると、ゾクゾクする快感が背筋を走り抜ける。
「クスッ。それは良かった。・・続けて・・・ミルク・・・」
「ぁ、、うん、、、」
 ミルクはまたくわえ込むと、手でも根元を柔らかく扱きながら、首を懸命に振る。
 マサトは背中にクッションを置き、頭の後ろで腕を組んだ。
 じっくり鑑賞しながら快感に痺れるのもおつなものだと喉で笑う。
「はぁぁ・・うぅぅ・・・」
 時々たまらずに体を大きく反らせ、左右に捻って熱い息を吐く。
「いいぜぇ・・ミルク・・・最高だ・・・」
 精子が大挙して集まり出口を探し出す。
 堰き止めている堤防が決壊しそうに押し寄せ、放出しろ、と脳に指令を出す。
 だが、放出したい欲求とは別に、もう一つの欲望がムラムラと沸き上がる。
 あどけない顔の赤い口も充分に魅力的だが、もっと深くズッポリと潜り込める穴蔵に突っ込みたくなる。
 待ち構えていた淫乱なミミズが次々と巻き付いてきて締め付ける秘密の巣穴。
 どんなに暴れてもぴったり吸い付いてキュウキュウとしがみついてくる可愛い洞窟。
 マサトは思わず涎を啜った。

「・・なぁ・・・乗っからねぇかぁ?」
 片頬で笑うマサトが甘い声で誘う。
 ミルクはヘビをくわえたままマサトに視線を向け、首を傾げる。
「ミルクに・・乗っかって・・欲・し・い・・・な?」
 マサトが股間のヘビを指差して言う。
「、、、乗っかるのぉ、、、?」
 ミルクが顔を上げて恥ずかしそうに目を瞬かせる。
 これだけ大胆にフェラチオをしても、経験のないことを指示されると恥ずかしがる。
 マサトは少女心の面白さに笑いを洩らしながら、
「そう。・・乗っかってくれ。」
と、頷いた。
「、、ぅ、、、服はぁ?」
 ミルクはまだ白いセミロングのワンピースを着ていた。
「んー・・そうだなぁ・・・ちゃんと乗っかれたら、俺が脱がせてやる。・・あ、パンツは自分で脱げよ。」
 マサトはニヤッと笑ってウィンクをする。
 ミルクは爪を噛んで躊躇していたが、
「、、、ぅん、、、」
と、小さく頷くと、顔を赤らめてコソコソッと下着を脱いだ。
 それからたっぷりとしたスカートの裾を膝までたくし上げ、マサトの股間を跨いだ。
「、、ぁぅ、、、」
 ミルクのお腹に熱いヘビが当たる。
「ククッ。場所が違うみたいだぞぉ?」
「、、ぅぅ、、、だって、、、わかんないもぉん、、、」
「ちゃんとミルクの手で握って、自分のオマンコに入れてやるんだぜ。」
 ミルクは、え?と目を丸くしてから頬を膨らませる。
「・・嫌なのかぁ?・・ヘビ君が寂しがってるぞぉ?」
「、、、ぅぅぅ、、、マサト、、してぇ、、、」
「・・うーん・・・ひとつになりたいって思うのは・・俺だけなのか・・・」
 マサトが声を小さくして呟くように言う。
「ぁ〜ん、、、違ぅけどぉ、、、」
「じゃぁ、頑張ってみよう。」
 マサトはニンマリと笑って、チュッ、とキスをするように唇を動かす。
 ミルクは諦めて深呼吸すると、再びスカートをたくし上げ、手を中へと潜らせた。
 手探りでマサトのヘビをつかみ、ちょっと考えてからペタリと座っていたお尻を上げる。
 膝で立ってみるが、それでも高さが足らないことに気付いた。
「、、ぁぅぅ、、、」
 マサトに助けを求めようとしたが、目を細めて微笑まれると言い出しにくい。
 仕方なく片膝を立てて腰を浮かせる。
 自分で場所を合わせる感覚がまだよくわからなかったが、ちょっと押し当てて動かすと、すでに蜜でトロトロに潤っている花弁が吸い付いた。
「・・そぅ・・そこでいい。・・・ゆっくり体を沈めてごらん。」
「、、あッ、、、あぁ、、、んんー、、、」
 ズルッ、、ズブッ、、ズブリ、、ズズズゥ、、、
 膝を降ろし、少しずつしゃがんでいくのに合わせて、ミルクの中にヘビが潜り込んでいく。
「・・あぁ・・いい子だ。よく出来たね。」
「、、ぅん、、、」
 ミルクはお尻をついて座ったまま、しばらくじっとしていた。
 じっとしていたが、膣がビクビクと痙攣してジワァーンとした疼きが全身に伝わっていく。
「そのままゆっくり腰を回転させて・・」
「ぁ、、うん、、、」
 言われた通りにすると、蜜壺が掻き回され、蜜が溢れ出してくる。
「ぁぁぁ、、、ぁぁん、、、ぁふん、、、」
「どう?・・・気持ちいい?」
「、、、ぅ、、ん、、、」
「じゃぁ・・ホッピングして。・・・出来るだろ?」
「、、、ぅん、、、」
 抱っこされた時にすることもあったが、この状態では初めてだった。
 ミルクは戸惑ってイジケ始めた。
「ん?・・・どうした?」
 うつむいたまま動かないミルクを、マサトは上半身を起こして胸に抱き締めた。
 ミルクはイジケたまま顔を肩に押しつけた。
「・・どうしたぁ?」
 マサトは髪を撫で、キスをする。
 ミルクがマサトにギュゥーッと抱きつく。
「・・そうか・・・寂しくなっちゃったかな?」
「、、、うん、、、」
「よしよし。急には無理だよな。・・けど、よくここまで頑張れたじゃないか。偉いぞ。・・な?」
「、、、クスン、、、」
「こらッ。・・泣くなよ。・・・あんまりミルクが可愛く欲情をそそるから・・・俺もつい調子に乗っちまったぜ。・・・後は俺がたっぷりイカせてやるから、怒るなって。・・な?」
「、、、うん、、、」
 マサトはミルクの顔をあげて優しく甘いキスをする。
 マサトの熱い舌がゆっくりと回転し、ミルクの舌を吸う。
「、、ん、、、ん、、、」
 キスをしながらミルクの服を脱がせていく。
 服を頭から剥がす時だけ唇を離し、またキスを続ける。
 そうして全裸になったミルクを、ギュゥゥッ、と抱き締めてやると、繋がってる部分のミルクが、ギュゥゥッ、と締め付けてくる。
「無茶させて済まなかったな。」
「、、ミルこそ、、、上手に出来なくて、、、」
「バーカ。・・出来なくていいんだって。・・少しずつ覚えればいいんだぜ?」
「、、ぅん、、、」
「いつだって・・どんな時だって・・・俺はお前に夢中なんだ。・・・愛してるぜ、ミルク。」
「ミルもぉ、、、いつもマサトに夢中なの、、、」
「ミルク・・・」
 マサトはミルクをもう一度抱き締めると、そっと寝かせて、ゆっくりと動き、ゆっくりと感じさせてやった。
 優しく、、、優しく、、、慈しむように、、、
 ミルクはマサトの愛に包まれて、酔うように快感に浸った。
「あぁぁぁ、、、あぁぁん、、、マサトぉ、、、愛してるぅぅ、、、」
 まだ快楽のみを貪ることは出来ないけれど、マサトの愛を感じながら抱かれる喜びは、マサトが世界の全てと思えるほどに心と体を支配していた。
「あぁぁぁぁ、、、マサトでいっぱぁーい、、、ミルぅぅ、、、幸せぇぇ、、、」
 ミルクは登り詰め、そのまま恍惚と意識を失った。

 夕方、マサトはお土産を山と積んで、ミルクを家に送っていった。
「田舎なのでたいした物はありませんが・・・」
と、ミルクの母親に渡した野菜や山菜、多種のキノコ、果物等は、実を言えば、ついさっきヘリコプターで届けられた品々だったが、そのことはミルクと相談して内緒にすることにした。
 まだ、マサトの実家での儀式や本宅の部屋のことなどは、話せない内容に思えたのだ。
「すごぉーーく田舎だったけど、楽しかったよぉ。」
 ミルクが笑顔で言うと、母親も微笑んで、
「そう。良かったわねぇ。」
と言ってくれた。
 母親はミルクのいない間、マサトが紹介した弁護士と色々相談出来たことで、気持ちを落ち着けることが出来たようだった。
 ミツルは家にはいなかったが、マサトは家には上がらずに、そのまま帰っていった。
 ミルクを完全に手に入れる課題として、どうやってミツルの潔癖な壁を崩そうか、と策を練りながら車を走らせるマサトは、難しければ難しいほど燃える闘志を滾らせていた。