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エッセイ

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双樹さんと、ことり
   。

  ハハのオシエ 
                    
  

 小学校の頃、インコを飼った。
 買ってもらう迄は嬉しくて嬉しくて、一日中インコの事ばかり考えていた。
 しかし実際飼ってみると懐いてもらうまでには思った以上に忍耐が必要で、意志の疎通も難しく、どう接して良いのか分からなくなった。

 一羽は巣の掃除をしている最中に逃げ、もう一羽は私が中学校の頃、一緒に陽の当たらない部屋に数日引きこもった時に、死んでしまった。
 色の鮮やかさに惹かれて飼ったものの、平たく見える後頭部と白目の多い顔は、子供の目には気味悪く映った。

 私は昔から、子供と動物が仲良くしている図に疑問を感じていた。
 動物と付き合うには、「好き!」という勢い以上に、気の長さと理性が必要なのではないかと思うからだ。それらはどちらかというと大人の守備範囲だと思う。
 動物を見ると、子供は喜んで駆け寄る。 オモチャのように溺愛し、相手の都合も考えず撫でたおし、そして飽きる。私はそんな子供で、自分で嫌になりながらも、このループから抜け出せなかった。そしてそのまま、「動物は、他人が飼ってるのをたまに見て、”可愛い”って撫でてバイバイする距離でいいや」と思うようになり、そんな自分に「自分は動物好きじゃないんだなぁ」と感じた。

 
 高校生になった頃、迷い鳥を拾った。
 回覧板やポスターで飼い主を捜したが、名乗り出る人が居なかったので、家で飼う事になった。手乗りだったらしく行儀が良いので、いつの間にか家の中で放し飼いをするようになっていた。
 昼間、鳥と接する時間の長かった母はとても可愛がっていたのだが、3年程でその鳥を事故で亡くす事になってしまった。
 母はショックで「もう鳥は飼わない」と言ったが、3日も経たないうちに父親が鳥の雛を買ってきた。父の行為は無神経に思えたが、何か考えがあってのことだろうと、心に留めておく事にした。

 事故のあった後にも関わらず、父が買ってきた小鳥もまた、放し飼いだった。
 ある時、私が正座しようとした瞬間に脹ら脛にとまってきて、挟みかけた事があった。私はその鳥がとても好きだったので、今度こそ放し飼いをやめて鳥かごに押し籠めようとした。
 人間と、あんな小さい生き物が一緒に暮らすなんて無理な話だ。
一度の「うっかり」で命を奪ってしまえるのだから、好きなだけにやり切れない。
 殺してしまうかも知れない距離で共存するか、安全を保証して安心しつつ遠くに居るかは究極の選択で、大好きな鳥を踏み殺してしまう夢に魘されたりしながら、鳥と共存する事は、外界や他人との距離の取り方に似ていると考えるようになった。
 柵で隔ててしまってもいけない、踏みつぶしたり傷つけてもいけない。大事に思いながら、気にかけながら、共存する。
 ・・・・・・嫌な時も、良い時も、変わらぬ距離で、居る事。

 私が、鳥かごに鳥を押し籠めようとしていたのに反して、母は昼寝をする時でも、手のひらの上で鳥を寝かせた状態で、一緒に寝ていた。
 変な寝返りをうったらどうするんだろうとか、夢でも見て手に力が入ってしまったらどうするんだろうとか見ている方が怖かったが、結局そんな事は一度もなかった。
 その姿を見て、「この人も伊達に子育ての経験があるわけではないな」・・・・・・と思った。

 核家族でお年寄りと接する機会が殆どなかった私が、老いの一部を知ったのも鳥のおかげかも知れない。
雛の頃は羽も揃っていなくて、薄汚れてチンチクリンで、それでも無条件に可愛らしい。
 3〜6年目は、羽も豊富でツヤがあり、クチバシも真っ赤で本当にゴージャスだ。叶姉妹のようなナイスバディが、白い毛皮を羽織って真っ赤な口紅で、誇らしげに立っている姿が見えるような気さえした。
 7,8年目は、クチバシの色も汚くなり、羽も少なくなり、地肌が所々見えるようになった。羽の色も、どことなく黄ばんで、昔ほどのツヤはない。
 羽が少なくて汚れているといっても、雛の頃とは明かに違う。これが「老い」なのだと知り、「生命力というのは、こんな風に目に見えるものなんだ」と思った。

 とても暑い日が一週間ほど続いた頃に、鳥の動きが目に見えて鈍くなった。
死ぬ3日くらい前には、エサを殆ど食べなくなった。身動きもしなくなり「もう駄目だろうな・・・」と思った夜、母が枕元に藁の丸い巣を置いて一緒に寝た。母にとって、それが一番近い距離のつもりだった。
 夜中の2時頃、物音で目が覚めたそうだ。巣から鳥が落ちたようだった。
巣に戻すと、怒ったような鳴き声を出しながら、また巣の出口まで這ってくる。
巣から落ちたのではなく、母のそばに来たいようだった。昼寝をする時のように、母が手の平の上で寝かせると、大人しくなったそうだ。
 そして四時すぎ、息をひきとった。

 「もう鳥は飼わない」と母は言い、父もあの時のように新しい鳥の雛を買ってこない。

 
 鳥を飼うようになってから、鳥が好きになった。雀や鳩も見飽きる事がないくらい可愛くて、気付けば野鳥の名前にも少しだけ詳しくなっていた。
 「こんな風に好きなものが増えていくなんて良いな」と思った。
 私は「動物が好き」という感情を学習して、動物好きな大人になれたのだろう。

 にっしーさんの描いて下さった素敵な絵。宝物にします。ちなみに双樹母は、この絵+**s(笑)


↑にっしーさんへのお手紙は・・・・・・↑

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