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フラニー・ズーイー〜バナナフィッシュに最良の日〜大工よ屋根の梁を高く上げよ
J・D・サリンジャー
代表作「ライ麦畑でつかまえて」で、サリンジャーの虜になった人は多いと思います。特徴的なのは、会話シーンとモノローグの多さ。
日常のちょっとした動作や会話を通じて登場人物の心の動きを表現するのが上手な作家で、逆に言うと人は全くといっていいほど動かない。だからそういうのが退屈って人には辛いかも知れません。作者サリンジャーは数カ国語はOKで、禅や心理学にも明るいという多才な人だといいます。
「生きているうちに謎解きをしろ」と研究家や熱烈なファンに言われているのはグラス・サーガという家族モノ。
この一家は「豆博士(新潮文庫訳では"かしこい子供です")」という天才少年達をレギュラーに迎えたクイズ番組に兄弟そろって出演するほどのIQの持ち主で、頭が良い分、考えなくても良い事をどんどん考え込んで、自滅に向かってしまう傾向がある。そして気違い紙一重の長兄に至っては謎の自殺まで遂げてしまう。
この死を扱った作品が、あの"バナナフィッシュに最良の日"。この死に対する解釈は色々多様化して定まらない程、奥が深い。
フラニー・ズーイーという中編はグラス家の末の兄妹の話で、人間のエゴについて悩み抜いた末、神経衰弱に陥った妹を兄ズーイーが助けようとする・・・・・・大半がその会話で、ズーイーは電話で、妹の信頼する次兄のフリをして説教したり、なだめすかせたりしてみせる。
物語の最後には忍耐の緒が切れて、自分が次兄ではなく、すぐ上の兄ズーイーであることを明かしてしまうんだけど、同時に妹の心をいとも簡単に解放出来る一言を言い当てる。
それは自殺した長兄の昔の一言。ラジオ出演していた時代、子供だったズーイーは汚れた靴のまま収録の会場に入った。それを長兄が咎めるとズーイーは「どうせラジオだから見えないよ」などと尤もな事を言い返す。そんなズーイーを長兄は諭す。
「(このラジオを聴いてくれている)太ったご婦人の為に靴を磨いておくんだ」って。
すなわちそれは目に見えないモノへの礼節、信仰・・・・・・つまり神への信仰を日常レベルに言い表したものだと言えて、幼い弟、妹たちはその言葉によって「どこかに居る太ったご婦人の為に・・・・・・」と知らず知らずのうちに信仰のようなものを身についてきたのだ。それでフラニーを諭したズーイーの名セリフは
「お前はまだ"太ったご婦人"が誰だか分からないのか?ああ、我が相棒よ、それはキリスト自身なんだ・・・・・・」
というもので、私にも少しだけこの場合の神が分かった気がした。神とは決して遠くの世界の偉大な存在でなくて、人の心に住むちょっとしたもの。キザな言い方をすると、それは子供かもしれない。恋人かもしれない。自分の良心なのかもしれない。こんな言い方をしても神様に対しては冒涜にならないと思う。
もしもサリンジャーにネームバリューがなかったとしても、やっぱりサリンジャーの本は心に残っていただろう。そして、心に残す価値があるものだと思っている。
1994.Jan.
2001 May
うぉっしゃーーーー!!
荒地出版のサリンジャー、今でも入手可能!
これを読んだ時の私は、サリンジャー作なら同じ本でも出版社(訳者)毎に、取り敢えず読んでいた。サリンジャーの文章はスラングが多く、言葉による表現が凝っているから、訳者によって文の雰囲気が大きく変わる。1994年の私が一番好きだったのは、荒地出版のサリンジャーだった。
サリンジャーを最後に読んだのは、もう5年以上前になるのだと思う。何せ最初に読んだ時の衝撃が強すぎて、何度も読み返すとあの時の想いが塗り替えられそうな気がして、恐くて読めないからだ。
人間が動かない→放送一回分、会議室でキャラクターが喋ってるだけだった銀河英雄伝説の会議のシーンの如く、サリンジャーもアニメになったら制作者は大変だろうな〜などと考える、2001年の双樹さん。あの日の生真面目さは、どこへいった(苦笑)
J.D.サリンジャーの本(J-Book調べ 赤字は絶版 2001年5月現在)
ライ麦畑でつかまえて( 文庫 、講談社インター 、¥760 、J.D.サリンジャー
、 1991/05 )
ハプワース16,1924( 単行本 、荒地出版社 、¥1200 、J.D.サリンジャー
、 1990/01 )
九つの物語( 単行本 、荒地出版社 、¥1200 、J.D.サリンジャー 、 1993/01
)
倒錯の森短編集2( 単行本 、荒地出版社 、¥1200 、J.D.サリンジャー
、 1993/01 )
若者たち短編集1( 単行本 、荒地出版社 、¥1200 、J.D.サリンジャー
、 1993/01 )
フラニー・ズーイー( 単行本 、荒地出版社 、¥1200 、J.D.サリンジャー
、 1993/01 )
ライ麦畑でつかまえて( 新書 、白水社 、¥820 、J.D.サリンジャー 、
1984/05 )
ライ麦畑でつかまえて新装版( 単行本 、白水社 、¥1700 、サリンジャー 、
1985/09 )
フラニーとゾーイー( 文庫 、新潮社 、¥476 、サリンジャー 、 1991/01 )
九つの物語( 文庫 、集英社 、¥476 、J.D.サリンジャー 、 1986/01 )
ライ麦畑でつかまえて( 書籍 、白水社 、¥950 、J.D.サリンジャー
、 1980/01 )
大工よ屋根の梁を高く上げよ( 書籍 、河出書房新社 、¥1400 、J.D.サリンジャー
、 1980/01 )
家族のなかの死/九つの物語( 書籍 、集英社 、¥980 、サリンジャー 、 1978/01
)
フラニーとゾーイー( 文庫 、講談社 、¥524 、J.D.サリンジャー 、 1992/10
)
ライ麦畑でつかまえて( 文庫 、講談社 、¥602 、J.D.サリンジャー 、
1991/05 )
ナイン・ストーリーズ( 文庫 、講談社 、¥602 、J.D.サリンジャー 、
1990/01 )
フラニー/ズーイー( 書籍 、講談社 、¥260 、J.D.サリンジャー 、 1979/01
)
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