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Pleasures

ウォッカ9杯、何でもないさ!
凍土に漬けたキャベツも食べる
何故って俺たちゃ男だから
北緯70℃にすむ男だからさ!

以前聞いたことのある、シベリアの鉱夫の歌が耳によみがえった…。
「ふん、何が男だから、だ!」
小さくつぶやくと、グラスを空にした。


馬鹿げているとわかっていた。
酒で潰れたことはなかった。
だけど、ウクライナの男とウォッカの飲みあいをするなんて…。

喉を焼く液体をまた一気にあおる。
3杯目を越える頃から、胃に染み渡る独特の感触すら麻痺し始めていた。

この情報は絶対入手したかった…。今追っている密輸がらみの事件の重要参考人の手がかりだ。

また一杯。勢いをつけてあおると、カツン、と音を立ててカウンターの上にグラスを並べた。

この男が握る情報が、真実なのか、どれほどの価値を持つものか、ある程度の確信があった。…職業柄、カンというやつ。
ウクライナの男のプライドをくすぐるのに、酒の飲み比べを一番効くやりかただ、というのもわかっていた。

8杯目!!カツン!
目の前のグラスが歪む…。
奥歯を噛み締め、目の焦点を合わせるように、きっと正面をにらみつける。
カウンター越し、美貌のバーテンダーの杏子が、いつもはクールな眉根を寄せてこちらを見ている。

「・・・・・。」

9杯目。
飲み干したグラスをカウンターに置く。
横目で男を眺めると、余裕たっぷりの表情でにやりと笑い返してきた。

…勝算がないわけではなかった。
閉店間近の外国人達のたまり場のバー。店に入った時、男はすでに数杯のウォッカを空けていた。

男は口の端に笑みを浮かべ、こちらを睨み付けたまま、10杯目のグラスに手をのばす。
それを一気にあおると、グラスをカウンターに叩きつけるように置いた。
目は相変らずこちらを睨んだままだ。

私はすっと目をそらすと、心配そうな杏子の視線とぶつかる。ふん、そんな顔するなんてめずらしい…いつも余裕な顔してるくせに…。
むかむかするのを通り越して、断末の悲鳴を上げる胃を無視して、焼けつく液体を注ぎこむ。

カツン!
―――10杯目。

暴れる息を押さえこみ、男を見る。こちらを睨み付ける男に、極上の笑みを見せてやる。
男はにやりと笑い返した。

向き直って、11杯目のグラスに手をのばした瞬間、
ものすごい音を立てて隣りの男がスツールごと、後ろに倒れた。
私はグラスを握り締めたまま、反対の手で額を覆った。
深い息をつく。

「ヒビキ、大丈夫?」
倒れた男の方は、バイトの男の子と、連れの男にまかせ、杏子はこちらを覗きこむ。
私はキュッとそんな彼女の顔を睨み付ける。
…実際そうでもしていないと、一つのものに焦点を合わせるなんて出来そうになかった…。

「トイレ…」
ようやくそれだけ言うと、スツールからたちあがり、出口とは反対にある、勝手しったる店の控え室の方へと向った…。

☆ ☆ ☆


暖かくて柔らかいものにつつまれて眠る、優しい夢を見ていた…。
夢とわかっていても覚めたくなかった…。

そのぬくもりを離したくなくて、ぎゅっと抱き寄せ、ほほを押し当てる。
規則的な振動が微かに感じられる…。
あたたかで、柔らかくて、優しい…いい香り…。
この香り…どこかで…。
そうこれは…――“Pleasures”だ…

思いついた途端、一気に覚醒する。
びくりと体を振るわせ、顔を上げると、目の前にはまさに天女の微笑み…。
「おはよう。」
私が抱きしめ、頬を押し当てていたのは、杏子の豊かな胸だった。
「うーーーーん…。」
私は頭に手をやると、彼女の上から寝返りを打つと、真っ白な枕に顔をうずめた…。
そんな私をクスクス笑うと、ぎゅっと抱きついてきて、頬に唇を落とす。
「おはようのキス。」
「 …。」
「シャワーでも浴びてくれば?」
そういうと、自分はさっさとベッドから抜け出すと、下着を着け、ガウンを羽織った。朝日の中(実際には昼近かったが、)彼女のきれいなプロポーションが浮かび上がる。
「朝ご飯、食べる?」
そういいつつ、キッチンへと向う。
「んー…。」

少し痛むこめかみのあたりをさすりつつ、ベッドの上に起き上がる。
シーツにくるまってはいるけど…裸だ…。
「んー…。」
「あなたが潰れるところ、初めて見たわ。無茶苦茶するんだもん…」
「 …。」
「ま、意外なあなたが見れてよかったけど。」
そういうと、彼女はいたずらっぽく笑った。
「私、何かした?」
「覚えてないの?」
「いや…」
「シャワーでも浴びてきたら、すっきりするわ。コーヒーでいい?」
「うん…」

日の差し込む明るいバスルームで、熱いシャワーに身をゆだねる。
白い湯気の中、自分の小ぶりだが張りのある胸が水滴をはじいていくの見つめる。
熱いお湯にうたれて、少しづつ頭がはっきりしてくる。

昨夜は店の控え室まで行って、耐え切れず膝をついた。
床が近付いてきて、そのまま真っ暗になった。
だけど、夜中目を覚まし、愛してるのつぶやきをうずめたのはどこだったろう…。
何度も何度も、その声を聞きたくて、追いかけるように体中にキスをして、抱きしめたその香りは…
――Pleasures。


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あとがき。
いや〜、初めてのネット公開作です。どきどきします(>_<)!!
この作品は ESTEE LAUDER の香水、pleasures の香りをイメージして、 書こうかな…なんて思ったんですけど、今日外を歩いてたら近所の公園 で、地面がカチカチに凍っていまして、そこから、なんとなく『凍土』 というコトバが浮かんできまして…そうして書き始めたら、 なんだか支離滅裂な作品に…(^^;)
出だしがなんか、泥臭いですね(爆)Pleasureのイメージじゃないか。(笑)
でもって先ほどネットでちょこっと調べたら、pleasures って、 日本未発売だったのですね…。(^^;)あはは…。
んん〜、まあ優しくて、甘い香りのする… でもすっきりしていて好きな香りです。
これから頑張って、色々書いてみようかな、と思ってます。
感想とか頂けたらうれしくて、飛んでっちゃいそうです。(でもください(爆))
Dec 11, 2000 M.K
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