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エッセイ

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 まだ寒かった頃、引っ越しをした。
  現在も続行中、今年いっぱいかかるかも知れない荷物の整理は、かなり楽しい。    
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 真冬、頭を冷やしたくなり、引っ越しをした。

 何を捨てるか、何を手元に残すか、そこから落ち着いて考えたかったので、全てを段ボールに詰め込んだ。部屋中の荷物は、20箱余りあった。

 新しい部屋で荷物の山を開けてみる。
 出せなかった手紙と、受け取った手紙、出した手紙のコピーだけで段ボール一箱ある。中学時代からの写真でさえ、大層な量になっている。

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 中学生あたりまでの手紙は、非常に歳相応な、「ぶりっこ」の手紙。
 やたら明るい子ぶったり、悲劇のヒロインになっていたり、まるで子供が化粧の真似事をしている時のような、不似合いで背伸びをしたノリがある。そして10代の私は字が幼かった。

 そういえば私の母は私の字が嫌いだった。
 昔の自分の字を見ると、そんな母の気持ちがよく分かる。キレイ汚いの範疇を越え、「何か問題のありそうな字」だった。
 字というものにはその人の精神状態や持ちうる能力が出るのだと思う。
 同じ人の字でも怒って書いた時は字が攻撃的だし、何だか嬉しい時に書いた字はどことなく可愛らしい。昔の私の字は「へろへろ」。
 特に、嫌々書いた文字は、一目で分かる。字から混乱や苦悩の声が聞こえる。当時は自覚がなかっただろうけど、"それ"はハッキリと表れている。

 字といえば、あの人は、どうしているのだろうと思う。
 18くらいの時に一瞬友達だった人。小説サークルで知り合った。
 とても速筆で、パワフルで、非常に読みやすく勢いのあるものをバンバン書いてくる人。
 彼女の小説は、明るくて、読むと元気になれたので大好きだった。
 いつもはワープロで打ち直した原稿を読ませて貰っていたのだが、ある時一足先に直筆のものを見て、ドキリとした。
 最初は利き手を怪我でもして、逆の手で書いているのかと思った。
 簡単な漢字でさえも、線が多かったり点が足りなかったりしている。平仮名の鏡文字も混じっていた。
 「友達」というのは自覚する以上に選び選ばれているもので、会話が成立した事だけで・・・・・・極端な話、出会った時そこに居合わせたという事だけで、何らかの共通点があったのだと思う。

 鏡文字の彼女も未熟だった私に非常に近かった人で、彼女も今、幸せに過ごしていれば良いな・・・・・・と思う。

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 漫画のプロットや完成原稿も結構な量だ。中学の頃、初めて漫画絵を描いて、苦心して苦心して描いていた頃のデッサンの練習ノートも大量に出てくる。
 毎日、何枚も練習をした。18の頃から数年は、毎日ファッション雑誌からの模写をしていた。
 その時は全然実りがないように思え、却って毎日描く事で雑になっているように思えたりもした。
 改めて見ると自分で楽しんで描いている絵や話と、そうでないもののムラは凄い。
 真面目に全力出して描けた絵(話)は、ごくごく少数で、自分の甘さを思い知らされる。
 だけど、頑張って描いた時の絵や話は、どこか光っているように感じて、今見ても少しだけ誇れる。
 こういうことはフラグ立てのゲームに似て、一つの事をガムシャラにやっていても堂々巡りだったものが、広い視野でほんの少し、何かを見たり聞いたり発見するだけで、ガラリと変身出来る事もある。だから努力は無駄じゃないと思う。
 
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 そして、段ボールの12,3箱は本と漫画だった。
 中学時代に背伸びして読んだ小難しい雑誌に載っていた「家は借りて住め、本は買って読め」という言葉を信じて、それ以来私は本も漫画も、譬えどんな嫌いなものでも捨てなかったからだ。
 本棚は勿論、ベットの下、本棚と天井までのスペース、机の下、押入、至る所に溢れ、・・・・飽きたらず屋根裏の一部に防湿・防カビシートを敷いて、待避させていたものもある。
 気分の変わりやすい子だったのも一因だ。イライラしてその時嫌いだった本を捨てて、気分が治った時に後悔して読みたくて堪らなくなり、買い戻す・・・ということを2,3度し、後悔し、私は益々、本を捨てない子になっていた。
 
 小学校の頃は、近所の児童文庫に週一回通っていた。
 別にイカガワシイ本を読むわけではないが、「今日はこの本を借りて来ました」と親に報告するだけのことが苦痛で仕方なかった。
 私がその本を読んでいると知られてしまうと、その本にかかった魔法は解けてしまい、私は頭の中でさえも、その本に関して一種模範的な読書感想文を書かなくてはいけないような気になってしまった。

 13の頃、中学校の大きな図書館に踏み入れ、「読破してやる」と思った。
 思えば当時の女子学生には異常な程の群行動があり、部活に行くのも、教室移動も、トイレに行くのもグループでベッタリだった。そんな中、「私はちょっと図書館に寄るから」というのがなかなか言い出せず、結果、図書室には足を運ばなくなった。
 
 18の頃、バイトを始め、自由になるお金が少し増えた。受験勉強が終わり、親も勉強勉強と言わなくなったのをいいことに、今度こそ本浸りになった。
 以前から本好き仲間で常識のように言われている、タイトル自体がひとつの呪文のような効力を持つ名作達・・・・・・私はあまりそれらを知らず、知りたいと思っていたので、バイト先の近所の本屋に通い、「基本は押さえてやる」と思った。
「タイトルはよく聞くけど、実際は読んだ事がない本」を読破してやろうと思い、通学時間の長さを利用し、一日1冊の生活を送った。
 そして音楽と一緒で、読むだけで力が湧いてくる種類の本とも沢山出会った。漫画にも文学にも似ない、少女小説というジャンルも知った。

 だけど昔読んだ本の中には、内容をハッキリ思い出せないものも多い。
 その場で読んで感動しても、それを反芻する機会がなければ、記憶というのは薄れていくのだろう。
 「思い出せない」というのはまだ良い。それを読んだ事すら、忘れてしまっていたりする。
 「忘れてしまった本は、自分には合わなかった本だから、処分してしまって良い」
と思い切れるなら整理整頓も楽なものだが、当時は全然面白くなく寧ろ腹立たしかったような本が、今読むと妙に納得出来たりするので始末に負えない。
 だから、片づけようなどと思わず、思いっきり脱線しながら、本棚の整理をする。
「コレってどんな本だっけ」と思ったなら、それが一期一会かも知れない。気が済むまで読んでみる。
 ゆっくり読んだ筈の一冊より、本屋や図書館で読もうかどうか考えつつパラパラ捲った2,3ページの方が記憶に残っているというのも良くある話で、この種のパラパラを大事にしたい。
 そう思うから、本棚回りが片づかない。

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 学生証は、滑稽なほどの顰めっ面。元々写真慣れしているような世代でもないのだ。「はい、ポーズ」と言われて撮った写真は殆ど「ピースサイン」という突っ込みようのないお約束の鎧で、自分を頑なにガードしている。
 小学校の文集の、「好きな男の人のタイプ」に「嘘の上手な人」なんて書いてる自分に赤面する。記憶の中で都合良く塗り替えてしまった事の真実や、どうしようもないテストの答案。懐かしすぎる赤白ファミコン。
 隣接したサークルさんから貰った同人誌。昔付き合ってた人の写真。
 相変わらず書き殴っていた昔の自分。

 手紙の山も、一巻だけ買って続きを買いそびれた本も、「もういいや」と思えたものは思い切って捨てる。私はまだまだ「これから」を作っていかなくてはならない。原稿も気に入ったものだけスキャナで取り込み、原版は捨てた。
 小説の登場人物だったり、当時の流行のアイドルだったり、映画のヒロインだったり、何か別の皮を被って他人のフリをしていた子供時代の自分を知った。逃避と憧れと無知と逃げ。そして誰かの台詞ではなく、自分の中から声が出せるようになった過程も確認出来た。

 そしてその夜は、どこから手をつけて良いか分からないほどどうしようもなかった少女が、ちゃんとした大人になれた幸せな夢を見た。

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 私は夢の中でさえ幸せになれない子供だった。欲しかった服を買って貰ったけど、いざ着てみると破れている夢。空を飛ぶ夢の中でも、地表から10センチくらいの高さを、歩くより遅い速度で浮遊する事しか出来なく、カッコワルイことこの上ない。
 手放しで幸せになる事に恐れを抱いているのかな・・・と直球の夢判断をした。

 けれど、私はもう何年も前から幸せな夢を見れるようになっている。


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○余談ですが夢の話。
 大人になってから見る夢は、その日起きた事の繰り返しだったり、翌日する事のシミュレーションだったり、現実的な夢が多いです。
 なので、疲れている時や睡眠不足の時は、夢と現実の区別がつかなくなったりして、困ります。
 昔よく見た夢は、顎関節症になって口が開かなくなる夢(歯ぎしりでもしてるのでしょうか?)
 人を殺したり、とんでもない事をしてしまって、「もう昔の生活には戻れないんだ」ってドキドキしている夢。

 今でも時々見るのは、どこかに電話をかけなくてはいけないのに、ダイヤルの並び方が変だったりダイヤル自体がウゾウゾ動き回っていたり、制限時間があったりして、どうしても電話をかけれない夢です。
 どーゆー意味なんでしょうね?

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