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万里novels
















  §オリジナル小説§「クッキー」


 これで何度目だろう・・・・・・
 告白しようとして諦めるのは・・・・・・


 私は、手作りクッキーの入った箱を片手に、ため息をついた。
 誰もいなくなった教室で、ぼんやり座って自分のタイミングの悪さを思い返してみる。

 告白しようとした相手の告白シーンに出くわした事、3回。
 告白しようとした相手のキスシーンを見たこと、2回。
 そして今回・・・・・保健室でやってるのを見つかり、停学になったそうだ・・・・・

 男を見る目がないのか、男運がないのか分からないが、張り切って作ったクッキーが今回も無駄になった事は、まちがいないかな?

「しかたない・・・・自分で食べちゃお。」

 がんばった包装をはがし、一つつまんで食べてみる。

「う〜〜ん。やっぱり今回は会心の出来だわ。」
「なにが、会心の出来なの?」
「ぴゃっ?!!」

 突然後ろから声がして、びっくりしてしまう。
 振り向くと、クラスの男子が笑いを堪えたような顔で口を抑え立っていた。

「ぷっぷっ・・・・・”ぴゃっ”てなんだよぉ〜〜!!わっはははっ!!」
「?!・・・っ・・・突然声をかえるからでしょぉ〜〜!!」
「わりー、誰も残ってないと思ったからさ・・・」

 ・・・・・失礼しちゃう・・・・・まだ笑ってるよ・・・・
 でも彼って、あまり笑わないって誰か言ってなかったかな?
 ウソだとしか思えないほど、笑われてるんですけど・・・・・私。

「いや〜〜、久しぶりに笑った・・・・、で、それなに?」
「・・・・クッキーよ・・・・。」
「へー、美味そうだな。俺腹へってるんだけど、くれない?」
「・・・・はぁ?何であんたに・・・・・まっ、いいわよ。家にもまだあるし・・・。あげるわ。」
「やりぃ〜。サンキュー。・・・・・美味いな、これ。あまり甘くなくて。」

 目の前で、すごいスピードで食べていく男に、唖然としてしまう。
 ・・・・まぁ、半分は捨てるつもりだったから良いとしようかな。
 ・・・美味しいって言ってくれたし。うん。

「その箱、捨てといてね。私帰るから。」
「あっ、ちょっと待って。お礼に送るよ。部活終わったし。」
「えっ?いいよ〜〜。半分は捨てるつもりだったから。」
「そうなの?まっ、いいじゃん。駅まで送るよ。」

 強引に彼は私の鞄を奪って先に歩き出す。
 しかたない。
 駅まで一緒に行きますか。・・・・・彼って部活なんだっけ?

「ねぇ?部活なにしてたっけ?」
「あれ?知らない?バスケだよ。いちおポイントゲッターなんだけど・・・・」
「ごめんねー。あまり話したことないしさぁ、バスケのルール事体あまりしらないし・・・」
「・・・・・問題外ってことか・・・・・」
「ん?なにかいった?」
「いや、べつに・・・・」

 あまり話したことなかった彼と、駅までの道を歩く。
 こうして話してみると、結構話しやすいなぁ。
 よく笑うし、面白いし・・・・。
 誰か「かっこいいけど、無愛想」って言ってなかったけ?
 まぁ、噂は当てにならないってことだよね。

「なぁ、あのクッキーって、手作り?」
「そうよ。なかなか美味しかったでしょ?」
「ああ、甘い物苦手だけど、あれは食える。」

 そりゃそうよ。甘さ控えめのジンジャークッキーだもの。
 思いを込めた会心の作品・・・・渡せなかったけど・・・。
 忘れかけてた事を思い出し、ちょっと落ち込む。

「また作ってよ。」
「はぁ?なんで?」
「・・・・・・美味かったから。他にも色々作れるのか?」
「作れるけど・・・・」
「じゃぁ、頼むな。お菓子類じゃなくて弁当でも良いけどさ。毎日じゃなくても良いから。よろしくっ!!」
「えっ、なんで、はっ、ちょっとーーーーっ!!」

 いつの間にやら、彼に約束させられて(合意じゃないけど)、断ろうにも気がつけば走ってゆく彼の姿(逃げ足はやっ)
 駅前で、しばらく唖然としたまま立ち尽くしてしまった・・・・。

 なんだったんだろう・・・・・。彼ってあんな人なの?
 明日・・・・・・どうしょう・・・・・。
 私は混乱する頭のままで、家路についた。


彼がこの帰り道、小さな公園でガッツポーズをしながら「やったーっ!!」と叫んでいた事は、誰も知らない・・・・・・。