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兎の目→太陽の子→子供の隣り・・・その他

              灰谷健次郎 新潮文庫

 平仮名の多さや改行の多さだけをみれば少女小説並。視点が子供の高さだから、使っている言葉も勿論"子供語"。難しい形容詞や回りくどい言い回しも殆どない。
 けれどその文章がどれだけ心を打つモノなのか、多かれ少なかれ皆さんもご存じでしょう。描写の鋭さ、適切さは大人のものですが、描き出されるのはどこまでも生々しい子供の姿。

 小学校の低学年の時読んだきりのタイトルも忘れてしまった本に「この子供達の詩を読んで笑わなかった人にはチューインガム12ダースあげます」の前置きの下に、10編ほどの灰谷健次郎選の詩が載っていました。その詩は大人が読むと「やだー」と赤面してしまうような、子供特有の素朴なシモネタの詩でした。

 ・・・・・・思えば子供というのは紙おむつや子供服のコマーシャルの如く、純真で愛らしく無邪気な「天使」であるだけじゃありません。シモネタを話せば天使じゃなくなるというと語弊になりますが、この子供特有の「やだー」から目を逸らさないトコロも、灰谷作品の鋭さの基本だと思うわけです。子供を描く作家として灰谷健次郎の名前を出すのは「何を今更」な気がしますけど、読み返してみるととても新鮮な気がしました。みなさんも如何ですか?

1994.apr.記


2001.may

 子供の物語でも少女漫画でも若年層の気持ちについて、その年齢をリアルタイムで一番実感出来る年頃には、それをきちんと色んな世代、環境の人に分かりやすく表現するだけのフォーマルな表現能力が身についていないことが多い。そしてそれを表現出来るだけの経験を積んだ頃には、最早その頃の気持ちは霞んでしまって、不鮮明になっているのだ。子供の頃というのは人間が一番変化する面白い時期なのに、それが上手く掘り下げられたり表現されずにいるのは、とても勿体ない事だと思う。

 特定年齢独特の、一過性の感性について描く時には、その年齢の感性だけでなく、大人としての広い視野やバランス感覚、モノカキとしての表現力や冷静な洞察力と上手く両立しなければ、中身があり尚かつきちんとした形になったものを書く事は難しい。子供に子供の物語は、書けない。大人にも勿論子供の物語は書けない。どちらかだけでは駄目なのだ。
 1994年のワタシは、そういう事を考えていて、灰谷健次郎氏が子供と大人を上手く併せ持つ、キメラに見えたのだと思います。

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